安住紳一郎と大山顕 2018年マンションポエムの浸透と進化を語る

安住紳一郎と大山顕 2018年マンションポエムの浸透と進化を語る 安住紳一郎の日曜天国

ライターの大山顕さんがTBSラジオ『安住紳一郎の日曜天国』にゲスト出演。安住紳一郎さんと2018年現在のマンションポエムの浸透と進化、そして生じている問題について話していました。

(安住紳一郎)さて、それから大山顕さんと言いますと、マンションポエムの活動が盛んですが。マンションポエムは「洗練空間に住む」とか「上質な暮らしをあなたに」など、情緒あふれる独特の文体が面白くて。それを「マンションポエム」と大山さんが呼んだところ市民権を得たという(笑)。

(大山顕)なんかね、この前電車に乗っていたら、前に座っていた人が「あのマンションポエムがさ……」って言っていて。「定着しちゃったな」と思って。ちょっと責任を感じております。

(安住紳一郎)フハハハハッ! マンションポエム……いわゆる分譲マンションなどの広告コピーですけども。私も、なんでしたっけ? 前に大山さんに教えてもらった「人生に南麻布という贈り物」っていう(笑)。

(大山顕)はい! すごい贈り物を贈ってきたなっていう感じですよね。「南麻布という贈り物」と。あれはね、かなりの傑作だと思いますけども。

(安住紳一郎)いいですよね(笑)。

(中澤有美子)いいですよねー。本当、いいです。

(安住紳一郎)「洗練の高台に上質がそびえる」(笑)。

(大山顕)いいですね。これはザ・マンションポエムっていう感じで。すっごくいいですね。

(中澤有美子)すんなり入ってくる。もう(笑)。

(大山顕)あ、すんなり入ってきちゃいますか? そう。僕、問題だと思うんですよ。みんなね、もうマンションポエムずれしちゃって。「洗練の高台に上質がそびえる」ぐらいじゃあ驚かなくなっているじゃないですか。カタギのみなさんが。

(中澤有美子)フフフ(笑)。

(大山顕)これはね、僕は問題だと思うんですよね。

(安住紳一郎)そうですよね。ちゃんとみなさん、人生で一度の大きなお買い物をする……。

(大山顕)そう。あのテンションをね。なのが、もう慣れちゃったんですよ、みんな。あとはさ、どんどんエスカレートしていくしかないじゃないですか。現にエスカレートしていっているわけですが。

ポエムに慣れて、エスカレートする

(安住紳一郎)そうですね。ちょっとなんか、もっとおどろおどろしいのじゃないと満足しないみたいな。

(大山顕)そうそう。あれはちょっと問題だと思いますね。

(安住紳一郎)「もっとほしい! もっとほしい!」なんてね。

(大山顕)どんどんアルコール度数が高まっていくみたいな感じになっちゃってね。

(中澤有美子)そうですね。ちょっと中毒ですね。

(安住紳一郎)あとは前もお話しいただきましたけど、一応不動産のチラシなので、あまり無理や嘘を言ってはいけないというコンプライアンスがあって。

(大山顕)そうなんです。「日本一」とか「○○が最高である」とか、そういうのは広告のルール上、言ってはいけないことになっているので。それを巧みに避けつつ、でもここはいかに素晴らしいかということを追求していった結果、ポエム調になるという、そういうものですね。

(安住紳一郎)そこで傑作が、セイガステージ仙川の「そこは成城でもなく仙川でもない。そして成城でもあり仙川でもある」。

(中澤有美子)フハハハハッ!

(大山顕)そうなんです! どっちなんだ? と。これも名作ですよね。要するにまあ、お聞きのみなさんもわかる通り、成城って結構ブランドの高いところじゃないですか。で、仙川もすごいいい街だと思うんですけど。このいまの物件を調べたところ、もう仙川と成城の境界線ギリギリなんですよ。仙川側なんです。で、できることならもう成城と言ってしまいたい。ところが、先ほどおっしゃったみたいに広告上そう言っちゃダメなので。「成城でもあり仙川でもある」みたいなことを。

