高橋洋二が選ぶ 2017年映画ランキング ベスト10

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映画を劇場で年間200本見る男、放送作家の高橋洋二さんがTBSラジオ『タマフル』で2017年に見た映画の中からランキングを作成。ベスト10を発表していました。

(宇多丸)といったあたりで恒例のゲストをお一人、ご紹介いたしましょう。劇場で年間200本見る男、放送作家の高橋洋二さんです。

(高橋洋二)こんばんは。よろしくお願いします。

(宇多丸)毎年ありがとうございます。いらっしゃいませ。

(高橋洋二)ありがとうございます。ついにこの日が来たかっていう感じですね。

(宇多丸)なんかね、年末が近づいてきた感じがしますよね。これをやるとね。毎年、洋二さんは毎回1テーマ決めて選んで来ていただいて……っていうのがありますから、非常に楽しみです。ちなみに今年は何本、行かれましたか?

(高橋洋二)いまのところ196本ですね。

(宇多丸)おおっ、なるほど。もうちょっとで。じゃあ年内には200本は行っちゃいますかね。といったあたりで、さっそく洋二さんのベストテンをうかがっていきたいと思います。

(高橋洋二)行きますよ。

10位:『ローガン・ラッキー』
9位:『ベイビー・ドライバー』
8位:『ノクターナル・アニマルズ』
7位:『希望のかなた』
6位:『パターソン』
5位:『エル ELLE』
4位:『アシュラ』
3位:『お嬢さん』
2位:『哭声/コクソン』
1位:『アウトレイジ 最終章』

(宇多丸)おおーっ! そう来た! そう来た? またね、洋二さんなりの1テーマがあるでしょうからね。ちょっとそれをうかがいながら行きたいと思いますが。

(高橋洋二)ええとね、1テーマ……2年前が自主映画というテーマ。去年が全部日本映画だった。日本映画のローバジェットでも、予算がたくさんある映画でもいい映画が増えてきたということだったんですが……。

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(宇多丸)今年は?

(高橋洋二)今年ね、テーマはあんまり考えずに、今年らしいいい映画が多かったなって10本選んでみたら、割と統一感がある感じがあるんですね。それは、さっきの番組の冒頭で宇多丸さんもおっしゃっていましたけども。なんか、「ジャスティス・リーグ的なものとか超大作とか、そういうのじゃないのに、今年はいい作品があったんじゃないか」っておっしゃっていたじゃないですか。それは全く我が意を得たりということで。

(宇多丸)ふんふん。はい。

(高橋洋二)かと言って……。

(宇多丸)ザ・インディーみたいな感じでもないですよね。

(高橋洋二)ザ・インディーでもなく。インディー、超低予算でもなく、超大作でもなくっていうところに、作家性がある娯楽作品っていうのが今年はすごく良質なものがあったんじゃないのかなと。で、まず行きますけども。

(宇多丸)『ローガン・ラッキー』。僕も最近、ようやく見ました。

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10位:『ローガン・ラッキー』

(高橋洋二)『ローガン・ラッキー』こそ、面白いお話で、でも見てみると作家性がある。

(宇多丸)もう、スティーブン・ソダーバーグそのものでしたね。

(高橋洋二)ええ。で、僕らは決して懐古趣味で言うわけじゃないですけども、70年代って「今日はコッポラの映画を見るぞ」とか「○○監督の映画を見るぞ」みたいな感じで、「ああ、面白かった」みたいなものだったじゃないですか。

(宇多丸)うんうん。

(高橋洋二)そういうタッチだなと思ったんですね。『ローガン・ラッキー』って。つまり、ハリウッドの製作者から「ここのキャラクターをもっと美しい人にしろよ」とか「ここをもうちょっと派手にしろよ」みたいなことをあれは一切やっていないんですよね。結構面白い話なんですけども。それって、ソダーバーグのなにが偉いって、実はハリウッドスタジオを通さずに製作と配給も自分でやっているんですね。この映画は。なので、今後のこういったタイプの、面白いけど作家性があるという映画の雛形になるといいなって思って。

(宇多丸)製作から配給までってこれ、バカ儲けでしょう?

