東京ポッド許可局 不謹慎狩り=ゾンビ論

東京ポッド許可局 不謹慎狩り=ゾンビ論 東京ポッド許可局

(プチ鹿島)本当、そう思うんですよ。みんな非日常で異様なテンションになっちゃう。で、誰かのためにって。で、しかもよーく考えたらだって井上晴美さんなんて、被災されてブログでアップして。なんでそれが売名行為なんですか? だからそれの元をただすと、結局「目立つ奴が嫌い」というか、うっとりしている姿を見せられるのが鼻につくのが嫌だっていう。そういうことになるんじゃないかと。

(サンキュータツオ)いかにも日本人だな―!

(マキタスポーツ)でもさ、そういう昂ぶりっていうのは、ちょっと伝播していく……なんかパンデミックとかって言うけどさ。感染していってるんじゃないの? 悪意みたいなものが。そういう意味で。

(プチ鹿島)だからそういう、悪意を確信犯的にやっている人もいるけど、昂ぶることによってそれに加担してしまう人がいる。さらに、他人のちょっと目立つようなところでは突っ込みやすい状況ができるっていう意味で。だから、「お前が目立つのが不快だ」っていうのが不謹慎っていう大義名分にすごく使われているんじゃないか?って僕は、ここまで思ったんですよ。で、あるところで書いたんですよ。たしかに、「ああ、そうだな」みたいな、たくさん反響はいただいたんですけど。

(サンキュータツオ)うん。

(プチ鹿島)その次の日に僕、『アイアムアヒーロー』っていう映画を見たいんですよ。マキタさん、出てますよね。

(マキタスポーツ)出てますよ。

(サンキュータツオ)マキタスポーツも出ている。

(プチ鹿島)そうですよ。で、それはZQN(ゾキュン)っていうある種のウィルスにかかった人に噛まれると、要はゾンビになるわけです。で、噛まれたら自分もゾンビになっちゃう。で、フラフラして次の噛む相手を探すんですよ。俺、「不謹慎狩りってもうゾンビだと思えばいいんじゃないかな?」と思ったんですよ。

(サンキュータツオ)なるほど!

(プチ鹿島)そこにもう、意味すらないんじゃないかなって。

(マキタスポーツ)だから、昂ぶりでしょ?

(サンキュータツオ)昂ぶりゾンビだ。正義ゾンビ。

不謹慎狩り=ゾンビ

(プチ鹿島)そこに、たとえば他の人が不快だから嫌だとか、あいつ鼻につくとか、僕らがいままで話した「悪い子はいねえか?」とか。永遠の学級会とか。そういう何かの理由があって目を光らせている。もしくは、ただ暇なのかもしれない。

(マキタスポーツ)「抑圧があって……」とかね。そういう物語でしょ?

(プチ鹿島)そういう理由をいろいろ考えてきたけど、もはや理由なく、ただ噛みつきたいだけなんじゃないか?って。だから、誤解ないように言えば、ゾンビになっちゃう人って悪意がないじゃないですか。だってもう、自分が噛みたいだけで。

(マキタスポーツ)「悪意」という物語すらないと。

(プチ鹿島)そりゃそうですよ。で、不謹慎狩りの人も、それは悪意はないですよ。だって自分は正義だと思ってやっているわけだから。一部の確信犯の悪意はありますよ。だけど、大概は善意だと思って、正義だと思ってやっているから。あれはやっぱりそういう、正義ウィルスっていうのにかかっちゃって。ただ相手に噛みつきたい。目立ったやつに噛みつきたいだけだって思うようにしたら、ちょっとすっきりしたんですよ。そこにもう、理由はない。そうすると、社会的格差とか身分とか年収とか、関係ないじゃないですか。もう、ウィルスにかかったらお金持ちの人だろうが、リア充だろうがなんだろうが、相手に噛みつきたい。なんだったら、自分が幸せだからこそ、相手の鼻につくところとか噛みつく人もいるかもしれないじゃない。