(安住紳一郎)そうですね。間違ってはいない。

(大山顕)間違ってはいない。

(安住紳一郎)だし、成城に触手が伸びる人もいるそ。「ああ、仙川便利。京王線便利」っていう風にラッキーと思う人もいるし。両方の需要を取り込みたい。

(大山顕)「広尾を纏う西麻布」っていう物件もありました。どっちなんだ? と。

(中澤有美子)そうですね(笑)。

(大山顕)よりによって纏っちゃったか……と。

(安住紳一郎)さらに、昨年大山さんは徹底的に分析をしてみたということで。

(大山顕)そうなんです。なんか笑っているだけではダメなんじゃないかとずっと思っていまして。いままで僕は10年間ぐらい追い求めてきたのを全部記録してきたので。合計1148件の……自分でもびっくりしながらマンションポエムを僕はパソコンの中に記録しておりまして。それを文章解析しました。文章解析ソフトっていうのを使って、どういう語句が使われているのか。逆にどういう語句は使われていないのかっていうのをちゃんと客観的に分析しようと思って。

(安住紳一郎)流行り廃りなども含めて。

(大山顕)そうなんです。やってみました。

(安住紳一郎)大山顕さんに今日、お話いただくテーマは「進化を続けるマンションポエム」。まずは一気に紹介します。大山顕さんの進化を続けるマンションポエム。その1、いまも続く吉祥寺問題。その2、札幌が熱い。その3、ついにファンタジーの世界へ。以上の3つです。ひとつ目は進化を続けるマンションポエム、いまも続く吉祥寺問題。

吉祥寺問題

(大山顕)これ、先ほどご紹介していただいたみたいに、広尾を纏っちゃう西麻布とか、仙川なのか成城なのかみたいなのがありますが。地名の問題っていうのはブランドの高い地名はどうしても盛り込んでいきたいと思っているので、いろいろと面白いことが起こっちゃう。それがいちばん熱いのが、いま吉祥寺で起こっておりまして。

(安住紳一郎)特に住みたい街ナンバーワンなどで名前が出てきますから。当然、不動産屋さんは吉祥寺を謳いたい。

(大山顕)「吉祥寺」って言いたい。たとえば、これ言ってみていいですか? 「吉祥寺に別荘地ですごすような潤いの日常を」。

(安住紳一郎)うーん……。

(大山顕)まあ、マンションポエムじゃないですか。みんなズレちゃっているからこのぐらいは普通だと思っちゃってますけども。これね、実は練馬区の物件です。

(安住紳一郎)ん? 武蔵野市ではない?

(大山顕)はい。

(安住紳一郎)なんとなく「別荘地」っていうことで、ちょっと吉祥寺のはずれをすでに匂わせているという……。

(大山顕)そうです! 巧みでしょう?

(安住紳一郎)巧みですね(笑)。

(中澤有美子)なるほどー!

(大山顕)これには素晴らしいなと思って。「吉祥寺って言いたい。でも、練馬区だ。でも、言いたい!」。その答えが、「別荘地ですごすような潤いの日常」。

(安住・中澤)なるほどー!

(中澤有美子)捉え方ですね。

(安住紳一郎)捉え方ですね。

(大山顕)もうひとつはね、「吉祥寺、その先の聖域へ」。

(安住紳一郎)うーん、いいですね。

(大山顕)もうおわかりかと思いますけども、問題は「その先」。

(中澤有美子)そうですね(笑)。どのぐらい先なんだろう?

(大山顕)どのぐらい先かというと、これは牟礼ですね。三鷹市の牟礼。南の方に行ったところで、「厳密に言うと吉祥寺とは言えないのではないか?」という、そういう無粋なツッコミに対して「違う! その先の聖域なんだ、ここは!」と。

(安住紳一郎)そうですね。

(中澤有美子)あえて選んでいると。

(安住紳一郎)そうですね。「消防署の方から来ました」みたいなことと一緒ですよね?

(大山顕)ああ、そうです。そういうことです。嘘ではない。

(安住紳一郎)「吉祥寺の先に住んでいます」っていうことですね。

(大山顕)吉祥寺はやっぱり「吉祥寺って言いたい!」という並々ならぬ熱意がこういうポエムを生んでいるというのがありまして。

(安住紳一郎)そうですね。たしかに、まあ練馬も三鷹もすごくいいところですけど、吉祥寺で探しているみなさんにちょっと、あれですよね。選択肢としてこれも……っていうことですよね。

(大山顕)練馬、もっと自信を持ってほしいですよね。僕、練馬区好きなんですけど。そうなんですよ。吉祥寺に頼るなと。

(安住紳一郎)いいですよね。なんか「練馬区関。バスが折り返す街」みたいなね。

(大山顕)ああっ! いいじゃないですか! でもそれ、バス好きにしか……すごい狭いターゲットですけどね(笑)。

(中澤有美子)フハハハハッ!

