安住紳一郎 天草ちゃんぽんの旅を語る

安住紳一郎 天草ちゃんぽんの旅を語る 安住紳一郎の日曜天国

安住紳一郎さんが2008年6月にTBSラジオ『日曜天国』の中で話したトークの書き起こし。以前、番組で「ちゃんぽんはなぜ群れるのか?」という話をし、ちゃんぽんへの愛を語っていた安住さんが、日本三大ちゃんぽんのひとつ、天草ちゃんぽんを求めて天草諸島を旅した際の模様を話していました。

(安住紳一郎)最近、私はですね、実はこの間休暇を取りましてですね。

(中澤有美子)ああ、そうでしたか。

(安住紳一郎)ええ。ちょっと勤め先に無理を言いまして。休日をいただき、熊本県の天草諸島にちょっと行ってきたんですけれども。なぜ休暇を取ってまで、天草諸島に行かねばならないのか? 「『日天』少し長いこと聞いてますよ」という方がいましたら、もしかすると想像してくださっているかもしれませんが……中澤さんはお分かりになりますか?

(中澤有美子)ええと、ちゃんぽんかな?

(安住紳一郎)うん?

(中澤有美子)ちゃんぽんを食べに行った?

(安住紳一郎)「天草ちゃんぽんを食べに行った」……正解です!

(中澤有美子)あ、すいません。正解しちゃった(笑)。

(安住紳一郎)いえいえ。天草ちゃんぽんというものがありまして。これは今年の3月にたしかちゃんぽんの話をずっとさせていただ時に、出てきたと思うんですけれども。何故にその天草ちゃんぽんにそこまで情熱をかけるかは、ちょっと時間がないので今日は放送内容を端折らせていただきますが。まあ、3月16日の大体10時13分頃の放送聞き直してみてください。

ちゃんぽんはなぜ群れるのか?

安住紳一郎が語る ちゃんぽんの町・飛び地の謎
安住紳一郎さんが2008年3月にTBSラジオ『安住紳一郎の日曜天国』で話したトークの書き起こし。ちゃんぽんが気になる安住さんが、ちゃんぽん店がたくさんある町が飛び地化する謎について語っています。 (安住紳一郎)さて、暗い話ついでにもうひとつ...

(中澤有美子)フフフ(笑)。はい、そうですね(笑)。

(安住紳一郎)ちょっとね、最近あまり番組の冒頭、時間がないので詳しく丁寧に説明できないのが名残惜しいのですが、とにかく天草ちゃんぽんというものが私の人生にとって大変に大事だということだけはお伝えしたいと思います。

(中澤有美子)ちゃんぽん研究をね、すごくなさってらして。

(安住紳一郎)あ、あんまりそんな簡単に語らないで。

(中澤有美子)あ、ごめんなさい(笑)。

(安住紳一郎)いろいろと歴史的な事実とか、そういうものを踏まえて天草ちゃんぽんがいかに私にとって大事なのかということを、あんまり軽々しくは言ってほしくない。

(中澤有美子)あ、すいません。一言で言っちゃいけないんだ。聞いてください、みなさま(笑)。

(安住紳一郎)わざわざ特別に休暇を取ってまで食べに行くという。

(中澤有美子)アハハハハッ! すっごい情熱です!

(安住紳一郎)会社に出した特別休暇申請書。取得理由「ちゃんぽんの為」と書いて私は休暇を取りました。「ちゃんぽんの為に休暇が必要なんだ」ということなんですが。天草諸島は熊本県にあるんですけども。そこの離島と言うか、いまは陸続きになってるんですが。人口が10万人に届かないぐらい。9万人ぐらいの小さな天草市なんですけれども、ちゃんぽん好きなら長崎を抑えた後は天草を抑えたいというのは定石なんですけれども。人口わずか9万人のところに、この人口でなんと120店舗のちゃんぽん屋があるんですよね。

(中澤有美子)フフフ(笑)。

(安住紳一郎)この事実、驚きませんか?

(中澤有美子)すごいことですよね。おおっ!

(安住紳一郎)感覚的に言うと、狛江市はたぶん人口7、8万人ですから。東京都狛江市に120店ものちゃんぽん屋がひしめいてると考えたら、すごいことですよね。

(中澤有美子)そうですね(笑)。

(安住紳一郎)本当にまあ、失礼な話人口10万人ぐらいの街にちゃんぽん屋がひしめいているということなんですが。どうしても天草ちゃんぽんを……「日本三大ちゃんぽん」と呼ばれているんですけれども。長崎ちゃんぽん、小浜ちゃんぽん、天草ちゃんぽんなんですが。これをどうしても食べたいと思いまして、休暇を取ってちょっと行ってきたんですけども。もう、この日のために前の日のお昼ご飯と夜ご飯を抜いて、行ってるんですよ。

(中澤有美子)アハハハハッ!

