松尾潔 メロウなクリスマスソング特集2015 前編

松尾潔 メロウなクリスマスソング特集 前編 松尾潔のメロウな夜

松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』で『メロウなクリスマス』と題し、クリスマスソングを特集していました。

(松尾潔)改めましてこんばんは。松尾潔です。『メロウな夜』、12月の放送は2回。ということは今年の放送も今回を含めてあと2回ということですね。この2週間はクリスマスソングとホリデーソングをたっぷりとご紹介したいと思います。題して、『メロウなクリスマス』。さて、今週はメロウなクリスマス特集前編となるんですけども。ちょっとその特集に入る前に、いくつか新譜をご紹介したいと思います。

(中略)

そんなブーツィー・コリンズのお話に移りたいと思います。ブーツィー・コリンズはね、本当にあの、ファンキーなベーシストっていうイメージなんですけども、同時にメロウな感覚もキャリアのいろんなところで開花させてきた人でございまして。『I’d Rather Be With You』っていうPファンク時代の名曲もございますが。

今日、ご紹介しますのは、クリスマスアルバム。2006年にリリースした『Christmas Is 4 Ever』の中に収めておりました『Santa’s Coming』という曲です。

Christmas Is 4 Ever

これはね、まあ聞いていただければすぐにわかるんですけども。『サンタが街にやってきた(Santa Claus Is Coming To Town)』っていう曲がありますけども、まあそれをブーツィー流にファンキーにメロウにアレンジしたという、そんな1曲です。じゃあ、まずはそちらをご紹介いたしましょう。ブーツィー・コリンズで『Santa’s Coming』。

Bootsy Collins『Santa’s Coming』

The Isley Brothers『I’m in Love』

2曲続けてクリスマスナンバーをご紹介いたしました。まずはブーツィー・コリンズで『Santa’s Coming』。これは2006年のアルバム『Christmas Is 4 Ever』の中に収録されていました。いわゆる『サンタが街にやってきた(Santa Claus Is Coming To Town)』の改作バージョンですね。ブーツィー・コリンズ、賑やかしを入れてましたけども。実質的にリードを取っていましたのはキャンディス・チータム(Candis Cheatham)という女性。

このキャンディス・チータムという女性はブーツィーはもちろん、Pファンク系のライブでよくお目にかかることがあります。まあちょっと、毅然とした印象のボーカルが僕は好きで。そうですね。似たタイプで言うと、かつてアトランティック・スター(Atlantic Starr)にいたシャロン・ブライアント(Sharon Bryant)なんかをちょっと、キャンディス・チータムの歌声で思い出してしまいますけどね。こういったたたずまいの人がメロウな曲を歌うっていうのはいいもんだな、なんて聞いてました。本当に、大人のサンタクロースがやってくるんだなって気がいたしました。

で、続いてご紹介しましたのが翌2007年にリリースされた、これも比較的最近のアルバムですね。『I’ll Be Home For Christmas』というアイズレー・ブラザーズ(The Isley Brothers)のアルバムの中から『I’m in Love』。ロナルド・アイズレー(Ronald Isley)の美声と言いますか、ワン・アンド・オンリーのハイトーンボーカルが技あり!そんな1曲ですね。プロデュースを手がけますのはジャム・アンド・ルイス(Jam & Lewis)。

このアイズレー・ブラザーズの長い歴史に敬意を払った、そんなことがうかがえる。そして、やっぱりちょっと単に懐メロじゃなくて、新しい要素も散りばめるのがジャム・アンド・ルイス流というか。今年のR&Bの最大のトピックのひとつであります、復活したジャネット・ジャクソン(Janet Jackson)。そのサウンドの要もやっぱりジャム・アンド・ルイスでしたけども。似たような美学を感じますよね。似たようなっていうか、通じる美学っていうのを。それまでのキャリアを否定せずに、それまでの音楽性を含みながら、新しいものも提示するという、本当にバランスの妙を感じます。『I’m in Love』でした。

さあ、アイズレー・ブラザーズ。もちろんこれは兄弟の名前でありまして。ファミリーグループということが言えるわけなんですが。クリスマスと言えばね、やはり家族で歌うという画が似合いますね。そもそもがね、そういったイベントですよ。何しろ、戦いの手をいったん休めて、『クリスマス休戦』なんて言葉があるぐらいですからね。で、休んでどうするか?っていうと、『クリスマス・ホーム・カミング』という言葉がセットでついてまわるように、実家で過ごすわけですね。そうなるとやっぱりクリスマスは家族のものということになるんですが。

