林剛と松尾潔 ESSENCE Festival 2017を語る

林剛と松尾潔 ESSENCE Festival 2017を語る 松尾潔のメロウな夜

林剛さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』にゲスト出演。松尾潔さんと現地取材をした『ESSENCE Festival 2017』の模様について話していました。

(松尾潔)林さんに今日、お越しいただいたのはもちろん、ニューオリンズの観光案内じゃないですよね(笑)。

(林剛)(笑)

(松尾潔)『エッセンス・フェスティバル(ESSENCE Festival)』と呼ばれているR&B、ゴスペルに特化したお祭りというのが毎年、行われていますよね。

(林剛)そうですね。95年から。

(松尾潔)林さんは何年から行かれたんですか?

(林剛)僕は2005年から行ってますね。

(松尾潔)それから毎年、皆勤賞?

(林剛)そうですね。いま13年連続で行っていますね。

(松尾潔)すごいな(笑)。

(林剛)で、僕がだから2005年から行きはじめていて、あとで聞いたら松尾さんが95年から2004年ぐらいまではほぼ毎年ぐらい行かれていたと?

(松尾潔)毎年じゃないですけどね。そうですね。はじめの5年ぐらいは毎年行っていたのかな? それからはまあ、時間があればという感じだったんですけども、僕も最後に行ったのが2004年かな? なんで、ちょっとエッセンスのことをわかったつもりになっているけど、最近どういう感じなのかな? と思って。で、ここしばらくは林さんに毎年、「どんな感じでした?」ってお聞きしていたんですが。で、「エッセンス、エッセンス」っていう風に言っていますけど、「エッセンス」とはなんぞや? というところから、説明していただきましょうか。

(林剛)はい。そうですね。エッセンス・フェスティバル。95年にエッセンス・ミュージック・フェスティバルという名前で始まったんですけども。

(松尾潔)そうでしたね。僕が最初に行った頃は本当に「音楽祭」っていうイメージで行っていましたけども。

(林剛)そうですね。2013年から「エッセンス・フェスティバル」と、「ミュージック」が取れて。

(松尾潔)比較的最近ですね。

(林剛)そうですね。で、もともとエッセンス誌っていう黒人女性、アフリカン・アメリカンの女性を対象にしたブラックカルチャーのカルチャーマガジン(雑誌)というところが主催したフェスティバルで。ニューオリンズのルイジアナ・スーパードームを会場にして始まったというところで。これ最初、松尾さんね。

ESSENCE Magazine

(松尾潔)あの、ニューオリンズっていうのはね、ジャズの発祥の地というところで、もともと黒人音楽好きにとっては聖地のひとつだったんですけども。だから街として音楽祭がどれだけ観光客を呼び寄せるかっていうノウハウはすでにあったと思いますし。あとまあ、なんと言っても街に2月にマルディグラっていう大きな観光行事がありますから。7月、ニューオリンズは大層暑いんで。その時にちょっと観光客が減ったりもしていたらしいので。その時に、お客さんを呼べるようなイベントはないのか? というニューオリンズの街としての思惑と、ちょうど95年に創刊25周年だったエッセンス誌がなにかフェスをやりたいというのが一致したというのが、元の始まりだったと僕は聞いているんで。

(林剛)はい。

(松尾潔)まさかそれから20何年続いて、こんなに成長するフェスティバルになるとは僕、思わなかったんだけど。なにが理由だと思います? こんなに盛り上がって定着しちゃったのは。

(林剛)なんでしょうね? やっぱりそのR&Bの盛り上がりというところが90年代に始まっているフェスじゃないですか。だからやっぱり90年代に、そこからR&Bの隆盛というか、そういう波に乗って成長していったフェスなんだと思います。で、あとなんでニューオリンズでこれをやっているか?っていうのは、僕も別に正確なところを聞いたわけじゃないんですが、やっぱりニューオリンズってアフリカン・アメリカンの人口がすごい多い街で。

