吉田豪 安齋肇を語る

吉田豪 安齋肇を語る たまむすび

吉田豪さんがTBSラジオ『たまむすび』で『タモリ倶楽部』の空耳アワーでお馴染み、安齋肇さんについて話していました。

(安東弘樹)それでは安齋肇さんということで。まずはあらすじとその筋をご紹介します。安齋肇さん、1953年、東京都のお生まれ。現在62才。1975年に桑沢デザイン研究所デザイン科を修了しデザイナーになった後は、日本航空のキャンペーン「リゾッチャ」のキャラクターデザインほか、ユニコーンや奥田民生さんなど数多くのツアーパンフレットを制作。イラストレーター、アートディレクターであり、テレビ番組『タモリ倶楽部』の人気コーナー『空耳アワー』でおなじみのソラミミストでもあられます。また、今年は盟友みうらじゅんさんの小説『変態だ』の映画化で映画監督デビューも果たしています。

(玉袋筋太郎)うん。

(安東弘樹)そして吉田豪さんの取材によりますと、安齋肇さんのその筋は……その1、本業はデザイナー。実はあの象さんマークを手掛けた人の筋。その2、タモリさんの横に座り続けて24年。父から「蛭子さんになれ」と言われた筋。その3、締切破りで遅刻魔。危うく指がなくなるところだった筋。その4、みうらじゅんさんとの大ゲンカの真相は……の筋。その5、12月公開映画『変態だ』。脱力系映画監督の筋。以上、5本の筋です。

(玉袋筋太郎)うーん! 安齋さんね。

(安東弘樹)いろいろあるんですね!

(吉田豪)一緒に『タモリ倶楽部』、何度か出ましたもんね。

(玉袋筋太郎)出てるんだよね。そう。あんまり、普段はお話してくれないんだよね。こっちから追いかけたらスッと逃げちゃうような。距離感っていうのがやっぱり、ありますね。

(安東弘樹)えっ? 象さんマーク?

(吉田豪)そうなんですよ。これね、まず取材をする流れっていうのがありまして。みうらじゅんさんから久しぶりに電話がかかってきて、「飲みに行こう」って言われて。「ちょっといま仕事なんで無理です」って言ったら、「じゃあ、俺の映画『変態だ』の監督をやった安齋さんを取材してくれ」って言われて。あの、みうらさんにねじ込まれての取材だったんですね。

(玉袋筋太郎)ねじ込みなの? 「飲みに行こう」だったんだ。

(安東弘樹)飲みの誘いを断ったら、ねじ込まれた?

(吉田豪)そうです。「代わりにやれ」っていうね。まあでも、全然安齋さん面白いんで。「行きます」って言って。で、安齋さんは本当にね、『タモリ倶楽部』の人としていま有名ですけど、本業はデザイナーで。代表作は本当、象印のマークなんですよ。

(安東弘樹)えっ?

(玉袋筋太郎)これがすごいよね!

(吉田豪)まあ、正確には一代前。ちょっとアレンジされちゃって。その前のやつで。まあ、昭和の頃の象印は安齋さんのやつだったんですよ。

代表作は象印マーク

(玉袋筋太郎)『ヒントでピント』の頃?

(吉田豪)そうです。そうです。象印賞の象印ですよ。あの時の。

(玉袋筋太郎)あ、そうだ! へー、でも、ずいぶん若い頃だよね?

(吉田豪)そうです、そうです。どういうことか?っていうと、デザイン事務所のアシスタント時代に上司が「あっ、マークたのむの忘れた! もう時間ないから、とりあえず安齋くんがマーク書いておいて」って言われて書いたのがこの象だったっていう……

(玉袋筋太郎)(笑)。へー!

(安東弘樹)それが、採用?

(吉田豪)そう。本当はちゃんとした人に依頼する予定だったんだけど、もう一週間ぐらい前だったから、その締切でたのむのは無理だっていうことで、とりあえず作ったら使われちゃって。で、アレンジされているとはいえ、いまもそれがベースになっているという。

(玉袋筋太郎)あったね、そういうのね。根本敬さんもあったよね、そういうのね。『生きる』のオヤジがどっかの大きい企業のマークになっていたこともあったな。

(吉田豪)そうですね。広告で使われたりしてましたよね。

(玉袋筋太郎)そうだよね。広告でね。そうだよ。

(吉田豪)おかしな時代があったんですよ。でも、なんか仕事が本当によくわからない人なんですよね。ドリフのヒゲダンスのシングルの裏ジャケを作った人としても有名なんですよ。

(安東弘樹)裏ジャケ?