(サンキュータツオ)うん。

(プチ鹿島)そう思ったんです。だから俺、「不謹慎狩りゾンビ説」って考えたら、もはや理由すらないって。

(サンキュータツオ)本当、そうだわ。しかもそれって、すごく日本の社会と言ったら大げさかもしれないけど。よく、ハーフの人とかさ、外国人もそうなんだけど。やっぱり日本のイジメの構造の根幹に、「他の人と違う人をいじめる」っていう文化があると。たとえば、有名人とか。で、そういう人たちのうっとりしたポエムっぽいコメントとかを見て腹が立つ。そうすると、その人を叩く。これ、日本の学校社会のイジメとほぼ同じ構造だよね。だから普通の人、普通の常識、みんなが持っている正義を振りかざして、そうじゃない人を叩くっていうのは。

(プチ鹿島)だからここ数年でもちょっと思い出してみればわかるんですけど。じゃあそれが行き進むと、一方で何が出てくるか?っつったら、「美談」なんですよ。

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(マキタスポーツ)うん。

(プチ鹿島)美談はどんなに盛ってもOKみたいに受け入れられちゃうわけですよ。いい話。

美談はどんなに盛ってもOK

(サンキュータツオ)気持ち悪い。だから、美談と正義って突っ込みようがないでしょ? だから突っ込みようがないものって、怪しいと思わなきゃダメ。

(プチ鹿島)そう。で、美談と正義って被害者がいないからね。それを掲げている分にはね。

(サンキュータツオ)そうそうそう。だから、被害者がいないかのように思わせて、美談と正義を振り回す人っていうのはやっぱり錬金術士だよ。この時代はやっぱり、危険な怪しい人だと思うよね。

「永遠の学級会」(菊地成孔)

(プチ鹿島)「永遠の学級会」って菊地(成孔)さんが言いましたよね。たしかにそうで。そういう狭量的な、「○○さんが悪いと思います」って。まあ、なまはげ社会かも知れないですよ。「悪い子はいねえか?」って。

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(サンキュータツオ)うんうん。

(プチ鹿島)っていう理由もずっと考えてきたんです。で、鼻につくやつが嫌だっていう。だけど、やっぱりウィルスって考えた方が、そこに理由はない。噛みつきたいだけだって。で、あの映画の中でさ、最初のシーンで言ってましたよね。塚地さんがやっている漫画家のアシスタントが。マキタさんが売れっ子漫画家の役なんですよ。で、アシスタントがそういうパニックになるにつれて、もうみんな世の中がひっくり返れば全て同じ価値になるから。やっと……自分のことをオタクって言っていたじゃないですか。オタクの方がウィルスにかからないから。「いよいよ俺たちニートの番だ」みたいな。

(サンキュータツオ)ああー。

(プチ鹿島)そういう価値観ってでも、ちょっと似てるんじゃないかな?って思うんですよ。少なくとも、目立つやつを狙い撃ちにすれば、価値を引きずり込むことができますよね。そうすると、変にフラットになりますよ。そういう逆革命みたいなのが根底にもあるのかな? とか、いろいろ考えたんですけども。でもやっぱり、ウィルス・ゾンビって考えた方が。「噛みたいだけだ」って思った方が、僕はわかりやすく考えたんですよね。

(サンキュータツオ)あの、「意識高い系」っていう言葉があるじゃないですか。もともとはそんなにバカにしたニュアンスではなかったんですけど。就職活動とかで。

(マキタスポーツ)「意識が高いね」って。

(プチ鹿島)褒め言葉ですよね。

(サンキュータツオ)だったのが、就職活動中に「ああ、あの人は意識高いね」みたいなのが「(笑)」になっていったわけですよ。「ああ、意識高い系の人だ(笑)」みたいな。だからまず、意識高い系みたいなのも、たぶん同じ構造なんじゃないかって思うんですよね。

意識高い系

(プチ鹿島)だから本当に意識高い系をふるまって、かっこ悪い、笑っちゃうような人もいるんだけど。そうじゃなくて、本当にちゃんとして意識高くてバリバリやっている人を「(笑)」にすることで自分の中で引きずり下ろすことができるっていう発想はちょっと理解できるかもしれない。

