菊地成孔さんがTBSラジオ『粋な夜電波』の中で急逝したプリンスさんを追悼。コメントともに曲を捧げていました。
(菊地成孔)1曲なんて絶対に選べやしない。100曲だって。だから、君が最後に愛した女性の曲で君を送るよ。あまり言われなかったことだけど、君は80年代デビューのカリスマの中ではダントツで女の趣味が良かった。2年前のグラミー。君がプレゼンター。受賞者がベックだった時があったよね。あの時、君は珍しく音楽産業について苦言を呈していて、顔色も悪く、壇上に上がる時、ベックはいつもより幾分優しく「やあ、プリンス」と言った。
あの時、ベックが伝えたかったことについていま、僕は考えている。そんなことでも考えないと、悲しくてね。世界中の全ての君のファンと共に、R.I.P. Prince。全てが君の名前に入っている文字だ。曲はアンディ・アロー(Andy Allo)で『Yellow Gold』。
Andy Allo『Yellow Gold』
君がボウイのたった4ヶ月の後に、マイケルより7年だけ長く生きて突然召されたことに、僕らはまだまだ動揺している。そして、世界中の多くの人々が、一生行くこともないかもしれないミネアポリスのことを。実のところ、本当の姿をよく知らない君のことを、ずっと考え続けている。僕はと言えば、マドンナの自伝に、君とデートしたけどちょっと退屈だったって書いてあったこと。君が高級ワインが好きで、シャトー・ディケムとロマネ・コンティを混ぜてオリジナルのロゼ・ワインを作っていたという昔話ばかりを思っている。
マセラティとポルシェを2 in 1にした改造車みたいな君だけのロゼ・ワインはどんな味がしたんだろう?って。そんなことでも考えてないと、そう。悲しくてね。世界中の君のファンとともにもう一度。R.I.P. Prince。3文字とも全てが君の名前に入っている。本当の愛、本当の自由を君とともに。CMです。
(中略)
(パパ・ウェンバ追悼コメントの終わりに)まあ、あんまりそのね、誰でも……亡くなりますから。湿っぽくしたいわけじゃないんですけど。あまりに連続してね。パパ・ウェンバは私にとってプリンスと同じかそれ以上の愛着というか。相当聞いた……最初のアフリカンポップス体験の人だったんで。まあ、そんなことを言ったらプリンスって、あらゆる人にとっての、あらゆるいろんな初体験をもたらした人だったと思いますけどね。それがプリンスの本当に偉大なところだったと思うんですけど。
<書き起こしおわり>