(松尾潔)そうですね。

(林剛)で、(ハリケーン)カトリーナの前と後ではちょっと違うんですけども、まあカトリーナの前は人口の7割ぐらいがアフリカン・アメリカン。いわゆる黒人の方がいるということで。そういう意味でも、アフリカン・アメリカンがそれだけ駆けつけても大丈夫な街だというかね、それを受け入れられる街だっていうことでニューオリンズが選ばれたと。

(松尾潔)たしかに、ニューオリンズの住宅街とかはもちろんのこととして、ダウンタウンのいわゆるハイファッションのブランドのお店とか、たくさんありますけども。働いている方々とかもまあほとんどアフリカンですよね。で、お客さんもアフリカンっていう感じですよね。

(林剛)そうですね。だから空港に降りた瞬間に、もうアフリカン・アメリカンの方が多いというところで。だからもうタクシーに乗るとだいたいアフリカン・アメリカンの方だから。それでやっぱりラジオ。向こうの有名なR&Bの専門局のWYLDっていうのがあるんですけど、だいたいそれをかけているんですよ。

(松尾潔)だからタクシーに乗った時からフェスが始まっているっていうね(笑)。

(林剛)そこらへんがね、もう楽しくてしょうがないっていうか。

(松尾潔)たしかに。あの感じ、いまも健在ですか?(笑)。

(林剛)そうですね。今年も僕、そうでしたもん。

(松尾潔)逆にいえば、あれですよね。帰りも空港のタクシーを降りるまで、フェスは続いているんですよね。

(林剛)そうなんですよね。ええ。

(松尾潔)ラジオがあるから。本当にR&Bってラジオ文化だなっていうのもよくわかりますよね。

(林剛)そうですね。僕もかならずホテルでそのWYLDをずーっとつけたまま過ごしていますね。

(松尾潔)いいですね。そういう過ごし方、いいですね。で、まあ今年はね、あとでお話いただきますけども。女性シンガーたちが大活躍した1年だったという風に聞いているんですが。

(林剛)そうですね。今年は2日目がフェス史上はじめての女性オンリーの、女性出演者だけの。

(松尾潔)ひな祭り。

(林剛)そうなんですよ。

(松尾潔)その日、3月3日の日本みたいになっていたんですね?

(林剛)そうですね(笑)。で、全体3日間を通しても、女性アーティストが多かったという。

(松尾潔)なるほど、なるほど。女性の活躍が目立ったという今年のエッセンス・フェスティバルなんですが。まずは1曲。その中でもね、女王的な存在にあたるこの人の曲を聞いてみたいと思います。これは林さんにご紹介いただきましょうかね。

(林剛)はい。メアリー・J.ブライジで『Set Me Free』。

Mary J. Blige『Set Me Free』

(松尾潔)まずお聞きいただきました。メアリー・J.ブライジで『Set Me Free』。もうメアリー・J.ブライジね、『Strength Of A Woman』というアルバムはもう彼女のキャリアの中でも屈指の代表作として後々語られるんではないか? と僕はこの番組でも言っているんですけども。

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(林剛)そうですね。今年屈指のR&Bアルバムにもなるかもしれないですね。

(松尾潔)なるほど。そうかもしれませんね。メアリー・J.ブライジ『Set Me Free』。で、このメアリー・J.ブライジをフィーチャーしたというか、メアリー・J.ブライジを中心として、もういまのコンテンポラリーのシーンで活躍する女性シンガーたちが総結集したのが今年のエッセンスなんですが。これはまた、何故にという理由は明確にされているんですか?

(林剛)特に今年がどうだったかというのはちょっとね……。

(松尾潔)いま、ここにその時のパンフレットをね、林さんが持ち込まれているんですけども。やっぱり中心にいるのが、メアリー・J.ブライジですね。

(林剛)そうですね。

(松尾潔)他の出演者はどんな感じですか?

