町山智浩『マイティ・ソー バトルロイヤル』を語る

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町山智浩さんがTBSラジオ『たまむすび』の中でマーベル映画『マイティ・ソー バトルロイヤル』を紹介していました。



(町山智浩)で、今日の話です。本題ですよ。もう13分たってしまって、あと10分しかないんですが、音楽をお願いします!



(山里亮太)あ、ブルーザー・ブロディだ。

(町山智浩)はい。いま、「ブルーザー・ブロディ」って山ちゃん、言いました?

(山里亮太)はい。

(町山智浩)そうですよ。ブルーザー・ブロディの入場の音楽なんですね。これ、レッド・ツェッペリンの『移民の歌』という歌なんですけど、これね、ブルーザー・ブロディはたぶん許可を取っていなかったと思うんですよ。

(山里亮太)ああ、そうなんですか?

(町山智浩)レッド・ツェッペリンはギタリストのジミー・ペイジというウルトラケチ人間がいまして。

(海保知里)ケチなんだ(笑)。

(町山智浩)ケチなんで、なかなか音楽を使わせないんですよ。特にこの『移民の歌』とか『胸いっぱいの愛を』とか『天国の階段』とかヒット曲は使わせないんですよ。すごい金を取るんですよ。

(海保知里)ふーん!

(山里亮太)でも、代表的ですよ。ブルーザー・ブロディ。

(町山智浩)そうなんですよ。でもこれはね、今回『マイティ・ソー バトルロイヤル』という映画でバリバリに使っているんです。で、これは監督が「どうしてもこれが使いたい!」っていうんで一生懸命交渉をして、やっと使えたそうです。

(山里亮太)ああ、じゃあ結構なお金が動いたんだ。

『移民の歌』とリンクする内容

(町山智浩)と、思うんですよ。ただ、これは歌詞が完全に映画の内容と同じなんで、使わざるを得なかったんだと思います。これはね、イギリスにノルウェーからノルマン人という……まあ、バイキングですね。それがやって来て、侵略に来たってことを歌っているんですよ。で、この『マイティ・ソー』のソーっていう主人公はノルウェーとかスウェーデンとかの北欧神話の雷の神様。雷神のことなんですね。で、この歌詞の中で「我々は白夜の大地からやってきた。神々のハンマーが我らの船を新天地に導いた(We come from the land of the ice and snow From the midnight sun, where the hot springs flow
The hammer of the gods W’ell drive our ships to new lands)」っていう歌詞なんですよ。

(山里亮太)ああ、まんまソーですね。

(町山智浩)そのまんまなんですよ。「神々のハンマー」っていうのはこれ、ソーが持っているでっかいトンカチですね。ムジョルニアっていうんですけど。地球を滅ぼすこともできるハンマーなんですが。今回、この映画はそのソーのハンマーが通用しない強敵が出てくるんですよ。それが、ケイト・ブランシェットっていう強敵なんですよ。

(海保知里)ええっ? ケイト・ブランシェットが?(笑)。

(町山智浩)アカデミー賞女優です。まあ、あの人が来たら怖くてね、ハーヴェイ・ワインスタインも怖かったと思うんですよ。ケイト・ブランシェットだけは。誰も立ち向かえない人ですけども。で、今回『バトルロイヤル』っていうタイトルで日本で公開されているんですけど、これは原題は『Ragnarok(ラグナロク)』っていうんですね。ラグナロクっていうのはゲームにもなっているし、ラノベにもなっているんで、山ちゃんの世代だと知らないんですけど、30代以下はみんな知っている言葉です。ラグナロクって。

(山里亮太)えっ、そうなんですか?

(海保知里)知ってます?

(町山智浩)知ってます。みんな、知ってます。

(海保知里)なんだろう? 『ファイナルファンタジー』の武器でラグナロクってあるけど……。

(町山智浩)そうそうそう! ラグナロクっていうのは北欧神話における、神々の国が滅びることなんですよ。

(海保知里)へー!

(町山智浩)前に『エイリアン:コヴェナント』でも言ったんですけど、「神々の黄昏」っていう考えなんですね。これ、世界中の神話は全て、「昔は神が地球を支配していたんだけども、いまは人間の世界になっているのはその間に神の世界は滅びたんだ」っていうのが共通しているんですよ。全世界に。それを、北欧においては「ラグナロク」って言うんです。

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(海保知里)へー!

神々の黄昏

(町山智浩)で、これソーが住んでいる星はそういう神だけの星があるんですね。アスガルドっていう。ソーはそこの王子様なんですけど。そのアスガルドにソーの極道姉ちゃんのケイト・ブランシェットが帰ってくるんですよ。ムショに入っていたんですけど。

(海保知里)そうなんだ(笑)。

(町山智浩)で、そのアスガルドを乗っ取ろうとするっていう話なんですよ。だから、神々の黄昏なんですね。神々の国が滅びちゃうから。っていう、まあ非常に壮大なテーマで、原作も非常に悲壮で凄まじい話なんですけど。で、『ラグナロク』なんですが……お笑いでした。

(山里亮太)お笑い?

(町山智浩)コメディーになってました(笑)。これね、監督がタイカ・ワイティティっていう人で、すごい不思議な名前だと思うんですけど、この人はニュージーランドの先住民のマオリ族の人なんですね。で、この人はずっとお笑いばっかり作っている人なんですよ。本人もコメディアンなんですよ。

(山里亮太)へー!