(高橋洋二)ところが、あんまり当たっていないみたいなんで。そのへんは……ねえ。主演がチャニング・テイタム、アダム・ドライバー。

(宇多丸)まさにホワイト・トラッシュ版の『オーシャンズ11』っていうかね。

(高橋洋二)そうなんですよ。まあ、ホワイト・トラッシュ物が好きっていうのもあるんですけど。ソダーバーグ4年ぶりということで。

(宇多丸)いや、楽しかったです。めちゃめちゃ。

(高橋洋二)楽しかったですよね。で、9位。『ベイビー・ドライバー』。

9位:『ベイビー・ドライバー』

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(宇多丸)これはね、ベストに挙げられる方も結構いらっしゃるんじゃないかと思いますが。

(高橋洋二)まあ、びっくりしましたけども。これも話がものすごく面白いんだけども、ハリウッドメジャーではやらないようなことをやっているなと。

(宇多丸)なにしろ演出がね。びっくりしちゃうようなね。

(高橋洋二)びっくりしちゃう。この感じって、さっき僕が言った、「今日はデ・パルマの新作を見るぞ」なんて。80年代に。で、見に行って、「ああ、デ・パルマだな!」みたいな感覚に近いなと思ったんですね。

(宇多丸)「エドガー・ライトだな!」。

(高橋洋二)じゃなくて、この映画、エドガー・ライトはデ・パルマみたいなことをやっているなって思ったよすが、画面にポール・ウィリアムズが出てきたんですよね。ポール・ウィリアムズといえばデ・パルマの出世作であるところの『ファントム・オブ・パラダイス』の悪魔を演じて、あと音楽も提供している人なんですけども。これ、絶対に目配せがあったんじゃないのかな?っていう感じがあって。作家性のある娯楽作、万歳!っていう感じがとってもよかったなと思って。

(宇多丸)素晴らしかったです。

(高橋洋二)8位、『ノクターナル・アニマルズ』。

8位:『ノクターナル・アニマルズ』

(宇多丸)これもね、結局当たらなかったんですけどもね。トム・フォード。

(高橋洋二)トム・フォードの二作目にして、「なんだ、この上手さは?」っていうぐらいの。原作はあるんですけど、トム・フォードが脚本も書いて。それで入れ子構造の、別れた妻のもとに元旦那から小説が送られてくる。その小説を読み進むうちに、その小説の中も映像化されて出てくる。で、その小説の中に出てくるのは、夫と妻と娘。自分と似たようなことなんですけども、夫をジェイク・ギレンホールが演じているっていうことで。現実世界と小説の中の世界が結構並行して描かれているんですが、なにが面白いってこれは愛情か、復讐かっていうことなんですが。さあ、この小説は一体何を描いているのでしょうか?っていうことが、まあ面白いですね。見終わった後に人と話していても。

(宇多丸)すごい考えちゃいますしね。「どういうことなんだ?」っていうのはね。

(高橋洋二)で、ちゃんと無責任じゃなく、あるエピソード、あるエピソード、あるエピソードがその正解を担っているところがあると思うんですけどね。

(宇多丸)単純にまずその劇中劇もめちゃ面白いですしね。すごい怖いし。それこそ、劇中の作り話だってわかっているのに、もういたたまれなさすぎて、ねえ。すごいですよね。

(高橋洋二)そうそうそう! まあ、すごい暴力的な映画なんですけどね。

(宇多丸)トム・フォードがまたね、結局最後に飾りを取る話をまたやるか!っていうのが面白いなと思いましたね。

(高橋洋二)7位、『希望のかなた』。

7位:『希望のかなた』

(宇多丸)アキ・カウリスマキ監督。

(高橋洋二)アキ・カウリスマキで。これもあいかわらず、「カウリスマキだな」っていうトーンで始まるんですけども。シリア難民三部作の二作目らしいんですけど。これ、割と珍しく直接的な怒りを……。

