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宇多丸 『実写版 進撃の巨人 後篇』を語る

町山智浩 実写版映画『進撃の巨人 後篇』を語る 宇多丸のウィークエンド・シャッフル
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ライムスター宇多丸さんがTBSラジオ『ウィークエンドシャッフル』の中で『実写版 進撃の巨人 後篇』について映画評論していました。

(宇多丸)今夜扱う映画は、先週、ムービーガチャマシンを回して決まったこの映画。『進撃の巨人 Attack On Titan エンド オブ ザ ワールド』。諫山創による超人気コミックを実写化したアクション巨編の後篇。巨人に変身した主人公エレンの謎や、壁に囲まれた世界の秘密が明かされる。原作にはない、今日大型巨人とのバトルも見物。監督は前篇に引き続き、樋口真嗣監督。出演は三浦春馬や長谷川博己、水原希子らということでございます。

さあ、ということでもうこの作品を見たよというリスナーのみなさま、ウォッチメンからの監視報告をメールなどで頂いております。メールの量はですね、まあ多い方ではある。普通より。ただしですね、前篇に比べると半分ぐらい。前篇は今年のトップ3に入るほどの量だった。まあ、やっぱりね、町山さん脚本とか。そういういろんな取っかかりもございますので。いろいろ言いたいことが溜まっていた前篇に比べて、後篇はちょっと半分ぐらいになっちゃった。

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リスナー感想メールの傾向

賛否の比率で言うと、賛が1割。覚悟して行ったら思ったよりひどくなかったが4割。残り5割がほぼ全面的に否定的な意見。まあ、でも悪くなかったって人も4割いるんですから。否定派の意見は『前篇の見どころがなくなって、ただただ退屈』『話はともかく、演出がひどい』『前後篇に分ける必要なし』などほぼ同じダメ出しが並ぶ。擁護派は、『最後のバトルシーンは迫力があった』『ちゃんと謎が明かされるところがよかった』などなど意見がございました。代表的なところをご紹介いたしましょう。

(リスナー投稿メール省略)

『進撃の巨人 Attack On Titan エンド オブ ザ ワールド』。進撃の巨人 実写版後篇。私も2度、見てまいりました。TOHOシネマズ日本橋で2度ほど見てまいりました。8月8日に前篇の評をしましたけど。まず最初にちょっと言っておきたい。先週、ムービーガチャを回す際にですね、スタジオに直接お越しいただいた映画評論家にしてみなさんご存知、今回の『進撃の巨人』の実写版の脚本家でもある町山智浩さん。

一応言っておくとですね、みなさん、町山さんが絡んでいるということでなんかね、出来がアレなもんで。いろんなことを言ってますけど。一応言っておきますと、評論家出身で実作者に転じて成功した例。一流の作り手になった例なんて、世界中で山ほどあるので。『評論家だから映画が作れない』とかっていうのは単純に無知な発言なんでやめた方がいいですよっていう感じがします。まあ、今回のこれがどうかはちょっとまた別の話として。で、とにかくそのみんな大好き町山智浩さんがですね、先週の放送でポロリと漏らしてしまっていたので。『もう、町山さん、それ、言う!?』と思ったんだけど。

宇多丸と町山智浩 『実写版 進撃の巨人』を語る
町山智浩さんがTBSラジオ『タマフル』にゲスト出演。自身が脚本を手がけた『実写版 進撃の巨人』について宇多丸さんと話していました。

もうこの機会に、僕からも改めて明かしちゃいますけど。昨年の冬ぐらいかな?去年。とにかく2014年の冬ぐらいだったかと思うんですけど、1度、撮影に入る前に、もちろん完全非公式に。つまり、要は脚本協力とかそういう仕事としてではなく、本当に個人的にということで言っていいと思いますけども、町山さんに、今回の進撃脚本の第何稿目か。要するに今回、映画になっている版よりもうちょっと前の版ですね。何稿目か、見せてもらって。『ちょっとどう思う?』って意見を求められるという機会がたしかにありました。