(安住紳一郎)いいでしょう? あそこの転車場、いいでしょう?

(大山顕)いいんですよ!

(安住紳一郎)アハハハハッ!

(大山顕)いや、そりゃあ僕らは盛り上がっちゃうけどさ!

(安住紳一郎)そうですね(笑)。ほとんどの人がわからないですよね。ほとんどわからない。いいですけどね。あの転車場、いいですけどね! さらには、似たような問題が北陸新幹線開業で金沢・富山問題という。

北陸新幹線と金沢・富山問題

(大山顕)そうですね。これがありまして。あれは(開業が)2015年なのでちょっと前の話になるんですけど。新幹線で東京からヒュッと行けるようになったということで、金沢のマンションポエムが東京を持ち出してきているんです。

(安住紳一郎)えっ? 金沢ですか?

(大山顕)金沢が。たとえばこれを読みますけど「東京を日常の街にする」。

(安住紳一郎)はー! 新幹線の駅が近いのかな? みたいなことですかね。

(大山顕)で、このポエムとともに出てくるビジュアルが銀座とか六本木とかが普通に出てくるわけですよ。で、それだけ見ていると、どこの東京の物件なんだろう?って思ったら、実は金沢であると。

(安住紳一郎)なるほど。もう新幹線で通勤圏までは行かないですけど、まっすぐだということを。

(大山顕)日常であると、そう言っているわけですね。他のやつは、たとえば「金沢に暮らし、東京を楽しむ」。

(安住紳一郎)うーん。たしかにちょっとあれですよね。関東圏のみなさんにも、不動産目当てでも買ってほしいかな、みたいな。そういうような……。

(大山顕)たぶんね、そういうのもあると思います。それで言うと、金沢・富山問題で言うと、富山がいじらしくて。これ、読みますけども。「富山に東京がやってくる」。

(安住紳一郎)はー。『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』みたいな。

(大山顕)そうそう。そういう感じです。だから、これは何が言いたいか?っていうと、金沢と富山の同じ新幹線が通ったことによる東京に対してのどういうような態度か?っていうのが180度逆なわけですよ。金沢の人は「東京が庭になったよ」ということ。

(中澤有美子)あくまでも金沢が主体の。

(大山顕)ところが、富山は「よし、これで東京がやってくるんだ」と。「東京へ」というのと、「東京が」っていうのの違いが金沢と富山の性格の違いを如実に表わしていて面白いなと。

(安住紳一郎)新幹線の駅にするとね、2つぐらいなんですけども。それで全然売り方が違うということですね。いやー。さらに、進化を続けるマンションポエム、2つ目ですけども。札幌が熱い。

(大山顕)熱い! 札幌、ヤバいっすよ。

(安住紳一郎)そうですか(笑)。

札幌物件のポエムがヤバい

(大山顕)札幌はヤバいです。ずっとやっぱり東京近郊を追い続けてきましたが、いまは札幌……あと、今日は紹介できないですけど、京都もヤバいんですけども。

(安住紳一郎)ああ、そうですか。

(大山顕)札幌は熱いです。

(安住紳一郎)これはマンション市場が盛況だということもあると思うんですけども。マンションポエムがやっぱり?

(大山顕)ポエムがそれをちゃんとキャッチしているわけですよね。

(安住紳一郎)なるほど!

(大山顕)あとね、まず多いのが僕が「世界征服系ポエム」と呼んでいるやつなんですけど。たとえばですね、「札幌都心を手中に収めながら誕生」。

(安住紳一郎)うーん! 「札幌都心を手中に収める」。

(大山顕)収めちゃう。征服する気かと。

(中澤有美子)強そう。はい。

(安住紳一郎)で、「収めながら誕生」。

(大山顕)誕生する。……まあ、深く考えちゃいけません。

(安住紳一郎)そうですね(笑)。

(中澤有美子)フハハハハッ! そういえば。おかしい(笑)。

(大山顕)あとは「都心と情緒。真の贅を手中に」。これね、手中に収めたり従えたり、掌中に収めたり。まあ、ちょっと世界征服しがちなのが札幌の特徴であると。

(安住紳一郎)やっぱり、一生に一度の買い物なんで、なんか所有欲というか。そういうものを刺激するという?

