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松尾潔 R&B定番曲解説 Timmy Thomas『Why Can’t We Live Together』

松尾潔 R&B定番曲解説 Timmy Thomas『Why Can't We Live Together』 松尾潔のメロウな夜
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松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中でR&Bの定番曲、Timmy Thomas『Why Can’t We Live Together』を紹介。様々なカバーバージョンを聞き比べながら解説していました。

(松尾潔)続いては、いまなら間に合うスタンダードのコーナーです。2010年3月31日に始まった『松尾潔のメロウな夜』。この番組は、メロウをキーワードにして、僕の大好きなR&Bを中心に大人のための音楽をお届けしています。さて、R&Bの世界でも、ジャズやロックと同じように、スタンダードと呼びうる、時代を越えて歌い継がれてきた名曲は少なくありません。そこでこのコーナーでは、R&Bがソウル・ミュージックと呼ばれていた時代から現在に至るまでのタイムレスな名曲を厳選し、様々なバージョンを聞き比べながら、スタンダードナンバーが形成された過程を僕がわかりやすくご説明します。

今回は、ティミー・トーマス(Timmy Thomas)が1972年に発表した名曲『Why Can’t We Live Together』について探ってみます。『Why Can’t We Live Together』、いったいどれぐらいの人がこの曲をご存知でしょうか?いま40代以上の方でしたら、この曲をほぼストレートに引用したハマーの・・・そうです。あのMCハマー(MC Hammer)の『Tell Me』という曲をどこかで聞いたことがあるかもしれませんね。

1991年にリリースした『Too Legit to Quit』っていうヒットがありましたけどね。その中に収められている『Tell Me』。で、サブタイトルが『(Why Can’t We Live Together)』。引用元のティミー・トーマスのタイトルがそのまま使われておりました。これはね、ハマーが古のソウル好きっていうことを念頭に置いて考えると、本当にハマーらしいセレクトだったんですよね。ハマーはシャイ・ライツ(The Chi-lites)の『Have you seen her』っていう曲をほぼそのまま引用して、その上にラップを乗せるということをやっていました。

それ、大変に評判も良くて。なにしろその頃のハマーの音楽的パートナーはもともとコン・ファンク・シャン(Con Funk Shun)っていうグループの頭脳として活躍していたフェルトン・パイレート(Felton Pilate)っていう人でしたからね。こういったオールドスクールのR&Bをネタにしたトラックを作るのはお手の物ですよね。当事者がそのままやっているという感じでもありました。

で、このハマー。91年に、ほぼ20年前の『Why Can’t We Live Together』にラップを乗せて『Tell Me』という。非常にね、彼のレパートリーにしてはというかね、中では、際立って社会的なメッセージラップでしたね。その時はデビッド・ブラック(David Black)という当時ハマーがかわいがっていた男性シンガーをフィーチャリングシンガーに起用していたんですけども。歌モノとしてもラップとしても楽しめる作りでした。

で、この『Why Can’t We Live Together』。最近、またR&B、ヒップホップシーンでネタとして注目されています。それはこの後ご紹介しますけども、カナダはトロント出身の人気ラッパー、シンガーのドレイク(Drake)。この番組でもね、たびたびドレイクの名前をご紹介しています。この間も、ザ・ゲーム(The Game)とのね、デュエットをご紹介したばかりですけども。そのドレイクがいまトップ10ヒットで『Hotline Bling』という曲をモノにしておりますけども。その『Hotline Bling』で大ネタとして使われているのがこの『Why Can’t We Live Together』ですね。

ではまず、この大元。本家本元。ティミー・トーマスのバージョンをお聞きいただきましょう。1972年にリリースされた『Why Can’t We Live Together』というアルバム。

そのタイトル曲です。当時のマイアミの熱い音楽シーン。ちょっともうこの1曲に凝縮されているような気がいたしますね。ソウルアルバム・チャートで最高位10位。シングルチャートでは最高位1位。ポップチャートでも3位という、堂々たる成績。よくね、ティミー・トーマスはこの曲をもって、One-hit wonder(一発屋)という風に言われることが多いんですけども。本当に不滅の名曲です。聞いてください。ティミー・トーマス『Why Can’t We Live Together』。

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Timmy Thomas『Why Can’t We Live Together』

いやー、ずっと聞いていたいグルーヴですね。ティミー・トーマスというのは熱いボーカルを聞かせるシンガーであるんですが。お聞きのようにね、ジャズ風味をたっぷりと備えた優れた鍵盤奏者でもあります。ハモンドオルガン(電子オルガン)をね、まったりとした運指で聞かせながら、そして、当時リズムボックスなんて言われてましたね。いまでこそ、もうスマホにさえついている機能ですね。自動でリズムを刻むなんていうのは。