(林剛)メインステージで言いますけど。このエッセンスってメインステージっていう大きな、スーパードームの中のアリーナでやるコンサートと、その周囲に4つ、ラウンジっていう小さなステージがあって。その5つが同時進行でライブが行われているんですけども。そのメインステージに出演した女性の名前を挙げていくと、まずアリ・レノックスっていうワシントンDCの……。

(松尾潔)これ、いきなりリスナーからすると、ハードル高いですよね。「そういう人がメインステージでやるんだ!?」っていう驚きがありますね。

(林剛)そうですね。アリ・レノックスという。で、二番目がモニカ。三番目がジャズミン・サリヴァン。四番目がジル・スコット。

(松尾潔)僕はいま、さっきから「アトランタ、フィリー(フィラデルフィア)、フィリー」とか思いながら聞いてますけども。意外に地元というよりも、いろんなところからいらしている感じですね。歌う人たちもね。

(林剛)で、ジル・スコット。その次がメアリー・J.ブライジ。その次にチャカ・カーンというね、もう……。

(松尾潔)大トリがチャカ・カーンだ。

(林剛)大トリがチャカ・カーン。このほぼ、まあアリ・レノックスなんかはもう30分ぐらいでライブが終わったんですけども、他のアーティストに関してはほぼフルというか。1時間から1時間半ぐらいのライブをやるっていうね。

(松尾潔)うんうん。チャカ・カーンのスタートって何時ぐらいでした?

(林剛)チャカ・カーンのスタートは11時半っていう風に当初の予定ではなっていたんですけども、実際に始まったのは12時前ぐらいですかね。だから深夜まで続くっていうね。

(松尾潔)けどね、夜の12時って、もうてっぺんからチャカ・カーンが歌い出すという、それだけでたまんないですけどね。

Happy Birthday one of our #EssenceFestNOLA performers, @chakaikhan. We can't wait for her to grace the stage. ????

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(林剛)そうですね。

(松尾潔)なるほどね。で、そのサイドステージというか、ラウンジと呼ばれるところではどんな人が歌っていたんですか?

(林剛)2日目はミッシェレイ。

(松尾潔)懐かしい。『No More Lies』。ドクター・ドレーの元恋人。

(林剛)そうですね。あと、ティアナ・テイラー。あと、リゾっていうプリンス絡みの、プリンスに認められた人。あと、ジェネイ・アイコ。PJ。コモンの新作に参加していましたね。あと、レミー・マー。レイラ・ハサウェイ。そしてジョーンズ・ガールズ feat. シャーリー・ジョーンズ。

This doesn't even include the TV stars, the speakers & the food! #EssenceFest is about to be a LITUATION.

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(松尾潔)私もひとつひとつ引っ張るとよくないと思って「はあ、はあ」としか言っていないですけど、いまひとつひとつに狂喜乱舞しておりますけどもね。へー! ジェネイ・アイコとレイラ・ハサウェイとシャーリー・ジョーンズが同じところで(笑)。同じ場所にいて別々に歌うって、こんな贅沢な悩み、ないですね。

(林剛)ないですね。ただこれが全部見られないところが……まあどのフェスもそうですけど。フェスってそんなもんですけども。っていうところが、なかなか苦しいところで。

(松尾潔)逆にあれですよね。こういう時によく、「いやー、メイン見ちゃったの? それ、損してるよ」みたいな会話をドヤ顔で言い合うっていうのが楽しいんですよね。

(林剛)そうですね。でもだから、モニカを2曲だけ見て、他の好きなアーティストのラウンジに行くとかね。そういう贅沢が。

(松尾潔)僕も何年も行ってたんで、いろんな組み方で行ったんですよ。けどね、ずーっとひとつのところを見る良さもあれば、もうつまみ食いする良さっていうのもあるじゃないですか。食事と一緒ですよね。

(林剛)そうなんですよね。だから「これは前も見たし、最近この人は日本でも見たから、今回はいいや……」とかね、そういう。

(松尾潔)で、ちょっとずつつまみ食いするのは、けど「結局なにがよかった?」って言われた時に答えられない感じもあるし……。

(林剛)本当、そうなんですよね。なかなかちょっと、賭けみたいなもんで。まあこの2日目に限って言えば、メアリー・Jも当然ながら……メアリー・Jって割とエッセンス・フェスティバルのアイコンみたいになっている人なんですけども。もうジル・スコットさえちょっといいかなっていうぐらい。贅沢な話ですけどね。