(吉田豪)表じゃないんですよ。

(玉袋筋太郎)すごいよ、でもあれ、ミリオン……

(安東弘樹)どころじゃないですよね。

(玉袋筋太郎)すごいヒットしたでしょう?

(吉田豪)ところが、インストなんで、「歌詞カードに載せるものがない。どうしよう?」ってなった時に「おまけを付けよう」っていうことでジャケの裏に切り取り式のヒゲをつけたっていう。それが代表作の人ですよ(笑)。

(玉袋筋太郎)(爆笑)。そうだ!

(吉田豪)「スペースが余っているから」の人で(笑)。しかも、表は作っていないっていうね。

(玉袋筋太郎)あの表のイラストは違うんだ。へー! これ、でもすごいな。

(吉田豪)だからレコードジャケット、そんなのやっているのか聞いてみたら、チェッカーズの『WANDERER』とかユニコーンの『大迷惑』とか白井貴子さんとか吉川晃司さんとか。まあ、大物をやっているんですけど……「吉川晃司さんの時ってあれですよね。ケンカしたやつですよね?」って言ったら、「そうそうそう。特色つかいすぎて怒られて、印刷屋と大ゲンカになった」とか。結構、いろんなもので揉める人なんですよね。

(玉袋筋太郎)へー。全然見えないな、安齋さん。

(吉田豪)そうなんですよ。で、僕は実はこの仕事を始めてすぐにやった仕事が宝島の『VOW』っていう投稿コーナーの投稿選考主任って、投稿を選ぶ係だったんですよ。

(玉袋筋太郎)豪ちゃん?

(吉田豪)そうなんですよ。だから、僕はまず安齋さんがその『VOW』のVOWボーイっていうキャラクターを作っていて。それのテレホンカードとかを送っていたのが僕だったんですよ。

VOWテレホンカード

(玉袋筋太郎)へー! つながるなー!

(吉田豪)僕の中では最初から、安齋さんの仕事はもう大物デザイナーぐらいの感じで最初から接していて。すごい人だって。ところが、そのVOWボーイが当時、JALのキャンペーンのリゾッチャっていうのが始まった時に、全く同じデザインをそのまま……(笑)。

(玉袋筋太郎)リゾッチャ! そうだよ!

(吉田豪)王冠をつけたオレンジ色の人なんですけど。ヒゲがついているだけなんですよ。ヒゲと腰ミノとかがついている程度で、ほぼ同じで。やっぱり宝島社が激怒したっていう(笑)。

(安東弘樹)そりゃそうですよね。自分のところのキャラクターをそのまま、大会社日本航空のキャンペーンのキャラにしちゃって。王冠の色を変えてヒゲを生やしただけで。

(吉田豪)そうです。

(玉袋筋太郎)だけどここが、ヒゲダンスが効いてるね!

(吉田豪)なるほどね。ヒゲの人なんですね。

(玉袋筋太郎)ヒゲの人なんだ。これ。うん。

(吉田豪)で、その時僕、安齋さんに「安齋さん、知らないでしょうけど僕とVOWボーイの思い出を話していいですか?」って言って話したのが、ちょうど僕が『VOW』の仕事でしょっちゅう宝島編集部にお使いで行っていたんですよ。その頃。その時に、町山(智浩)さんがやっていた『宝島』で、本当これは完全に町山さんのせいなんですけど。町山さんが起こしたトラブルで宝島社が右翼に銃撃された事件があったんですよ。

(玉袋筋太郎)あったあった!

(吉田豪)弾丸を撃ち込まれて。

(安東弘樹)実弾を撃ち込まれたんですね?

