映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』で、アメリカで人気のドッキリTV番組『あなたならどうする?(What would you do?)』を紹介していました。
(赤江珠緒)それでは今日の本題、お願いします。
(町山智浩)はい。今日はですね、この曲を聞いてください。
(町山智浩)これ、いしだあゆみさんの名曲ですね。『あなたならどうする』。この頃のいしだあゆみさんってものすごいキレイですよ!
(山里亮太)たしかに。懐かしの映像とかで見ると、キレイですよ!
(町山智浩)この世のものとは思えないぐらいキレイなんです。見てもらうと。十分使えますから。いまでも。はい、なんのことかわからないですけど(笑)。あなたならどうする、ですけど。これ、アメリカのテレビ番組で2007年ぐらいから続いている番組で、これすごく面白いんで。日本でも、字幕をアマチュアの人たちがつけてYouTubeに上げたりしてるぐらい面白い番組なんですね。
(赤江・山里)へー。
(町山智浩)ABCテレビで始まったんですけども。これについてちょっと紹介したいんですけども。これ、いわゆるドッキリテレビ、ドッキリカメラか。なんですけども。たとえば、レストランにカップルが行くわけですよ。で、たまたまその番組でやったのは、ハゲのおっさんとメガネをかけた知的なインテリっていう感じの彼女とのカップルが入っていくと、もうエロエロのウェイトレスが来るんですね!
(赤江珠緒)ほうほうほう。
(町山智浩)もうプリンプリンのが来てですね。匂うようにエロいのが来てですね。カップルの彼氏のハゲチャビンの方にですね、『あら、素敵な旦那さんね。奥さん、貴女がうらやましいわ』って言いながら『いい男だからサービスしちゃう!』って言って、やたらサービスするんですよ。そのウェイトレスが。
(山里亮太)ほうほう。
(町山智浩)で、オーダーをとった後も、やたら触るんですよ。『じゃ、またね』って言いながら彼の方を触るんですよ。ボディタッチがやたらと入るんですよ。で、メニューの注文を聞く時も、顔を近づけて匂いがするような、髪の毛が彼氏の鼻の下に触れるような感じで近くに・・・
(赤江珠緒)描写が素晴らしいですね、町山さん!
(町山智浩)いえいえいえ(笑)。クンクン匂いを嗅いじゃうような感じで。そうするとね、彼女の方がね、『おかしいじゃないの、あの女』っていう話になるわけですよ。それまで、すごく清楚な感じの人なんですけど。『ちょっと、あの女おかしいんじゃないの?あなたのこと、知ってるんじゃないの?』って話になるんですよ。
(赤江・山里)はー!
(町山智浩)で、最後の方とか、『私、殺すわ!』とか言ってるんですよ(笑)。
(赤江・山里)ええーっ!?
(町山智浩)で、そこに野呂圭介が入ってくるわけですね。『ドッキリでした!』って赤ヘルメットして。この番組では、全部ジョン・キニョネス(John Quiñones)っていうメキシコ系のタレントの人が入ってくるんですけども。ドッキリでした!って来てですね。みんな、あーあ・・・っていう感じなんですけど。そういう番組なんですけど、それだけだったら普通のドッキリじゃないですか。
(山里亮太)結構ど定番ですよね。日本でも昔からある。
(町山智浩)そうなんですよ。ただね、この番組はこれだけ続いているのは、そういうことから、無邪気な話ですね。いまの話はね。そうじゃないところに持っていくんですよ。いまはもう、結構ハードな内容になってですね。たとえば、あるボランティア系の仕事の募集広告があって、それに働きたいってことで来た人が受付に来るんですね。そしたら受付の人が『これからやってもらう仕事に関係があることなんで、ちょっとこの話を聞いてください』って言ってですね。新約聖書に出てくる『善きサマリア人』っていう部分を読むんですね。
(赤江珠緒)ええ。
(町山智浩)で、これはキリストが話した話なんですけども。あるユダヤ人がですね、旅の途中で強盗にあってですね、持ち物や服を全部奪われただけじゃなくて、大怪我させられて、途中で道で倒れてたんですよ。ところが、そこを通りかかったユダヤ人たちが、仲間のユダヤ人であるにもかかわらず、それを無視して通り過ぎたと。かかわりになりたくないってことで。ところがそこで倒れているユダヤ人を助けて、服をあげて手当をしてお金までくれた人がいたと。その人は実はサマリア人っていうですね、ユダヤ人から異教徒として迫害されていた人だったんですね。
(赤江・山里)うんうん。
(町山智浩)で、その話をキリストがしましたと。そういう話を聞かされた後にですね、『第二面接はこの通りをずっと歩いて、公園を越えた向こう側のところでやるから。そこに急いでください』って言うんですね。受付の人が。すると、面接を受けに来た人が公園を歩いていると、道端にですね、ホームレスの人が泣いてるんですよ。地面に座り込んで。裸足で服ボロボロで。『ウウーッ!』って泣いてるんですよ。そうすると、その面接を受けに来た人はどうするか?っていう。あなたならどうする?なんですよ。それが。
(赤江珠緒)ええっ?