まあ、兄弟グループ。アイズレー・ブラザーズがその男性の代表格のひとつであるならば、いまのシーンで、女性の姉弟。女姉弟で代表格と言うと、やはりブラクストン・シスターズ(Braxton Sisters)なんじゃないでしょうか。いま、バックでお届けしています。『Every Day Is Christmas』。

これは先月、番組でご紹介いたしました。彼女たちにとって初めての、アルバム単位での姉妹共演。ブラクストン家のお母さんがね、『あなたたち、一度でいいからクリスマスアルバムをみんなで作ったらどうなの?』ってもう、本当20年以上言い続けていたらしくて。それがやっと形になったという『Braxton Family Christmas』なんですが。その『Every Day Is Christmas』。もう本当に今年の収穫だと思います。

Braxton Family Christmas

これ以外にもね、一家の中の最大のスターでありますトニ・ブラクストン(Toni Braxton)がこれまでたびたびホリデーソングを歌ってきました。『Holiday Celebrate』という曲が中でも僕のお気に入りですね。『Snowflakes』っていう2001年のソロとしてのホリデーアルバム。クリスマスアルバムがあるんですけど、その『Snowflakes』の中でも、まさに白眉と言える曲でした。

で、その家族の歴史の中ではずっとトニだけが家族の中の最大のスターであり続けたわけではありませんで。やはりこの数年、この間も話しましたけどもこの数年はテイマー・ブラクストン(Tamar Braxton)という妹がこのブラクストンファミリーを引っ張ってますよね。それは間違いないですね。もちろん、テイマーの旦那さんがヴィンセント・ハーバート(Vincent Herbert)っていうレディー・ガガ(Lady GaGa)を手がけた時の人っていうこともあるんですけども。まあ、そこも含めての家族ですから。

テイマーの活躍っていうのはトニにもまたリフレクトしたというか。ちゃんと家族全体の繁栄に反映されているのが美しいなと。みんなこのストーリーが好きなんだなと思います。テイマーのクリスマスアルバムは2013年。2シーズン前のこの時期に出ました。『Winter Loversland』というアルバムで。その時に一度番組でご紹介してるんですが、これから聞いていただく曲。まあ、家族家族といま話してきましたけど、それとは対照的にひとりぼっちのクリスマスを描いております。

もう、愛する男に逃げられた女の恨み節。孤独というのはクリスマスでも容赦なく襲いかかってくるものだ。どうしてくれるの!?っていう曲ですね。テイマー・ブラクストン『She Can Have You』。

Tamar Braxton『She Can Have You』

R&Bシーンでいま最も勢いがある姉弟、家族でございます。ブラクストン家の中からテイマー・ブラクストン『She Can Have You』。これ、2013年にリリースされた彼女のホリデーアルバム『Winter Loversland』からの1曲でございました。まあ、クリスマス曲。いろいろございます。この間、ダニー・ハサウェイ(Donny Hathaway)の『This Christmas』っていう曲を深く掘り下げましたけれども。

松尾潔 R&B定番曲解説 Donny Hathaway『This Christmas』
松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中でR&Bの定番曲、 Donny Hathaway『This Christmas』を紹介。様々なカバーバージョンを聞き比べながら解説していました。 (松尾潔)続いては、いまなら間に合う

あの曲に限らず、R&Bシーンで愛されてる曲っていうのはたくさんありますね。『The Christmas Song』なんていうのはその筆頭に挙げられると思います。メル・トーメ(Mel Torme)がオリジナルで。まあ本来、ブラックミュージックっていうのとちょっと違う出自を持っているんですけども。まあ、いろんな人たちがカヴァーしてますね。やっぱり、ナット・キング・コール(Nat King Cole)が歌ったことが大きいのかな?なんて思いますね。

あとは、ここ最近でいいますと、『Mary, Did You Know?』っていう曲を歌う人たちがどんどん増えてますね。まあR&Bシーンとはちょっとまた違うところから出てきた曲なんですけども。いま、バックで流れているジョナサン・マクレイノルズ(Jonathan McReynolds)っていうゴスペルシーンの有望株ですね。