(大山顕)そうだと思うんですよ。でも、「手中に」ってね。だいぶ責任が思いじゃないですか?

(中澤有美子)大きく出てます。

(安住紳一郎)あとは、札幌はどこへんに注目を?

(大山顕)あとね、これがすごくて。上昇志向を煽るポエムがすごくて。たとえば、これ。「大切にしたいのはちょっと上の自分に変われるということ。ほとんど現状維持なら意味がない。我慢するなんてナンセンス」。

(安住紳一郎)えっ、これ、マンションの広告なんですか?

(大山顕)そうです。

(安住紳一郎)うわーっ……お任せしたい!っていう(笑)。

(大山顕)フフフ(笑)。「お任せしたい」。まあ、そうね。とか、「最初は少し背伸びをするぐらいの方が、ちょっと上の自分にはちょうどいいはず」。こう、なんていうか、ちょっとバブルっぽいじゃないですか。「我慢しない」とか、上昇志向をやたら煽るっていうのは、最近聞かなかったものが、札幌に生き残っていたか! と。

(中澤有美子)そうですね!

(大山顕)これはね、いいなと思って。

(安住紳一郎)はー! たしかに。懐かしい。あとは、マンションポエムにあまり触れていないので、これぐらいの純な感じのものの方が響いちゃうのかもしれないですね。

(大山顕)どうなんでしょうね? さっき言ったみたいな、もしかしたら血中ポエム濃度をみんなどんどん上げていかないと満足できなかった末に行き着いたのが、実はバブル調だっていう可能性もある。

(中澤有美子)一周回って。

(大山顕)まさに極北ですよ。いま、マンションポエムの。

(安住紳一郎)はー。京都なんかは落ち着いたイメージがありますけども。

(大山顕)いやいやいや! ハイテンションですよ。あのね、京都でびっくりしたのは京都に住んでらっしゃる方から通報があったんですけど。マンション建設予定地に年表が貼ってあったんですって。

(安住紳一郎)はあ。

(大山顕)で、それが一件年表かと思いきや、それはマンション広告で。年表の最初が平安京から始まっていると。

(安住紳一郎)ああ、それは別に地元の人に歴史を楽しんでもらおうというものではなく?

(大山顕)とか、観光客に楽しんでもらうとかじゃなくて、マンション広告で平安京から始まって、応仁の乱みたいなのも入って、ワーッと行って、いちばん最後に「そしていよいよここにこのマンションが建つ!」っていう。もうね、京都全体の歴史の中にマンションを位置づけちゃうぐらいのテンション。いま、京都のテンションはこれです! 落ち着きとかじゃないです。

(安住紳一郎)落ち着きとかじゃない(笑)。

(大山顕)ヤバいですよ。

(安住紳一郎)そうですね(笑)。ちょっとキツいですね(笑)。

(大山顕)キツいですよ。うん。

(安住紳一郎)あれですよね? 日本史の年表の中に、自分が生まれるみたいなのが……。

(大山顕)そうそう! 本当にそうですよ! 満を持して、ここに堂々と。

(安住紳一郎)ここに堂々と、いま誕生。

(大山顕)平安京と同レベルで。

(安住紳一郎)キターッ! みたいな。平城京、平安京……そしていま、ここにマンション誕生! みたいな。やだやだ(笑)。フハハハハッ!

(大山顕)そう(笑)。

(安住紳一郎)さて、大山顕さんに話を聞いています。進化を続けるマンションポエム。最後、3つ目。ついにファンタジーの世界へ。

ファンタジー系マンションポエムの時代へ

(大山顕)そうなんです。これね、去年あった僕は大問題というか、大傑作というか。2017年はマンションポエムの歴史において記念すべき年になったなと思ってまして。まあ、いままでご紹介したやつはなんだかんだ言って、さっきから言ってるみたいに嘘じゃないじゃないですか。でね、大げさに言うものの、たしかに歴史的にはここにそういう歴史があるとかね。そういうものを元にしているわけです。

(安住紳一郎)うんうん。

(大山顕)ところが、これは晴海の物件なんですけど、こういうのがありました。「遥か遥か昔… 。巨大なくじらがトネリコの大木を背負い、都会の港にやってきました」。

(安住紳一郎)んん?

