町山智浩 『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』を語る

町山智浩 『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』を語る たまむすび

町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中で映画『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』を紹介していました。

(町山智浩)あ、全部告知が終わったら時間がねえや(笑)。今日紹介する映画は『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』!

(町山智浩)はい。これはまあガンズ・アンド・ローゼズの『Welcome To The Jungle』という80年代の名曲なんですけども。この『ジュマンジ』という映画はアメリカで大ヒットしているんですね。これはね、一言でいうと高校生4人がゲームの中に吸い込まれて『Welcome To The Jungle』というジャングルを探検するゲームをやらされるという話なんですよ。ところがその高校生なんですけども、ゲームの中に入るとアバターって言って別のキャラクターになりますよね?

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)それがとんでもないんですよ。その組み合わせが。

(赤江珠緒)あ、自分のままゲームの中に入るんじゃなくて、違うキャラクターになっちゃう?

(町山智浩)ゲームって違うキャラクターを選ぶじゃないですか。で、選ぶ時に名前だけで選んじゃったら、実際になってみたらとんでもないものになっているんですね。

(赤江珠緒)ああー、面白い。うん。

(町山智浩)主人公はゲームオタクの弱虫のいじめられっ子の高校生なんですけども、彼はなんと、筋肉モリモリのたくましいドゥエイン・ジョンソンになっちゃうんですよ。ドゥエイン・ジョンソンって、わかります?

(山里亮太)はい。WWEのザ・ロック。ロック様。

(町山智浩)そう。ロック様ですね。『ワイルド・スピード』とかに出ている筋肉俳優ですけども。これがですね、高校生のいじめられっ子のへなちょこ男の、しかも童貞でキスもしたことがない人が45才の元プロレスラーになっちゃうんですよ。

(赤江珠緒)フフフ(笑)。変わりますね!

(町山智浩)変わるっていうかこれ、ザ・ロックが要するに心は童貞弱虫高校生なんですよ。

(赤江珠緒)はー! ああ、面白い。面白い。

ロック様が童貞弱虫高校生

(町山智浩)あの形で「うーん、僕こわーい」とか言ってるんですよ。そのおかしさ。あとはね、日本ではセルフィーのことは自撮りっていうのか。自撮りばっかりしてインスタとかやっているメイクとかコスメとかファッションとかそんなことしか興味がない、自分の見栄えしか興味のないインスタJKが何になるか?っていうと、ジャック・ブラックという50近いデブの中年オヤジになるんですよ。

(赤江珠緒)フフフ(笑)。ほう!

(町山智浩)ゲームの中でね。それはジャック・ブラックが50近くのオヤジなんですけどJKの心で演じます。「うーん、いやーん」とか言いながらやっています。で、あとはセクシー美女にゲームの中になっちゃう人。『トゥームレイダー』のララ・クロフトみたいなおへそを出してホットパンツを穿いているムチムチセクシー美女になっちゃうのはクラスで誰も友達がいなくていつも隅っこにいて本当に暗い暗い女の子がそういうムチムチ美女になっちゃうんですよ。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)あと、主人公の幼馴染なんだけどもいまはスポーツマンで学校中の人気者になっているフットボールの選手は身長162センチの貧弱な貧弱な男になっちゃうんですよ。これはケビン・ハートという俳優さんでザ・ロック、ドゥエイン・ジョンソンといっつもコンビでコメディーにいっぱい出ている人なんですけども。で、この全然違う人になってゲームの中でゲームをクリアしないと現実に帰れない。だけじゃなくて、死んじゃうかもしれないっていう話が『ジュマンジ』なんですね。

(赤江珠緒)じゃあ見た目と心がバラバラになるわけね。みんなね。

(町山智浩)バラバラになるんですよ。でね、これがアメリカでものすごいヒットしているのはなぜか? と言いますと、これはね、元の映画があるんですよ。伝説的な映画で1985年の『ブレックファスト・クラブ』っていう映画があるんですよ。

元ネタは『ブレックファスト・クラブ』

ブレックファスト・クラブ (字幕版)
Posted at 2018.4.3
ジョン・ヒューズ, ジョン・ヒューズ, ネッド・ターネン

(赤江珠緒)はい。

(町山智浩)これは居残りをさせられた高校生たちの話なんですけども。スポーツマンの人気者の男の子と、みんなにチヤホヤされている金持ちのお嬢さんと、友達が誰もいない暗い女の子と、いじめられっ子の貧弱な体のちっちゃい男の子と、みんなに嫌われている札付きの不良の男の子という5人が居残りを高校でさせられるんですね。問題を起こして。

(赤江珠緒)うんうん。

(町山智浩)で、彼らがその1ヶ所に集まってはじめて話をするんですよ。アメリカの高校っていうのはクラスがないだけじゃなくて、高校までずーっと中学から上にあがっちゃうんで。日本の高校みたいに偏差値でわけられないんですね。だからあらゆる地元の人が全員1ヶ所の高校に来ちゃうんですよ。だから高校の中で完全にグループがわかれて、グループ同士は話し合いを一切しないんですよ。

