スポンサーリンク

松尾潔 R&B定番曲解説 Donny Hathaway『This Christmas』

松尾潔 R&B定番曲解説 Donny Hathaway『This Christmas』 松尾潔のメロウな夜
スポンサーリンク
スポンサーリンク

松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中でR&Bの定番曲、 Donny Hathaway『This Christmas』を紹介。様々なカバーバージョンを聞き比べながら解説していました。

(松尾潔)続いては、いまなら間に合うスタンダードのコーナーです。2010年3月31日に始まった『松尾潔のメロウな夜』。この番組は、メロウをキーワードにして、僕の大好きなR&Bを中心に大人のための音楽をお届けしています。さて、R&Bの世界でも、ジャズやロックと同じように、スタンダードと呼びうる、時代を越えて歌い継がれてきた名曲は少なくありません。そこでこのコーナーでは、R&Bがソウル・ミュージックと呼ばれていた時代から現在に至るまでのタイムレスな名曲を厳選し、様々なバージョンを聞き比べながら、スタンダードナンバーが形成された過程を僕がわかりやすくご説明します。

今回は、ダニー・ハサウェイ(Donny Hathaway)が1970年に発表しました名曲『This Christmas』について探ってみます。そうなんです。さっきのレイラ・ハサウェイ(Lalah Hathaway)についてね、ちょっと熱く語りましたけども。その後に、お父さんのダニーにこの曲が控えていたんですね。先ほど、『This Christmas』っていうのは70年の曲だっていう風に言いましたけど、実はね、これ、1970年にまずリリースされた時はさほど話題にならなかったそうですね。

実際には72年あたりに改めてシングルヒットしたという、そんな記録が残っています。まあその、R&Bっていうのはね、ゴスペルにルーツをたどることができるというか。もう本当に、ゴスペルの子供ですよ。実際、ゴスペルシンガーだった人が、世俗に。これ、『ゴスペルからセキュラへ』って言いますけども。その、俗世間に向かって歌うものをR&Bと言うことが多いですから。実際、クリスマスソングと言われている世界っていうのはこれはR&Bにはつきものと言いますか、切っては語れない。そんな存在でございます。

ですが、まあアメリカの黒人史に詳しい人であればお察しいただけると思うんですけども。アフリカン・アメリカンっていうのは経済的にも社会的にも余裕のある生活ができるようになったのは、白人の歴史とはまた違いますから。なかなかね、60年代ですとか、ましてや50年代とか。アフリカン・アメリカンによるアフリカン・アメリカンのためのクリスマスソングという、自前のクリスマスソングっていうのは少なかったそうですね。

で、たとえばメル・トーメ(Mel Tormé)の『The Christmas Song』をカヴァーするですとか、古来から伝わるクリスマスソング。まあ、賛美歌を歌うとか、そういうことももちろん多かったわけなんですけども。まあ、ダニー・ハサウェイっていう人は社会意識の高かった人で。『我らアフリカン・アメリカンのための曲を作ろうではないか』という気持ちも非常に強かったようで。それで世に出したのがこの『This Christmas』なんですが、さっきも話しましたように、最初は割とお寒いリアクションで。

彼もちょっと落胆もあったみたいですけども。まあ、ダニー・ハサウェイ自身が名声を獲得していくにつれて、こういう曲が出しやすくなったんでしょうね。やっぱり、ライトプレイス、ライトタイムっていうのがあるんだと思います。72年以降はどんどんどんどん、その定番としての存在感を増していくばかり。まあ、きっちり数えたわけじゃないんですけども、R&Bとカテゴライズできる曲の中ではこの『This Christmas』っていうのはいちばんカヴァーヴァージョンも多いんじゃないかな?と思います。

いま、バックで流れております。またか!クリス・ブラウン(Chris Brown)の『This Christmas』ということなんですが(笑)。

これなんていうのはクリス・ブラウン本人が出た映画のサントラに入っているんですけども。映画のタイトルが『This Christmas』ですからね。ええ。まあ、それぐらいもうアフリカン・アメリカンカルチャーの中では第二、第三のアンセムと。彼らの民族的な意識にかなり触れる、そんな曲っていう位置づけです。では、聞いていただきましょう。まずはオリジナルヴァージョンのダニー・ハサウェイを聞かねばなりません。

そして、数あるカヴァーヴァージョンの中から、まずはダニーに続けてご紹介するのはみんな大好きエリック・ベネイ(Eric Benét)のヴァージョンです。それでは2曲続けて『This Christmas』。ダニー・ハサウェイ、そしてデイブ・コズ(Dave Koz) feat.エリック・ベネイのヴァージョンです。

スポンサーリンク

Donny Hathaway『This Christmas』

スポンサーリンク

Dave Koz『This Christmas feat. Eric Benet』

今夜のいまなら間に合うスタンダード。ダニー・ハサウェイの1972年発表の『This Christmas』をご紹介しています。ダニー・ハサウェイのまず、1972年に世に出たヴァージョン。そして、これは本当比較的というか、非常に新しいですね。昨年リリースされましたサックスプレイヤー、デイブ・コズの『The 25th of December』というクリスマスアルバムですね。その中に収録された、エリック・ベネイをフィーチャーしたヴァージョン。こちらをお楽しみいただきました。