(大山顕)わかりますか? 「遥か遥か昔… 。巨大なくじらがトネリコの大木を背負い、都会の港にやってきました」。続きはね、「くじらアイランドと呼ばれる、大勢の人々が暮らす街となりました」。

(安住紳一郎)えっ、そんななんか、佃島みたいな感じでくじら島みたいなの、ありましたっけ?

(大山顕)そんなの、ありましたっけ?って思うじゃないですか。「この街がワクワクするのは、くじらがどこかに隠れているから」。

(安住紳一郎)ええっ? くじらって……千葉の方で昔っていう話ですけども。

(大山顕)ああ、捕鯨的な。違うんです。これは晴海に建つマンションが現在分譲中のおやつで。要するに、もうね、これはファンタジーなんですよ。この六本木が武家屋敷の歴史を謳うとかではなくて、もう最初から架空の伝説として謳いあげる。

(安住紳一郎)はー!

(大山顕)これ、だからもうマンションポエムの歴史にとって大転換! 事実はもう関係ない。テンションを高めていって、ここがいかにいい感じの街か?っていうことを訴求できるのであれば、もう物語でいいんじゃないか?っていうことに行き着いたのが去年なんですよ。

(安住紳一郎)なるほど! もう強引に小さい歴史的事実を持ってきて……。

(大山顕)針小棒大にするのではなく、最初からファンタジーでいいじゃないか。言われてみればそうだ!

(中澤有美子)フフフ(笑)。「なぜ気づかなかったんだ!」(笑)。

(大山顕)「なぜ我々は気づかなかったのか?」と。

(安住紳一郎)なるほど。別にここはもともと何もないただの埋立地だけども、ここに壮大な歴史的事実があったということにして、みんなで楽しく暮せばいいじゃないかと。はー!

(中澤有美子)「くじらを探してみようじゃないか!」と。

(大山顕)そう。たとえばこれね、あらゆる側面でこの物件は伝説をファンタジー調で謳い上げておりまして。

(安住紳一郎)ああ、買う時だけじゃなくて、暮らしてからも?

(大山顕)そうなんです。たとえばね、家庭菜園みたいなみんなが使える庭があるんですけど。そこの説明というかポエムが、「ある時、野菜を食べない子供たちのために異国から訪れた農夫が菜園を作りました」。……伝説!

(安住紳一郎)ああ、そういう伝説があったと。

(大山顕)だってまだないわけですよ? いま建設中ですから。

(中澤有美子)アハハハハッ!

(安住紳一郎)そういう伝説があるから、みんなのその共通菜園を楽しもうってことですね。

(大山顕)「その後、街のみんなで引き継ぎ、街の菜園としたのがガーデンテラスです。いつしか収穫祭として恒例の催しとなったと言います」って、まだ建ってないでしょう? と。

(安住紳一郎)なるほど。1回目の住民の収穫祭がもうそれが伝説の……(笑)。

(大山顕)伝説として異国の、かつてやってきた農夫が作ったものだということになっていて。

(中澤有美子)レジェンドになっている(笑)。

(安住紳一郎)いや、でも小学生の時とかこういう風に盛り上げてくれてる先生、いましたよね。あえて架空の……遊園地なんかはこういうことでやっているわけでしょう?

(大山顕)あのね、そう! これね、そうなんです。調べたら、この物件を作っているデベロッパーさんが千葉にある例のあのテーマパークと関わりのあるグループ会社。要するに、これはだからそういうことなんです。プロの仕業なんです。ファンタジーの物語を作るプロたちが作ったお庭であり物件であると。

(安住紳一郎)はー! もうでも最初から割り切ってしまえば、それが楽しいと思う人は最高ですよね。

(大山顕)最高ですよ。今後、こういう物件が僕は増えていくと思っていまして。たとえば、容易に想像がつくのは、あの千葉のテーマパークを作った方々が物語るマンションポエムが可能なのであれば、この後に予想としてあるだろうなと思うのは、「トトロの森」をフィーチャーしたものが。トトロの森って呼ばれるガーデンがあるマンションポエムとかって絶対に出てきそうじゃないですか。

(安住紳一郎)いいですよね。うん。

(大山顕)いいと思います。それこそね、だからもう「吉祥寺」とか言っていないで、三鷹のあのあたりで「トトロの森」を謳い上げる物件をぜひ……たださ、宮崎駿さんはそういうのに利用されるの、あんまり好きじゃないと思うんですよね。

(安住紳一郎)もちろん、もちろん。大変なことになると思いますよ。

(大山顕)だから、彼は毎年「引退する、引退する」っておっしゃってますけども。引退した直後に本当に実現すると思います。

(安住紳一郎)ああ、他の方が?