(サンキュータツオ)だけど、この先たぶん不謹慎狩りも「(笑)」になると思うんだよね。「あ、この人、不謹慎狩りしてる(笑)」みたいな。

(マキタスポーツ)でも、さっき俺、ひとつのタームで面白かったのが「昂ぶり」っていう印をつけると、途端に恥ずかしい……だって、「興奮している人」っていうことになるからね。

(サンキュータツオ)いきり立っているっていうことだもん。

(マキタスポーツ)で、正義っていう欲望のためにものすげー開放感を得ちゃっているなってことじゃん、それ。

(プチ鹿島)そうだよ。「じゃあ、私がなんとかしなきゃ!」って。それは素晴らしいですけど。その昂ぶりって、どっちに転ぶかわからないですよ。

(サンキュータツオ)だからもう、正義と美談っていうすっごく安全な場所から、人を突き落とすわけでしょ? それってだから醜い行為というかね、「(笑)」になると思うんだよね。そういう風にしていかないと……

(マキタスポーツ)でも、その昂ぶりが昂ぶりを呼んでいくっていう負の連鎖もあるよね。

(プチ鹿島)そうそう。

(サンキュータツオ)昂ぶりが昂ぶりを呼ぶ(笑)。

(プチ鹿島)だって、毎日放送の一連のなんて、どっちも昂ぶりなんだから。「今日、俺がんばった。取材した。じゃあ、弁当をUP」って、もううっとりですよね。だから人のうっとりを見るのが嫌いなんですよ。やっぱり。結局、その話をすると、それに対してカチンと来るということは、たぶんみんな多かれ少なかれ、人のがんばっている姿とかうっとりしている姿って苦手だと思うんですよ。でも、善意と悪意だけでやっぱり人を考えているからそうなっちゃうと思うんですよね。

(サンキュータツオ)そうだよね。

(プチ鹿島)やっぱり何らかの売名行為だって言われたとしても、100%のうちの1%ぐらいは売名行為っていう意識もあるのかもしれない。でも、その1%だけの企みがあるのは許せない!ってなっちゃうと、もうダメですよ。だって。

(サンキュータツオ)そうだね。

個人の悪徳は公共の利益

(プチ鹿島)だから昔、僕すごくわかりやすい言葉で、「個人の悪徳は公共の利益」っていう言葉があるんです。それ、すげーいまこそ僕、考えた方がいいと思うんです。だって八百屋さんとかがね、ライバル店の八百屋さんとかに負けないように安くしよう、安くしようと。で、絶対に儲けてやろう、お屋敷を建ててやろうって。悪徳っちゃあ悪徳じゃないですか。自分さえ儲けられればいい。でもそれって結局、周りのコミュニティー、地域社会に役立っている。「あの八百屋さんに行けば、安く買える」って。ねえ、その地域が幸せになるんだったら、最終的にはデカい方を見た方が。そんな、「あいつ1%、2%いやらしいところがあるから許せねえ!」ってなったら、全部不謹慎になっちゃいますよ。

(サンキュータツオ)あとは、みんな偽善とか売名行為に対して、すごくアレルギーがあるなって。

(プチ鹿島)だから潔癖ですよね。

(サンキュータツオ)でもね、資本主義社会ってそういうことだと思うんですよ。

(プチ鹿島)そう。だから、いかに自分のことも含めて、自分がじゃあ潔癖じゃないのか?っていうのを考えれば……

(サンキュータツオ)そう。「お前はそんなに潔癖なのか? 人を批判するほど、お前はきれいなのか?」っていうのはあるんですけど。たとえばね、環境問題とか、CO2削減とか、そういうものにお金を払っている。これはだから、エコなことに投資をしている会社っていうのは、ブランディングできるじゃないですか。じゃあこれ、すごく局地的に言えば、売名行為ですよ。

(プチ鹿島)そうですよ。

(サンキュータツオ)だって、経済的ではないわけ。経済的ではないけど、環境を大事にすることによってその会社の価値が上がるっていう。これは経済のシステムじゃないですか。だから別にタレントは売名行為になろうが偽善だろうが、別にいいじゃんっていう。

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