松尾潔さんがNHK FM『松尾潔のメロウな夜』の中でクリスマスソング、ホリデーソングを特集。お気に入りの曲の数々を紹介していました。
(松尾潔)さて、いまBGMで流れておりますのはそのアリシア・キーズ『She Don’t Really Care_1 Luv』のネタのひとつになっておりますね。ナズの『One Love』という曲。
アリシアはこのアルバムの中にナズ本人を迎え入れてアルバムの中のインタールード、スキットの中でナズとの会話なんかも入れてましてね。この番組でたびたび繰り返してまいりました、90年代懐古っていうのをよりストレートな形で表現したんじゃないかなという風に見受けられます。で、その90年代からこのR&Bシーンの帝王としてずっと君臨し続けてきたのがR.ケリーなんですが、R.ケリー、長いキャリアの中で意外にも初めてのホリデーアルバムをリリースいたしました。タイトルはずばり、『12 Nights Of Christmas』。
こういった十分なキャリアを重ねた人が初めての試みとしてホリデーアルバムをリリースするというのはいま、ちょっとしたトレンドなのかもしれません。R.ケリーほどの大きな成功ではないにせよ、このR&Bシーンの中で確固とした存在感を確保しているケニー・ラティモア。まあ、『メロウな夜』的にはR.ケリーと同格かそれ以上に贔屓にしている人でもあるんですが、このケニー・ラティモアも時を同じくして初めてのホリデーアルバムをリリースしました。こちらはタイトルがずばり、『A Kenny Lattimore Christmas』。うーん、自信ほどがうかがえます。
では、脂の乗ったこの2人の男性シンガーのクリスマスソングをお聞きいただきましょう。R.ケリーで『Snowman』。そしてケニー・ラティモアで『Real Love This Christmas』。
R. Kelly『Snowman』
Kenny Lattimore『Real Love This Christmas』
脂の乗りきった2人の男性シンガーのクリスマスソングをお聞きいただきました。R.ケリー『Snowman』。これは彼にとって意外にも初めてとなりますホリデーアルバム『12 Nights Of Christmas』に収録されていました。この中にはいい曲がまたたくさん入っているんですが、僕はこの『Snowman』という、自分はスノーマンで素敵なスノーガールをを捜しているという、ちょっとカマトトぶったようなこういう素朴を装った歌詞もこの季節なら許されるだろうということで『Snowman』をピックアップいたしました。
そしてケニー・ラティモアはアルバム『A Kenny Lattimore Christmas』と、そのものずばりの自信作から『Real Love This Christmas』でした。R.ケリーは1967年生まれ、49才。年が明けると、この人1月生まれですからね、すぐに50才になります。R.ケリーが50才になる時代。R.ケリー、デビューした時にね、『Born Into The 90’s』っていう……「90年代にデビューしていく」っていうマニュフェストのような形で90年代の頭に出てきたんですけどもね。本当に、おそらくは自分でも思っていた以上の大きな成功、成果を収めることができた1人じゃないかと思います。
そんな人がこの後、どうやって駒を進めていくのか? 彼が常にロールモデルとして掲げてきたマーヴィン・ゲイが生きてきた歳月をいつの間にか超えております。R.ケリー、前人未到のソウルマン人生。この先、どこに行くのでしょうか? こういったところで箸休めのような形でホリデーアルバムを出すあたりのセンスもまたファンにはたまらないものです。ケニー・ラティモアは70年生まれ、46才ですね。まあまあ、ほぼ同世代と言ってもいいでしょう。この人はもう20代の世に出てきた頃から美声で知られていますが。加えて、容姿の面でも美男と言われておりました。
そして一時この人は美男美女とセットで語られることが多かった。それはなぜか? というとこの番組のリスナーのみなさんもご存知の方も多いでしょうが、見目麗しい女性シンガー、シャンテ・ムーアと一時、夫婦でしたね。一時というか長い時期夫婦でしたね。一緒にアルバムも出しております。シャンテ・ムーア、もういまは残念ながらね、ケニーとはセパレートしましたけども。それぞれが歌手としてリスペクトしあっておりまして。それぞれに別れた後も、素敵な作品をリリースしております。
今日、これからご紹介するケニー・ラティモアのエクス・ワイフ、シャンテ・ムーアのクリスマスソング。これはね、ただ新曲ではないんです。99年にリリースされましたコンピレーション・アルバム『My Christmas Album』という、複数のアルバムが新曲を寄せ合って作ったアルバムがあったんですが、その中からの、まあ手垢のついた言い方になりますけども、隠れ名曲と言っていいでしょう。シャンテ・ムーア、この人も1967年2月生まれ。実はR.ケリーとほぼ同時期に生まれておりまして。彼女もまた、年が明けて2月には50才になります。女性の年齢のことを言うのは野暮かもしれませんけども、そんな年頃の彼女がかつて、99年。30代前半に吹き込んだ曲ということで耳を傾けていただくと、この曲の魅力っていうのがまた染み渡るんじゃないかと思いますね。お聞きください。シャンテ・ムーアで『Christmas Morn』。