(吉田豪)そうです。で、翌日僕は宝島社にお使いに行ったんですよ。行った瞬間に編集部の人に「伏せて!」って言われたんですよ(笑)。

(玉袋筋太郎)(笑)

(吉田豪)「えっ? 『伏せて』って、なに?」って思ったら、「頭が出ていると、撃たれる」って言われて。当時社員がずーっと窓から顔が出ないようにして伏せて移動していて。

(玉袋筋太郎)伏せて仕事していたと。

(吉田豪)そう(笑)。「なに、それ?」と思いながら、伏せていろいろ渡したりとかして。

(安東弘樹)新人の兵隊がまず言われることですよね。戦場でね。

(吉田豪)その後に、また宝島、どうかしているんですけど。宝島社っていう看板を外したんですよ。外したらバレないと思って(笑)。バレるに決まってるじゃないですか、そんなの(笑)。

(玉袋筋太郎)1回撃たれてるし。

(吉田豪)怪しいですよ、看板がないビルの方が(笑)。で、入り口に警備員も立たせるようになって。その時に、宝島社に当時、社員証がなかったんですよ。で、代わりになにかないか?っていうことで、『VOW』に掲載する人に送る、安齋さんのVOWボーイが書かれているテレカ。それを配って社員証代わりにして、入り口で警備員にVOWボーイを見せてみんな入るっていう間抜けな時期があって(笑)。

(玉袋筋太郎)どんなパスだよ!(笑)。

(吉田豪)そう(笑)。

(玉袋筋太郎)顔パスだな。うん。

(吉田豪)ねえ。「右翼も浮かばれない」って言っていたんですけど。

(玉袋筋太郎)すっごいなー!

(吉田豪)まあ、この時に抗議した右翼が電撃ネットワークのギュウゾウさんとかですからね(笑)。そういうのでつながっていくという。

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(玉袋筋太郎)ああー! 緑山(スタジオ)にも来たという。

(吉田豪)そうです、そうです。で、テレカにまつわるエピソードをそう言ったら、安齋さんから出てきて。安齋さんが六本木のキャバクラで……あんまりキャバクラには行かない人なんですけど、みうらじゅんさんと一緒に行くようになって。で、初めてみうらさんとかとは別口で、ちょうど仕事が終わったから行こうと思って。で、次の日に『タモリ倶楽部』があるから1時間ぐらいでサッと帰ろうとしたら合計1万円ぐらいなのに8千円しかなくて。で、一緒に誘ったのがげんしじんっていう芸人さんなんですけど。その人も500円しかないから、なんかないかな?ってことで、「VOWのテレカ。あれが1枚500円だから、それを2千円で売ろう!」ってキャバクラの女の子に売りつけて、なんとかお店を出たけどタクシー代がないんで、西麻布の知り合いの店まで行ってタクシー代を借りて。

(玉袋筋太郎)うん。

(吉田豪)悪いから1杯飲んでって、タクシーで帰ってシャワーを浴びて。で、床暖房が気持ちよくて寝ちゃって、『タモリ倶楽部』は朝9時集合。起きたら朝11時で……そうなんです。これが『タモリ倶楽部』の収録をすっぽかした事件っていうのがあるんですけど、これだったっていうね(笑)。

(玉袋筋太郎)ねえ! 安齋さん、やっぱりそうだよね。遅刻するとかね。

(吉田豪)遅刻で有名です。「安齋肇」で検索をすると、まず出るのが「遅刻」ですからね。で、次が「みうらじゅん ケンカ」っていうのが出て(笑)。その2つで有名っていう。

(玉袋筋太郎)リリー(・フランキー)さんとどっちが遅刻するかで、やっぱりリリーさんの方が遅刻するか?

(吉田豪)ですかね? 大物相手でも遅刻する人たちですからね。

(玉袋筋太郎)そう! 大物ですよ。タモリさん相手に遅刻してるんだから。

(吉田豪)そうです、そうです。

(安東弘樹)だいたい大物になる人は遅刻しますよね。後輩の安住紳一郎アナウンサーも、まあ遅刻をひと頃……最近はないみたいですけど。

(玉袋筋太郎)ああ、そう?

(安東弘樹)だから、相手が誰とか関係ないんですよ。

(吉田豪)そうなんですよ。

(安東弘樹)あれはちょっと、大物だなと思ったことがありますね。

(吉田豪)じゃあ、その2に行きますか?

(玉袋筋太郎)タモリさんの横に座り続けて24年。父から「蛭子さんになれ」と言われた筋。なんだろうね、これ?