(宇多丸)結構ハードですよね。

(高橋洋二)表していて。ニュース映像とはいえ、大爆破シーンとかもあったりとかして。

(宇多丸)あと明快にこの世のダークサイドというか、それを出してくるし。

(高橋洋二)「そこは察せ」じゃなくて、明確に描いていますよね。

(宇多丸)それと例のほんわかオフビートタッチが。

(高橋洋二)オフビートっていうか、くだらなすぎるだろう!っていう。

(宇多丸)アハハハハッ! 日本料理屋のくだりとかね。

(高橋洋二)でも本当にアキ・カウリスマキ監督はワサビが大好きらしいんですけどね。

(宇多丸)ワサビが(笑)。ぜひ見ていただきたいんですけども。まあ、日本人がいちばん爆笑できると思うんで。

(高橋洋二)それで5位、『エル ELLE』。これはもう大変な映画ですよね。ポール・バーホーベン。

(宇多丸)やったー! もうなにを考えているんでしょうか?(笑)。

(高橋洋二)どんどんとこのへんから80年代、90年代、2000年代の名匠がどんどん来ますけども。イザベル・ユペールを得て。

(宇多丸)この『エル ELLE』も……。

(高橋洋二)あ、『パターソン』が飛びました?

(宇多丸)ああ、6位の『パターソン』を飛ばしちゃった?

6位:『パターソン』

(高橋洋二)ああ、そうか。ジム・ジャームッシュ。アダム・ドライバーとゴルシフテ・ファラハニという夫婦の話しなんですけども。バスの運転手という労働者階級でありながら、詩を書くというアーティスト。労働者でありながらアーティストであるというアダム・ドライバーの7日間のお話なんですけども。まあこれ、アダム・ドライバーが実に静かに演じているんですけど、アダム・ドライバー演じる夫ってこの奥さんのことをどう思っているのかな?ってことが最後までわからないんですよね。

(宇多丸)フフフ(笑)。ちょっとでも、「やべえな……」とは思っていますよね?

(高橋洋二)でも、「やべえな……」っていう描写があんまりないのと。

(宇多丸)直ではないですよね。カーテンを怪訝そうに見るとか、水をいっぱい飲むとか(笑)。

(高橋洋二)そうそうそう! そのへんがね、やっぱりジャームッシュはすげーなと思いましたね。単なるいい、かわいい夫婦の話じゃないっていう。

(宇多丸)ちょっと不穏ですよね。そこはね。

(高橋洋二)不穏ですよ。不穏、不穏。で、『エル ELLE』。

5位:『エル ELLE』

(宇多丸)『エル ELLE』はもう不穏どころの騒ぎではないですからね。

(高橋洋二)やっぱりバーホーベンはいいなっていうことを……。

(宇多丸)ちょっとそれこそデ・パルマタッチなところもあるな、ぐらいに思いましたけどね。

(高橋洋二)うん。思いましたね。っていうのも、『デ・パルマ』っていうドキュメンタリー映画が公開されたじゃないですか。それも見て、「ああ、俺ってつくづくデ・パルマが好きだな」って。豊富にフッテージが使われていて、「いいな、いいな」って。

(宇多丸)デ・パルマブーム、来る。

(高橋洋二)そうそう。の、フォロワーと言いますかね。で、時間がないので4、3、2位。『アシュラ』、『お嬢さん』、『哭声/コクソン』っていうのは、今年の3月になぜか同時に来た韓国映画です。

『アシュラ』『お嬢さん』『哭声/コクソン』

(宇多丸)こんなことするから、全然カプセル当たらねえじゃねえかよ!っていう。

(高橋洋二)で、ファン・ジョンミンが2本出ているというね。

(宇多丸)ファン・ジョンミンもそうだし、『アシュラ』の警察の偉い人も。

(高橋洋二)全然違う役でね。

(宇多丸)しかも同じ2人の役者が全然違う役としてぶつかり合うから面白い。

(高橋洋二)そうそうそう。時々、貴乃花親方はファン・ジョンミンに似ているなと思うんですけども(笑)。

(宇多丸)フハハハハッ! たしかにパク・ソンベ市長はちょっと、あるかもしれないですね。表情の作り方もちょっと近いかもしれないですね。

(高橋洋二)髪型とかね。

(宇多丸)髪型とかね。『お嬢さん』も面白かったなー!

(高橋洋二)で、駆け足で行っちゃいますけども、『アウトレイジ 最終章』が1位でございまして。

『アウトレイジ 最終章』

(宇多丸)これ、すごい!

