荻上チキ 新型コロナ専門家会議・議事録未作成問題を語る

荻上チキ 新型コロナ専門家会議・議事録未作成問題を語る 荻上チキSession22

荻上チキさんが2020年5月28日放送のTBSラジオ『荻上チキSession-22』の中で新型コロナウイルス対策を検討してきた政府専門家会議が会議の議事録を作成していない問題について話していました。

(荻上チキ)さて、今日共同通信が報じていたんですけれども。こういった見出しの記事があちこちで配信されております。もしかしたらどこかの掲示板とか、あるいはその共同通信の配信記事。いろんな新聞に共同通信の配信事は載りますので、「目にしたよ」っていう方もいるかなと思うんですけれども。こういったタイトルですね。「コロナ専門家会議、議事録作らず 歴史的事態検証の妨げに」という内容です。

記事の内容は以前もこの番組で少し触れたんですけれども。今、新型コロナウイルス対策をいろいろ検討する政府の専門家会議。この政府の専門家によっていろいろなコロナ対策の基礎が作られていて。で、それを政府が取り入れたり、取り入れなかったり。あるいは、その専門家会議では言っていないんだけども、いろいろやったり。そういうことでこのコロナ対策が決まっていくわけだが、いずれにしても専門家会議はとても重要な役割を担っていますよね。

(南部広美)そうですね。

(荻上チキ)で、この専門家会議の議事録が作られていないというようなこと。これは以前も共同通信などが情報公開請求をすることで分かっていたことではあるんですけれども。その段階では「途中までは議事録がなかった」っていうことが分かっていたんですけれども、今回はさらに「そこから先の部分議事録を作っていない」ということも分かった。要は、いろいろと途中で報じられた、「議事録は取ってるのかな?」っていうことについて気になっている方が多くて。それについて検証をしたり、情報公開請求が重ねられてきたわけだけれども。そうしたようなアクションがあってもなお、議事録を作っていないということがまた追い打ちでわかってきたということになりますね。

まあ今、「情報公開請求」とかがいろいろな各所で行われていて。そういったような報道が行われることがすごく重要なことだと思いうんです。情報公開請求っていうのはなかなか手間なんですけどね。僕もいくつか、やったことがありますけども。見事に黒塗りになったりとか……。

(南部広美)そうですね。とにかく1回しただけではなかなか出て来なかったり。あとは「黒塗りだ」っていうのももちろんそうですが、「ないです」って言われるという話も情報公開クリアリングハウスの三木さんがしていませんでしたっけ?

(荻上チキ)そうなんですよ。タイトルがぴったりのものを請求しないと「そんな文書はないです」って言われたり。あとはこちら側が検証したいと思っていることを検証させてもらえないこともあるんですよ。というのは「プライバシーに関わるから」ということでいろいろと消されてしまうということもあったんですね。

(南部広美)見られないようにっていう形で。

(荻上チキ)まあ余談になりますけども、僕が情報公開請求をしたいくつかの中のひとつは、ある省庁で……いろんな省庁で勉強会とか、そういったことも行われたりするんですよ。それは講師に専門家の方を呼んで。安全保障だったら安全保障の講義とか、経済なら経済の……みたいな。

(南部広美)それは受ける人っていうのは省庁の方々ですか?

(荻上チキ)そうです。職員だったり、たとえば防衛省、自衛隊だったら自衛官とかね。まあ、なので「誰が講義の講師をしているのか?」っていうのは気になるじゃないですか。なので「その授業の一覧をください」って言ったんだけども、その講義を何コマやっているのかは出てきたんだけど、誰が講師なのかを教えてくれなかったりとか。

(南部広美)えっ? 勉強会、コマ数はこれぐらいありますよっていうのはわかるんだけども、どなたが講師をしていたのかは明らかにされず……なんですか?

(荻上チキ)そう。こっちはそれを記事にしたかったんだけども、わからなかったから……。

(南部広美)そうですよね。本丸というか、一番聞きたかったのはそこだったんですよね?

(荻上チキ)そうなんですよ。でも、それはそれで興味深い話だとは思うんですが。というわけで、いろいろと調べます。で、話を戻しますと今回、共同通信の取り上げ方で分かったのが「専門家会議の議事録は相変わらず作られていない」というようなことなわけです。現在、官邸のWEBサイトでこの専門家外の報告状況を閲覧をすると、「議事概要」は載っているんですね。だけど議事録はない。でもね、議事概要があるんだったら議事録も作れると思いませんか?

議事概要は公開されているのだから、議事録も作れるはず

(南部広美)そうでしょうね。だって概要を作るためにはその会議の様子をくまなく聞いてとか、第三者が知った上で概要を作るわけでしょう?

(荻上チキ)そう。それはやっぱり議事録の元となる音声などはあるんだと思うんですよ。だけど、この番組でたびたび専門家会議の人々に出ていただいていて。その時はその政府の状況や全国状況や個別の医療関係の質問などをしているんですけれども。毎回、「議事録についてどう思うか?」とかその選ばれた経緯について、専門家会議の方に聞いているじゃないですか。そこで見えてきたのは個別の専門家の皆さんは別に議事録取ることに抵抗はなさそうだと。

(南部広美)そうですね。「実名でも大丈夫」って仰った方もいらっしゃいましたね。

(荻上チキ)そうですね。しかし、どうやらあの官僚の方が「概要しか出しませんので」という風に先回りをして説明をしている。だから専門家会議の人々も「ああ、そういう仕組みなんだ」という風に思わされている。そもそも。で、たとえば情報公開の話とか、公文書の話とか、あるいはそういった会議の議事のあり方っていうものを、「別に議事録を取ってもいい」ということ。むしろなんなら「議事録を取ることの方が推奨されてる」っていうことが分かっていれば、たとえば概要云々ということを言われた時に「いや、議事録を全部出してください」って言えたりすると思うんですよ。