(吉田豪)「何やっている人なんですか?」って言われるのがいちばん困っちゃうらしくて。たしかに『徹子の部屋』に出た時も、「タモリさんの横に座っている人」っていう説明だったっていう(笑)。

(玉袋筋太郎)(笑)。デザイナーだよ!

(安東弘樹)徹子さんがそう紹介したんですね。

(吉田豪)そう(笑)。本業がよくわかんないんですけど。でも、安齋さんは「それがいちばん正しいと思う。近田春夫さんが『ロカビリーやロックンロールの日本の創生期に俺は同じ板の上で見ていたんだよ。それが俺の誇りだ』って言っていて、『それ、いいな』と思った。それに近い。タモリさんの横に座って歴史を見てきた人で十分」っていうね。

(玉袋筋太郎)いいねー!

(吉田豪)で、その安齋さんのお父さんはすごい真面目な人で。「タモリさんのサインがほしい」っていう親戚を、「そういうのはよくないから」って止めていたような人だったのが、ある時、「肇くん、サインちょうだい。親戚からたのまれちゃってさ」と言い出して。安齋さんが「俺、隣でヘラヘラしてるだけで大したことしてないんだよ」って言っても、「でもね、肇くんは蛭子さんみたいな活躍ができると思うんだよ」って言われて。その頃の蛭子さんって『スーパージョッキー』の熱湯風呂時代で(笑)。

(玉袋筋太郎)そりゃそうだ! もう、大活躍で。漫画家のギャラよりも全然そっちの方が収入が上だったっていう。

(吉田豪)そうそう。「漫画を描くのがバカらしい」ってなった頃ですよ(笑)。

(玉袋筋太郎)そうそう。

(吉田豪)どんどん漫画の手を抜き始めた頃で(笑)。わかりやすく。

(玉袋・安東)(笑)

(玉袋筋太郎)だからそれぐらいの人気者で。

(吉田豪)「だって二本撮りでね、熱湯風呂に入るだけでサラリーマンの月収が入るんだよ! 働くの、バカらしくなるよ、それ!」って。

(玉袋筋太郎)その帰りに新宿の雀荘に行って捕まったんだから。

(吉田豪)そうです。そういう時期ですね。で、安齋さんは蛭子さんと違ってテレビで稼ぐっていう発想自体がない人なんですよね。あんだけテレビに出ているのにっていう。でも、考えてみると『タモリ倶楽部』以外に出ている印象ってないんですよ。

(玉袋筋太郎)まあ、みうらさんとBSでやっている洋楽のやつか。

(吉田豪)そう。みうらさんとセットで出ることはあるけど、単独で何かに出るっていうのが全然ないんですよね。不思議なんですよ。

(玉袋筋太郎)でも、味があるからなんか、俳優さんとかね、できるような気がするんだけどな。うん。

(吉田豪)ちょっとやったけど、やっぱり向いていないと思ったみたいですね。

(玉袋筋太郎)そうなんだ。

(吉田豪)安齋さんのでも、この力の抜け方って本当に異常で。普通ね、サブカルであれぐらいの位置に行ったらみんなエッセイ集とか出すじゃないですか。安齋さんは本当に絵本を出した程度で。それも、JALのキャンペーンのリゾッチャが終わってからリゾッチャの本を出したりとか。タイミングがズレてて全く売れないんですよ(笑)。

(玉袋筋太郎)へー!(笑)。

(吉田豪)最近も『WASHIMO(ワシモ)』っていう宮藤官九郎さんの原作で絵本を作ったんですけど、それがNHKでアニメ化された時は安齋さんの絵じゃなくなっていたりとか(笑)。

(玉袋筋太郎)なんだ、そりゃ?

(吉田豪)「あっ、WASHIMOの!」って言われても、「あ、まあ、僕の絵じゃないんで……」みたいな(笑)。

(玉袋筋太郎)(笑)。それがいいんだな。

(安東弘樹)俺、こういう人、好きだなー。

(吉田豪)デザインについても、「がんばる時期はすぎた」ってしょっちゅう言ってますからね。全然がんばっていないという。

(安東弘樹)そしてね、締切破りで遅刻魔……

(玉袋筋太郎)危うく指がなくなるところだった筋。これ、なんなんだろうね?

