町山智浩・宇多丸・高橋ヨシキ ブレードランナー歌謡祭

町山智浩・宇多丸・高橋ヨシキ ブレードランナー歌謡祭 宇多丸のウィークエンド・シャッフル

町山智浩さんと高橋ヨシキさんがTBSラジオ『タマフル』に出演。特集で映画『ブレードランナー』について話す中で、『ブレードランナー』の世界観に影響を受けた楽曲をまとめて紹介していました。

Blade Runner - Music From The Original Soundtrack

(宇多丸)ブレードランナー特集なんですけども、先週ね、スピルバーグ総選挙をやった時に町山さんと……町山さんはいま東京に来ているんですけども。先週はご自宅にいらっしゃって、電話とSkypeをつなぎながらやっていたんですけども。結構終わってからもずっと、スタジオのコンバットREC、春日太一さんとみんなで話していて。「来週の特集はこんなことをやろうよ」っていうので。じゃあちょっと軽くネタバレになるかもしれないけど、町山さん的にはやっぱり要するに、当時。1982年にオリジナルの『ブレードランナー』が公開されて。その後、他のいろんなものにすごく影響を与えたわけですよ。

特にやっぱりいろんな日本の文化に影響を与えた。まさに、町山さんが在籍していた、働いていた頃の『宝島』というサブカル雑誌があって。「いろんな『ブレードランナー』にちなんだ記事なんか、やっていましたよね。○○とか……」「あ、それは俺がやった記事だよ」みたいな。「ああ、じゃあ俺、自分で持っている『宝島』を持っていきますわ」なんていま、持ってきていたりするんですけども。で、その中で、要は日本のいろんなミュージシャンというかね、バンドとかが明らかに『ブレードランナー』にインスパイアされたいろんな曲を出しているということがある。なので、『ブレードランナー』歌謡祭を急遽、開催したいと(笑)。みたいなリクエストを受けまして、いろんな曲をかけましょうなんて。

で、「○○も出していたんで」「あ、そうなんすか?」「宇多丸くん、知らないの~?」なんつってね。またうれしそうにね。人が知らないのをうれしそうに(笑)。「えっ、知らないの?」なんつってやるんだけど、僕が「じゃあ、あの人の△△もそうですね」っつったら、「あっ! それもそうだった」みたいな感じでね(笑)。そことかは全然うれしそうじゃないかった(笑)。みたいなのがあって。で、『ブレードランナー』歌謡祭でたぶんちょこちょこちょこちょこ聞いていくことになると思うんですけど、せっかくですから、裏送りのみなさんだけが聞ける1曲ということで。まあ『ブレードランナー』歌謡祭でもかける時間があれば、そっちでもかけようかと思いますが。

私が大好きな曲がございまして。1986年リリース、早瀬優香子さんという方。当時活躍されていた歌手であり、女優さんですよね。まあちょっとアンニュイな、すごく80年代に流行った感じの不機嫌そうな……不機嫌そうなんですよね。で、髪をこうかき上げてね、不機嫌そうな感じ。で、小声でしゃべるみたいな、すごい80年代的いい女の私、代表格だと思っています。早瀬優香子さんが86年にリリースした曲で、当時ポカリスエットのコマーシャルソングにもなっておりまして非常に耳にした曲でございます。『ブレードランナー』に影響をずばり受けている。タイトルからして明らかな曲。ちょっといったん聞いてください。早瀬優香子さんで『硝子のレプリカント』。

早瀬優香子『硝子のレプリカント』

(宇多丸)早瀬優香子さん、1986年の曲で『硝子のレプリカント』をお聞きいただいております。早瀬優香子さん特集をやろうというのは実は『タマフル』を始まってすぐぐらいから持ち上がっていた企画なんですけどね。いつかちゃんとやりたいものですよね。

(中略)

(宇多丸)といったあたりで、先ほどいろんなアーティストが影響を受けて……っていうので一瞬「BOOWY」とか言って……。

(町山智浩)名前出してましたね。

(宇多丸)それこそ、教授。坂本龍一さんが『未来派野郎』って作って、ここで、やっぱりこれも『ブレードランナー』の影響を受けて……っていうような話を町山さん、実は先週放送が終わった後にちょろっとお話をされてましたけど。

(町山智浩)はいはい。これはでも、『未来派野郎』の1曲目を聞いてもらった方が早いんだけど。かけてもいいんですかね?

(高橋ヨシキ)すぐわかると思いますよ。

(宇多丸)実はね、音源スタンバイしているんだそうですよ。ということで、第二部。急遽『ブレードランナー』が日本のカルチャーに与えた影響とは? 改め……『ブレードランナー』歌謡祭! ということでね、町山さん主催の……。

(高橋ヨシキ)これ、町山さん企画?

(町山智浩)俺企画(笑)。だってこれ、俺リアルタイムだから。『宝島』編集部にいる時にちょうど坂本龍一さんの『未来派野郎』が出まして。そしたら、坂本龍一さんって結構その頃、アンビエント・ミュージックとかやっていたんだけども、完全に音楽で『ブレードランナー』世界をやってきたんですよ。

(高橋ヨシキ)でもその時は『未来派野郎』は実は坂本龍一さんとかはインテリだから、イタリアのマリネッティとかがやっていた未来派運動を上手く持ってきて、それとノイズミュージックとの兼ね合いみたいなところを背景にしたっていう言い訳をつけて『ブレードランナー』をやるという。複雑なことをやっているというね。

(宇多丸)音楽的にはサンプリング・ミュージックの走りというかね。

(町山智浩)はいはい。DXだっけ、この頃ね。

(宇多丸)とりあえず、教授から行きますか?