(松尾潔)麻痺してきちゃうんですよね。あそこで見るとね。

(林剛)そうなんですよね。で、まあメインステージではジャズミン・サリヴァン。何回か僕は見ているんですけども、やっぱりね、3枚目のアルバムを出して、かなり成長した……。

(松尾潔)けどこれ、ジャズミン・サリヴァンって正直日本ではそんなに騒がれるような名前ではないですけども。あそこで7万人、8万人のお客さん相手に歌うステージに立つんですね。

(林剛)そうですね。もうかなり、やる前から歓声というか。司会の人が「今日はジャズミン・サリヴァンが登場します」みたいな話をしたら、すごい「ウワーッ!」っていう感じで盛り上がっていましたけどね。

(松尾潔)じゃあ、この『メロウな夜』でもたびたびに渡ってご紹介している曲ですけども。ジャズミン・サリヴァンのいまのところ、代表曲の中の最たるものと言ってもいいんじゃないでしょうかね。これね。

(林剛)そうですね。

(松尾潔)では、行ってみたいと思います。林さんにこれもご紹介していただきましょう。

(林剛)ジャズミン・サリヴァンで『Let It Burn』。

Jazmine Sullivan『Let It Burn』

Diana Ross『The Boss』

(松尾潔)『松尾潔のメロウな夜』、今週は林剛さんをゲストにお迎えしまして、林さんが先日取材して来られましたニューオリンズの『エッセンス・フェスティバル』のご報告を楽しくうかがっております。ジャズミン・サリヴァン『Let It Burn』に続きましてはダイアナ・ロス『The Boss』。懐かしい曲がかかりましたけども。

(林剛)そうですね。

(松尾潔)ダイアナ・ロスは何日目に登場したんですか?

(林剛)ダイアナ・ロスは初日のトリに出まして。

(松尾潔)やっぱりトリなんですね。っていうことは初日のトリがダイアナ・ロスで、2日目がチャカ・カーンということ?

(林剛)そうですね。

(松尾潔)はー! 贅沢ですね(笑)。

(林剛)ダイアナ・ロスは今回、エッセンス・フェスティバルは意外にもはじめてということで。

(松尾潔)やっぱりそうなんですね。僕もなんかあまりイメージが結びつかないなと思っていたんですけども。

(林剛)そうなんですよ。それでこの日が面白いのは、ダイアナ・ロスが初日のトリだったんですけど、そのメインステージのトップバッターがロンダ・ロスっていうダイアナ・ロスの娘さん。ベリー・ゴーディ・ジュニアとの間にできた……。

(松尾潔)と、言われてますね。親子で、要はメインステージのトップとトリを?

(林剛)そうなんですよ。

(松尾潔)共演はしなかった?

(林剛)共演はしなかったです。で、ロンダさんはなんか見かけはノーナ・ヘンドリックスみたいなんだけど、歌うとパティ・ラベルを若干柔らかくしたような感じで。

(松尾潔)1人ラベルっていう感じですね?

(林剛)そうです(笑)。

(松尾潔)いずれにせよ、お母さんの感じではないと。お母さんより歌える?(笑)。

(林剛)(笑)。でも実は、いちばん歓声があがったのが途中で、これは歌ったわけじゃないんですけど、幕間に登場して、おしゃべりのゲストで登場したのがもう1人のダイアナ・ロスの娘さんのトレイシー・エリス・ロスさん。女優としてすごい有名なんですけども。

(松尾潔)セレブですよね?