(安住紳一郎)昔の広島東洋カープの古葉監督もね、「徹底してやらなければ意味がない」という風におっしゃってましたが。私も徹底してですね、前の日のお昼ご飯と夜ご飯を抜いて、天草ちゃんぽん食べに行くという。で、1日しか休暇はありませんから。朝、始発の飛行機に8時ぐらいに乗りますと、向こうに13時(午後1時)ぐらいに着くんですよね。なので、遅めの昼。それから夕食の前。それから夕食。この3食を食べて、天草ちゃんぽんを制してこようと思いましてですね、準備をして行ったわけなんですが。

(中澤有美子)そうなんですね!

(安住紳一郎)もう機内サービス、一切口にせず!

(中澤有美子)アハハハハッ! お断り!

(安住紳一郎)お断り! 「いらない、いらない!」。

(中澤有美子)じゃあ、水分だけで我慢して?

(安住紳一郎)水分も摂っていない!

(中澤有美子)アハハハハッ! 暑いのに……(笑)。

(安住紳一郎)チキンスープも飲まなかった。いつもは3杯も飲むのに。コンソメスープも飲まなかった。普段、フライトアテンダンツがどれだけ美人なのか、はたまたそれほど美人でないのかを確認しないと、おちおち眠ってもいられない私ですが。

(中澤有美子)フハハハハッ!

(安住紳一郎)そんなこともお構いなし。もう事前にインターネットで調べた天草諸島120店舗のちゃんぽん店一覧表を眺ながら、心を馳せてるわけであります。熊本エアポートに着き、そこから陸路に車で3時間ぐらい。熊本市を通り、宇土半島を抜け、そして1車線の細い橋を5つぐらい渡りますと天草諸島にたどり着くわけですが。もう刻一刻を争う!

(中澤有美子)へー! それは、レンタカー?

(安住紳一郎)ヴィッツですね! わナンバーのヴィッツ! ギシギシいわせて行きました!

(中澤有美子)アハハハハッ! ギシギシ(笑)。

刻一刻を争う

(安住紳一郎)ギシギシいわせて行きました。法定速度ギリギリでございます。信号が長いと見るや、角にあるコンビニエンスストアの駐車場に入り、そして反対側の駐車場の出口から抜け、青信号を行くという……。

(中澤有美子)アハハハハッ!

(安住紳一郎)あまりマナー的にはおすすめできない行き方ですけども。

(中澤有美子)しかも大して稼げるとも思えません(笑)。

(安住紳一郎)大して稼げるとも思えないんですが。途中に通る熊本市の熊本城……私、お城マニアでもありますから。いちばん好きな熊本城を右手に見ながら、それでも「加藤清正、ごめんね!」と言いながら。「今日は、見られないの」って。天草四郎博物館もすり抜けまして、天草四郎に行ってまいりましたよ。本当にちゃんぽんが好きなので、全然苦ではないんですけども。でも、平日の昼間ということもありまして、車が少し渋滞していた。また、慣れない道を行っていたということもありまして、予想以上に時間がかかりまして。午後8時に熊本空港から東京行きの飛行機が出るんですが、どうもその時間と競争になってしまうので、最初は「3店舗ぐらい食べられたらいいな」と思って出発したんですけども、どうも天草諸島に入るうちに、これはちょっと3店舗食べるのは無理だなという風に思いまして。

(中澤有美子)ええ。

(安住紳一郎)これはきちんと行きたいところ1店舗に行った方がいいんじゃないかなという結論に、ちょうど三角駅のあたりで達しまして。

(中澤有美子)三角駅?

(安住紳一郎)そういったところが途中にあるんですけども。そういう結論に達しまして。天草ちゃんぽんを目指すちゃんぽん好きにとっては特別な存在と言われる、天草諸島の苓北町というところにあります
明月(めいげつ)というちゃんぽん屋さんがあるんですが。ここ一軒だけにしようという風に考えましてですね。またその明月がある苓北町が天草諸島でも一番にありまして。渋滞くぐり抜けた中でも、さらにそこから……「本渡」という天草諸島の中心地があるんですけど、本渡からさらに1時間かかってしまうという。ちょっと離れたところにありまして。鶏ガラスープ、醤油味。自家製麺。もう端の端ですね。いちばん端。地図で言うと熊本県の左に天草諸島があって、その天草諸島の一番左端。大袈裟に言うと一番上海寄り!

