北野武『龍三と七人の子分たち』と個性豊かな下町のジジイを語る

玉袋筋太郎 北野武『龍三と七人の子分たち』の感想を語る たまむすび

北野武さんがTBSラジオ『たまむすび』に出演。玉袋筋太郎さんと最新作『龍三と七人の子分たち』の話や、映画に登場するような個性豊かなジジイたちについて話していました。

(玉袋筋太郎)殿、見ましたよ!新作。

(北野武)見た?

(小林悠)拝見しました。

(北野武)褒めろよ、ちゃんと。

(玉袋筋太郎)いやー、やりましたね!

(北野武)本当か?わざとらしいんだよ、お前は。

(玉袋筋太郎)スカーッともう、ホームランですよ。やりました!

(北野武)これだけお前、ベタのネタやった奴、いないだろ?お前。

(玉袋筋太郎)いやー、もう試写室がやっぱり、女性の方がいて。小林さん、どうですか?

試写室の女性たちの反応

(小林悠)私、大きな会場の試写会に行ったんですけど。女性がほとんどでして。冒頭からみなさんが声に出して笑って、手も叩かれるんですよね。私、ああいう試写会は初めてだったんですよ。

(北野武)嫌だな、おい。これ、萩本欽一が落ち目になった時と同じ兆候だぞ。おい。

(玉袋筋太郎)やばいっすね(笑)。

(北野武)女の子に人気が出ちゃったら、お笑いなんか終わりだよ。

(玉袋筋太郎)ヤバい。突き放しますねー。

(小林悠)まさしく、家族で見てほしいなと私は強く思ったんですが。

(北野武)俺の映画を家族で見るって、世も末だよ!末期症状だろ、だって。

(玉袋筋太郎)いや、でもね、本当に見ていてなんか懐かしい感じがしちゃって。

(北野武)だろ?コテッコテだろ、これ?

(玉袋筋太郎)いや、いましたもんね。昔、こういう人たち。

(北野武)こういうジジイが。だいたいこういうジジイはもっと汚いんだよ。本当はな。垂れ流したりなんかしてな。

(玉袋筋太郎)垂れ流したり(笑)。

(北野武)あの、立ち小便と野糞をなんの気にもせずにできる人たちなんだよ。

(玉袋筋太郎)素晴らしい!

(北野武)それを見ていると、逆に怒るんだよ。『なにを見てるんだ、この野郎!俺のどこが悪い!?』って。ほとんど野良犬状態だよ。

(小林悠)(笑)

(玉袋筋太郎)やっぱり足立区から。ずっといたんじゃないですか?こういう人たちが。

(北野武)足立区なんかすごいよ、お前。

(玉袋筋太郎)もう、宝の山ですよね。

(北野武)身を投げるオヤジがいるから。いい車を見ると。お前。

(小林悠)ええっ?

(玉袋筋太郎)(笑)

(北野武)それで生きてるから不思議だろ?お前。

(玉袋筋太郎)すごい!僕もやっぱりちっちゃい頃、家の近所の酒屋で。酒屋の角が立ち飲み担っている角打ちのところがあったんですけど。そこに毎日来る、着流しで来る、サムライっていうおじさんがいたんですよ。木刀をさして。すごいんですよ、そいつが。暴れちゃって。最後、ガーッ!っつって。

(北野武)(笑)

(玉袋筋太郎)何かの敵と戦ってるんですよね。

(小林悠)あ、見えない敵と。

(北野武)浅草に行きゃあ、お前、メリケンのセイちゃんっつってお前、裕次郎さんの大ファンで。映画見ていて、『裕ちゃん、危ない!』って画像斬りかかったら、斬りかかった途端に裕次郎さんになっちゃって。裕次郎さん斬っちゃったりなんかして。

(玉袋・小林)(笑)

(北野武)銀幕破りのセイちゃんっていうんだよ、お前。アトムっつーのだっているし。浅草のアトムって。

(玉袋筋太郎)アトム、どういう人でしたっけ?

(北野武)頭、つるっつるなのに、七三の刺青してんだよ。

(小林悠)ええーっ!?

(北野武)キレイにもみあげからなにから、刺青なんだよ。ほいで太陽に当たると玉虫の色に輝くんだよ。それで、おでこに『悪』って彫ってあるんだよ。誰が見たって悪なんだよな。わかってるんだよ。

(玉袋筋太郎)いたんですよ。そういう・・・

(北野武)フランス座のエレベーターの前で見ると、そういう人が通るんだよ。おかしくてしょうがないよ。

(玉袋筋太郎)まあ、そういった方たちが、いま銀幕に出てきた!っていう感じですよね。

(北野武)だからこれ、あれだよ。藤竜也さんって、渋い役者だったけど。やっている時にお笑いに気がついてなかったんだから。後半になって、『たけしさん、これ、お笑い映画じゃないでしょうか?』って言い出したんだから。

(玉袋筋太郎)いや、でもね、藤さんがまたいい!懐かしいヤクザで。

(北野武)上手いだろ?この人。

(玉袋筋太郎)上手かったっすねー!

(北野武)なかなかいいんだよ。

(玉袋筋太郎)完璧だったもんな!うん。かっこよかったしね。

(小林悠)そして、なんて言うんでしょうね?演技じゃなくて、本気で笑っているシーンもあったような気がしたんですけども。

(北野武)気がついてないんだよ。この人は。だから、いちばん困るのは、『よーい、スタート!』の声が聞こえないんで。『よーい、スタート!』つったら、『えっ?』って聞き返されて。

(玉袋筋太郎)(笑)

(北野武)聞き返すな!っつーんだよね。指さしたら、『私のことですか?』って聞いちゃうんだよ。

(玉袋・小林)(笑)

(北野武)だから、キューなんだっつっても、わかんない。『えっ?』じゃないっていうの。

(玉袋筋太郎)でも後半ね、この中尾彬さんのまくりっぷりが。

(北野武)だから『らくだ』の馬さんと変わってないんだよ。

(玉袋筋太郎)ああ、そうっすね。らくだですよね。

(小林悠)あの、落語の。はい。

(玉袋筋太郎)カーアクションあり、やっぱりね、半グレ集団っていうのが気になってイライラするじゃないですか。社会悪ですよ。それをね、見事にこう、やっつけるっていうか、対決するってところが最高でしたね。あと、殿。あれじゃないですか。現場、どうだったんですか?

(北野武)いや、面白かったよ。みんな上手いんだよ。この人らね。劇団のね、結構俳優座とかいろんなところ出身なんだよ。上手いんだけど、いかんせん、齢だからね。だから、公開日まで生きていてくれっていう。

(玉袋筋太郎)完全にこれ、見納め枠ですからね。この人たち。

(北野武)公開日に黙祷から始まるの、嫌だろ?

(玉袋・小林)(笑)

(北野武)『黙祷!』から始まったら。『この映画は○年に撮影されたものです』も嫌だしよ。だから、終わりゃあどうでもいいんだよ。死んでも、ニス塗って固めておこうと思って。

(玉袋筋太郎)ニスって(笑)。エンバーミングして。

(北野武)うん、うん。わかんねーけど。

(玉袋筋太郎)すごいよ。ええ。

<書き起こしおわり>

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