(赤江珠緒)ああ、そういう感じなんだ。

(町山智浩)そう。スポーツマンのグループとオタクのグループとは全く話をしないんですよ。

(赤江珠緒)相容れないんですか。なかなか。

(町山智浩)全く接触をしないんですよ。で、もちろんきれいでちょっとセクシーな女の子たちと暗いオタク系の女の子たちはもう4年――アメリカは高校が4年あるんですけど――4年間いて一言もしゃべらないっていう世界なんですよ。

(赤江珠緒)ぱっきりと分かれちゃっているんですね。

(町山智浩)はっきり分かれているんです。それが1ヶ所に居残りで集められた状態ではじめて互いの苦しみとか痛みとか、それをわかり合っていくというのが『ブレックファスト・クラブ』なんですね。で、これがすごく伝説的な映画になっているんですけど、それをゲームの世界でやったのがこの『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』なんですよ。

(赤江珠緒)うん。

(町山智浩)だからね、すごくバカ映画のように思うでしょう?

(赤江珠緒)たしかに何も考えずに見れるかなと思いましたけども。

(町山智浩)でもね、すっごく深いんですよ。そういう意味で。よくできた映画なんですよ。そういう点で。で、ロック様、ドゥエイン・ジョンソンも言っているんですけど、「自分も実は高校生の時、うつ病だった」と。ただ、筋肉モリモリのスポーツマンだからそれを隠していたらしいんですね。そういう風に人は見た目じゃないんだということがよくわかる映画になっているんですよ。

(赤江珠緒)ふーん!

(山里亮太)そういうメッセージが込められているんだ。

(町山智浩)そうなんです。だからスポーツマンでいままで威張り散らしていた男ははじめてそこで体が弱くなって、体が弱い人の立場がわかるんですね。で、逆にすごい筋肉モリモリのドゥエイン・ジョンソンになっても心が弱ければ何もならないってこともわかるんですよ。だからすごくよくできた映画で、見た目ばっかり気にしているJKはジャック・ブラック、中年オヤジになることで人は見た目じゃないんだっていうことがわかるんですよ。

(赤江珠緒)ふーん!

(町山智浩)あと、チンコができちゃうんでおしっこする時にチンコをどういじったらいいか?っていうことも勉強しますね。

(赤江珠緒)なるほど。でも大事なことですよね。自分と同じじゃないこととか、同じタイプじゃないものを理解するってなかなか難しいけど、変わっちゃうことで自ずとそういう風になるんですね。

(町山智浩)その通りなんですよ。映画っていうものはやっぱり自分以外の人の人生の中に入っていくという意味があるんですよね。だからね、これは意外とバカ映画かと思ったら、最後はちょっと泣きました。

(赤江珠緒)へー!

(町山智浩)それで、俺も実はこうやって55才の中年男だと思っているけど、これはゲームにすぎないんだとも思いましたね。

(赤江珠緒)いやいや……(笑)。あ、さっきの本の表紙のような美少女だと(笑)。

(町山智浩)そうそうそう。本当は広瀬すずなんだなと思いましたね。

(赤江珠緒)アハハハハハッ! イメージはどういう風に持っていただいてもね、いいですよね。

(町山智浩)はい。俺の正体は。早くこのゲームをクリアしてここから脱出しようと思います。

(山里亮太)脱出したら会いましょうね、すずちゃん!

(町山智浩)はい。山ちゃんも脱出するといいですよ。このゲーム。これ、ゲームですから。

(山里亮太)俺もやっぱり中にすっごいきれいな子がいると思うんだよ。

(赤江珠緒)わかりました(笑)。はい、ありがとうございます。今日は映画『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』をご紹介いただきました。日本では4月6日から公開です。町山さん、ありがとうございました!

(町山智浩)どもでした。

翌週の感想トーク

放送の翌週、山里亮太さんと町山智浩さんが感想トークをしていました。

(山里亮太)町山さん、『ジュマンジ』をさっそく見に行きまして。面白かったですよ。ちょっと泣けちゃったし。僕、最後の方。

(町山智浩)そう!

(赤江珠緒)先週のね、同級生たちがみんなゲームに入り込んじゃうっていう。

(山里亮太)面白かった。あれ、本当にいい映画でしたね。なんかワチャワチャしているだけかな思ったら、めちゃくちゃいい映画でした。

(町山智浩)でもね、ジャック・ブラックが、50の中年男の女子高生演技とか面白かったですね。

(山里亮太)いや、面白かった。笑っちゃいますね。

(町山智浩)「いやん、こんなの……」みたいなね。

(山里亮太)あと、町山さんがおっしゃっていたロック様の童貞シーンね。

(町山智浩)そう(笑)。ドウェイン・ジョンソン45才がキスもしたことがない童貞高校生を演じるとかね。めちゃくちゃ面白い。

(赤江珠緒)別人格になっちゃう。ゲームの話だからね。

(山里亮太)でも、ストーリー的にも普通に最後、めちゃくちゃ面白い。

(赤江珠緒)先週ご紹介いただいて。

(山里亮太)ありがとうございます。

<書き起こしおわり>

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