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松本俊彦と荻上チキ メディアの薬物報道の問題を語る

松本俊彦と荻上チキ メディアの薬物報道の問題を語る 荻上チキSession22
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国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦さんがTBSラジオ『荻上チキSession22』に出演。荻上チキさんとともに、メディアの薬物報道の問題点などについて話していました。

(荻上チキ)さて、今日はセッションだということで、報道に関する意見や要望がたくさん来ているんですね。いろいろと紹介していきましょう。一通ずつ行きたいと思います。

(南部広美)(投稿メールを読む)『薬物を肯定する気持ちは全くないんですが、薬物を使用すると、日本では人生のやり直しがきかないイメージですが、アメリカでは映画俳優など薬物依存から脱却した人たちが多く活躍されています。日本の報道では、危険薬物の使用者が全て責任を1人で背負わせる報道ばかりで、厚生施設の不足を全く報道しません。アメリカでは、日本では違法な薬物を合法化する州も増えています。同じ薬物を使用しているのに、国によって使用が禁止されないのはなぜなのか?を報道しないのは、なぜなんでしょうか?』という。

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本人の心の闇の問題ばかり注目する報道

(荻上チキ)うん。あの、報道の特徴として、やっぱり履歴書主義というか。本人の心の闇の問題ばかりに注目をして、構造問題にするのが苦手だというのがまず、あったりしますね。だからなぜ、彼がやったのか?っていうところから発して、海外の制度と比べるという段階に行くまでには、報道が2、3周しないと問題がたどり着かないというところがある。

(松本俊彦)うんうん。

(荻上チキ)それまでに早く専門家につながれば、報道も専門的な報道ができるということはあると思いますけども。松本さん、このメールはいかがですか?

(松本俊彦)僕はね、本当この人のおっしゃる通りだと思うんですよ。もっとね、たとえばもしかすると、昔クスリを使ったけれども、いまは止めて活躍されている芸能界の方も結構いると思うんです。もしも、その方がカミングアウトしてくれたら、多くの人たちの支援につながると僕は思います。

(荻上チキ)ええ、ええ。

(松本俊彦)アメリカなんかでも、オバマ大統領が若い時にずいぶんいろんなクスリを使ったなんて言ってますよね。あれは、やっぱり希望だと思うんですよね。日本では、なかなかそうはならないですよね。それから、何年か前に、あんまりいいことじゃないですけど。押尾学さんとか、なんかありましたよね。

(荻上チキ)ええ。

(松本俊彦)なんかでも、やっぱりある意味理解できるところがあって。あそこで呼んで、自分が使っていることがバレたら全てを失うじゃないですか。でも、そうでなかったら助けられたかもしれないって僕は思ったりもします。

(荻上チキ)ええ、ええ。そうですよね。だからそうしたつながりやすい状況を作っていくっていうことが、必要になってくるということですよね。

(南部広美)(投稿メールを読む)『今回の逮捕の報道をテレビで見ていた妻が、「覚せい剤ってそんなに気持ちいいものなのかな?」と興味本位の発言をしていたのが気になりました。つまり、今回に限らず、著名人の薬物報道にかなりの時間が割かれるため、かえって薬物の宣伝となり、薬物をやったことがない人に興味や関心を植え付けることになるのではないでしょうか?自殺報道と動揺に、薬物報道も抑制的になった方がいいと思います』。

(荻上チキ)はい。自殺報道に関しては、たとえば遺書を報じないであるとか、おどろおどろしいBGMをつけないであるとか。それを唯一の脱出策として描かないであるとか。そういったガイドラインがあるわけですけども。薬物報道においてはどうですか?どういう風にすべきですか?

(松本俊彦)あのですね、たとえば子供の時からいろいろ虐待を受けたりとか、自分を大事にできない傾向がある子なんかは、やっぱり『危ない』って言われると余計それに引き寄せられたりとかですね、しやすいっていうところがあります。それから、『警察ナントカ24時』とかって、よく捜査官が白い粉を『これは覚せい剤だろ!?』って。ありますよね?

(荻上チキ)はいはい。

(松本俊彦)覚せい剤依存の患者さんたちはみんなあれを見て、欲求が入ってるんですよ。

(荻上チキ)うん!刺激される。

(松本俊彦)そう。刺激されちゃうんですよ。渇望を思い出しちゃうんですよね。だから、報道する側もそれをちゃんと意識してほしいなと思いますね。

(荻上チキ)うん。自殺対策の場合、報道をする際に『脱出先を報じよう』ということで、電話相談先を取り上げるということをガイドラインとしていますね。この番組でも、それは他の出来事でも相談先をかならず報じようということをしたりしてるわけですけども。薬物においても、やっぱり同じですよね。

(松本俊彦)そう思いますね。はい。

(荻上チキ)警察24時の合間合間に相談の番号をちゃんと入れるだけでも、変わりますよね?

