高橋芳朗 トランプ当選後に音楽界が起こしたアクションを語る

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高橋芳朗さんがTBSラジオの特番で2016年アメリカ大統領選挙ドナルド・トランプの勝利に対してアメリカの音楽界・ミュージシャンたちが起こしたアクションをまとめて紹介していました。

(高橋芳朗)こんばんは。音楽ジャーナリストの高橋芳朗です。これからの30分は私が先日のアメリカ大統領選とその結果に対するミュージシャンの反応について、『高橋芳朗のミュージックプレゼント特別編 トランプ当選に音楽界が起こしたアクションとは?』と題してお話したいと思います。私は月曜日から金曜日のお昼に放送されております『ジェーン・スー生活は踊る』の中で『高橋芳朗のミュージックプレゼント』という金曜日の音楽コラムを担当しております。その中で、今月11日、『アメリカ大統領選の結果を受けてドナルド・トランプに対するミュージシャンの反応は?』という特集をお送りしました。

高橋芳朗 ドナルド・トランプ大統領誕生とミュージシャンの反応を語る
高橋芳朗さんがTBSラジオ『ジェーン・スー生活は踊る』の中でアメリカ大統領選とドナルド・トランプに対する著名ミュージシャンたちの反応について紹介していました。 (...

数々の差別的発言をしてきたドナルド・トランプにNOを突きつけたアーティスト3組、3名を取り上げました。まずはパンクバンドのグリーンデイの『American Idiot』。彼らは11月6日、オランダで開催されたMTVのイベントで、いま後ろにかかっております『American Idiot』を演奏しました。この曲はもともとイラク戦争の反戦歌として2004年にリリースされた曲なんですけども、ここで彼らは歌詞の一部を変更・アップデートしてパフォーマンスを行ったんですね。で、歌詞の中に「The subliminal mind fuck America(アメリカは頭の中を操られている)」というフレーズがあるんですけども、これを「The subliminal mind Trump America(アメリカはトランプに侵されている)」と言い換えて。この曲は「バカなアメリカ人にはなりたくない」っていうメッセージなんですけども、そのメッセージが2016年のいまのアメリカでも有効であることを示していたんですね。

Green Day『American Idiot (Live from the 2016 MTV EMA Awards)』



続いて紹介したのが反トランプのミュージシャンが集まって企画した『30 days,30 songs』というプロジェクトから女性シンガーソングライターのエイミー・マンによります『Can’t You Tell』を聞いてもらいました。

Aimee Mann『Can’t You Tell?』



『30 days,30 songs』は「30日で30曲」というタイトルからもわかりますように、投票日の1ヶ月前から1日1曲ずつ有志で集まったミュージシャンが反トランプのメッセージソングを公開したというキャンペーン。これは日本のアップルミュージックでも聞くことができます。そしてもうひとつは大統領選の投票日を狙って、11月4日にニューアルバムをリリースしましたラッパーのコモンの作品で『Letter To The Free』。

Common『Letter To The Free ft. Bilal』



コモンが今回リリースしたニューアルバムのタイトルは『Black America Again』っていうんですけども。これはドナルド・トランプの選挙運動のスローガンであります『Make America Great Again』をもじったもので、アルバム全体が差別的発言を繰り返してきたドナルド・トランプへのレスポンスにもなっておりました。以上の3曲はですね、大統領選の前、もしくは投票日の動きでした。要は、「トランプの当選を阻止する、トランプを当選させないぞ」という動きだったんですけど、まあ結果がどうなったかはみなさんご存知の通りでございます。

で、今日はですね、あれから2週間あまりがたった当選後の動きを『高橋芳朗のミュージックプレゼント トランプ当選に音楽界が起こしたアクションとは?』と題してお送りしていきたいと思います。まず最初は、トランプの当選が決まってからアメリカが迎えた最初の週末。11月12日(土)、この日の夜に放送された老舗コメディー番組『サタデー・ナイト・ライブ』に出演したア・トライブ・コールド・クエストというヒップホップグループの『We the People』という曲を紹介したいと思います。この日に放送された『サタデー・ナイト・ライブ』はですね、もう番組全体が大統領選の結果を受けた内容になっていたんですね。

オープニングではケイト・マッキノンという今年公開されたリブート版の『ゴーストバスターズ』に出演したコメディエンヌが今回の選挙で敗れたヒラリー・クリントンのモノマネというかコスプレをしてですね、投票日直前の11月7日に亡くなりました偉大なシンガーソングライター、レナード・コーエンへのトリビュートとして、彼の代表曲の『Hallelujah』という曲をピアノの弾き語りで歌いました。