締切破りで遅刻魔

(吉田豪)有名なんですよ。やっぱり遅刻魔だから、締切も間に合わないんで。キョンキョンとか白井貴子さんとかチェッカーズとか、パンフレットの仕事をしても、発売が間に合わないこと多数なんですよ。ツアーの初日にないっていう。

(玉袋筋太郎)マズいよ、それ!

(吉田豪)パンフレットの入稿が遅れてっていう。で、初日どころか次も間に合わないっていう時に、これ、キョンキョンの時ですね。その時に担当編集が川勝正幸さんだったんですけど。電話で「安齋さん、これ本当にマズいですよ。これはもう、指を持っていきましょう。いい包丁を買っていきますから」って言われたことがあるっていうね。あの、バーニングもそこまで怖くないですよ!っていうね(笑)。

(安東弘樹)(笑)。そう言われたっていうことですね。

(玉袋筋太郎)脅されたっていう。川勝さんにだよね?

(吉田豪)川勝さんにですね。

(安東弘樹)まあ、でも指は全てあると。

(吉田豪)それぐらいに遅れる人で。『タモリ倶楽部』も何度も遅刻して。あの温和なタモリさんが怒ってますからね。タモリさんが「時計、ないの?」って嫌味で言ってるのに、タモリさんが時計を買ってくれると思って浮かれた人ですからね。

(玉袋・安東)(笑)

(吉田豪)「あ、タモリさん、時計買ってくれるんですか? ありがとうございます!」みたいな(笑)。

(玉袋筋太郎)いいなー!

(吉田豪)で、タモリさんが最終的には、「あのね、僕の時給、日本では結構高い方なんだよ」って言ったっていうね。

(玉袋筋太郎)かぁー! これはすごいよ。

(安東弘樹)実際、そうですもんね。

(吉田豪)あのタモリさんを1時間待たせたらいくらだ?っていう話ですね。

(玉袋筋太郎)たまに空耳、安齋さんがいなくてゲストが座っている時あるからね。

(吉田豪)間に合わなくて他の人がやっていることが多々あって。

(玉袋筋太郎)あった! 俺も1回あったかな? それ。ああ、あった、あった。

(吉田豪)で、全然それでクオリティーは落ちないっていうね(笑)。

(玉袋筋太郎)(笑)

(吉田豪)「誰でもいいんですよ、あれ」って言ってて(笑)。

(玉袋筋太郎)素材がいいんじゃねえか!っていう(笑)。

(吉田豪)そう(笑)。「ネタがいいから、誰がやってもいいんですよ、あれ」って(笑)。そもそも『タモリ倶楽部』を引き受けるきっかけがそれですから。遅刻ですからね。最初の打ち合わせに派手に遅刻して断れなくなったっていうね。そういう人なんですよ。で、遅刻した時も挽回するためにがんばろうとか、特別張り切ったりはしない人っていうね。「張り切る要素がないから」っていうね。

(玉袋筋太郎)いいなー!

(安東弘樹)こう生きられたらいいなー。

(吉田豪)ちなみに『タモリ倶楽部』以外の番組に出ている印象がそんなにないのは、それは出てないから、呼ばれていないからでもあるけど、過去に嫌な目にあった。ある深夜番組をやっていた時に打ち上げでプロデューサーに「お前のせいで番組が潰れたんだ」って胸ぐらを掴まれて言われたことがあって。

(安東弘樹)なんで?

(吉田豪)安齋さん、もともと準レギュラーとかで。「来なくていい」っていう条件で引き受けたらしいんですよ。

(安東弘樹)「来なくていい」っていう条件って……

(吉田豪)「デザインの仕事が忙しいから、年中行けないけどいいですか?」って言って、「いいよ」ってプロデューサーも言ってくれて。だから本当に行かなかったりしたら、それがやっぱりよくなかったみたいで、「お前のせいだ」って言われたっていう(笑)。「テレビ、嫌だ」って(笑)。