(林剛)セレブですね。彼女に対する歓声がロンダ・ロスよりもダイアナ・ロスよりもすごかったっていう(笑)。

BLACK GIRL MAGIC ~ @essence

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(松尾潔)まあ単純に顔が売れているっていうのもあるかもしれませんけどね。まあなんか、あれですよね。音楽と芸能っていうのは切り離せない。みんなその人たちの出自とかもわかった上で、お客さんはいるから。そういう背景がわかんないと、ちょっとなんでこんな歓声が上がっているのかってわからないぐらいですよね。それね。

(林剛)そうですね。

(松尾潔)まあ、けどそれが面白かったりもするんですよね。

(林剛)まあでも、本当にダイアナ・ロスに関して言えば、やっぱりシュープリームス時代の曲からソロの時代までやるんですけども。まんべんなく。シュープリームスの曲なんかはもうお客さんがメアリー・ウィルソンとフローレンス・バラード役をやるというかね。コーラスをやるっていうかね。そういう感じがすごい面白いなと思いましたけどね。

(松尾潔)お客さんが一緒に歌ってくれるという。シング・アロング。いいですね。

(林剛)そうですね。だから本当に女性アーティストばっかりを今回は見たなという印象が自分の中では強いんですけどね。

(松尾潔)そんな女性ばかりの中でも、この人がやっぱり良かったなという人は? あえて挙げるとするならば。

(林剛)そうですね。僕が見た中では、もう何回も見ているんですけど、やっぱりすごいなと思ったのはケリー・プライス。

(松尾潔)声デカいもんなー。

(林剛)うーん。

(松尾潔)まあ、それだけじゃないんだけど(笑)。でも、結構震えますよね。存在。あの人とキム・バレル……ゴスペルの世界のキム・バレル、R&Bのケリー・プライス。この2人はちょっと別格じゃないですか?

(林剛)別格ですね。やっぱりね、ゴスペルがベースにある歌手っていうのはね、改めて。だけどケリー・プライスってゴスペルがベースなんだけど、ゴスペルシンガーほどは歌いすぎない。

(松尾潔)だからバッドボーイのコーラスとかにぴったりだったんですよね。

(林剛)うん。そうなんですよね。だから昼間にそれこそコンベンション・センターでゴスペルのトリビュートみたいなのもあって。で、今年はホイットニー・ヒューストンのお母さんのシシー・ヒューストンのトリビュートだったんですけども。その時にもケリー・プライスが出てきたんですけども。その時とはやっぱりちょっと違うんですよね。世俗の歌を歌う時と。

(松尾潔)なるほど。

(林剛)でもケリー・プライスはエッセンスに4年連続で出ているんですよね。最近。自分名義のステージとしては。でも、どんどんどんどん、僕は好きなんで、ケリーに関してはだいたい見ているんですけども。なんか……。

(松尾潔)そんなケリー・プライス好きでしたっけ?

(林剛)好きですね(笑)。どんどんすごくなっていますね。

(松尾潔)「すごい」っていうのはバランスの妙?

(林剛)バランスの妙もそうなんですけど、カリスマ性というか、なんだろうな? お客さんとのコール・アンド・レスポンスの度合いというか。なんか興奮の度合いが。

(松尾潔)ああー、そのショーストッパーとして。

(林剛)なんか、ショーの密度も含めて。すごかったですね。

(松尾潔)じゃあもう、いまは歌手として、いわゆるゾーンにちょっと入っているのかもしれませんね。

(林剛)そうですね。

(松尾潔)じゃあそのケリー・プライスの曲を1曲、ご紹介したいと思います。これはシャーリー・マードックのカバーですね。けど、もしかしたらシャーリー・マードックがオリジナル云々とかじゃなくて、ケリー・プライスの曲として好きな人もいまたくさんいるのかもしれないと思いますね。

(林剛)そうですね。

(松尾潔)ケリーのバージョンのこれ、出たの2000年でしょう?

(林剛)そうですね。ずいぶん前ですからね。まあシャーリー・マードック……エッセンスでもね、シャーリー・マードック本人を迎えて……みたいなのもあったんですよね。

(松尾潔)ケリーと? そんなのあったんだ。

(林剛)3年ぐらい前ですかね?

(松尾潔)そういう時も一応先輩を立てるんですか? この人は。食っちゃいます?