で、ケイト・マッキノンは歌い終えた後にカメラに向かって「私は諦めません。みなさんもきっと諦めるつもりはないと思います」と視聴者に力強いメッセージを送っているんですね。これは非常に素晴らしいオープニングだったんですけども。その後は、この日のホストを務めました黒人コメディアンのデイヴ・シャベルが約10分間に渡るスピーチ、モノローグを披露しているんですね。これがまた、トランプの当選を受けて落胆した人々に一縷の希望を見せるような非常に感動的なモノローグだったんですけども。まあ、詳細は各自インターネットで検索して見ていただきたいんですけども。



で、そのデイヴ・シャベルの呼び込みで登場したのがこの日の音楽ゲストのア・トライブ・コールド・クエストでした。ア・トライブ・コールド・クエストはこの放送の前日、11月11日に18年ぶりのニューアルバム『We Got It From Here… Thank You 4 Your Service』というアルバムをリリースしたばかりで。これも先ほど話しましたコモンのニューアルバム『Black America Again』と同じように大統領選のタイミングを狙いすましてアルバムのリリース日を設定したと考えてまず間違いないんじゃないかと思います。



で、ア・トライブ・コールド・クエストはこの新作から『We the People』という曲を披露したんですけども、この曲がすごい痛烈なトランプ批判になっているんですね。で、曲のタイトルの『We the People』は「We the People of the United States,」で始まるアメリカ合衆国憲法の前文から取られたものになります。で、合衆国憲法の全文でどういうことが書かれているか? というと、まあざっくり言うと国内の平穏や国民の安全を保障する旨が宣言されているわけですね。

で、そんな『We the People』というタイトルの曲のサビでどんなことが歌われているか?っていうとこんなフレーズが連呼されています。「お前ら黒人はみんな出て行け。お前らメキシコ人はみんな出て行け。お前ら貧乏人もみんな出て行け。ムスリムにゲイ、お前らのやり方が嫌いなんだ。お前ら悪者はみんな出て行け」。まあ、こんな具合にモロにトランプの移民排斥論やマイノリティーに向けたヘイトスピーチを連想させる内容になっています。


要はですね、ア・トライブ・コールド・クエストはこの『We the People』という合衆国憲法の前文を引用したタイトルとトランプのヘイトスピーチを重ね合わせることによって理想や建前から大きくかけ離れたいまのアメリカ社会の現実を皮肉っているというわけです。じゃあさっそく聞いていただきましょう。非常にパワフルなプロテスト・ソングです。ア・トライブ・コールド・クエストで『We the People』。

A Tribe Called Quest『We the People』



ア・トライブ・コールド・クエストのニューアルバム『We Got It From Here… Thank You 4 Your Service』から11月12日の『サタデー・ナイト・ライブ』で披露した『We the People』を聞いていただきました。『サタデー・ナイト・ライブ』関連ではこんな話題もあったりします。いまは解散してしまいました、R.E.M.というバンド。80年代から90年代に非常に大きな影響力を誇ったロックバンドですけども、そのR.E.M.のフロントマンのマイケル・スタイプが「今回のドナルド・トランプの対等や躍進は『サタデー・ナイト・ライブ』を含めたメディアやエンターテイメントカルチャーが結果的に後押しするような格好になったのでは?」と批判したり、問題提起をしているんですね。

『サタデー・ナイト・ライブ』では俳優のアレック・ボールドウィンによるトランプのパロディーというかモノマネが非常に人気を博して高視聴率を叩き出しているわけなんですけども。マイケル・スタイプはそうやって茶化し続けた蓄積が泡沫候補と見なされていたトランプを勢いづかせることになったと主張しているんですね。マイケル・スタイプはこう言っています。「There’s no such thing as bad publicity(悪評も宣伝のうち)」って言っているんですけども。まあ、からかっているつもりが結果的にプロモーションに加担していたんじゃないか? というような、そういうことですね。

で、このマイケル・スタイプは去年、ドナルド・トランプが選挙活動中にR.E.M.の『It’s The End Of The World As We Know It』という曲を無断使用していたことについても激怒していた経緯があったり。さらに冒頭で紹介しましたエイミー・マンも参加していました反トランプのミュージシャンによるキャンペーン『30 days,30 songs(30日で30曲)』。ここにも楽曲提供をしていたので、今後なにか音楽を通じて反トランプの具体的な意思表明をする可能性もあるんじゃないかと思います。

