町山智浩『裸の王様トランプのアメリカ破壊日記』を語る

町山智浩『裸の王様トランプのアメリカ破壊日記』を語る こねくと

町山智浩さんが2026年2月17日放送のTBSラジオ『こねくと』の中で自身の著書『裸の王様トランプのアメリカ破壊日記』について話していました。

※この記事は町山智浩さんの許可を得た上で、町山さんの発言のみを抜粋して構成、記事化しております。

(町山智浩)今日はちょっと映画じゃなくてですね。ただ「アメリカ流れ者」っていうタイトル通り、僕はアメリカに住んでるんですけど。アメリカについての本を出しまして。それが今週20日、金曜日に発売になるんですけれども。それについてちょっと話をさせていただきたいんですが。

今、流れてる曲は古いフォークなんですけど。これはウディ・ガスリーっていう人の歌でで。ウディ・ガスリーはボブ・ディランのお師匠さんです。で、どういう歌か?っていうと「この国は君の国。この国は僕の国でもある。この国は僕らの国なんだ」っていう歌なんですね。

Woody Guthrie『This Land is Your Land』

(町山智浩)で、この歌はすごくアメリカの民主主義を歌った歌として、ずっと歌い継がれていまして。で、今日はですね、アメリカではPresidents’ Day……大統領の日という国民の休日だったんですよ。で、こういう日にはみんなでこういう歌を歌うんですね。伝統的に。で、今日のPresidents’ Dayというのはね、アメリカの初代の大統領ジョージ・ワシントンを記念する日なんですね。

で、どうしてこの歌と関係してるかっていうと、ジョージ・ワシントンっていう人はアメリカが独立した時、王様になることができた人なんですよ。っていうのはそれまでの国は、アメリカが250年前に独立する前はどこの国もみんな、王様が支配してたんですよ。当時はね。ところがアメリカは世界で最初にそうではなく、選挙で誰がリーダーになるかを決めて。それを4年ごとにやって。で、合計で8年、2回やったら誰でもお終いにする。だから誰にも権力が行かないようにするっていう、それを始めた人がジョージ・ワシントンなんですよ。

で、その彼を尊敬する……世界最初の民主主義国家を作ったジョージ・ワシントンたちを尊敬して、民主主義の国を祝う日だったんですね、今日は。ところがですね、各地で今の大統領トランプに反対するデモが行われているっていうのが今日の現状なんです。トランプ、王様になろうとしているから。

今年はアメリカ建国250周年なんですけれども。まさか、そんな時にね、そういったものを壊すような大統領になっちゃったっていうのは本当にもう、非常に衝撃なんですけども。僕の本はトランプ大統領がこの1年に何をしてきたかというのを毎週、週刊文春でコラムで連載してきたんですが、それをまとめた本で。書名はですね、『裸の王様トランプのアメリカ破壊日記』と言うんですよ。

これ、タイトル通りもう体験的に本当にアメリカが破壊されてる感じなんですよ。で、その本の表紙にあるようにトランプが裸の王様の格好で、自分でホワイトハウスを破壊してるっていう表紙だったんですけれども。これはなんと、イラストを描いた後に本当にトランプがホワイトハウスを破壊し始めたんですね。解体し始めて。で、「王様気取り」っていうのも周りの人が言ってるんじゃなくて、トランプ自身が王様の格好をしたAI画像をネットでばらまいてるんで、彼は本気なんですね。

だから揶揄するつもりで言っていると、全部それを自分で回収しやがるので。ギャグがギャグにならないので非常に困るんですけども。で、この本は本当に1年間、毎週毎週トランプがやったことを週刊文春に書いてきたんですけど。とにかく、まず就任した日にもうひっくり返っちゃったんですけど。1月20日ですね、去年のね。

まず、2021年にアメリカの連邦議会議事堂を襲撃した1500人のトランプ信者たちを全員、恩赦したんですよ。これ、とんでもないのはその襲撃された時に、そこを警備してた警察官が1人亡くなって、その後もその4人が自殺してるんですね。ところが、これで誰も裁かれないっていう事態になったっていうことですよ。要するにトランプが2020年に選挙で負けて。それでバイデンさんが勝ったんで、そのバイデンさんのことを次の大統領として認定するという手続きが行われてるところに、それを妨害するために信者1500人が押し入ったんですね。

で、その信者は事実としてトランプがネットで「集まれ!」って言って招集したんですよ。仕向けて。はっきり「議会に行け」って言ってるんですから。それなのに、誰も裁かれていないんです。これは大変な、歴史上始まって以来の事態で。要するに彼らは有罪判決を受けたんですね、実際に。議会に入り込みましたからね。それで警察官も死なせてますから。で、その実際に有罪になった人たちを全部、無罪にして。放免したってことで、これでもう法治国家の基本をいきなり壊したんですよ。