で、それを町山さんがポロッと先週、言っちゃったんです。『宇多丸くん、脚本見せた時に言ってよ!』なんてね(笑)。『ちょっと!』っつって。で、ですね、ただなんで僕、それを言わなかったかって、もちろんね、本来なら門外不出のものを見せていただいているわけだし。何より、やっぱりこれが最大の理由ですよ。実際に作品が公開されたら、僕はやっぱりこの番組でフラットなスタンスで評したいから。脚本を見てなんとか・・・みたいなことは、要するに『僕、これを見なかったことにしますから』っていう風に、町山さんにも強く言ったんですね。はい。っていう感じです。

で、まあ意見も言ったんですけど。もちろん。ちなみにですね、その脚本。僕が見た第何稿目かの脚本は、実際に出来上がった作品と比べてみると、もちろんかなり同じ所も多いんですけども。同時にですね、まあ変わってるところ。『あっ、あのところ、丸ごと削られてるんだ』とか。『あっ、ここ、こういう風に変えちゃったんだ』とか。あと、脚本上の印象とかなり違うところも多かったっていうのが僕の印象ですし。あと、まあ見せていただいたのが撮影前とは言え、撮影がかなり近づいていた時期というのもあって。僕は何個か、提案したんですけど。まあ、結局それは1個も反映されてなかった。まあ、反映するにはちょっと無理な時期だったんだと思うんですけど。はい。

もっと根本的な話もいっぱいしてたんで。というのは、そもそも僕がいちばん言ったのは、『これって細かい辻褄を合わせるとかどうこうじゃないんじゃないですかね?それよりも、やっぱり進撃の巨人は実写化するっていう時にいちばんのハードルは、この世界観をどこまで説得力のある・・・パッと見て説得力のある画にできるか。特に人間のところっていうところじゃないですか?』っていう風に言ってですね。実際にそれはもちろん、今回の実写化にあたって、関わった作り手のみなさんみんなが、わざわざ僕に言われんでも百も承知のハードルだったはずだとは思うんですけど。

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前篇評の振り返り

で、その意味で、前篇評を改めてまとめておきますと、前篇。もちろん上手く行っているところもちゃんとあったと思います。僕なんかね、僕が8月8日にやった前篇評が、なんか外野の拡散していく時にはさ、『宇多丸が酷評』的に流布されちゃっているようだけど。
https://miyearnzzlabo.com/archives/29211

別に僕、否定一辺倒だったわけじゃないと思うんですよね。あの、評価しているところはしてたと思います。特にまあ、多くの人が認めている通り、やっぱり巨人描写。超キモくてグロい巨人描写は、まあ現代日本映画としては画期的なレベルで攻めていると思うし。

あるいは、人物で言ってもですね、特に水原希子演じるミカサは、やっぱり画的な説得力が半端ない。『おお、これは実写化っていう感じですね』っていう感じですし。あと、たとえば町山さんが関わった脚本的にも、主人公エレンの動機付けを強化する改変。まあ、主人公の追い込みをもうちょっと厳しくしているなんてあたりも、ちゃんと理がある作りだなっていう風に思っています。そういうところはちゃんと評価していると思います。

ただ、まあ評の中でも再三指摘した通り、先ほどのメールにもありましたけど。まあ、人間の会話などですね、平場のシーンがことごとく、はっきり言っちゃえばやっぱり演出的もっと言えば演劇的に、まあ稚拙というかダサく見えてしまい過ぎていると。つまりですね、こういうことだと思うんです。それこそ、脚本段階で場面ごとに込められた意図っていうのがあるとして、脚本段階で場面ごとに込められた意図と、それを実際に映画にする、画にする際の演出や演技の手際というのに大きな齟齬がある。大きなギャップがあるっていう問題なんだと思います。

なので、見ている間、全編、『ああ、この場面でやりたいことはわかる。何がやりたいかはわかる。けども・・・』っていうのの連続になっちゃっているということですね。はい。で、特にね、僕、ここが言いたかったと思うのは、これ前篇の話ですけど。冒頭で、巨人襲来シーンはそれなりに迫力がありますし、攻めた描写なんですが。巨人襲来までの15分ほどで、三浦春馬さん演じる主人公エレンの心情。つまり、世界の片隅で、ここではないどこかっていうのを夢みる。いまの環境には飽きたらないんだって、ここではないどこかを夢みる若者。