(大山顕)まあ、会社としてそういうビジネスをいよいよ実地で展開していくというのをマンションでやるというのが、絶対にあると思うんですよ。

(安住紳一郎)でもたしかに、そう言われてみると「ドラえもんの住む街」なんて。ドラえもんが住む街はなかったと思うんですけど、「住んでいた」みたいな感じで言われて。で、「楽しく住みましょ」なんて言われたら。

(大山顕)ああ、ありそうですね。あの空き地を再現して、その脇にマンションが建てば。いいですよね。

(安住紳一郎)そうですね。で、「ここで遊んでいたんだ」みたいなことで。ジャイアンみたいないじめっ子がでないように……みたいな。

(大山顕)ありそう。だからどんどんマンションとか暮らしがテーマパーク化しているんだということを実は、マンションポエムというのはちゃんと追いかけているというか、先んじているというか。やっぱりね、都市論だと思うんですよ。マンションポエムというのは。我々が都市をどう考えているか?っていうことを極端な形で表してくれている。

(安住紳一郎)なるほどねー! いやー、あとは大山さんの話が愛媛新聞にも載っていましたけども。

(大山顕)えっ、そうですか?

(安住紳一郎)ええ、ええ。

(大山顕)なんですか? 知らないな。

(安住紳一郎)マンションポエム、大山さんのお話の中では「取り戻すべき日常」などというマンションポエムがありますけども、最近は政治家の政策もポエム調になっているということで。「日本を取り戻す」「美しい国」「一億総活躍」などはマンションポエムに似ていると言えなくもないっていう(笑)。

政治家の政策のポエム化

(大山顕)いや、でもそれはその通りだと思いますよ。要するに、物事がポエム調で語られるって……僕、こういうことをやっていると「マンションポエムっていうのは何を表しているんですか?」ってよく質問されるんですけど、これは「何を表しているか?」ではなくて、「物事がポエム調になる時は、なにかを隠している」っていう。

(安住紳一郎)うん。

(大山顕)先ほど、ちょっと言った1000件以上のマンションポエムの分析をやってわかったのは、建築に関するワードが全然出てこない。全部街の話。要するに、マンションポエムがなにを隠しているか?っていうと、マンション建築そのものを実は隠している。

(安住紳一郎)うん。そうですよね。

(大山顕)これ、なぜか?っていうと同じ2LDKの同じ広さでも、たとえば津田沼では2500万のやつが港区とかだと1億とかなわけですよ。この価格差は何なのか? 建築自体、内装はもはや全く変わらないとすると、「立地が違うんですよ」というところにしか価格差を求められないじゃないですか。だからマンションポエムっていうのは自ずと土地の物語をどんどん言わなきゃならない。建築については触れてはいけない。なるべく触れたくないっていうのが表れた結果、ポエム調になり、土地の物語をやっていく。だから政治家の言うことがポエム調になるっていうのも構造としては同じですよ。なにかを隠しているんですよ。

(安住紳一郎)なるほどねー! 奥の深い話になってまいりましたけどね。たしかに、なにかを隠すというか、そうですね。

(大山顕)僕らも日常の会話でもそうだと思うんですよね。なにか自分にやましいところがあって、何かを隠そうとする時、なんか変に詩的なことを言っちゃったりすること、あると思うんですよね。

(安住紳一郎)そうですね。ちょっと不潔な人の風貌を表す時に、「豪放磊落な」みたいな(笑)。

(大山顕)はいはいはい(笑)。

(安住紳一郎)「すごく思い切りのよさそうな、ワイルドな」とか。ただ「ヒゲ剃ってない不潔な人だな」って思っているのに……っていう(笑)。

(大山顕)そうですね。「ワイルドですね」とか「あ、今日はちょっと野性的でいい感じじゃないですか?」とか。

(安住紳一郎)「森の香りのわかる方」みたいな。

(大山顕)フハハハハッ!

(安住紳一郎)いろいろと(笑)。

(中澤有美子)そういうことかー!(笑)。

<書き起こしおわり>


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