(南部広美)「そうなってますから」っていう風になりますよね。卵が先か、鶏が先かみたいな話ですね。

(荻上チキ)で、そういうようなことではなくて、どうも官僚……つまり、もう政府の方がこれに対してすごく消極的だということが分かるわけ。これは別に今回の専門家会議の中身を出したいということではかならずしもないのかな?っていうことを思うわけですよ。別にこれを隠したいって思っているわけじゃないんだろうなって。まあ、もしかしたら思っているかもしれないけど。でも、あり得る可能性としては「ずっとそうやってきたんじゃないか」ということ。

(南部広美)ああ、さかのぼってこれまでずっとそういう慣例であったということですか?

(荻上チキ)うん。僕、思うんですけども。たとえばこういった内閣とか一部の省庁がたとえば「毎回、詳細な議事録を出します」ということになったとしましょう。そしたらどうなるかというと、議事録を出していない他の省庁が「お前はなんで出してないんだ?」っていう風になりますよね?

(南部広美)ああ、「その省庁だけ」っていうことになると、横並びで仕事が増えちゃうという話ですか?

(荻上チキ)まあ、わからないですけどね(笑)。

(南部広美)ここは憶測になっちゃいますけどね。わかんないですけどね。

(荻上チキ)僕は原理原則として情報公開のため文書はそもそも取っておくべきものだから、ないこと自体がおかしいって想うんですよ。

(南部広美)あと特にこのコロナになってから、「歴史的緊急事態」っていうことで、「議事録など文書を積極的に残すんです」っていうことを国会でも言ってましたよね?

議事録作成など義務づけ「歴史的緊急事態」

(荻上チキ)言ってましたね。そして今まで、公文書を巡ってはいろんな問題が起きてきた。「疑惑」じゃなくて、いろんな「問題」が起きてきた。「改ざん」とか「ねつ造」とか「集計ミス」とか「黒塗り」とか諸々、いろいろあったんですね。

(南部広美)あとは「文書が残ってませんでした」って言われたけれども、後から出てくるとか。

(荻上チキ)そういうこともあるわけですよ。そのたびに「公文書の問題を徹底する」って言ってきたんですよ。これを言ったのは、安倍さんですよ。「李下に冠を正さず」とも言ったし、「膿を出し切る」とも言ったし。まあそれをやっていないんだけども。

(荻上チキ)それとはまた別に「公文書の徹底」という言ってきたわけですね。でも、その徹底をする方法は「公務員の倫理観をしっかりと初心に帰って……」みたいなことを言っていたんですけれども。だとするならば、ここですよね。やっぱり議事録を作らなきゃ。

(南部広美)うんうん。気持ちで作ろうと思っていても、システムがそうなってないとできないみたいなことって起こりうるんですかね? 昨日の官僚のお話とかも……。

(荻上チキ)これはね、気持ちで何とかなりますよ。だって、会議の議事概要や音声っていうのはデータとしてはあるはずですから。それを今からでも、議事録にしていただきたい。

(南部広美)それを議事録に直してちゃんと保存をしていただくという。

(荻上チキ)そうです。そういったことがなければ検証ができませんからね。

(南部広美)「公文書は我々、国民のもの。だから我々が請求した際にはいつでも見れる状態にしておいてもらいたい」ということもそうですよね。

(荻上チキ)そう。そして、可能ならばやっぱり専門家の役割って大きいと思うんですよ。その時に出た専門家がしっかりと会議体に対して「いや、情報公開は原則でしょう?」っていう風に声を上げていいはずだと思うんですよ。

(南部広美)メンバーの方々が。

(荻上チキ)残念ながら今のところ、出ていただいた専門家の方々は「いや、どうもそういった仕組みで」とか「そういう風に言われたんで」っていうことで、その「文書がない」ということに対して疑問を抱いてないのかどうかはわからないけども……まあ、放置をしているよね?

(南部広美)そうですね。ただ「後に検証してもらいたい」という風なご意見はありましたよね。

(荻上チキ)だからこそ、いろんなところでね、その専門家のところに声を届けるとか。あるいは「こういったようなものが問題なのだ」ということで、しっかりと国会で追求をするとか。あるいは人々が声を上げることで、その論点を届けていくっていうことなどなども、やっぱり必要になりますよね。

(南部広美)そうでしょうね。その会議の内容が我々の生活に直接的に影響があったわけですもんね。

専門家会議の内容が国民の生活に直接影響を与える

(荻上チキ)そうなんですよ。その近代国家、特にその民主主義の中では、まずは「国民が主役」で、そして「具体的に国家が何をしているのか?ということの透明性が大事」で、「そうした透明性を確保した上で人々が政治に対して関与をする」という、これが大前提ということになるんですよね。そうした基礎というものをおろそかにしているような状況では、当然ながら「非民主的な状況になりつつある他の国や地域に対して声を上げる」と言っても、「いやいや、まず自分の足元をどうにかしろよ?」ということを当然、言われるわけですよ。

今日は現在、香港で非常に大きな状況が動きつつあるので。そのことを取り上げようと思ってるんですけれども。そのことで国会議員の方々も今、声を上げつつあります。複数のね連名での声明文が今度、出されるように動かれているんですよね。その中には、与党の人とかもいたりして。「いやいや、公文書の問題とかを含めたら、人のことは言えないところがあるので、両方やりましょうよ! この社会の民主主義の話と、他の民主主義の話もセットでやっていきましょう!」っていうことを呼びかけたいなと思います。

<書き起こしおわり>

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