ですが、この頃、まだまだプロのミュージシャンでもリズムボックスを使う人っていうのは限られていたと思うんですけども。まあいま聞いてみると、かなりチープな印象っていうのはぬぐえませんけえども。それ故に、なんかスペースを感じさせて。そこをもう初めから、狙って使っているんでしょうけどね。そこに非常にこう、人間味を感じさせる鍵盤の動き。そして、熱いボーカル。そして、シンプルなメッセージ。もう素晴らしいトライアングルが成立しております。

『Why Can’t We Live Together』というのはわかりやすい英語で歌ってましたね。『肌の色が違っていても、俺たちは兄弟じゃないか』というね、人類愛を歌っているとも言えますし。もっと言いますと、反人種主義。反戦争。そういった人々を分かつものをなくそうというプロテスト・ソングですね。まあ、1972年という時代。それを考えると、ちゃんと実りがあったんですよ。これは。

特にこの頃、人種隔離政策というのがまだ続いておりました。いわゆるアパルトへイトがありました。南アフリカでこの曲は大変強く支持されまして。ティミー・トーマスは78年に南アフリカのヨハネスブルグでライブレコーディングしてるんですけどね。いま、バックで聞こえております。ライブバージョンの『Why Can’t We Live Together』。オリジナルがリリースされてもう5年以上の時がたって、もう曲の認知も行き届いて。もう非常に温まった、というか熱い状態でのライブ。

この熱狂的なライブ盤というのは僕はティーンエイジャーの時にその存在を知って、よく聞いてましたね。で、オリジナルバージョンも好きだけど、このライブバージョンもいいなと思って。これ、1曲目、延々と8分ぐらいあるんですけどもね。やっぱりこの音楽に救いを求めるというか、音楽に救済を求める。そういったポップミュージックのひとつの機能っていうのをこの1曲。このライブバージョンで教えられたような気がいたします。

で、そのティミー・トーマスの蒔いた種っていうのは、もちろんアメリカでもこれだけヒットしたわけですよね。ソウルチャート1位っていう風に言いましたし、ポップチャートでも大変なヒットになったわけですが。世界中に、南アフリカもそうですし。イギリスにも行きましたね。で、イギリスで特に、もちろん南アフリカと言えばイギリスのことも話さなきゃいけないぐらい人種差別というのはね、アメリカだけの問題ではないですよね。

日本ももちろん例外ではないんですけども、イギリスにおいてもこの曲、大変強く支持されて。シャーデー(Sade)は後にこれだけのご長寿バンドになるなんてことを・・・まあ、望んではいたでしょうけど。それが保証されているわけでもない、約束されているわけでもない時に、1984年に『Diamond Life』という、後に名盤として語り継がれるこのアルバムの最後に『Why Can’t We Live Together』を歌っています。

僕、よく言うんですけども、ファーストアルバムっていうのはアマチュア時代のベストアルバムだと。つまり、シャーデーがメジャーデビューするにあたって、それまでの自分たちの音楽キャリア。もっと言えば音楽人生の総決算としてこの曲を選んだっていうことに大変な意味合いがあると思いますし。また、シャーデーというアフリカ大陸に出自を持つ女性。まあ、イギリスで生活をしていた女性ですけども。そういったアフリカとイギリスっていう関係を一身に背負っているような、そういう女性がこの曲を歌ったということは大変おおきな意味合いがあったと思いますね。

同じイギリスでさらにこの4年後、ジュリア・フォーダム(Julia Fordham)という女性がね、『Happy Ever After』という曲を世に出しました。これは日本でも、トレンディードラマの挿入歌になって。当時、結構なヒットになりました。ラジオから毎日のように流れていた、そんな記憶がございますが。

これはね、もう歌詞の中で、よりストレートに『南アフリカにおけるアパルトヘイトが終わらないかぎり、私に幸せな日々はやってこない』と言い切るという、強い決意を歌った曲でありまして。そういった曲を生み出したのも、元をたどっていけば物語に始まりがあるということで、ティミー・トーマスなんだと思うんですよね。ジュリア・フォーダムの『Happy Ever After』の歌い出し。『Don’t ask me why』と言ってますね。これ、ティミー・トーマスの『Why Can’t We Live Together』の歌い出し。『Tell me why, tell me why』に完全に呼応してますね。