これはすごく普遍的な心情です。言ってみれば、たとえば『スターウォーズ』の1作目。エピソード4のルーク・スカイウォーカーがタトゥイーンというね、宇宙の片隅の田舎で2つの夕陽を眺めながら、『俺はここで一生を終えるのか』って。あそこはもう、世界中の若者があそこで、ルークにワッて感情移入する。『そうだ!』って。『かわいそうに』とも思うし。なるんですけど。ここでやっぱり観客をですね、言っていることは同じなのに、今回の実写版は上手く観客を感情的に乗せきれなかったっていうのが非常に痛いと思います。つまり、全編に渡っていまいち乗りきれないまま行っちゃうのが、この冒頭で失敗しちゃっているのは大きいと。これ、春日太一さんもおっしゃってましたね。

っていうのは、これはまさに実際に演技してみるとよりはっきりすることなんですよね。脚本上で見るよりも。三浦春馬さん。イケメンの長身すぎて、まずもう見た目ですでに、『お前がイケてないみたいなことを言われてもな・・・』って。で、なおかつ、たとえば先ほどルークっていう例をあげましたけど。ルークと違って、彼にはすでに美女のガールフレンドっていうか、友達にも慕われ、しかも、その水原希子演じる美女は自分に惚れている感じで。なんか、そのルークのおじさんとおばさんと暮らして農業をやってずっとここで終わっていくのか。ああ、かわいそう・・・って。孤独感があんまりないんですよね。

お前、別になんかリア充の愚痴りみたいになっちゃってて。『なんか、あんまりお前、同情できねーな』っていう感じにやっぱりなっちゃっていうのが痛いんじゃないですかね?はい。加えてですね、これ、やっぱり三浦さん演じるエレンっていうキャラクターのテンションがですね、見た方、結構うんざりするところだと思いますけど。とにかくやたらと大声で怒鳴ったり叫んだり。ウワーッ!って。『声で、音に反応して巨人が来ちゃうから・・・』って言っているのに、ウワーッ!っていうところ。

これ、僕が読ませてもらった脚本だと、やっぱり壁に向かって苦悶の声を上げるというような描写だったんで。わぁ・・・って。それが、本当にワーッ!って本当になっちゃっているとかですね。大きな身のこなしだったり。要は言っちゃえば、非常に舞台的なというか。劇団☆新感線的なって言えばいいかもしれませんけど。すごく大仰な芝居とか演技があって。別にそれ自体が悪いわけじゃないんです。たとえば劇団☆新感線はその世界観で全部できているから。特に舞台だったらそれで問題ないんですけど。

映画の中で、しかもそれが非常に不統一にそれを出されると、なんかすごく不自然さというのが際立っちゃう。というのは、こっちではそういう、なんて言うのかな?『ナントカかーっ!』みたいな、そういう大仰な芝居だと思ったら、一方ではユルユルな、まあ若者言葉っていうか、そういう今時っぽい笑いみたいなものも含めた・・・でも、笑えないコミカル演技・演出が。ユルユルなのが入ったり。かと思えば、一方では石原さとみ演じるハンジっていうキャラクターの、モロにアニメキャラ然とした非常にデフォルメされた演技とかですね。ゴッチャゴチャになっちゃっている。

その演技のレベルが統一されていないので、余計その、特に主人公の三浦さんは浮いちゃって。稚拙に見えちゃうっていう。トータルで非常に粗雑な印象を受ける用になっちゃっている。これはもう、はっきり演出。つまり監督の責任です。これは。はい。そういう世界観を、要するに映画っていうのは総合芸術だから、いろんな異なる要素を、やっぱり一つのガッチリした世界観でバン!って見せて。で、それが監督の仕事なわけで。だから、映画っていうのは監督の作品だって言われるわけなんだから。これ、やっぱり監督 樋口さんの責任だという風に言わざるを得ないと思います。

で、まあこんな感じが前篇の評だったわけですけど。じゃあ、今回の後篇はどうか?っていうとですね、これはまさしくですね、僕ごとき映画に関して素人がですね、ボケッと脚本を読んでいる時点ではあんまりわかっていなかったところですよ。で、実際映画になってみると、でも誰の目にも明らかな問題点っていう。これも多くの方ね、メールでも指摘されていました。要はですね、もともと一本の長編映画として企画され、そのように脚本をデベロップメントさせたものを、途中から前後篇に分けた。

