KREVAさんが2024年11月12日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション2』に出演。ソロ活動をスタートした際にリリースした1曲目の『希望の炎』、および2曲目の『音色』でオートチューンを使用し、メロディックに歌い上げるラップを制作した件について宇多丸さんと話していました。
カニエ・ウェストが2008年にリリースしたアルバム『808s & Heartbreak』などをきっかけにヒップホップ界で主流となったオートチューンでメロディックに歌い上げるスタイル。そんなカニエに先駆けて2004年の時点でそのスタイルを打ち出していたことについて、そのきっかけや意図を宇多丸さんがKREVAさんに質問します。
新曲 #ForeverStudent をリリースしたばかりの #KREVA が、楽曲作りの"これまで"と"これから"を語る!
KREVAのターニングポイントになった曲とは?#utamaru をつけて #radiko のリンクをポストしてねhttps://t.co/aUjciF2c0s#TBSラジオ pic.twitter.com/PkPOk7izxS— アフター6ジャンクション2(聴くカルチャー番組) (@after6junction) November 12, 2024
そもそもシェールの『Believe』(1998年)やダフト・パンクの『One More Time』(2001年)などで徐々に音楽界に浸透しつつあった機材、オートチューン。KREVAさんも2001年にKICK THE CAN CREWでリリースした『クリスマス・イブ Rap』でオートチューンを取り入れ、その時の自分の声が好きだなと感じていたんだそう。
KICK THE CAN CREW『クリスマス・イブ Rap』でオートチューンを導入
(KREVA)『クリスマス・イブ Rap』っていうのでオートチューンをやってるんですけど。その時の自分の声の感じがすごい好きだったんですよ。元々、レコーディングとかで歌って「自分の声、いいな」とか「自分の声、好きだな」って思ったことって、あんまりなかったんですけど。オートチューンで歌った自分の声がすごい好きだったんですよ。だからそれは思いっきり打ち出していこうと思って、このソロ1発目の『希望の炎』は全開で歌ってるっていうのはありますね。
KREVA『希望の炎』
そんなKREVAさんはラッパーがうまくもないのに自信満々に歌い上げる楽曲の魅力についてもこのように語ります。
(KREVA)歌手の歌がうまい人たちがラップしてるのって、なんかちょっと「うっ……」ってなるところがあるんだけど、ラッパーがうまくもないのに自信満々で思いっきり歌ってる歌ってかっこいいなって。「どこからその自信が来るんだ? どうしたらこんなに堂々と歌えるんだろう?」みたいなのがあって。だからこの『音色』とかも、別にうまくはないんだけど全開で歌うっていう。「俺のソウルを出す!」みたいなそういう気持ち。それがなんか、かっこいいと思ったし、ヒップホップに通ずるなにかだろうなっていうのは思ってたっていう。
(宇多丸)言っちゃえば歌がうまい人じゃない……だから誰でもある意味参加できる参加形式っていうのがある種、ヒップホップの美学だと。もちろん、その中でのスキルとかセンスとか。逆にセンスが問われるんだけど。でも形式は誰でも参加できるっていうか。この感じがすごくヒップホップ的だし。要するに、ある意味そのクレちゃんの感じが後のヒップホップなり世界の音楽像を予言しちゃっていたわけで。俺はこの件について、もっとみんな、後からでもいいから驚けやっていう風にいつもあちこちで言っていて。この人、もっと騒がれていいのに。
KREVA『音色』
また当時、このKREVAさんの歌い上げるスタイルについて「あいつ、歌ってる」などと一部で批判されたことについては半分冗談のような感じで「数人には謝ってほしい」と話していたKREVAさん。それに対して宇多丸さん自身も最初に『希望の炎』を聞いた時には戸惑ったことを振り返ります。
(KREVA)あと、数人には謝ってほしい。「あいつ、歌ってる」とかって言われてたんですよ。今だと信じられないでしょう?
(宇多丸)そうだよね。もちろんね、90年代までのラッパーの美学っていうのもあって。それはそれでね、うるせえ親父、老害親父の美学もあるんですけども。でも、俺もだってさ、最初に『希望の炎』を聞いた時にさ、「うわっ、ちょっとなんだ、これ? どうしたの?」みたいな。「ソロになったから歌っていうのは、どうなの?」ぐらいに思っていたんだけど。でも『音色』と連動して聞いて「ああ、なるほど。なんかわかった気がするぞ」みたいな感じになってきて。で、俺はやっぱり理屈で納得してようやくの人なんで、そのヒップホップならではの構造なんだって聞いて「ああ、なるほど。おみそれいたしました」ってなって。だから後から……すいません。申し訳ない。
(KREVA)いえいえ(笑)。士郎さんだけじゃなくて当時、内容もこういうセンチメントっていうか、そういうのに触れるっていうのがあんまりなかったんですよ。
(宇多丸)内省的なっていうかね。そうだよね。後に内省的なラップも本当に大流行りしていくわけだけど。
(日比麻音子)新たなテクノロジーとともに改革もずっとしてきたってことなんですね?
(KREVA)ああ、まさに。そうなんですよ。なんかいつも機材の進歩が常に俺を助けてくれてるっていう。これ、後半の話に本当につながってくるんですけど。まさにおっしゃる通りで。
自分の内省的な部分を歌うラップというのもカニエやドレイク以降、主流となっていくエモいスタイルに通じるものがありますよね。オートチューンに関してもミスターオートチューンのT-Painのデビュー曲『I’m Sprung』が2005年。それより1年前にはKREVAさんはあのスタイルを確立していたわけで、あらゆる意味で早すぎたんですよね。KREVAさん、すごすぎやと再認識させられたトークでした。