(玉袋筋太郎)なんか安齋さんの胸ぐらを掴むって……掴まれるタイプじゃないのにね。

(吉田豪)全然、全然。

(安東弘樹)よっぽど腹にすえかねた……よっぽどだったっていうことでしょうね。「本当に来ねえよ!」っていうことだったんでしょうね。

(吉田豪)「普通、そう言っても来るでしょう?」っていうね(笑)。

(安東弘樹)予想を上回ったっていうね。

(玉袋筋太郎)さあ、そしてみうらじゅんさんとの大ゲンカの真相は? の筋ですよ。

みうらじゅんとの大ゲンカの真相

(吉田豪)そうなんですよ。ケンカでは有名ですけどね。今回、監督した映画『変態だ』の前に実はみうらじゅんさんの原作で撮りたいものがあったらしいんですよ。それが『SLAVE OF LOVE』っていうSMの小説で。「この小説の映画化はきっと誰もやらないだろうから」っていうことで、飲みの席で山田五郎さんか安齋さんかどっちかがやろう、作ろうということになった。ところがそれがいろんなことが現実的に進み始めたらちょっと怖くなっちゃって、安齋さんは「今回はいいや」って逃げちゃったらしいんですよ。その結果、みうらさんと大ゲンカになったっていうね。

(玉袋筋太郎)はー!

(吉田豪)石垣島で殴り合いというか抱きつき合いの大ゲンカ。メガネが壊れたりしたっていうね。『週刊文春』のグラビアに写真入りで「みうらじゅんと安齋の大ゲンカ」と報じられて有名な事件。ところが、翌日も仕事なんでケンカの翌日、一緒にカヌーに乗って。ギクシャクしながら、2人でカヌーを漕いだっていうね。

(玉袋筋太郎)気まずいな、それ!

(吉田豪)「息が合わないと大変だよ」って言ってましたよ(笑)。

(玉袋筋太郎)カヌーはね。

(吉田豪)そしてね、はじめて知ったんですけど。あの後もだからすぐに仲良くなった印象だったんですけど。「やっぱり大人になってからケンカするとね、後を引く」って言っていて(笑)。「何年もギクシャクしちゃって。だからね、もうケンカしたくないと思ったから、今回映画を引き受けたんだよね」っていう(笑)。

(玉袋筋太郎)(笑)。大人だね!

(吉田豪)「そういうことだったんですか!」っていう。

(安東弘樹)ただ、理由が全部ネガティブですね。引き受ける理由が。

(吉田豪)謎が解けたっていうね。「今回はちゃんとやろうと思って」っていう。

(玉袋筋太郎)すごいな。映画監督だもんな。

(吉田豪)そうなんです。R-18指定で12月10日から公開。『変態だ』っていうね。僕も試写で見たんですけど、衝撃なんですよ。もう試写ができているっていうことがもう衝撃で。こんなに常に仕事が遅れる人が2月頭にはクランクアップしていて……とかね。撮影にかかったのが8日間で、撮影には一切遅刻しなかったとか。「すごいじゃないですか!」って言ったら、「遅刻しそうだから撮影現場の近辺に泊まらされていた」っていうだけで(笑)。

(玉袋筋太郎)家が遠いんだよね。安齋さんね。

(吉田豪)そうです。そうです。「映画って面倒くさそうだなってずっと思っていたけど、やってみたらすげー面白い。相当面白い。久しぶりにがんばりましたよ!」って言ってたんですよ。

(玉袋筋太郎)おおっ!

(吉田豪)どれぐらいがんばったんだろう? と思って掘り下げてみたんで。ちょっとね。それが、その5ですね。

(玉袋筋太郎)その5。ねえ。

映画監督 安齋肇

(吉田豪)がんばらない安齋さんがどれぐらいがんばったのか? 「どういうことですか?」って聞いたらね、「あのね、俺ね、絵コンテを1枚も書かなかったんだよね」って言っていて。「どういうことですか?」って聞いたら、すごいいいプロデューサーが現れて。「そういうことは全然しないでいいですから」って言われたらしいんですよ。

(玉袋筋太郎)おお!

(吉田豪)「任せてください。全部やりますから。監督の言った通りに動く、そういうスタッフを用意しますから」って言って、本当になんでもやってくれるすごい人たちを集めてくれて。打ち合わせとかでも脚本にあることをみんなが勝手に理解してくれて、勝手に解釈して。美術セットも衣装もスタイリングもどんどん決まっていく。めちゃめちゃ働くスタッフで、安齋さんはそういうスタッフの健康を気づかう役割。「ご飯、食べた?」とか「よく寝た?」とか。部活のマネージャーみたいな役割っていう(笑)。

(玉袋筋太郎)監督でもなんでもねえじゃん!