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途中で前後篇に分けられた作品

で、これは事情をいろんな風に憶測飛んでますけども。これ、もう町山さんに直接聞いてたし、悪いことじゃないから言っちゃいますけど。要は、2本分にした方が予算が増すっていうことです。で、それによって描けるものが増えるっていう事情です。だから要するに、一応良くするための前後篇なんだっていうことですね。なので、決して金儲けのためにっていうわけじゃないっていうのはフォローしておきます。ただ、同時に、なんで予算に見合った企画を立てないのか?とはやっぱり・・・なんか、本末転倒じゃないかな?って思うけど。まあ、でも一応そういうあれで前後篇に分けた。

で、その結果どうなったか?っていうと、要は構成のバランスがやっぱり崩れちゃっているわけですよ。要するに本来だったら長い話の途中に来るようなところから話を始めざるを得ないので。具体的に言うと、今回の後篇は、87分間の上映時間中、最初の1時間ほどは派手な見せ場がほとんどいない。非常に静的な、静かな会話劇が続くことになっちゃっていると。で、それこそ僕が見せていただいたもともとの、僕が読んだ段階の脚本ではまだ、たとえばエレンが『お前、巨人なんじゃないか?』って。國村隼さん演じるクバルっていう偉い人に尋問されるシーン。

あそこも、いま、なんかよくわからないSMポーズみたいな感じで縛られてますけど。滑り台に。元の読んだやつだと、首吊りの輪っかがついていて、足元がグラグラしたものになっているっていう。要はですね、会話劇だけじゃ持たないから、そういうサスペンス要素を入れて持たせるようにする工夫だったりとか。あるいは、その直後。鎧の巨人がバーン!と出てきて。謎の巨人が出てきて、エレンが連れ去られるというくだり。ここもその後に立体機動によってそれを追いかけるっていうチェイスシーンがくっついていたんですね。もともとね。

ただ、正直実際の今回の実写版の進撃の巨人の立体機動。要するにグワーッ!と宙に浮くあの仕掛けの描写を見ると、まあ、脚本に書かれたシーンを実際に画にするのは、正直無理だったんだろうなと思います。いまのでさえ、できてないのに、そんな複雑なシーンはできなかったろうなと思いますけど。とにかく見せ場不足をなんとか補おうとしてたんだけど・・・と。まあ、そういうのもなくて。もうひたすら、ただただ会話シーンが続く。それをもってやっぱり退屈っていう人が多いのも当然だと思います。

ただまあ、これ結果的にですけど、その会話劇っていうの。まあ、三浦春馬さんと國村隼さん。あるいは三浦春馬さんと長谷川博己さんというですね、要は演技の大仰さのレベルが一致しているもの同士の一対一の会話劇がメインなので、前篇で私がさっき指摘したようなチグハグさ。要するに演技のレベルが合っていないものが混在していて、なんか雑だし・・・っていう。で、なんか稚拙なものを見る気まずさみたいな。そういうようなものは実は今回、後退していると思います。実は。

見ていて辛いみたいなところはちょっと減ったと思います。正直。ただまあ、三浦春馬さん演じるエレンはやっぱり、たとえばシキシマという長谷川博己さん演じるキャラクターに問いつめられて、本人の頭の中で葛藤をすると。で、その葛藤をワッ!と振り切る時に、これは脚本になかったなー。やっぱり、ワーッ!とか、わめくんですよ。わめいたりとかね、とにかく、わめいたり叫びだしたりっていう調子が続くっていうのも相変わらずだと思います。

あと、さっき言ったように演技の質が統一されているので、気まずさは減りました。ただ、面白いか?っていうと、面白くはないです。えー・・・みたいなね。で、その長谷川博己さん演じるシキシマというキャラクター。これは原作におけるリヴァイって言われてますけど。っていうよりぶっちゃけ、シャアです。ガンダムにおけるシャアです。『逆襲のシャア』です。はっきり言って。はい。全体にセリフ回しも富野っぽい感じという風に思うと納得しやすいんじゃないでしょうかね?