そのジョナサンのバージョンなんかは本当に、曲の出がどうであるとか気にならないぐらいの、本当にやっぱりR&B気分、ゴスペル気分の1曲だと思いますし。最近ですとペンタトニックス(Pentatonix)のバージョンっていうのも印象的でした。

まあ、本当にクリスマスっていうのは名曲が誕生する場として機能しているっていうことを僕は言いたいわけなんですけども。続いてご紹介しますのは、やっぱりクリスマスならではの絶好の状況設定が生み出したという曲です。まずはキース・スウェット(Keith Sweat)の『It’s Christmas Again』。これ、2007年の彼の『A Christmas Of Love』に収録されている作品なんですけども。この『Christmas Again』っていうのは毎年クリスマスがやってくるという前提のもとに成り立っているタイトルで。もうそれ自体が、この状況を上手く使ったなという。そういう1曲なんですけども。

キース・スウェットがね、普段あんまり披露することがない、ファルセットの上手さというのをいかんなく発揮しております。そして同じようにファルセット使いが印象的な曲ということで、昨年のクリスマスシーズンにリリースされましたアンソニー・ハミルトン(Anthony Hamilton)の『What Do The Lonely Do At Christmas』。こちらをご用意しました。これはね、いままで番組の中でオリジナルのエモーションズ(The Emotions)ですとか、パティ・ラベル(Patti LaBelle)のバージョンでも聞いていただいているんですけども。

まあ、もともと女性の歌というイメージが強いんですが。『寂しき人々はクリスマス、どう過ごせばいいの?』っていうこの大命題をですね、骨太のイメージがあるアンソニー・ハミルトンがファルセットを駆使することによってひとつの答えを出しております。音楽的な正解だと思います。聞いていただきましょう。キース・スウェット『It’s Christmas Again』。そしてアンソニー・ハミルトンで『What Do The Lonely Do At Christmas』

Keith Sweat『It’s Christmas Again』

お届けしたのはキース・スウェットで『It’s Christmas Again』。そしてアンソニー・ハミルトンで『What Do The Lonely Do At Christmas』。いいですねえ。この男っぽい人たちがこういう、おセンチな色合いで歌い上げる。そんなクリスマス曲、大好きです。好物です。さて、そんなクリスマスソング好きの僕、松尾潔が自分で作り手に回った時の1曲というのをご紹介したいと思います。本当に僭越ながらっていう感じなんですけども。

2002年にリリースしました。早いものでもう15年近く前になりましたけども。当時僕がプロデュースを手がけておりましたケミストリー(CHEMISTRY)という男性デュオがいます。彼らにとって初めてのクリスマスソングは、これまた当時僕がプロデュースを手がけていた、当時3人組でした。Skoop On Somebodyと僕の4人で作った曲です。僕はね、その頃もうプライベートの時間でもスクープのメンバーと一緒に過ごすことが多くて。まあ、誤解を恐れずに言うと、4人組みたいな状況だったんですけども。ですから、まあケミストリーに曲提供をするっていう時も、彼らに『一緒に作ろうよ』って言うのはたいへん自然な流れだったんですが。『CHEMISTRY meets S.O.S』という、そんなクレジットでリリースした1曲です。お聞きいただきましょう。CHEMISTRY meets S.O.Sで『My Gift to You』。

CHEMISTRY meets S.O.S『My Gift to You』

お届けしたのはCHEMISTRY meets S.O.Sで『My Gift to You』でした。

(中略)

さて、楽しい時間ほど早く過ぎてしまうもの。今週もそろそろお別れの時が迫ってきました。ということで今週のザ・ナイトキャップ。寝酒ソング。今夜はKEM feat.Ledisiの『Be Mine For Christmas』です。トロットロですよ。これからお休みになる方。どうかメロウな夢を見てくださいね。まだまだお仕事が続くという方。この番組が応援しているのはあなたです。次回は来週12月14日月曜。いつもの夜11時の10分遅れ、夜11時10分にお会いしましょう。お相手は僕、松尾潔でした。それでは、おやすみなさい。

KEM feat.Ledisi『Be Mine For Christmas』

<書き起こしおわり>
https://miyearnzzlabo.com/archives/32167

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