(高橋洋二)これ、みんな褒めていますよ。褒めていますけど、もっとすごい映画なんじゃないかなって最近、よく思うんですよね。

(宇多丸)なるほど。

(高橋洋二)よく、北野映画のアーティスティックな部分と娯楽的な部分というのがいままでは代わりばんこに来ているというか。いままではアート、アート、娯楽、アート……みたいな。これは本当にその両方が、流行り言葉で言うとアウフヘーベンしているんじゃないかなと。流行っていないか?

(宇多丸)まあまあ、でも……。

(高橋洋二)これ、本当にアートであって、娯楽でもあるなという高みにまで来たなと思いましたね。キャスティングとかに関しても、まあ金田さん演じるチャン会長の素晴らしさはなんか大島渚映画のキャスティングみたいだなっていう感じがして。

(宇多丸)ああー、たしかにその非俳優というか、それを真ん中にボンと置いて。たしかに、大島渚映画の薫陶を受けていると考えると、きれいな流れがありますね。

(高橋洋二)あると思うんですね。それと、たとえばピエール瀧さんの使い方が、他の映画のピエール瀧さんの使い方と全然違うっていうところが、これもひとつ……。

(宇多丸)他の映画だとやっぱり怖かったりとかってあるけども。コメディーリリーフとして使っていますよね。今回ね。

(高橋洋二)人間として描かれている。姑息でゲスな、強がりたいんだけども、できないみたいな。そういうのをちゃんと引き出していて、すごいなと思ったので。

(宇多丸)そうか。あんだけいっぱい出ていても、新しい引き出しがあるかどうかとか。

(高橋洋二)なので、まとめてみると私の10本というのは日本映画が1本だけになっちゃった。で、それが1位の『アウトレイジ』っていう。

(宇多丸)うん。たしかにね。

(高橋洋二)で、他は全部外国映画ですけども……なんて言うのかな? 「こういう映画を見るために俺たちは映画館にいるんだよな」っていうのが多かったような気がします。

(宇多丸)これはでも、今年日本映画が別に低調だったとか、そういうわけではなく?

(高橋洋二)そういうわけではないです。本当に『アウトレイジ』以外の9本が素晴らしすぎるという。

(宇多丸)っていうか、これもそうですし、やっぱりいいのが多かったですよね。小粒でも。

(高橋洋二)小粒で、日本の配給の人が素晴らしいと思うのは、シネコンでこういったタイプの映画を上映するようになってきたということですね。

(宇多丸)『ベイビー・ドライバー』『ローガン・ラッキー』、このあたりはやっていますよね。

(高橋洋二)そうですね。

(宇多丸)『エル ELLE』もやっていたか。『ベイビー・ドライバー』なんかはバルトでロングランしていますからね。

(高橋洋二)今日もやっていたんじゃないかな? その感じで、そのへんが『ローガン・ラッキー』が象徴しているなと思ったのね。配給というものがこれからちょっと変わってくるんじゃないかって。

(宇多丸)ソダーバーグはそれこそ、デジタルにいち早く移行じゃないけど、システム自体の改革にすごく意識的だから。

(高橋洋二)その一方で、カウリスマキは『希望のかなた』を35ミリで撮っていて、日本のユーロスペースでは35ミリで上映したというね。

(宇多丸)すごい。贅沢なことをする。

(高橋洋二)そういう、フィルム上映の有終の美もあれば、今後を模索するような動きもあるというのがこういった中型の映画にすごく多かったような気がする。役者も素晴らしい人ばっかりだなと思いましたね。

(宇多丸)どれを見ても、またもう1回見返したくなる作品ばかりでございました。

(高橋洋二)あと、アダム・ドライバーが今年、すごいですね。

(宇多丸)いやー、すごい!っていうか、アダム・ドライバーの株が上がりまくりの1年ですね。「こんなに上手いか!」っていうね。

(高橋洋二)『沈黙 サイレンス』もあったですからね。

(宇多丸)『沈黙』もですよ。あれも素晴らしかった。『最後のジェダイ』も……いいですよ!

(高橋洋二)アハハハハッ!

(宇多丸)アダム・ドライバーはいいですよ。これは本当。

(高橋洋二)以上でございます。

(宇多丸)ということで、高橋洋二さん、ありがとうございます。また来年も、よろしくお願いします!

(高橋洋二)よろしくお願いします。

<書き起こしおわり>

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