まあとにかくシキシマさん。今回の実写版オリジナルの種明かしをする。その種明かしをする白い部屋。白い部屋ものっていうのがあるわけですよ。白い部屋の系譜っていうのが。まあ、いちばん有名なのは当然、『2001年宇宙の旅』なわけだけど。今回の『エンド オブ ザ ワールド』に出てくる白い部屋の展開はこれ、モロに。モロにです。『マトリックス リローデッド』です。『マトリックス リローデッド』のアーキテクチャーっていう、マトリックスの世界を作った、構築したアーキテクチャーっていう人が説明をするシーンがあって。あのシーンがモロにやっているわけですけど。

とにかく、ああいう白い部屋展開。僕は結構好きなんですよ。突拍子もなければ突拍子もないほどいい。それまでの世界観とぜんぜん違うものがボーン!と出てくる。その突拍子のなさ、僕、結構好きなんですよ。ただ、先ほど言ったように、今回後篇は構成のバランスがそもそも崩れちゃっているので。開始30分すぎほど。映画の前半でそういうトリッキーな、飛び道具的な展開が来ちゃうっていうバランスの悪さはもちろんあるんですけど。

で、ここでですね、非常に展開そのものは嫌いじゃないんだけど、たとえば過去の映像でなぜ巨人が世界に現れて増殖していったか?っていういきさつ。経緯を語るんですけども。シキシマが。ここでもうちょっと、画的に楽しませてくれればいいのになって思うんですね。まあ、画的にちょっとは見せてくれるんだけど、短いし。あまりにも断片的すぎて。と言うのもですね、これ、後で言いますけども。今回のメールでも文句言っている人が多かったですが。前回の美点であった雑魚巨人。中型巨人っていうかですね。の、出番がほとんどないんです。ほとんど出てこない。

せめて、ここで改めて、今回の後篇にはあんまり出しようもない、一大地獄絵図みたいなのをここでもう1回、ちゃんと画で見せる。一瞬でいいから、ちゃんとディザスターシーンとして見せる。そうするとだいぶ満足度、違ったと思うんですよね。ここで画的な満足度をちゃんとさ、やることはぜんぜんできたはずだし。あと、なにがガッカリしたって、その白い部屋展開で出てきているのに、そこで、21世紀のテクノロジーの名残りっていうことか知らないですけど、シキシマがいじっているリモコンがApple TVの。俺んちにもあるやつですよ。俺んちにもあるリモコン。まんまなんすよ。銀色の。

だから、あれが家にある人は、『はぁ!?』っていうか。いや、そのテクノロジーの残り物使っているとはいえ、まんまか!?みたいな。映画秘宝のね、柳下毅一郎さんの解釈に僕、大爆笑してしまいましたね。前篇のシキシマのリンゴ使いと合わせて、『アップルマニアだ』っていうね(笑)。『アップル信者だった』っていう(笑)。うーん。とかね、本当にこれ、すっごくダサいし安く見えがちな。本当にね、なんでこういうところでこういうことしちゃうの?って。ダッサ!っていう。『ひょっとして、Apple TVのリモコンを使うのがかっこいいとでも思っているの!?』みたいなね。

その後、他のメンツとね、また合流してから先は、さっきから何度も言っているユルユル演技と演出の。要するに演技の統一感がない。ユルユル演技がダサく見えちゃう問題が再び前面化すると。全体に樋口さんはそのカット尻のテンポが悪いという傾向が本当にあるとは思うんですが。特に今回ね、目立っているのはですね、前回もちょっとあったけど、桜庭ななみさんが演じるサシャというね、食いしん坊かつ弓少女キャラがいるんですけど。

たとえばね、このサシャが心を閉ざしている水原希子演じるヒロインのミカサに、だんだん心を開いていくっていう過程。そのミカサに、花を上げるっていうんですよ。で、『その花もさ、もうちょっともらってうれしい感じの花をあげろよ!お前、それなんか雑草のつぼみみたいなの渡してもうれしくねえよ!』みたいな感じなんだけど。まあ、渡す。それで心を開いて。この描写はまあ、百歩譲っていいとしても、その後、トラックの荷台でもう1回、サシャがジャガイモをあげるっていうくだりがあるんですよ。

同じことをもう1回やっている。しかも、この2度目は驚くべきことに、ミカサはそのジャガイモを受け取らないんですよ!で、サシャがこうやって笑いながら自分の胸に入れるんですけど。拒否かよ!っていう。だからその心を開く描写として成り立ってねえじゃん!みたいな。これちなみにジャガイモをあげる展開は僕が読んだ脚本にはなかったんですけど。あのさ、『進撃の巨人』っていう作品はそもそも、諫山創先生がですね、福田里香先生のフード演出理論にインスパイアされていろいろ書いたという風に公言もされている作品ですよね?なのに、映画版はそれが全くできてないってどういうこと!?っていう。