(町山智浩)で、この人が今回『ラグナロク』をやったから、神々の黄昏なのにお笑い映画になっているんですよ(笑)。

(山里亮太)できるんですか? そんなこと……。

(町山智浩)これ、すごいんですよ。戦っているんですけど、ずっとジョークばっかり言っているんですよ。雑談みたいな映画なんですよ。

(海保知里)へー! 雑談?

(町山智浩)そう。この人ね、この前に撮って日本で公開された映画では、『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』っていう映画があるんですね。これはいわゆる『テラスハウス』とかのシェアハウス物なんですよ。『聖☆おにいさん』っていう漫画がありますよね? お釈迦様とキリストが安アパートに住んでいる。あれと同じで、吸血鬼たちが安アパートをシェアして暮らしているっていうコメディーなんですよ。で、吸血鬼なんだけど、たとえば「今日はゴミを出す日か?」とか。「コンビニに行って○○を買った」とか、そういう会話ばっかりしてるんですよ。

(海保知里)アハハハハッ……。

(町山智浩)そういう非常に日常感あふれる、雑談感あふれる映画を撮っていた人がこのタイカ・ワイティティさんで。今回もその、神々の国が滅びるというのに主人公のソーは自分の相棒のイタズラの神様ロキと兄弟漫才とかをずっとしてるんですよ。

(海保知里)へー!

(町山智浩)それで地球に行って2人で道端にいると、普通の女子高生かなんかが「わーっ、ソーちゃんだ!」とか言って。「一緒に写真撮って!」とか言って、スマホで写真撮っているんですよ。どこまでカジュアルなんだ?っていう。神様と一緒に写真を撮っているんですけど(笑)。そういうノリでずっと行く、変な映画なんですよ。

(海保知里)ふーん!

(町山智浩)で、このロキがまたね、前の『アベンジャーズ』シリーズでは地球を支配しようとした悪い神様なんですけど。もう今回はほとんど『ゲゲゲの鬼太郎』におけるねずみ男みたいなキャラなんですよ。

(海保知里)そうなっちゃうんだ(笑)。

(町山智浩)嘘ばっかりついているんですよ。そういうね、嘘をついて裏切ってね、なんかコソコソコソコソしている役で。非常に二枚目のトム・ヒドルストンが演じているんですけど。ソーの役はクリス・ヘムズワースですけども。2人のイケメンがずっとイチャイチャイチャイチャしているんですよ。「アニキ~」とか言いながら。「弟よ~」みたいな。そこに、ちょっとネタバレになっちゃうかもしれないですけど。まあ、予告編でやっているから。あの、ハルクが出てくるんですね。

(山里亮太)そう。映画館で予告編で流れる時はだいたいそこがメインでドーン!って。最後に出てきて「嘘だろ?」みたいな。

(町山智浩)そうなんです。で、ハルクって緑の巨人になっている時は全く理論が通じなくて、ただ暴力を振るっているだけの怪物じゃないですか。話が通じない。で、人間に戻っている時はブルースって男なんですけど、ウジウジウジウジした中年男なんですよ。……どっちも役に立たないんですよ!

(海保知里)言われてみたら(笑)。

(町山智浩)で、こういうどうしようもない嘘つき弟と、全く役に立たないメンヘラ中年を連れてどうやって神々の国を助けるんだ? 無理だろ、それは?って映画なんですよ。それをまたね、どんなに危機に陥ってもダラダラダラダラ雑談しているんですよ。

(海保知里)へー!

(町山智浩)緊迫感ゼロの映画でしたね。

(山里亮太)そしたら予告編はすごいな。ものすごい緊迫感があって。

(町山智浩)全然ないっすよ(笑)。これはね、この監督のタイカ・ワイティティさんのタッチなんですよ。やっぱりのんびりして、おおらかな感じなんですよ。原作は凄まじい話で悲壮な話なんですけど。いいのか、これ?って思いましけども。

(山里亮太)それは原作を読んでいる人からすると、結構がっかりする仕上がりとかじゃなくて、もう別物っていうぐらいに?

(町山智浩)いや、それが面白いのはね、原作とストーリーも近くて。しかも原作にある残虐シーンとかもあるんですよ。でも、全然悲壮にならないんですよ(笑)。

(海保知里)へー!

(町山智浩)不思議な映画ですね。これは面白い。これ、神様の話って面白いから日本もやればいいんですよ。高天原を舞台にして。ねえ。いろんな、わかんないですけども、オオクニヌシノミコトとかヤマトタケルのコメディーとか、絶対に面白いと思うんですけどね(笑)。

(山里亮太)神話自体がものすごいストーリー、ぶっ飛んでますもんね。

(町山智浩)そう。古事記とかそういうの、やったらいいですよ。

(山里亮太)そうですよね。神様が生まれるきっかけとか、すごいですもんね。

(町山智浩)だって日本を生む時に神様がセックスして生みますからね。で、最初は仕方がわからないから、鳥がセックスするのを見て真似して日本が生まれたって。……偉大な国ですよ、はい(笑)。

(山里亮太)書いてますからね。ちゃんと。

(町山智浩)『古事記』に書いてますからね。っていうね、なにを言ってるかわからないんですが。いま、大変ですよ。日本は映画が面白いのがありすぎで。

(海保知里)本当に時間を作らないとっていうぐらい面白い映画がいっぱい。ということで、今日は現在公開中の映画をまとめて紹介していただきました。町山さん、どうもありがとうございました。

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(山里亮太)ありがとうございました。

(町山智浩)どもでした。

<書き起こしおわり>

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