Chanté Moore『Christmas Morn』
Keyshia Cole『Have Yourself a Merry Little Christmas』
大変チャーミングな女性シンガーを2人、続けてご紹介しました。シャンテ・ムーアで『Christmas Morn』。そしてキーシャ・コールで『Have Yourself a Merry Little Christmas』。もうこちらはスタンダードナンバーですね。シャンテ・ムーアは99年のリリース作品。そしてキーシャは2008年にリリースされた、これはシングルの形でひっそりと世に出たのであまり注目されることがなくて、常々そのことを残念に思っておりましたので、今日はフルバージョンでお聞きいただきました。『Have Yourself a Merry Little Christmas』。こういったスタンダードナンバーという枠組みの中でこそ、キーシャ・コールの自由に泳ぎ回るようなボーカルワークが一段と映えますね。こういう魅力の演出の仕方というのもあるんだなという風に、ちょっと仕事目線で聞いておりましたけども。まあ、今夜の『メロウな夜』、いつも以上にリラックスした雰囲気でお届けしております。だって、ホリデーソングですからね。
女性シンガーの作品を続けましたけども、この後、女性と男性の男女デュエットを2曲続けてご紹介したいと思います。まずは、ビッグネームですよ。マライア・キャリーですね。マライア・キャリーのソロナンバーとして『メロウな夜』で一度ご紹介したことがございます。『When Christmas Comes』。その後、ジョン・レジェンドをフィーチャーしたデュエットバージョンが世に出ております。これもね、リリースのタイミングの問題と、あと身も蓋もない言い方をすると季節商品という性格がありますので。素晴らしいデュエットにもかかわらず、あまりR&Bファンの話題にのぼることはないのかなと、常々残念に思っておりました。僕も今年はこのチャンスを逃さずにご紹介したいと思ってご用意いたしました。マライア・キャリーとジョン・レジェンドのデュエット『When Christmas Comes』。
Mariah Carey, John Legend『When Christmas Comes』
Anthony Hamilton『The Christmas Song ft. Chaka Khan』
2曲続けて男女デュエットをお届けいたしました。いずれもクリスマスソングですね。マライア・キャリーとジョン・レジェンドのデュエット『When Christmas Comes』に続きましてはアンソニー・ハミルトン feat. チャカ・カーンで『The Christmas Song』でした。マライア・キャリー、この人も考えてみると1970年生まれでございまして、今日は40代シンガーの歌声が多いなと、いまになって気づいた次第です。アンソニー・ハミルトンも1971年生まれですからね。やっぱりまあ、常々言っておりますけども、ソウルミュージックを歌うに相応しい年齢というか、まあ深い世界を表現しようと思えばこれぐらいの年齢がまだ入り口なのかもしれませんね。
マライア・キャリーといえば思い出されることがございまして。かつてマライア・キャリーが1993年に『Music Box』という大ヒットアルバム、もう世界的にヒットしたアルバムをリリースしたことがございました。その中に『Hero』という日本でも大変に有名になった曲がありまして。それを翌年、中山美穂さんが日本語でカバーするということがありました。ご記憶でしょうか? もうそれから20年以上たっています。あの時、中山美穂……まあ僕、彼女のことが大好きでしたからね。「中山美穂もマライア・キャリーも好き。でも、ミポリン、マライア・キャリーのカバーするの?」っていうちょっと唐突な印象がありましたよ。
で、そう思った人は少なくなかったと思うんですけども。「だって2人に共通点、ある?」っていう、まあ飲みの席でそういう話をしたんですけども。やはり、両者のファンだった人がこう言いました。「ある!」「えっ? ”美人”とかそういう抽象的な話は無しよ」って言ったら、「具体的」って言ったんですよ。「なんなの?」って聞いたら、「2人とも1970年3月生まれ」って言われたんですね。びっくりしました、僕。同世代によるカバーだったんだなという。まあ、世が世なら同じクラスに左マライア、右ミポリンという状況があったかもしれないという、まあ妄想話はこれぐらいにしておきますけども(笑)。
アンソニー・ハミルトン、その頃、90年代の前半あたりっていうのはもう辛酸を味わっていたんですけども、ジワジワジワジワと存在感を高めてまいりまして。いまはもうシーンの中で欠かせない人物としてホワイトハウスで歌ったりするようなね、そういう立場にまで行ってしまいました。アンソニー・ハミルトンがおそらくは、いや、間違いなく子供の頃からアイドルであったであろうチャカ・カーンをゲストに向かえて、子供の頃から慣れ親しんだであろう『The Christmas Song』を歌う。これはもう本当に、この季節、クリスマスの奇跡のひとつかと思いますね。本当に、音楽っていうのはそういう器になるのが素晴らしいなと思います。