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フード演出が全くできていない

たとえばね、シキシマのリンゴ食べすぎ問題も然りですよ。前篇でですね、『誘惑者のシンボルとしてリンゴを使うってベタすぎてダサくない?』なんてことを言いましたけど。それは別にしても、たとえばキャラの立ち位置的にシキシマっていうのは、特にあの場面では、正体不明者なんだからあんまり物とか食わせない方が絶対にミステリアスでいいのに。なんか物を食わすとね、妙に人間臭くなっちゃうっていう問題もある。あとはそのサシャ。今回、リンゴを投げ捨てる。

あの食いしん坊がリンゴを投げ捨てるなんて!っていうことが言いたいのかもしれないけど、食べ物を投げ捨てちゃダメだよね。シキシマに投げ返すでいいのに。シキシマがバッて。さっきあげたはずのリンゴをあれで、何!?って思ったでいいのにさ。うーん。まあ、そういうところでフード演出が本当に雑で。これはあの、『進撃の巨人』っていう作品の実写版として、実写化の人たちがちょっとダメ。勉強不足じゃないですか?って思っちゃうところだと思いますね。はい。

あと、前篇でマッシュポテトで作品を説明するところも、『未知との遭遇』ネタっていうのはわかるけど。『未知との遭遇』はさ、飽食のアメリカだからあの演出があれなんで。なんか食べ物の貴重感が薄れるからやっぱりやめた方がいいですよとかね、ありますね。はい。あと、文句は続きますけども。その後に続くですね、サンナギっていう力持ちキャラ。前回もね、巨人に一本背負い投げなんてして、びっくりしちゃいましたけど。今回も力持ち度がもう度を越しててですね。巨大な塔をもう、グーッ!と引っ張って倒すっていう(笑)。無敵の男、ドゥエイン・ジョンソンかサンナギか?っていうことになっちゃっていて。そのへんももう、ちょっとどうか?と思うんだけども。

文句ばっかり言っているようですけども、今回、ラスト30分。後篇いちばんの見どころであるエレン巨人対シキシマ巨人っていう対決。要するにそれぞれ、人間から直接変身してできた巨人同士の対決シーン。これはまあ、ぶっちゃけ言えばウルトラマンになるわけです。っていうのは、原作者の諫山先生自身が『進撃の巨人』っていうのの元の意図をまさに『ウルトラマンに格闘技をやらせたかった』なんてことをおっしゃっていて。

これ、まさに今回の実写版。それをね、日本伝統の特撮スタイル。着ぐるみっていうかスーツスタイルで実現した。しかも、樋口真嗣監督とかそういうのがいる、この座組みならではの意義が最大限に生かされた。僕は今回の実写版の中でも、さすがの見応えのシーンだという風に思いました。ここはやっぱり、実写化した意味があるんじゃない?っていう。あと、樋口さんである意味があるなと思うところだと思います。

あと、その戦いのところもですね、ちゃんと前作の伏線を活かした、なぜ勝つか?のロジックがちゃんとあるあれで、僕は結構いいなという風に思います。なぜ勝つか?のロジックがあるだけでも、ぜんぜんいい。ただ、惜しむらくはこの場面ですね、音楽の付け方がノペーッとしてるんですよ。そこで、『あっ!あそこで出たあの技か!』のところでちゃんと音楽にもメリハリをつけて、ちゃんと演出上のカタルシスを持ってくれば、もっと印象的な勝ち方になったのに。ノペーッ。要するに、シキシマが倒れるところまで、同じ音楽が同じテンションで鳴り続けて。まあ正直、『あーあ・・・』って思いましたけどね。ちょっともったいないなっていう風に思ったりしました。

あとですね、ちょっと言い忘れましたけど前篇では単に浮き上がっていた石原さとみ演じるハンジ。僕はちょっと厳し目のことを言いましたけど。今回の後篇では、このアニメキャラ的デフォルメ演技も、出番も多いし、あと、事態がどんどん非日常化してるっていうのもあって。説得力とか納得度は後篇はかなり上方修正しました。ああ、まあまあ・・・って。あと、慣れたっていうのもあるかな?っていう感じもしますけど(笑)。あの、アリに見えました。結構。