(吉田豪)なんでもないんですよ。女子マネなんですよ、完全に(笑)。「『スタート』も『カット』も言わなかった」っていう(笑)。

(玉袋筋太郎)(笑)

(吉田豪)「全部助監督の人が言ってくれるんだよね」みたいな(笑)。で、「監督、ここカットが足りないんです」って言われても、「大丈夫!」って言うような監督で。「えっ、絶対に撮っておいた方がいいですよ!」って何人も説得してくるらしいんですよ。次々に来ても、「いや、大丈夫だから。あってもなくても大丈夫!」って。そういう監督っていう(笑)。

(玉袋筋太郎)天才だな、この監督!

(吉田豪)絶対にカットが足りないと、後で編集する時困るじゃないですか。僕の身近の杉作J太郎監督もしょっちゅうそれで困って。追加撮影を4年、5年たってからやったりとか(笑)。「つながらない」っていう(笑)。

(玉袋筋太郎)人間変わっちゃうよ、それ(笑)。

(吉田豪)絶対にそれ、撮った方がいいのに、「全然、大丈夫。大丈夫」っていう。

(玉袋筋太郎)へー!

(吉田豪)「編集もね、最初は『CGなし』っていうことになっていたはずが、最終的にCGをいれてくれて。『あった方がいいですよ、CG』ってみんなが気を使ってくれてね。素晴らしい!」っていうね。「スタッフみんな寝ないし、ご飯も食べないし。お金もそんなにもらえないのに、文句も言わない。安齋さんは前乗りしてホテルを取ってもらっているからよく寝ていて。本当に面白かった!」って(笑)。

(玉袋筋太郎)(笑)

(安東弘樹)「面白かった」っていうか、「楽だった」っていう感じですよね。

(吉田豪)そうなんですよ。聞けば聞くほど、一生懸命やった感が一切出ないんですよ。「いや、周りは一生懸命やっていたよ」っていう(笑)。

(玉袋筋太郎)(笑)

(吉田豪)安齋さんはやってないじゃないですか!っていう(笑)。

(玉袋筋太郎)胸ぐら掴まれるのも、なんかわかってきたよ。

(吉田豪)わかってきますよね。

(安東弘樹)でも、そこはわかっているんですね。自分でね。周りがやってくれる人っていうのはわかっているんですね。

(吉田豪)「映画がこんな楽しくなっちゃったらいけないんじゃないか?」っていうぐらい楽しかったっていうね。で、最終的に言い出したのが、「あのね、これでわかった。今回。映画ってね、監督のものじゃないね」って言い出して(笑)。

(玉袋・安東)(笑)

(吉田豪)「それ、今回の場がそうだっただけですよ! 僕、いっぱい見ましたよ。監督のものの作品!」っていう(笑)。「いやいや、映画ってそういうものだから。1回で見切ってたよ。あれ、完全に全体の作品じゃないの」っていうね。

(玉袋筋太郎)へー!

(吉田豪)だから、デザイナーとかやっぱりね、もっと責任があるけど。

(安東弘樹)そうか。自分が全部やらなきゃ、ですね。

(吉田豪)「あれはやっぱね、映画は違う」って言っていて(笑)。たしかにね、結構画がきれいな映画なんですよ。あれはやっぱりね、画面の色調とかカメラのレイアウトとかがよく出ているから、「さすがデザイナーの安齋さんだ!」ってなるだろうなって一瞬思うぐらいの感じなんですけど……「全然違うから。あれ、全部カメラマンのおかげ」って言っていて。「モニターも実は、カメラマンが2人いてモニター2台必要なのに1台しかなかったから。1個、見てないもん。僕」って(笑)。「それに全部OKって出していたんで」って。

(安東弘樹)1つのカメラを一切見ていない?

(吉田豪)そうです。全然わかってないんですよっていう。

(玉袋筋太郎)有名なカメラマンさんがね、来てくれたっていうね。

(吉田豪)そうです。三浦憲治とか有名なカメラマンが。賞をとっているような人がやっていて。

(玉袋筋太郎)そのモニターを1つしか見ていなかったっていう。

(吉田豪)「ただしね、パンフはしっかりデザインをやるんで。いいパンフは
作りますから!」って言っていて。「もう、締切は過ぎている」って言ってましたよ(笑)。

(玉袋筋太郎)(笑)

(安東弘樹)そこ、まだできてないんですね(笑)。

(吉田豪)さすが!っていう(笑)。

(玉袋筋太郎)すごいなー!