就任していきなり、そこで法治国家が破壊されて。次にですね、就任式がすごかったんですけど。一番いい席に並んでいたのが政治家とかじゃなくて、アマゾンの創業者のジェフ・ベゾス。フェイスブック・メタのマーク・ザッカーバーグ、グーグルのスンダー・ピチャイ、アップルのティム・クック。Open AIのサム・アルトマンとかですね、テック系の大富豪がズラッと並んだんですよ。イーロン・マスクもいました、もちろん。これって要するに普通、政治って国民いろんな人たちのためにやるとなってるじゃないですか。特に力のない庶民の人たちのためにやるってことですよ。で、トランプ自身もそう言ってたんですよ。「労働者のために頑張るよ」って。言ってましたよね。

ところがなんと就任式、いきなり大金持ちばっかりがいい席にいたんですね。これ、「大富豪のために政治をやるよ」っていう、そういうメッセージをいきなり出して。これがいわゆる寡頭政治と言われている、まあ大金持ちとか貴族だけが国を仕切るという、そんな国になりますよというのを最初にやっちゃったんですよ。

これはもう完全に民主主義の破壊ですよね。で、そこからやり始めたことがまあ次々とすごいんですけども。まあ破壊日記なんでね、破壊がずっと順番に書いてあるんですが。後はですね、国際的な秩序の破壊をしました。それはいくつもあるんですけど。まず隣国カナダに対して「アメリカの51番目の州になれ」とやったんですね。「アメリカの州になった方が得だぞ」って言ったんですよね。

びっくりしますよね。で、それでカナダが「冗談じゃないよ」って断ったら、今度は報復として関税を高くしてやるぞ!っていうことで、報復として関税を使い始めたんですね。で、この関税はカナダだけじゃなくてヨーロッパとか、日本や韓国にもかけていったんですけれども……これ、前代未聞なんですよ。これね、要するに軍事同盟国なんですよ、みんな。アメリカにとっての。仲間なんですよ。仲間だったと思っていたら突然、「お前は俺の言うこと聞かないから関税をかけるぞ」って攻撃してきたんですよ。貿易戦争ですよね。それを仕掛けてきた。

だから、これまでのルールを全部、破ってきたんですね。お隣さんだと思ったら、いきなり壁を壊そうとしてきたみたいな感じですね。で、「お前のカミさんをよこせ」みたいなことを言うわけですよ。とんでもないんですけど。で、グリーンランドに関しても「グリーンランドはアメリカが占領すべきだ」っていうことを言い始めて。グリーンランドはデンマークが支配権を持ってるんですけど、デンマークはNATO(北大西洋条約機構)で、ロシアからアメリカが守るっていう軍事同盟を持っているにも関わらず「お前の国の国土を占領するぞ」と言い始めるというね。もう国際秩序がめちゃくちゃなんですけど。

このトランプがやっている関税攻撃っていうのは、これはひとつ、憲法の破壊でもあるんですよ。っていうのは、関税は本来、大統領の権限じゃないんです。議会、立法府が決めるものなんですよ。で、アメリカって三権分立を最初に作った国なんですね。大統領の権力が暴走しないように議会、国会があって。さらに最高裁判所があって。大統領府は行政なんですけど、行政と立法と司法の三つが互いに互いを監視して、それぞれが暴走しないようにするっていう三権分立システムがあったんですけれども。もういきなりそれを破って、議会の権限である関税をかけたんですよ。

ところが、普通はそれは憲法違反で最高裁判所が止める、無効化するものなんですね。本来はね。「そんなもの、大統領決めちゃいけませんよ」っていうので終わるんですけど……今のアメリカの最高裁はこれを止めないんですよ。なぜかというと、9人いいる最高裁判事がそれを決定するんですが、そのうちの6人がトランプ派、共和党派なんで大統領のやりたい放題にさせるという。で、もちろん立法、議会の方も「関税はうちが決めることですよ」という風に本来は抵抗をするんですけど。やっぱり、今の議会の多数派が共和党なんで「トランプの関税に抗議をしない」という決議をしちゃうんですよ。だから要するに奴隷になりますって宣言をするわけですよ。議会が。

もう一瞬で三権分立が破壊されてしまったんですよ。で、この関税に関して文句を言わないっていうのはこれ、もともと民主党が反対してたんですけど。共和党の議員の中にも反逆者が出てそれが崩壊しまして今、議会は関税に関して抗議してるんですけどね。でも最初の段階では共和党が多数派だったんで抗議しなかったんですよ。で、いきなり憲法を破壊してるんですけども。ここでまた一番トンチキなのが、トランプは「関税でガバガバ儲かるぞ」って言っていたんですよ。ところが、実際に関税を払うのはアメリカの輸入業者と商品の価格に関税分を実際は上乗せされちゃうアメリカの消費者だったんですね。