クライマックス、壁っていうわかりやすい舞台建てがある分、モロのアクションというか展開は他のところよりだいぶ飲み込みやすくはなっていると思いました。その立体機動とかのわけわかんなくなっちゃっている感じとかはなくなって、だいぶわかりやすいようにはなっていたと思う。ただ、これも僕が読んだ段階の脚本にはなかったんだけど、時限爆弾カウントダウンっていう、あのくだり。何?あのオチ?ギャグなの?どうしたって、あんな展開、あんな見せ方したら、なんか間抜けにしか見えないよ。笑わせようとしてるのかな?って思っちゃうような、ちょっと理解に苦しむような一展開が加わっていたりとかですね。

あとね、穴が空いた壁の近くでドッカンドッカンやっているわけですよ。巨人は音にひかれて入ってくるっていう設定ですよね?雑魚巨人が全くと言っていいほど入ってこない。さっきも言いましたけど、今回、すごく残念なところとして巨人が出てこないっていうけど。まあ、予算の都合なのか知らないですけど、ご都合主義的すぎて、なんのためにここでがんばっているのか、よくわからなくなっちゃっているというのがありますね。はい。

あとまあ、今回の実写版独自のオチは、まあタイトルを言うだけでネタバレになってしまう、あの映画とあの映画のミックスっていう感じなんですが。えー、まあ主人公エレンのね、動機付けっていうのが序盤であんまり上手く行ってないため、最終的にメタファーとしても、壁を乗り越えつつ守るっていうところに上手く着地してるんですよ。上手い着地だとは思うんです。壁を俺は越えるけど、守る。でもあるっていう、上手い着地なのに、いまいちそのテーマ的なカタルシスまで達しないまま来ちゃっているっていう惜しさはあるにしても、まあ、ちゃんとオチはついていると思うし。僕は別に嫌いじゃないです。

ラストの壁の外の風景とかも、ちゃんときっちり作り込んでいるなと思うし。音楽。そこになるとトーンを完全に変えた盛り上がりとかも、こういうのはいいんじゃないって。僕が提案したのとは、これちょっと違うんですけど。はい。みたいな。まあ、でもこれはこれでいいと思います。ということで、まあ前篇とはまた違ったポイントが良かったり悪かったりと。ひとつ言えるのは、『うわっ!きつっ!』みたいな寒ーいところ。大きいマイナスポイントも減ったけど、同時に『あっ、ここはいいじゃん!』って、攻めているところも減ったというのは確かじゃないでしょうか。

はっきり言えるのは、エンドクレジット後にですね、おまけ展開みたいなのが付くんですけど。まあ、正直、『えっ、まだやる気?まだ続き・・・もう、いいかな?』みたいに感じたのは事実でございますけどね。はい。ということで、とは言え、たとえば脚本、今回ね、長編劇場用としては初めて挑戦された町山さんは、やっぱり処女作なんだから。『もっとこれからも挑戦し続ければいいじゃないですか』と本人にも言いましたし。是非、僕はそうしてほしいと思いますし。

まあ、樋口さんに関しては特技監督に専念した方がいいんじゃないかな?という風には思いますが。あの、見る価値なしとか、そういう風には全く思いません。僕は。たとえばこれをもって、『日本映画はやっぱりダメだ』みたいなことをしたり顔で言われると、『そこまでひどくはないだろ?』って言いたいのと、もうひとつは、『いや、日本映画って言うけど、すげーのいっぱいあるんだよ?お前、知らねえだけだよ』っていうのもあって。両方の意味でも腹立つので。『なんか知ったようなことを言わないでくれ』とも思ったりもします。

ぜんぜん意義あるトライではあったんじゃないでしょうか?何より、祭り感は出たじゃないですか。いろいろああだこうだ言って楽しかったっすよ。この2ヶ月間、楽しませていただきましたよ。リアルタイムで僕は参加して良かった祭りだったなという風に思っております。『進撃の巨人後篇』。前篇と合わせてぜひ、劇場でウォッチしてください!

<書き起こしおわり>

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