(安東弘樹)安齋さん、すごい。

(玉袋筋太郎)仙人みたいな人だな。本当に。

(吉田豪)欲もないですからね。

(玉袋筋太郎)すごいよ。

(安東弘樹)でも、胸ぐらを掴まれてますけど、誰からも見放されていないっていうのがすごいですよね。需要があるわけじゃないですか。安齋さんにいろいろやってほしいと思うわけじゃないですか。監督をやってほしいとか。

(玉袋筋太郎)そうだよね。

(吉田豪)みうらさんとの関係も面白いですよ。

(玉袋筋太郎)みうらさんが自分から仕事を取っていくっていうあの話も面白かったね。

(吉田豪)はいはい。そのへんはいまね、DMMでアップされている僕の安齋肇さんのインタビューを読んでもらえれば。ねえ。身近で見たみうらじゅんってだけでも面白いですもんね。

DMM 吉田豪 安齋肇インタビュー

(玉袋筋太郎)面白かった。あれ。

(吉田豪)そもそもだって、安齋さんと仲良くなったきっかけっていうのがね。

(玉袋筋太郎)そう! それも面白いんだよ。

(吉田豪)「ラップの悪口で仲良くなって。いとうせいこうとかの」って。いとうせいこうさんの悪口を一緒に言っていたっていう(笑)。で、安齋さんは「いや、いとうせいこうくんはちゃんとしていて」みたいに言っても、「いやいや!」って。それが、気がついたらいとうさんとも仲良くなっていてっていう。

(玉袋筋太郎)そうなんだよね。不思議だなー。

(吉田豪)不思議な人ですよ。

(安東弘樹)そのみうらじゅんさんの小説を安齋肇さんが映画……まあ、「監督した」って言っていいのかね。このお話の後だと。ですが、映画『変態だ』は12月10日より新宿ピカデリーほか全国で順次公開します。これね、若いリスナーの人、申し訳ありません。R-18です。

(吉田豪)そうです。いやらしいです。

(玉袋筋太郎)18才未満の方は見られないっていうね。ちなみにあらすじ。主人公は大学でロック研究会に入ったことをきっかけに売れないミュージシャンとなった男で、妻と子の平穏な家庭を手に入れるが、愛人とのSM的な肉体関係も続けていた。地方で泊りがけのライブの仕事が入った男は妻を家に残して愛人と出かけるが、ステージ上から客席にいる妻の姿を目にし……

(玉袋筋太郎)うわっ! 他人事じゃないですね。

(吉田豪)(笑)

(安東弘樹)ちなみに吉田豪さんの今後の予定ですが、10月9日(土)に渋谷にあるLOFT9で『Jさん&豪さんのトップハンター!』を開催。ゲストはRAM RIDERさん、そしてヨシモトブックスから発売中の『ぼくのインタヴュー術 応用篇 (高平哲郎スラップスティック選集 6 下巻)』に高平哲郎さんを豪さんが掘り下げるインタビューが収録されていると。お値段2400円。あと、なんかお知らせが……

(玉袋筋太郎)10月17日ですね。池袋ジュンク堂で『プロレス取調室』という本のトーク&サイン会があるんですけども、そこに豪ちゃんも緊急参戦ということで。ありがとうございます!

(吉田豪)僕の空手本の発売記念にもなったというね。

(玉袋筋太郎)だから、これはすごいよね。昭和プロレスと極真空手のね、これが一緒になるっていうことはたまらんイベントですよ、これ!

(吉田豪)アウトローエピソードだらけですからね(笑)。

(玉袋筋太郎)だらけだよ、これは! 濃いトークショーになると思いますんで。

(安東弘樹)間違いありません。これ、10月17日。ぜひ、こちらの方もね。映画『変態だ』もみなさん、ぜひ足をお運びください。念のため、もう1回言っておきます。R-18指定です。さあ、吉田豪さん、次回の登場は11月4日となります。ありがとうございました!

(玉袋筋太郎)ありがとう!

(吉田豪)どうもです!

<書き起こしおわり>

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