外国はいくら、関税をかけられたところで一銭も払わないんですよ。だから痛くもかゆくもない。中国とか、痛くもかゆくもないんですね。何もかもめちゃくちゃなんですけど。あと、やっぱり国際的な安全保障の破壊っていう点ではね、いきなりイーロン・マスクが始めた政府効率化省というのがUSAID、アメリカ国際開発庁というのを閉鎖しちゃったんですね。これは実はアフリカとかアジアとか中南米の貧しい国の医療費とか教育費とかを援助するシステムだったんですよ。

で、なぜそれをやったかというと、貧しい国を放っておくと中国とかロシアとかの側がお金を彼らにあげて、そっち側の国になってしまう。そうなると困る。実際に社会主義国がたくさん増えてベトナム戦争みたいなこともあったから、そうなる前にアメリカがお金をいっぱい、貧しい国に援助してアメリカの味方にするという機構だったんですけど。それをいきなりやめちゃったんですね。で、貧しい国がワクチンとか打てなくて困ってるんですけど。さらにWHOっていうワクチンを貧しい国に打つ世界組織からもアメリカは脱退しましたね。

で、アメリカは今、アメリカ国民にすらワクチンを打たないって方向に行ってるんですよ。もうめちゃくちゃです。反ワクチンの人が厚生省のトップになっちゃったんで。ワクチンを打たない方向に行って、それで現在、自分の国民が死んでいくって状態になっています。まあ、挙げていくとキリがないんですけど今現在もそういった形で破壊がどんどん続いている。

で、今一番ひどいのは……この後ろでかかってる曲はブルース・スプリングスティーンさんが歌った『Streets Of Minneapolis』っていう歌なんですけど。これ、ミネソタ州のミネアポリスにICEという移民関税捜査局の執行官という名前の恐ろしい人たちを2000人、3000人と送り込んで移民の取り締まりをやって。それでそれに対して反対した、移民ではないアメリカ市民が2人、射殺されるという事件が起こりました。

(町山智浩)で、ミネソタは実は不法移民が全然いないところなんですよ。そこにいる人たちはラオスから来たモン族という難民の人たちと、アフリカのソマリアから来た難民の人たちなんですけど……彼らはアメリカ市民なんですよ。移民じゃないんですよ、もうすでに。アメリカ国民なんですよ。ではなんで、そこに攻撃を仕掛けたかっていうとミネソタ州はずっと、1回も共和党を勝たせたことがないから。だから圧力をかけていたんですね。こういうデタラメなことをやっていて。数え上げるとキリがないんですよ。あとはベネズエラにも侵攻しましたね。

それからガザの廃墟にリゾート地を作るって言って今、出資者を求めいて。まあとにかく何から何まで破壊して、今はメディアを弾圧してワシントン・ポストをほとんど潰してますから。ワシントン・ポストは従業員の三分の一が解雇となりました。それはジェフ・ベゾスというアマゾンのそのCEOが今、経営してるからですね。トランプにその跪いたベゾスです。

で、この状況で昨日か一昨日、報道があったのは現在、SNSのデータをGOOGLEやメタ、XとかもICEに提出させて、ICEの批判をした人たちを……つまり移民でも何でもないアメリカ市民から僕のようなグリーンカード保持者とか、全てのアメリカに住んでいる人たちのSNSを解析させて、トランプを批判している人たちを監視するということですね。ディストピアSFみたいになっているんですよ。

こんなの、今までになかったことです。特にメディアを徹底的に弾圧するとか、国民1人1人を監視するっていうのは今まで、アメリカはやっていないです。そこまでは。赤狩りの時ですら、反乱で結局、赤狩りが中止になってますんで、ここまではやってないんですよ。

今、だからトランプ自身がそのAI動画とかのデタラメな偽動画とかを自分で拡散してますからね。大統領自身が。もう大統領自身がやってることなんで、どうしたらいいんかと思うんですけど。それで今、とにかくそのSNSのチェックでグリーンカードを取り消すだけじゃなくて、市民権持ってる人の市民権まで剥奪するって言ってる状態なんで。僕、こういうことをやってること自体が非常に危険な状態になってるんですけれども。まあ、この本を出しちゃうから今更言い訳してもしょうがないやという感じで。裸の王様の格好をしてますからね。トランプ、お腹出して。この表紙を突きつけられたら何の言い訳もできないんですが。『裸の王様トランプのアメリカ破壊日記』、今週20日発売なのでぜひ、お買い求めください。はい。

アメリカ流れ者 2026年2月17日放送回

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