さて、そのアンソニー・ハミルトンのアルバム『Home for the Holidays』。いま、手元にございますけども。これはもう、リリースされて2年たつんですが、正直に告白します。僕、クリスマス時期以外にも結構、真夏でも聞いているアルバムなんですね。
アルバムの中で僕が特に愛聴しているのは『What Do The Lonely Do At Christmas』。この番組でもご紹介したことがございます。もともとはエモーションズが歌っていた曲で、これまでにもパティ・ラベルがカバーしていたりと。本当に世に出ているバージョンのほとんどが素晴らしい出来になっているという。まあ、それだけ曲が良いんでしょう。その曲が収められているアルバムとして愛聴していたんですが。
ずーっとこのアルバムを聞いていますとね、割とよくある企画のひとつかな? と最初は斜に構えて聞いておりました『The Christmas Song』。さっきのチャカ・カーンとのデュエットなんかがだんだん染みてくるんですよね。で、アルバムには複数のプロデューサーが参加しているんですが、その中でもじんわりと効いてくる曲っていうのは決まってケルビン・ウートン(Kelvin Wooten)っていう人がプロデュースしていることに気がつきました。これはアルバムを手にして1年以上たって気づいたことなんですけども。と、なりますとこのケルビン・ウートンという人の作品をまとめて聞いたりする機会も増えてきたんですが、ケルビン・ウートンのそれもクリスマスものというのが他にもございましたので、今日、ご紹介したいと思います。
ジョン・ストッダートというゴスペルシンガーです。この人はね、カーク・ウェイラムっていうサックスプレイヤーがいますね。ビッグネームですね。有名なところですとホイットニー・ヒューストンの『I Will Always Love You』で印象的なサックスソロを聞かせた人ですが。そのカーク・ウェイラムのパートナーとして知られている人ですね。ジョン・ストッダート。2010年に東京の調布市という都心からちょっと離れたところの割と小さなライブハウスにカーク・ウェイラムとジョン・ストッダートがひょっこりやって来て。それはそれは濃密なゴスペルショーを展開したことがあるんですね。僕はソウルメイト、吉岡正晴さんと足を運びました。
で、行ってみると、小さなお店でこんなライブをやっていることをよくみんな知っているな! というぐらい、著名なミュージシャンもたくさん見に来ていました。その時にカーク・ウェイラム以上にある意味存在感を放ったのが、このジョン・ストッダートでした。この人の歌声も本当にソウルフルで素晴らしい。端正な歌いぶりと言ってもいいかもしれません。そのジョン・ストッダートがさっき話しましたプロデューサー、ケルビン・ウートンの助けを得て作った曲というのをこれから聞いていただきたいと思います。まあケルビンっていうのは優れたベーシストでございまして。ベーシストとしてジョンを助太刀しております。では、聞いてください。ジョン・ストッダートで『All I Want』。
John Stoddart『All I Want』
つい先ごろ、この『メロウな夜』でカーク・ウェイラムのルーサー・ヴァンドロスのカバーを番組のエンディングでご紹介しましたね。『Make Me A Believer』という曲でした。その時に「ボーカルをとっていたケビン・ウェイラムっていう人はカークの弟ですよ。なかなかいい歌声ですね」っていうお話をした記憶がございます。で、デュエットをしていた女性シンガーがレイラ・ハサウェイ。このあたりは大変音楽的にも人間的にも仲がよろしいようで、実は先ほど聞いていただきましたジョン・ストッダートの『All I Want』が収録されている2013年リリースのアルバム『Only on Christmas Day』に全員参加しています。
レイラも歌っておりますし、もちろんカーク・ウェイラムもテナーサックスのソロを聞かせていますし、ケビン・ウェイラムも歌っておりますと。まあこのあたり、外れがないのでぜひご記憶いただきたいと思います。あと、ベースのケルビン・ウットンね。聞いていただきましたのはジョン・ストッダート『All I Want』でした。
(中略)
ということで今週のザ・ナイトキャップ(寝酒ソング)なんですが、こちらもクリスマスソング、ご紹介したいと思います。先ほどお聞きいただきましたジョン・ストッダートの『Only on Christmas Day』、こちらにも参加しております女性シンガー、エイブリー・サンシャインの『Never Knew Christmas』を聞きながらのお別れです。これからおやすみになるあなた、どうかメロウな夢を見てくださいね。まだまだお仕事が続くという方、この番組が応援しているのはあなたです。次回の放送は来週、11月21日の放送。そして12月に入りまして第一週、12月5日はみなさんお待ちかね、今年最後のリクエスト特集です。それでは、来週11月21日(月)、夜11時にお会いしましょう。お相手は僕、松尾潔でした。それでは、おやすみなさい。
Avery*Sunshine『Never Knew Christmas』
<書き起こしおわり>
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