というわけで、ここではそのマイケル・スタイプが『30 days,30 songs』キャンペーンに提供したR.E.M.の未発表ライブ音源『World Leader Pretend』という曲を聞いていただきたいと思います。この曲、オリジナルバージョンが収録されているR.E.M.の『Green』っていうアルバムはブッシュ大統領……パパ・ブッシュの方ですね。ブッシュ大統領が当選した1988年11月8日のアメリカ大統領選投票日当日にリリースされています。で、歌詞の大意はこんな感じですね。こんな一節があります。「ここにあるのは僕の世界。僕はこの世界の指導者のふりをして遊んでいるんだ。僕にはこの世界を自分に合うように作り上げる自由が与えられている。自分で設計した壁を張りめぐらせていくのさ」。まあ、この部分はドナルド・トランプもそうなんですけども、いまイギリスのEU離脱なんかも連想させるいまの時代にも十分通用するメッセージソングなんじゃないかなと思います。じゃあ、聞いてください。R.E.M.のライブバージョンで『World Leader Pretend』です。

R.E.M.『World Leader Pretend [Live]』



反トランプのキャンペーン『30 days,30 songs』にマイケル・スタイプが提供しましたR.E.M.の未発表ライブ音源で『World Leader Pretend』を聞いていただきました。続いて紹介しますのは、また今度はヒップホップですね。ラッパーのマックルモアが11月18日にリリースした『Wednesday Morning』という曲を紹介したいと思います。マックルモアはマックルモア&ライアン・ルイスとして活動している白人ラッパーで、2013年に2曲の全米ナンバーワンを放って一躍ブレイクしました。で、2014年のグラミー賞では最優秀新人賞ほか4部門を受賞した人気ヒップホップアーティストになります。

で、この『Wednesday Morning』葉ですね、マックルモアがこれはソロとして11月18日にリリースした曲なんですけども。「水曜日の朝」というタイトルからもわかるように、ドナルド・トランプの当選から一夜明けた11月9日の朝の所感をつづった曲になります。全米チャートで1位になったり、グラミー賞を受賞しているようなトップアーティスト、有名アーティストがトランプ当選のリアクションを曲にして、しかもちゃんと商品として流通させたのはおそらくこのマックルモアの曲が最速、一番早かったんじゃないかなと思います。

やっぱりヒップホップとかラップはですね、カジュアルに曲が作れる。曲作りの敷居が非常に低いから、リアクションが早いんですね。オケ、トラックがあればもうそこにラップを乗せてすぐにリリースできると。だからいま起きたことをその場で曲にできるのがこういうヒップホップという音楽、表現の最大の強みのひとつなんじゃないかなと思います。じゃあ、そのマックルモアの『Wednesday Morning』の歌詞を紹介したいと思います。

「嫌な味が口の中でしている。家のソファーに座って世の中が変わるのを待っていた。『狂った世の中だ』とテレビが繰り返し言っている。娘がベッドで寝ている間じゅう、自分の頭を冷静に保とうとしていた。彼女が起きた時、世の中は変わらず平穏だろうか? 彼女がこの国を怖がるような未来が来るのだろうか? そうならないことを祈っている。それにしても、最悪の夜だ。ヒューマニティーは諦めてはいけない特権だ。やつらが壁を作るなら、俺たちは橋をかける。これはレジスタンスだ。跳ね返してやる。やつらがヘイトを広めようとする時こそ、俺たちがまぶしく輝く時だ。子供たちの声が聞えるようになるまで、ミリオンマーチを続けよう。

この国には隔たりがあることに気がついた。こんなのは本質じゃない。俺の娘は知らない他人をハグすることができる。娘には『気をつけろ』とは教えるが『憎しみは持つな』と説明した。怒りが充満している。これが俺たちの世界。そこで娘を育てている。彼女が明日の朝起きた時、夢だったらいいのに。虐げられている人々のために戦う。憲法第一条のために戦う。宗教や表現の自由のために戦う。女性の権利のために戦う。彼女たちがそれをどう思っていても。ゲイの人たちともともに進む。誰もが結婚できるために戦う。カナダなんかに引っ越さない。この国から逃げたりしない。無関心でなんていられない。涙も愚痴もこれ以上いらない。これからの4年間、俺たちの身に起こることに徹底的に戦うんだ。娘は俺の腕の中にいる。やつが俺の娘を育てるわけじゃないんだ。嫌な味が口の中でしている」。それでは聞いてください。マックルモアで『Wednesday Morning』です。

Macklemore『Wednesday Morning』



マックルモアが11月18日にリリースしました『Wednesday Morning』を聞いていただきました。マックルモアはまさに『Wednesday Morning』、水曜日の朝に自分のInstagramに娘の寝顔の写真とともに長文のメッセージを投稿しています。おそらくこの投稿がいま聞いていただきました『Wednesday Morning』という曲のベース、モチーフになっていると思うんですけども。これが本当に胸に迫る感動的なものになっていますので、みなさんぜひ、マックルモアのInstagramをチェックしてみてください。