(林剛)そうですね。うーん……立てていたと思いますよ(笑)。

(松尾潔)そこ、肝心(笑)。

(林剛)そうですね。まあ、今年はケリー1人だったんですけども、本当にもう、まさにコール・アンド・レスポンスっていう。もう教会ですよね。本当に。

(松尾潔)なるほど。じゃあ、聞いてみましょう。ケリー・プライスの2000年にリリースされたアルバム『Mirror Mirror』の中からシャーリー・マードックのカバーです。『As We Lay』。

Kelly Price『As We Lay』

(松尾潔)お届けしたのはケリー・プライスで『As We Lay』でした。さて、こうやって林さんからディープなお話をおうかがいしてますと、このニューオリンズのエッセンス・フェス、一度行ってみたいなとは思うけど、ちょっと日本人との接点を見出し難いなと。逆にちょっと萎縮しちゃうなっていう方もいらっしゃるんじゃないかと思いますが。そもそも日本人とこのフェス、接点ってあるんですかね?(笑)。

(林剛)ねえ。本当に99.9%がいわゆるアフリカン・アメリカンで。

(松尾潔)ねえ。ステージに立つ方もお客様もそうですよね。僕はそのことを「アフリカ県人会」っていう言い方をして。アフリカン・アメリカンの人たちが、普段はいろんな人種構成の中で生活をしているんだけども、この時だけはアフリカのブラッドラインを持つ人たちが集うという意味で県人会という概念に近いんじゃないかという話をしたんですが。

(林剛)うん。まあそこにまあ、白人のロビン・シックとかデイリーとかね、もう亡くなりましたけどティーナ・マリーみたいな。ああいう人は出ていましたけども、まあでも……。

(松尾潔)あくまでもR&Bフィールドで活躍する人たちですよね。

(林剛)ただ、バックバンドの人たちはいろんな人種がいて。やっぱり、それぞれのアーティストで別に黒人だけのバンドでやっているわけじゃなかったりもするわけですから。

(松尾潔)そうですね。まあ、ジャズなんかもそうですけど。

(林剛)今年はですね、ガラントっていますよね? オルタナティブな。

(松尾潔)先週、この番組でご紹介したばかりのガラント。

(林剛)僕、大好きで。今年、彼を見ることがひとつの目的でもあったんですけども。このライブに、なんとフィラデルフィア在住の日本人のギタリストの宮崎大さんというね、僕も親しくさせてもらっているギタリストがいるんですけども。彼が1ヶ月ぐらい前に「やってくれ」と言われて、それで1週間ぐらいで曲を全部覚えたらしいんですけども。彼がギターで、ガラントの。

(松尾潔)ギタリストとして。

(林剛)急遽。ギターの人が別のアーティストのレコーディングでライブに出られなくなったんで、代わりに……ということで登場したんですけど。

(松尾潔)けど宮崎さんって、普段はフィラデルフィアにいらっしゃるわけでしょう? で、ガラントはフィリーの人じゃないじゃないですか。LA?

(林剛)LAですね。

(松尾潔)やっぱり、じゃあそういう時にお声がかかるというか、リストに入っているんですね。宮崎さんね。

(林剛)いや、本当にそうみたいですね。

(松尾潔)やっぱり日本人は歌じゃなくて楽器の方から入った方がいいのかな?(笑)。

(林剛)宮崎さんはね、1回ビラルのバンドにも何年か前にいたことがあって。スティーヴ・マッキーのバンドですね。で、ビラルのバックバンドでもやって、エッセンスに登場したりと。で、僕もそれ、見ているんですけども。

(松尾潔)エッセンスはじゃあ、2回目?

(林剛)そうですね。あ、タイ・トリベットのバンドにも彼はいたんで。それは昼間のゴスペルのショーの方だったんですけど。

(松尾潔)結構なもうベテランとは言わないけども。常連的な感じで。すごいな、宮崎さん。

(林剛)そうなんですよね。だから、1週間限定でバンドに参加したんで結構レアなステージになるんですけども。彼がね、今回のステージに関しては。で、彼によるとガラントって、日本にも7月の終わり頃にロックフェスに来ますけども。今回ね。本当にものすごく動くんですよ。なんか爬虫類みたいというか、軟体生物みたいな感じっていうか。ウサイン・ボルトみたいなポーズを取りながらとにかく動き回って……。

(松尾潔)歌い手の話をする時にね、爬虫類と軟体生物とウサイン・ボルトって、よくわかっているのかわからないようなお話ですけども。とにかくよく動くし、動きもユニークであると?