(中澤有美子)そうですね(笑)。そういうことですね(笑)。

(安住紳一郎)いちばん上海寄りにある明月という……。

(中澤有美子)島々を橋を渡って奥の方に行くということですか?

(安住紳一郎)そうそう。橋を渡って、島々を行くんですけども。昔はね、渡船(渡し船)だったみたいですけど、いまは橋が出来ているんでこう、行くんですよ。西へ西へね。天竺を目指す西遊記一行のようにですよ、もうとにかく西だと。

(中澤有美子)アハハハハッ! はい(笑)。脇目もふらずに。

(安住紳一郎)ねえ。「中国から伝わってきたちゃんぽんを目指すのに、西に行くのは間違いない!」ということで、その明月に向かって行くわけですよ。道がどんどん細くなっていって、本当にあるのかな?っていう感じなんですけども。

(中澤有美子)へー!

(安住紳一郎)本当にいちばん天草諸島の端なんで、本当に人通りとかほとんどない。コンビニエンスストアもないような所に忽然と明月はあるんですよ。カーナビにちょっとなんとなく住所を打ち込んだんですけども、「目的地周辺です」って言ってから10分ぐらい探してもなかなか見つからない、みたいな!

(中澤有美子)アハハハハッ!

120年の歴史を持つ名店・明月

(安住紳一郎)広いなっていうか、ものがないな!っていう感じのところなんですけども。120年近い伝統があると言われてる明月なんですけども。ご当地ラーメンブームの比じゃないですよね。ちゃんぽんで120年の歴史があるんですよ。

(中澤有美子)そうですか!

(安住紳一郎)そんな町外れに。なんとか、そこにたどり着きまして。もう午後3時30分を回ってるですよ。もう私はその前の昼・夜。そして朝。で、昼を抜いてますから。目が血走っちゃって。

(中澤有美子)アハハハハッ!

(安住紳一郎)この高揚感はちゃんぽんに対する興奮なのか、お腹が空いてる興奮なのかよくわかんなくなっちゃって。もうわナンバーのヴィッツもギシギシいっているわけですよ!

(中澤有美子)アハハハハッ!

(安住紳一郎)で、なんとか、苓北町……本当に行き止まり。目の前には海が広がっているわけですよ。その向こうは中国大陸ですよ。かなり距離はありますけどもね。で、探しに探したら、あったんですよ。看板もない、本当に軒が低い、間口が横に長い、ガラスの入った引き戸が3、4枚横に連なってるような、木造作りで。なんとなく昔ながらの呉服屋さんみたいな風情のちゃんぽん屋さん。もう本当、ちゃんぽん屋とは思えない感じなんですけども。

(中澤有美子)看板もないんだ。

(安住紳一郎)看板、ないんですよ。それで、午後5時までやってるっていう風にインターネットでは事前に調べておきましたので。「よし! 間に合った。これでようやく天草ちゃんぽんを食べられるな!」と思ってんですね、勢いいさんでその間口に近づいたら、私の後ろの細い路地を自転車が通りましてですね。私の背後を左から右に通ったんですけれどもですね。「チリンチリン!」なんて鳴らして50、60ぐらいの威勢のいい、たぶん漁業関係者のおじさんだと思うんですけどね。一言私にメッセージを残すわけですよ。

(中澤有美子)はい。

(安住紳一郎)「今日は終わったよー!」(笑)。

(中澤有美子)嘘!?

(安住紳一郎)逃げる自転車を慌てて止めましてですね。「定休日も違うし、午後5時までやってるって聞いてるんですけど、なんでやたいんですか?」と。そしたらそのおじさんは言いました。「やってる時はやってるんだけど、やってない時はやってないんだよね」(笑)。

(中澤有美子)フフフ(笑)。まあ!

(安住紳一郎)なんとも理屈が通ったような通らないような、そんな一言を残しておじさんは去っていくわけです。まあ非常にのどかな街なので、お客さんがいないと思ったら店を早めに閉めるということらしいんですけれどもね。飛行機で2時間。それから車で5時間ですね。熊本城の誘惑、天草四郎博物館の誘惑をものともせず、ヴィッツを西に西に走らせた私なんですけども、そこで待っていたのは不運な出会いだったということなんですね。

(中澤有美子)ちょっと事実を受け入れるまでに時間がかかりそうですよね。

(安住紳一郎)そうですよね。私はちょっと、海の埠頭に立ちまして、マイルドセブンをくゆらせましたよ。「……食べたかったな」なんて言いながらね(笑)。

(中澤有美子)アハハハハッ! 泣けてくる……。

(安住紳一郎)そんな落ち込む私に、胃袋はささやくわけです。「どこでもいいよ」って(笑)。

(中澤有美子)アハハハハッ! フハハハハッ!