そして、なんと言ってもこのリズム。そして、曲の最後にはアフリカのリズムがむき出しになって。アフリカの言葉を唱和するという。うん。もう本当にティミー・トーマスに対しての本歌取りのような表現。それがね、何度も言いますけども日本ではトレンディードラマの挿入歌に使われたという。ちょっともう、考えものですけども。まあ、そういった形であっても、広く日本でもリスナーの耳に届いたのは悪いことじゃないのかな?という、大人っぽいことも言ってみましょうか。

さて、ここまでお話しましたけど、じゃあなぜ今日、このティミー・トーマスをこのタイミングでご紹介したか?と言いますと、実はいま、この『Why Can’t We Live Together』ネタの曲がアメリカでロングヒットになってますね。アメリカだけじゃないですね。英語圏と言われるエリアでは、大変なヒットになっています。ドレイクの『Hotline Bling』です。

ドレイクというのはこの番組でも何度かご紹介してまいりました。カナダはトロント出身のスターですね。いま、28才。あのベーシスト、ラリー・グラハム(Larry Graham )の甥っ子という、そんなサラブレッドでもあるんですけども。このドレイクの『Hotline Bling』という曲が、いまもう大変なロングヒットになって、かつ、空前のカヴァーブームを巻き起こしております。

渡辺志保 Drake『Hotline Bling』に女子アンサーが多い理由を語る
渡辺志保さんがblock.fm『INSIDE OUT』の中でドレイクの『Hotline Bling』についてトーク。この曲が女性からのアンサーやビートジャックが多い理由について話していました。

まあ、それほど社会現象になっている曲なんですけども。このドレイクの『Hotline Bling』っていう曲については、また改めて。この後、ちょっとご紹介できればと思いますけども。まずはこの曲、聞いていただきましょうか。そして、これぞこの曲のカヴァーの最高峰というのはやっぱりシャーデーかなと思いますので。ドレイクとシャーデー、2曲続けて聞いてください。『Hotline Bling』、そして『Why Can’t We Live Together』。

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Drake『Hotline Bling』

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Sade『Why Can’t We Live Together』

今回のいまなら間に合いスタンダードでは1972年のティミー・トーマスの名曲『Why Can’t We Live Together』をご紹介しています。そしてこの『Why Can’t We Live Together』にまつわる、この曲から派生した曲として、ドレイクの『Hotline Bling』。そしてカヴァーバージョンですね。シャーデーの『Why Can’t We Live Together』。2曲続けてご紹介いたしました。それぞれ、今年2015年、そして1984年と、だいぶ時間には隔たりがあるんですけども。いずれもティミー・トーマスありきで成立した曲ですね。

このドレイクのね、『Hotline Bling』なんですけども、歌っている内容っていうのはね、オリジナルの歌詞を知っているとちょっとバチが当たるぐらいの下世話な・・・はい。別れてしまった女の子に対して未練タラタラの男性の曲ですね。ドレイクはやっぱり、言葉遊びが巧みですよね。まあ、ラッパーっていうところもあるんでしょうけども。

『付き合っている時から俺の携帯をよく鳴らしていたけれども、お前が携帯を鳴らす時っていうのは、いつも俺のアレがほしい時だろ?』みたいな。ちょっとそういうナスティーなことを、強がって歌ってみるんだけども、聞いている人は、『うーん・・・女の子の気持ちはもう離れてますね。あなたを』っていう、そういうことがわかる、男性リスナーとしてはいささかちょっとこう、ヒリヒリするような、虚勢を張った男の人の歌なんですけども。

このドレイクの『下世話な』っていう風に言いましたけども。けど、よくよく考えてみますと、ティミー・トーマスの『Why Can’t We Live Together』。『なんで俺たち、一緒に暮らせないんだ?』っていうタイトルは見事になぞっていまして。技ありのサンプリングなんですね。そして、先ほどからバックに流れておりますこちらは、実は日本の曲なんですね。

ICE(アイス)というユニットがございましたというか。その男性の宮内和之さんという方は2007年に惜しくも亡くなりましたけども。その彼らが94年に発表した『Flower』という曲でこのティミー・トーマスの『Why Can’t We Live Together』のリズムが引用されています。

そしてこの94年。大変に意味がある年でありまして。この年に南アフリカではネルソン・マンデラが大統領になりまして、アパルトヘイトはその暗い歴史を一応閉じます。ですが問題はまだ続いております。そういう意味において、悲しいことに『Why Can’t We Live Together』はまだまだ有効性を発揮している、そんな1曲なんですが。またこの曲のメッセージも常にね、継承としてでも、いつも抱えておいていいんじゃないかな?という気がいたしました。今日、この特集をやりながら、僕もいろいろ感じるところがありました。ティミー・トーマス『Why Can’t We Live Together』をご紹介いたしました。

<書き起こしおわり>
https://miyearnzzlabo.com/archives/32677

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