松尾潔 メアリー・J.ブライジ『Thick Of It』を語る

松尾潔 メアリー・J.ブライジ『Thick Of It』を語る 松尾潔のメロウな夜

松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中でメアリー・メアリーの『Thick Of It』について話していました。

(松尾潔)まずこれからご紹介いたしますのは、ただいま来日中ですね。もうこのシーンの女王と言って差し支えない存在、メアリー・J.ブライジです。昨年リリースしました『Thick Of It』という曲は彼女にとって久々のロングヒットになりました。全米のアダルトR&Bチャートでなんと16週間に渡って1位を獲得しております。これは彼女の長いキャリアの中でも有数のヒットということになりますね。

その偉業がここ日本ではさほど取りざたされていないのが、デビュー以来のファンとしてはちょっと歯がゆい。そんな気もいたします。この番組でもタイミングを逸して、きちんとご紹介できていなかったのですが。この来日記念というタイミングでご紹介したいと思います。この曲を含むアルバム『Strength Of A Woman』。リリースされたばかりですね。『Thick Of It』。

Mary J. Blige『Thick Of It』

お届けしたのはクイーン・オブ・ヒップホップ・ソウルと言われて世に出てきて、もういまやその「ヒップホップ」の部分が必要ないかも。クイーン・オブ・ソウルの1人と言っておきましょう。ちょっとアレサ・フランクリンのことなんかを考えながらいま、気を遣って言っていますけども(笑)。メアリー・J.ブライジで『Thick Of It』でした。この曲を含むアルバム『Strength Of A Woman』。もう彼女にとって……これからも彼女、まだ歌い続ける年齢ですが。おそらくはね、キャリアの中で重要な作品として位置づけられることになるんじゃないかと思います。

というのは、私生活において一時はね、R&Bシーンの中でも有数のおしどりカップルと言われました旦那さんとセパレートするという、そういう発表がなされたばかりであります。メアリー・J.ブライジもそうですし、今年の1月にママになったばかりのジャネット・ジャクソンも再びシングルの道を歩むという風に報じられております。50才前後。アラフィフという言い方が日本でもございますけども。そういった女性が、望んだことではなかったにせよ、また人生の岐路に立つという、ここに人生のままならなさがありますし、ドキュメンタリー作家。歌うノンフィクション作家のような、そんな鬼気迫る歌い込みがありました。

そういったところもこの曲に説得力を与えていたのかもしれませんね。なかなか、歌い手というのは構造的に辛い職業なのかなと。それゆえに尊いのかな、なんていう気もいたします。

<書き起こしおわり>

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