松尾潔 Mary J. Blige『U + Me (Love Lesson)』を語る

松尾潔 メアリー・J.ブライジ『Thick Of It』を語る 松尾潔のメロウな夜

松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中でメアリー・J.ブライジの『U + Me (Love Lesson)』を紹介していました。

(松尾潔)40代女性の実力でございます。これがね。2曲続けてお楽しみいただきました。レディシ『High』に続きましては、メアリー・J.ブライジ『U + Me (Love Lesson)』。いやー、聞きごたえがありましたね。

Ledisi『High』

Mary J. Blige『U + Me (Love Lesson)』

まあレディシという人はメジャーシーンに浮上してきたのは比較的最近というか。最近でもないんですけども、ちょっと時間がかかりました。インディーシーンでまず評判を呼んで。それでメジャーにやってきたので、もう最初から成熟したイメージがあります。ですが、実質年齢はどうか? といいますと、72年生まれの45才なんですね。で、1990年代の初頭から活躍しているメアリー・J.ブライジ。もうその音楽シーンにおける知名度ですとか、それこそ売上とかで言うと、ちょっとレディシとも比べようもないぐらい、メアリー・J.ブライジは格段に上なんですが。実は71年の46才でまあ、同世代なんですね。

違った山の登り方なんだけれども、いま見ている景色は意外に近いのではないかな? と思わせる、そんな2曲でしたね。レディシの『High』に続きまして、メアリー・J.ブライジの『U + Me』。このね、メアリー・J.ブライジの『U + Me』が収められたアルバム『Strength of a Woman』。前に番組の中で「これは彼女の私生活でおしどり夫婦と呼ばれていた時代を経て、シングルに戻っていま世に放つアルバムだから、意味合いが大きくなりますよ」みたいなことを言った記憶があるんですけども。

松尾潔 メアリー・J.ブライジ『Thick Of It』を語る
松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中でメアリー・メアリーの『Thick Of It』について話していました。 (松尾潔)まずこれからご紹介いたしますのは、ただいま来日中ですね。もうこのシーンの女王と言って差し支えない存在、メア

実際、そうなってきましたね。この『Strength of a Woman』、気の早い話ですけども今年2017年を代表する女性R&Bのアルバムと言われるんじゃないでしょうかね。で、もちろんメアリー・J.ブライジ。彼女ほどね、不幸が似合う女はいないという……まあ、これはファンの人たちが愛情を込めて言うんですけども。本当に、ままならない話ですよ。これ。で、彼女がシングルに戻りました。「良かった。またメアリー・Jがいい歌を歌えるんじゃないか?」と。彼女は私生活で何か……たとえば、ジョデシ、ケイシー&ジョジョのケイシー・ヘイリーと別れた時に凄みのある歌い手として一皮むけたなんて言われて。

で、もうちょっとビジネスの方でね、初期の名パートナーだったショーン・パフィ・コムズ。パフ・ダディと決別してからメアリー・J.ブライジの表現がよりディープになったとか。レーベルを変わった時とか。まあ、ともすればそこからキャリアが転落するかもしれないっていう瀬戸際でいつもメアリー・J.ブライジは「おりゃー!」とすごい歌力のアルバムを作ってきたんですが。今回、そうなりましたね。『Strength of a Woman』、いまからでもアルバムを通してお楽しみいたただければと思います。すでに『Thick Of It』っていう曲がもうメアリー・J.ブライジの特大ホームランヒットになりましたが、この『U + Me』もいま、化物ソングに育ちつつありますね。

まあ僕、音楽プロデューサーとして特に若いアーティストと接する時に、まあね、人生相談のようなことを受けることもたまにはありますけれども。「彼女と別れちゃいました」とか、「ずっと結婚をしていたんですけど、このたびまたシングルに戻りました」とか。かならず言いますよ。「よし、曲を書きなさい」って。かならず言う。「安いドラマみたいな会話、してるんじゃねえよ!」って思いながらいまラジオを聞いている方、いらっしゃるかもしれませんけども。さっきも言ったでしょう? テイマー・ブラクストンじゃないけど、我々の仕事は不幸とか悲劇っていうものをエンターテイメントに昇華させるっていう。そういう生業ですからそれはもう仕方がない。

松尾潔 Tamar Braxton『My Man』を語る
松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中でテイマー・ブラクストンの『My Man』を紹介していました。 (松尾潔)まず最初にお届けしますのはテイマー・ブラクストンです。ブラクストン姉妹、ブラクストンファミリーの中でもまあいちばんじ

「そうでもしないと、どうやって世の中とつながるんだよ、君は!」っていう風に僕は半分怒りながら言うこともあるんですけども(笑)。「悲しみに浸っている場合じゃないよ! そのマイナスの感情に1本線を引いてプラスにしましょう!」みたいなね……。「言うのは簡単だよね」って言われがちですけども(笑)。その上で言いますと、「松尾さん?」「俺? 俺は裏方だから穏やかな生活を送っているよ」ってかならず言うんですけども(笑)。やっぱり演者さんっていう人はね、その人生を選んだのであればね、聞く人たちもそこに感情移入したいですよね。もちろん、幸せいっぱいの人が作る、幸せで礼儀正しい曲。ここまで嫌味たっぷりに言う必要もないですけども。そういう曲もあってもいいと思いますが、「R&B」という言葉の第一義に、そもそもそういう災いをジョイに変えるというところがあるんじゃないかなという気がいたします。

<書き起こしおわり>

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