(山里亮太)深い。ドッキリのテーマが。
(町山智浩)そう。で、実験結果は8割が通りすぎるんですよ。
(山里亮太)ええっ?直前に聞いたのに?あの話を。
(町山智浩)直前に、そのサマリア人の話を聞いたのに!聞いたのに、通りすぎるんですよ。8割が。
(赤江珠緒)すぐ行動できるか?っていうとね。
(町山智浩)はい。で、見ていてすごく嫌なのは、なんか読んでいるふりをするんですね。
(山里亮太)見て見ぬふりだ。
(町山智浩)見て見ぬふり。あとね、便利なのはかかっていない携帯をかけているふりするっていう。これ、携帯ってなんかすごく嫌なものですね!
(山里亮太)たしかに、それは使っちゃうんだよなー。なんか。
(町山智浩)使っちゃう人がいるんですよね。
(赤江珠緒)じゃあ、どっかで後ろめたいっていう気持ちもあるんですかね。
(町山智浩)あるんでしょうね。で、通りすぎていくっていう。そういうのを繰り返していくね、番組で。これ、怖いのは普通ドッキリだと、要するになにもしなかった人っていうのは番組の中ではカットされるじゃないですか。これは、なにもしなかった人自体がいちばん問題なんですよ。
(赤江・山里)うわー・・・
見て見ぬふり、なにもしない人たち
(町山智浩)これは強烈でね。たとえばスーパーマーケットで袋詰めをしている・・・アメリカは袋詰めやってくれる人っていうのがいるんですね。日本と違って。袋詰めをやってくれている人が、いわゆるダウン症の男の子がやってるんですよ。で、それに対しておばさんが『モタモタやってるんじゃないわよ!この能なし!』とか言うんですよ。で、このおばさんは俳優なんですよ。そのダウン症の店員っていうのも俳優なんですよ。プロの。で、そういう芝居を演じてるんですけど、それを見て、やっぱりなにも言わないですね。レジに並んでいる人とかは。
(山里亮太)なるほどなー。
(町山智浩)黙って通りすぎていくんですけど。これ、怖いのは黙って通って出たところにキニョネスさんが待っているんですよ。
(赤江・山里)うわー!
(町山智浩)『いま、中であったことにあなた、黙っていましたね?』って言うんですよ(笑)。
(山里亮太)いや、ちょっと待って。それは・・・
(町山智浩)きっつー!
(赤江珠緒)これは突きつけられますね。
(山里亮太)人間を試されるドッキリなんだ。
(町山智浩)そう。『なぜ黙っていたんですか?』って言うんですよ。これは怖いですよ。で、あと逆のパターンもあって。反応が悪い方にいく場合もかなりあるんですよね。たとえば、アメリカってコンビニのレジで働いている人っていうのは、インド系とかアラブ系の人が多いんですよ。昔、韓国系の人が多かったんですけど、売っぱらったんですね。インド系やアラブ系の人たちにコンビニの権利を。で、そこに『愛国者』とかいう服を着たアメリカ人の客が来てですね、『お前、イスラム人だろ?イスラム教徒だろ?』とか言うんですよ。
(赤江・山里)ふん。
(町山智浩)『テロリストだろ!出てけ!』とか言うんですよ。で、それ、芝居なんですよ。レジの人も、外国人排斥運動をしている人も芝居なんですけども。その時に、レジの周りにいた人たち、そのコンビニにいた人たちはどういう態度を取るか?を見ているんですけど。まあ、ほとんどは黙っているんですが・・・中には『その通りだ!』ってヤツがいるんですよ。
(赤江珠緒)えっ?
(山里亮太)乗っかってくるんですか?
(町山智浩)『その通りだよ!』って。で、それにも聞きにいくんですね。『いまドッキリなんですけど、あなた、その通りだ!って言いましたね?』って。
(山里亮太)うわっ、きっつー!
(町山智浩)『彼らはアラブ人だけれども、イスラム教徒だけども、アメリカで働こうとしているのに出て行った方がいいと思うんですか?』とかって聞くんですけども。その場合はモザイクになっていますね。『そう思うよ!』って言っている顔は。要するに放送を許可しないんですよ。彼は。
(赤江珠緒)まあ、そりゃあそうでしょうね。