(松本俊彦)変わると思います。はい。

(荻上チキ)あれも視聴率、だいぶついてるみたいですからね。

(南部広美)(投稿メールを読む)『精神科医です。薬物依存に関して取り上げていただきたいトピックがあり、メールいたしました。ひとつは薬物依存症になる背景に、未治療の精神疾患、うつ病、PTSD、双極性障害、そして不安障害があることは非常に多いにもかかわらず、見過ごされがちであること。2つ目めは精神科医などメンタルヘルスの専門家にも薬物依存症患者に対する忌避感があり、適切な治療を受けられる医療機関や関連施設が少ないこと。3つ目が同時に医療従事者が依存症治療に関してトレーニングできる場が少ないこと。この3点です』という風に。

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医療の問題

(松本俊彦)あの、まったくご指摘の通りですね。もちろん、実はですね、薬物を使った人が全員依存症になっているわけではないですし。依存症の人たちが病院にやってくるまでは10数年たっているんですよ。で、より早くクスリにハマッちゃう人たちは、背景にメンタルヘルスの問題を持っていることが非常に多いっていうことです。それから、この二番目、三番目。専門家の忌避的な感情。それからトレーニングする場所の少なさ、スキルの乏しさっていうことは本当に、ずっと我が国の精神科医療の問題ですね。

(荻上チキ)うん。だから薬物乱用の問題と、薬物流通の問題を分けるっていうっていう話が大前提としてある中で、その乱用の背景には、そういう風にしてしまいがちな人たちには、他の手をそもそも差し伸べておかなければいけない。つまり、薬物の未然防止には流通だけではなくて、摂取の予防というのも必要になってくるわけですね。そこには他のメンタルヘルスの議論も必要になってくる。

(松本俊彦)はい。

(荻上チキ)でもこの忌避感。つまり、精神科医の方々も当事者たちを避けてしまう。これはどうしてそんなことが起こるんでしょうか?

(松本俊彦)どうしても、まずひとつは『犯罪だ』っていう認識なんですね。『アルコール依存症は病気かもしれないけど、薬物は犯罪だ』っていう認識がある。それから、医療機関っていうのは診療報酬で回っていますよね?その診療報酬の議論なんかでも、薬物依存症に対する特別な加算をしようとすると、『なんで犯罪に対して税金を使うのか?』っていう議論もしばしば出てくる。

(荻上チキ)はい。でも、犯罪に対しては公衆衛生だからこそ、使わなければ行けないわけですよね?

(松本俊彦)社会安全を維持するために、公衆衛生的なアプローチという意味で、僕は医療は必要だと思っています。

(荻上チキ)うん。それから、Twitterでも。(ツイートを読む)『報道しないのは御用メディアだからじゃん?』っていう指摘があるんですけど。これはその通りで。実はこういった有名人の逮捕劇っていうのは警察からのリークで報じられるということがあるんですね。で、警察からリークされるというのは、警察を報道する犯罪報道の枠組みの部署がその報道にあたるので。社会問題としてどういう風に報じるのか?というようなところの情報が乏しい方がその記事を書くということも、場合によっては多いわけですよ。

(松本俊彦)そうですね。

(荻上チキ)となると、それが社会問題化される最初の報道では、極端な犯罪報道しか取り上げられて。時間がたってから、ようやく社会問題として報じられるというこのタイムラグがどうしても生じがちだというメディアの課題はこれは、松本さんもお感じ担ってますか?

(松本俊彦)本当にそれは感じていますね。

(荻上チキ)このあたりはやっぱりしっかり変えていかなくては行けないわけですね。今後、どうでしょう?制度的に薬物に対する理解をより進めていくにはどういった設計が必要だとお感じになりますか?

(松本俊彦)まあ、これはなかなか難しいんですけども。いま、この番組でこの早い段階でこういう風な主張ができている番組があるということ。これを偉い、施策を作る人たちがぜひ聞いていてほしいなという風に思っています。

(荻上チキ)うん。認識からということですね。

(松本俊彦)そうですね。で、いまちょうど刑の一部執行猶予制度とか、いろんなのがある中で、国としてこの薬物問題をどんな風に取り組むつもりなのか?っていうことは、やっぱり問いかけたいですね。

(荻上チキ)また聞いている人も含めて、認識を変えていくっていうことをしてこその、薬物問題の改善ということになるわけですね。

(松本俊彦)はい。

<書き起こしおわり>

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