こちらはグッとテンポを落として。まあエリック・ベネイは本当に達者ですよね。R&Bというよりもスムース・ジャズという言葉が似合います。デイブ・コズは一応ご紹介しますけども、まあこのR&B、そしてスムース・ジャズと呼ばれるところがお好きな方にはビッグネームですよね。エリック・ベネイを迎え入れての『This Christmas』。まあエリックも気合が入ったことでしょうね。うん。

この『This Christmas』っていうのは何しろ、まあR&Bというジャンルで歌い続けて行くのであれば、歌い手としてのリファレンスに使われるぐらいの、そんな曲ですよね。規定演技と言ってもいいかもしれない。いまバックで流れていますのは、メアリー・J.ブライジ(Mary J.Blige)の『This Christmas』です。

これはね、女性が歌っても様になる曲なんですよね。さっきもお話しましたように、重要なのはこれ、ダニー・ハサウェイがまだ無名の時に作った曲でありまして。その後、彼がロバータ・フラック(Roberta Flack)と組んで、なんて言うのかな?当時の非常に社会的意識の高い歌い手同士のデュオとして『You’ve Got A Friend』ですとか、『Where is the Love』とか、いろんなヒットを出すんですが。そういった名声を勝ち得た後に、世に出た時に『ああ、ダニーっていい曲を作っていたんだな』っていう、曲の評判も呼びましたけども。ダニー・ハサウェイの音楽家としての地位も高めた、そんな1曲ですね。

もちろん曲としても素晴らしいし、ダニーの歌もいいんだけど、演奏がね、もうアレンジとして素晴らしいですね。ダニー・ハサウェイっていう人はスコアなんかも書けるような人で。いろんな音楽の教養、それこそクラシックとかのね、教養がある人なので、なんでもござれっていう感じなんですが。まあ、生前は『ここまで音楽をやってこれだけ歌って周りからは評判がいいんだけど。どうせ俺はスティービーみたいには売れないんだよな』みたいな、そんな愚痴も多かったっていう風に聞くんですけど。

こと、クリスマスソングに関して言いますと、スティービー・ワンダーと同様、もしくはそれ以上の名声を得ているんじゃないですかね?もちろんスティービーはスティービーでね、『Someday At Christmas』なんていう名唱がございますけども。いま、バックで流れておりますのは、先週『Classic』という曲をご紹介しましたね。ビード(Vedo)くんのヴァージョンの『This Christmas』です。

さっき、女性が歌っても様になるっていうことを言いましたけども、付け加えるならばこういう若い男の子が歌っても様になりますね。器としてデカいんです。『This Christmas』っていうのは。そして、ワンサイズ・フィッツ・オールなんていう言葉がありますけども。これひとつあれば、全員そこに収まるっていう、そういう柔らかい形をしている曲でもありますね。では、その曲の弾力性というのが最も発揮されたヴァージョンをご紹介したいと思います。

こういう風に話すと、この曲の美点を話しているようなんですけども。そこには悲しい出来事がございます。このダニー・ハサウェイという人。まあ精神的には安定しない人でございまして。家庭をもうけてね、さっき話したレイラ・ハサウェイのようなかわいらしいお嬢ちゃんを。ケニヤっていうね、お嬢ちゃんもいますけども。そういう家族を作ったりもしたんですけども、残念なことに1979年の1月に自ら命を絶ちます。

そして、その年の暮れにヴォーカルグループ、ザ・ウィスパーズ(The Whispers)が自分たちのグループ名をそのままタイトルにした『The Whispers』というアルバムをリリースするにあたって、ダニーを悼みましてね。『This Christmas』の替え歌を作ります。その替え歌というのがまさにダニー本人に捧げられたものというのは、これは1970年代のソウル・ミュージックの最も美しい瞬間だったと僕は思います。

まあ、少なくともそのひとつであったと思いますね。お聞きいただきましょう。ザ・ウィスパーズ『A Song For Donny』。

スポンサーリンク

The Whispers『A Song For Donny』

今週のいまなら間に合うスタンダード。ダニー・ハサウェイ1970年の名曲『This Christmas』についてご紹介してまいりました。掘り下げてきました。最後のご紹介したのはザ・ウィスパーズで『This Christmas』の替え歌となります。『A Song For Donny』。これらは彼らの、79年の暮れにリリースしたアルバム『The Whispers』に収められまして。このアルバムは大ヒットいたしました。彼ら、キャリア長いんですね。

で、この時点ですでに11、2枚目ぐらいのアルバムだったんですけど。初めてのR&Bチャートナンバーワン。そしてポップチャートでもトップテン入りしたというね、代表作になってしまったんですね。もちろんそのアルバムの中に『A Song For Donny』以外にもね、『Lady』とか『And The Beat Goes On』とかっていうヒット曲がたくさん入っていたんですが。『A Song For Donny』っていうのがアルバムに格調を与えたことは間違いありません。お届けしたのはザ・ウィスパーズで『A Song For Donny』でした。

<書き起こしおわり>
https://miyearnzzlabo.com/archives/32677

タイトルとURLをコピーしました