「どこでもいいよ」(胃袋)

(安住紳一郎)本っ当にお腹がすいていたんで、どこでもよかったんですけども。すると後ろに「食事処」というところがありまして。まあ確かに便利な感じのよろずメニューが揃ってる感じの定食屋さん、食事処ですね。カツ丼あり、オムライスあり、ラーメンありの、まあそういうような食堂なんですけども。そこの食堂に入ってみます。するとね、やっぱり天草諸島はすごいですね。まったく「ちゃんぽん」とかいう看板を掲げてなくても、食堂に入ると普通に「ちゃんぽん」がメニューの中にあるという。

(中澤有美子)ええ、ええ。

(安住紳一郎)たしかにちょっとね、期待感が薄れているところではありますけども、せっかく来たんだからということで、そちらの食事処でもちゃんぽんを頼むわけなんですけども。でも結構ね、しっかりしたちゃんぽんが。そんな期待もしていなかったというギャップもありですね、なかなかいい、質量とものちゃんぽんが550円で出てまいりました。

(中澤有美子)ああ、そうですか。

(安住紳一郎)ええ。いやー、やっぱり天草諸島はすごいなと思いましたね。軽く○ンガーハットは超えてましたよ!

(中澤有美子)「○ンガーハット」(笑)。

(安住紳一郎)○ンガーハット並は出ていましたよ。ええ。いや、やっぱりすごいなと思いましたね。まあ決してきれいなというほどではないんですが、まあ清潔感あふれる小ぎれいな感じの食事処なんですが。ちょうど私の右斜め前の方、テーブル席の方に老夫婦が座っておりまして。70、80ぐらいになろうかという老夫婦なんですが。その2人もちゃんぽんを仲良く食べておりまして。地元の方なんですけどね。それで私にも先に、その老夫婦が入っていたので。そのご夫婦の方が早めにちゃんぽんが出てきたんですけども、その老夫婦はですね、食べる前に私に、「じゃあ、お兄ちゃん。お先に」って言って食べるとという。非常にのどかな感じで。「うん、うん」と思って。私が探していた天草諸島というのはこういう雰囲気なんだ!って思いながら、心があたたまるような感じでしたけど。
(中澤有美子)そうですねー!

(安住紳一郎)で、結構老夫婦なんですけど、なかなか食べるスピードは早くて。私が食べてる途中に、お帰りになるんですけども。お会計をせずに出ていってしまうというですね。そういう、結局何ですか? 地元に溶け込んでいるのでツケがきくちゃんぽん屋みたいな。なんかこう、こういうのどかな土地で育まれたんだなと思い。

(中澤有美子)ちゃんぽんは。

(安住紳一郎)天草ちゃんぽんに対する恋心を新たにした34才、係長なのでした。

(中澤有美子)フハハハハッ! そうでしたかー! ねえ。渇ききった胃に染み渡ったことでしょうね。

(安住紳一郎)染み渡りましたね。まあ、天草ちゃんぽんがなぜそんなに私の心を熱くさせるのか? というのはぜひ、以前の放送を聞いていただきたいんですけども。ポッドキャストをお持ちの方は(2008年)3月16日ですね。繰り返しになりますが。10時13分ぐらいから30分ぐらいにかけて、天草ちゃんぽんとはいかなるものか? というのを延々と語っておりますので、ここを聞いていただきたいという風に思います。

(中澤有美子)そうですね。

(安住紳一郎)ここで簡単に繰り返すことはできるんですけども、ちょっとあまりにも軽々しくは口にしたくない!

(中澤有美子)アハハハハッ! そうですね(笑)。愛が深すぎて。はい。

安住紳一郎が語る ちゃんぽんの町・飛び地の謎
安住紳一郎さんが2008年3月にTBSラジオ『安住紳一郎の日曜天国』で話したトークの書き起こし。ちゃんぽんが気になる安住さんが、ちゃんぽん店がたくさんある町が飛び地化する謎について語っています。 (安住紳一郎)さて、暗い話ついでにもうひとつ...

(安住紳一郎)フフフ(笑)。ねえ。なかなか上手くいかないなということもありますけども。

(中澤有美子)じゃあ本当にその一食だけでお帰りに? またギシギシと運転なさって?

(安住紳一郎)はい。

(中澤有美子)帰ってきた係長。

(安住紳一郎)帰ってきました。帰り、真っ暗でしたね。コガネムシがバチバチバチバチ、フロントガラスに当ってましたけども。

(中澤有美子)ぶつかりましたか(笑)。

<書き起こしおわり>

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