I am disappointed, shocked and shaken at my core by what has transpired tonight. I gathered around the TV with my family and loved ones, ready to celebrate history being made. My daughter had this little blue dress on. I was ready to pop the Martinelli's and hold her, watching Hilary Clinton become the first female president of the United States of America. But…It didn't happen. I had a sick feeling in my gut, riddled with anxiety as the polls started coming in. After hours of a growing pit in my stomach, it was over. I left the TV, grabbed my daughter and took her to bed. But now, as I'm laying next to my her as she sleeps, I remember. Remember what I have control over and what I don't. I don't have control over Donald Trump becoming president. That has been decided. But what I do have control over is where I go from here. I will teach my daughter to love. All people, regardless of the color of their skin, gender, religious beliefs, sexual orientation or where their birth certificate says they're from. I will teach her how important it is to be an advocate for humanity. Not just the portion of humanity that benefits her. I will teach her non violent communication. That in the face of hatred we must love each other even harder. Not give in. Not get discouraged or feel like our progress in the past is void. Keeping fighting for all of us, with an emphasis on those that and have been the most affected by systemic oppression. I will teach her that when she is silent during moments of injustice, she is siding with the oppressor. I will teach her that walls divide people, and by their nature cannot bring us closer. And that just because someone holds the most powerful position in the world, does not make that person right, just or fair. Donald Trump is not raising my daughter. I am. I get to encourage and nurture her to be who she wants to be. Teach her that her voice and actions can change the world. Teach her that she can do anything that a man can do. And one day, even become president of the United States of America. I have work to do. It starts now. And that work is the only thing bringing me peace at the moment

Ben Haggertyさん(@macklemore)が投稿した写真 –


最後は再びグリーンデイの曲を紹介したいと思います。グリーンデイが10月7日にリリースしたニューアルバム『Revolution Radio』から第一弾シングルの『Bang Bang』という曲を聞いてもらいたいと思います。この『Bang Bang』はですね、特にドナルド・トランプを直接攻撃したような曲ではなくて、現代社会の病理を題材にしたような曲なんですけども。11月21日に開催されたアメリカン・ミュージック・アワードというアメリカの栄誉ある音楽祭があるんですけども、そのアメリカン・ミュージック・アワードでグリーンデイがこの曲を演奏した時に、間奏の部分で「No Trump, No KKK, No fascist USA.」というスローガンを何度も何度も繰り返しリピートしてオーディエンスと一緒に歌ったわけですね。この時の映像はグリーンデイがYouTubeにオフィシャルとしてアップしているので、ぜひみなさんにも見ていただきたいんですけども。

で、グリーンデイのボーカルのビリー・ジョー・アームストロングはですね、このパフォーマンスについてこういう風にコメントをしています。「僕らは大統領選の結果についてとてもショックを受けている。今回のステージがトランプのバカげた政策やヘイトスピーチに挑んでいく上でよい結果になればいいと思う」という、こういうコメントを残しています。そんなことからも、冒頭で紹介しました『American Idiot』とともにこの『Bang Bang』も今後、アンチトランプのアンセムとして歌われていくことにもなるんじゃないかと。そういう風に思います。それでは聞いてください。グリーンデイで『Bang Bang』です。

Green Day『Bang Bang (Live from the 2016 American Music Awards)』



グリーンデイのニューアルバム『Revolution Radio』から『Bang Bang』を聞いていただきました。ここまで、『高橋芳朗のミュージックプレゼント特別編 トランプ当選に音楽界が起こしたアクションとは?』と題してお送りしてまいりました。来年2月12日にはグラミー賞が開催されます。グラミー賞は政治的なイシューが反映されることもありますので、もしかしたらスピーチなりパフォーマンスなりで反トランプのメッセージを発信するミュージシャンも出てくる可能性があるんじゃないかという風に思っております。このへんも注目していけたらと思っております。

毎週金曜日、『高橋芳朗のミュージックプレゼント』でもこの話題は引き続き取り上げていきますので、よろしければそちらもお聞きください。平日は聞けないという方はぜひ、タイムフリーでチェックしてみてください。毎回、『生活は踊る』のホームページにもリンクが貼ってありますので、そちらをクリックしていただけたらと思います。というわけで、ここまでのお相手は音楽ジャーナリストの高橋芳朗でした。

<書き起こしおわり>
※放送の模様はRadikoタイムフリーでもお聞きになれます!(※放送から1週間限定です)

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