(林剛)ユニークで。あまりにも動くから、ギターのエフェクターっていうか。あれを蹴っちゃってコードを引っこ抜いちゃったりとかして、大変なことに結構なるというような裏話もしてくれたりしましたけどね(笑)。

(松尾潔)すごいトリビア、ありがとうございます(笑)。そんな宮崎大さんが参加されたガラントを聞いてみたいと思います。もちろん、レコーディングに参加されたわけじゃないんでしょうけどね。そういういまの話を思い浮かべながら聞くと、また違った楽しみ方ができるかもしれないですね。じゃあこれ、去年リリースされた彼の鮮烈なデビューアルバムだったのかな。『Ology』というグラミーにノミネートされていましたけども。その中から、いちばんのヒットシングルですね。

(林剛)そうですね。

(松尾潔)じゃあ聞いていただきましょう。これ、ご紹介をお願いします。

(林剛)ガラントで『Weight In Gold』。

Gallant『Weight In Gold』

Leela James『Don’t Want You Back』

(松尾潔)日本人ギタリスト宮崎大さんがステージに参加されたというガラント『Weight In Gold』。そしてこの人も実力派ですね。リーラ・ジェイムス『Don’t Want You Back』。まあメロ夜クラシックスの1曲とあえて申し上げたいですけども。愛すべき曲ですけども。

(林剛)歌ってくれましたね。

(松尾潔)そうですか。そうか、リーラ・ジェイムスの生っていうのもね、僕も1回だけ見たことがありますけども。ここ数年、リーラ・ジェイムスは本人のレパートリーの質がどんどん上がっているから、新曲ほどなんかオーセンティックっていう感じでいいでしょうね。

(林剛)そうでしょうね。

(松尾潔)もうあっという間にお時間が来てしまいましたよ、林さん。

(林剛)言いたいことの1/5ぐらいしかしゃべれてない感じがしますけどね(笑)。

(松尾潔)林さん、もしよろしければ来週も番組にお越しいただけますか?(笑)。

(林剛)はい。ああ、いいですか?

(松尾潔)ちょっとね、ニューオリンズの話ばかりじゃなくて林さんに聞きたいことがいろいろとあるので。よろしいでしょうか? ちょっとお手柔らかにお願いしますが。

(林剛)はい。

(中略)

(松尾潔)ということで今週のザ・ナイトキャップ、寝酒ソングですが、林さん、この人たちは長らくエッセンス・フェスティバルのアイコンでしたよね。

(林剛)そうですね。95年の開催から2009年まで、15年間に渡ってフェスの大トリ。3日目のトリを務めていた。

(松尾潔)僕なんて、一時は気取って「エッセンスを見に行く」と言わずに「ニューオリンズにこの人たちを見に行く」という言い方をしてる時期もありました。

(林剛)でも本当に、お客さんの大半はそうだったんじゃないでしょうかね。

(松尾潔)あの頃はそうでしたね。というわけで、もう勘の良い方はお気づきだと思いますけども。メイズ feat. フランキー・ビヴァリー『Joy And Pain』。『Live In New Orleans』。ニューオリンズでのライブバージョンを聞きながらのお別れです。これからお休みになるあなた。どうかメロウな夢を見てくださいね。まだまだお仕事が続くという方。この番組が応援しているのはあなたです。次回は来週7月24日(月)夜11時にお会いしましょう。来週もでは引き続き林剛さんにこのスタジオに来ていただきます。よろしくお願いします。

(林剛)よろしくお願いします。

(松尾潔)今夜のお相手は僕、松尾潔と……。

(林剛)林剛でした。

(松尾潔)それでは、おやすみなさい。

Maze Feat Frankie Beverly – Joy & Pain (Live)

<書き起こしおわり>

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