ライムスター宇多丸 MAKI THE MAGICへの追悼コメント

ライムスター宇多丸 MAKI THE MAGICへの追悼コメント 宇多丸のウィークエンド・シャッフル


ライムスター宇多丸さんがTBSラジオ『ウィークエンド・シャッフル』で、急逝されたキエるマキュウのMC、そしてDJのMAKI THE MAGICさんへの追悼コメントを語っていました。

(宇多丸)ええとですね、いつもだったらここ最近、10時から始まるという形になってオープニングトークもそこそこにムービーウォッチメンに行くところなんですが、ちょっとね、お話させていただきたいことがございまして。

去る7月14日、先週の日曜日にこの番組でも1回ゲストに来ていただきました、キエるマキュウというグループでラップをやっていたりとか、プロデューサーとして我々ライムスターとも何度も仕事してますし、クラブDJ、ミックスCDというかそういうジャンルでも、DJとしてそもそもキャリアをスタートされた方ですが、MAKI THE MAGICさんという方がいまして。彼が、ちょっと急逝。急に亡くなられてしまいまして。

ということがあって。僕らちょうどその翌日にライムスターとしてSOIL&”PIMP”SESSIONSとのセッション、何て言うんですかね?対バンイベントシリーズ、『ベストバウト』というのを始めまして、第一弾がそのSOILだったんですけど。それのリハの最中ぐらいにそれを知ってしまいですね。もちろん本当にあれですよね、本当に親しいっていうか、ちょっと僕ですね、今まで結構周りで亡くなる人もいたんですけど、こんだけ近い人が亡くなっちゃったの初めてで。

しかもその、要は年寄りでとか、ずっと病気されてある程度前触れがあったとかじゃなくて、本当に急にっていう感じだったんで。でまあ、昨日お通夜で今日告別式みたいなね。すいませんね、しめっぽい話で。で、そうなんです。ライムスター一緒に曲やった、この間のツアーもね、キエるマキュウで僕らの中の曲に参加してもらって、『ドサンピンブルース』という曲でライブも出てもらって。

RHYMESTER『ドサンピンブルース』

ちょうどこの番組でも話しましたかね。オープニングトークでね。大阪でね、大阪っていうか毎回出る度にステージ上で奇行はするんですけど、大阪でまたとんでもないことやらかしたぞとか。

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マキくん元々広島の人なんで、広島のライブにも来て。出演して。その後、打ち上げの後に僕とウチのスタープレイヤーズという事務所の社長の岸くんとマキくんと3人で広島の街に飲みに行こう!っつって。で、マキくんが『マキくん、広島の街、地元なんだからお店知ってるでしょ?』『おう、知ってるよ、士郎くん!』っつって行ったら案の定知らなくて。で、通りかかった広島のライブに来てくださったご夫婦ね、お客さんだった人と店聞いて、そのご夫婦と一緒に5人で広島の街のすごい素敵なイタリアンバーに飲みに行って。

というのが生前は最後かな・・・っていうね、感じ。まあちょっとね、あんまりこんな話してるとね、しめっぽくなっちゃうし、マキくん自体はね、しめっぽいの嫌いだと思いますんで。ちょっと曲をかけたいと思っております。マキくんね。あの、今となってはキエるマキュウのMAKI THE MAGICというのがすごく有名になっちゃったから、みなさんもう忘れちゃってるかもしれませんが、マキくんは元々はクラブDJなわけですよね。でまあ、曲も作るプロデューサーで、MAKI&TAIKIというチームで例えば『末期症状』というZEEBRAとMUMMY-Dの日本語ラップのクラシック中のクラシックありますけど。

『末期症状』

音側の人だったわけですよ。あくまでね。でね、クラブとかで会うとめちゃめちゃ楽しい、すごい素敵なというかね。酔っ払うとだいたい何言ってるか分かんなくなるんですけど。『し、士郎くん!ライムスターのなんか・・・う、ヴィスコンティだよ!』(笑)。ヴィスコンティとかすごい好きで。実はすごいインテリでもあるんですけど。

映画も詳しいし、小説とかもすごい読んでて。そのマキくん、元々は音側の人だったのに、それが元々BUDDHA BRANDのCQというラッパーとキエるマキュウというラップグループを組んで、しかもDJじゃなくてラッパーとして!っていう時に、俺たち、ええーっ!?って。『マ、マキくん、ラップすんの!?』みたいな感じになった。

まあ、前からDJやる時にマイクはよく握ってて、それでこう、カモン!っていうのが『チャモーン!』っていうね。『チャモン、チャモーン!』っていうね。まあ、これが大好きでライムスターの曲でもシャウトはよくフィーチャーしてたんですけど。ラップすんの!?で、最初に聞いたのがキエるマキュウの最初のシングルの、これから聞いてもらおうと思ってるんですけど、2000年に出した『NANJAI(ナンジャイ)』っていう曲なんですよ。で、頭のところからいきなりマキくんがラップを始めるわけですけど、もう何て言うのかな?とにかく破天荒!破天荒!すごい!っていうね、ことだと思いますよね。

あの、本当にね、素晴らしいDJであり、素晴らしい男くさい、骨太な、どストレートHIPHOPのトラック作らせたら世界一の素晴らしいHIPHOPプロデューサーであり、そしてもう唯一無二のラッパーでありね。あの、一拍に言葉・単語を入れるという新しいテクニックを編み出した、破天荒なラッパーであり、そして何よりそれ以上に我々の良き飲み仲間、良き友人であり、酔っ払うと何言ってるか分からなくなるところも含めて大好きで。そして、今日ご家族とお会いして分かったのは、すごい本当に最っ高の良きパパでもあったというね。マキくんで。みんな大好きマキくんなんでね。

あの、是非是非ちょっとしめっぽい!どうしてもしめっぽくなっちゃうけど、とにかくマキくんの豪快な、破天荒なラップを聞いて、とにかく泣き笑いする感じで聞いてもらいたい。とにかく、これでマキくんがラップ入ってきた時の俺たちの衝撃!これをね、みなさんに体感してもらいたいと思います。俺、日本語ラップの中で、前から公言してますけど、1・2を争うぐらい、日本語ラップ全体の中で1・2を争うぐらい大好きな曲です。お聞き下さい。キエるマキュウで『ナンジャイ』!

キエるマキュウ『ナンジャイ』

これほど追悼感にふさわしくない曲もないでしょう。もう、こういうことなんですよ。もちろん、折りにふれね、マキくんの曲、当然聞き返したりプレイしたりもするでしょうし、マキくんの面白い話みたいなのも何度となく話して、何度となくまたゲラゲラ笑ってっていう日々。要はその、忘れるわけがない人なんでね。

みなさんもね、そういうMAKI THE MAGICの作品ね、この機会にあらためて聞いたりとかね、していただけると。あと、ライムスターの武道館のDVDで俺がマキくんに握手を無視される・・・2回?3回連続だっけ?無視されるとかね、そういう場面を見てですね、折りにふれ、マキくんという人を思い出していただければ幸いであります。

<書き起こしおわり>

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