(町山智浩)教授から行ってもらいましょう。

(宇多丸)坂本龍一さん、『未来派野郎』の1曲目ですね。『Broadway Boogie Woogie』。

坂本龍一『Broadway Boogie Woogie』

(宇多丸)いま、この部分が実は……。

(町山智浩)『ブレードランナー』のサンプリング。

(高橋ヨシキ)デッカードがレイチェルに「好きよ」って言わせるところですね。

(町山智浩)「俺を愛していると言え! 俺を愛していると言え!」っていうのを。

(高橋ヨシキ)「抱いてと言え!」っていう。

(町山智浩)そう。繰り返しているところ。

(宇多丸)これ、クリアランスどうしているんだろう?

(町山智浩)わからない。

(高橋ヨシキ)わからないですねー。グレイゾーンじゃないですか?

(町山智浩)でも、このリズム。「ダッダッダッダダッダダッダッダッ♪」ってやつ。

(宇多丸)これね、残念ながらものすごい80’sの、すごい80’sなところで。

(町山智浩)『フットルース』がそうでしょう? あと、『ストリート・オブ・ファイヤー』。

(宇多丸)なるほどね。なるほどね。ああーっ!

(町山智浩)あの頃のリズムは「ダッダッダッダダッダダッダッダッ♪」って。

(宇多丸)なんだけど、これサックスを吹いているのはメイシオ・パーカーだから。J.B.’sの。

(町山智浩)本物ではあるんだけど(笑)。

(宇多丸)だから要は教授的にはヒップホップ時代の予感をここに込めているんですよ。間違いなく。なんだけど、このビート感が全然ヒップホップ時代じゃない!っていう感じで。

(町山智浩)80年代なんですよ。

(宇多丸)なんか80年代ポップの……。

(町山智浩)そうそう。だからこれ、デビッド・ボウイの『Modern Love』もそうじゃない。「ダッダッダッダダッダダッダッダッ♪」ってこの当時のリズムなんですよ。完全に。

(宇多丸)うんうんうん。ねえ、これがもうちょっと重たいビートなら、その後の時代にもたぶん対応できた感じなんだけどね。でも、すごい時代の産物っていう感じで。で、クリアランスはたぶんやっぱりサンプリングなんかはこの頃、まだ出たてだから。そんなはずはないっていう。

(町山智浩)その後に、いろんな裁判があってはっきりしていったりっていうね。

(宇多丸)ビズ・マーキーとかね、ありましからね。

(町山智浩)ただ、これをやっているのはやっぱりヴァンゲリスの音楽っていうのがすごかったんですよ。『ブレードランナー』のサントラでの。とにかくものすごくかっこいいから。特にエンドタイトルがもう本当にかっこよくて。もうみんなパクッてるんだけど(笑)。

(宇多丸)あれ、でも当時正規のサントラが出なかったんですよね。

(町山智浩)出なかったの! あれね、だから本当にすごかったのは、ニューアメリカンオーケストラバージョンっていうのしかなかったんですよ。

(高橋ヨシキ)それしかなかったんですよ。

(宇多丸)再演奏(笑)。

(町山智浩)そうそう(笑)。なんだか全然わかんないけど、それしかないから買うわけじゃないですか。

(高橋ヨシキ)聞いた瞬間、「違う!」ってなるっていう(笑)。

(宇多丸)アハハハッ!

(町山智浩)聞いた瞬間のオープニングで、さっき言った「ジャララン♪」が全然違う音で。「ジャララン♪」が全然違うっていう。

(宇多丸)でもその、やっぱり断片を求めてね。当時はそういう正規のグッズもないし。断片を求めて。それこそ、ブラスターも含めて。

(町山智浩)だって、あれだよ。要するにみんなヴァンゲリスの本当のやつがほしいから、海賊盤とかいっぱい裏バージョンが出ていたんだもん。

(宇多丸)正規が出たの、だいぶ後ですよね?

(町山智浩)すっごい後なの。

(高橋ヨシキ)しかも、そんなみんなが渇望している時に『スターログ』っていう雑誌が「『ブレードランナー』のサントラが出ました」っていうエイプリルフール記事を載っけたせいで、日本中でみんなレコード店に殺到して。

(宇多丸・町山)アハハハッ!

(高橋ヨシキ)「出てるのか?」っつったら「嘘でした」とか言われて。

(町山智浩)ヴァンゲリスっていう人もいろいろと問題がある人で。いろいろと問題があるせいで出なかったんですよ。

(宇多丸)ああ、そうなんですね。

(町山智浩)そうそうそう。でも、これだけサントラが求められていて出なかったっていうのもないよね。

(高橋ヨシキ)いや、本当ですよね。サントラぐらいしか映画のグッズがなくて。だからビデオはあったんですけど、それぐらいしか映画の手がかりがない時代で。

(町山智浩)ワーナー・ホームビデオの大ヒット商品だったの。『ブレードランナー』は。

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