菊地成孔さんがTBSラジオ『粋な夜電波』第9次韓流最高会議で日韓のアイドルの違いや2015年2月現在のEXOについて話していました。
(EXO『Thunder』ライブバージョンを聞く)
(菊地成孔)はい。えー、とにかくまずは・・・(ライブの歓声が流れる)・・・この、なんて言うんですかね?スタジアムクラスの黄色いスクリーミングっていうんですかね?これに、(韓東賢)書記長も参加してるんですね?これね。
(韓東賢)これは・・・
(菊地成孔)キャーッ!言ってるんですか?
(韓東賢)キャーッ!は言ってます。
(菊地成孔)キャーッ!言ってるんですか?
(韓東賢)凝視しながら。双眼鏡で。キャーッ!言ってますね。
(菊地成孔)キャーッ!言ってる(笑)。
(韓東賢)名前呼んだり。っていうかね、『かっこいいー!』とか言ってますね。『うわー!』とか。なんか。
(菊地成孔)なるほど。それは、その時には声も若やいじゃって?
(韓東賢)若やいでるかどうかはわかんないですけど(笑)。『うーわ!かっこいいー!』とかは言ってますね。
(菊地成孔)なるほど。そうですか。あのね、まあ面白いんで何回も言いますけど、犬の声を模したですね、放送局がやっている番組で見たんですよ。で、私は『ウルロン』が聞きたくて。ウルロンが聞きたかったんです。まあ、ウルロン、ウルフあたり聞きたかったですね。まあ、ウルフはやりましたけど。なんかね、肝心要のウルロンをやらなかったんですよね。なんでですかね、あれ?どう思われますか?書記長の見解としては?
(韓東賢)買ってくださいって感じじゃないですかね?収録したのが今月かな?来月か出るんで。DVDが。
(菊地成孔)DVDが。ああ。
(韓東賢)権利がどうってことじゃないと思うんでね。まあ、買ってくださいって感じじゃないですか?やっぱり放送しちゃうと、流れるので。流出するんじゃないですか?
(菊地成孔)違法ですよ(笑)。
(ヴィヴィアン)なんか外部のバックダンサーを使ってたとか、そういうの、ないですか?なんかそういうのがあると、放送の権利とかでよくカットされたり。
(菊地成孔)ああー。
(韓東賢)ただ、まあどっちにしてもパッケージにはね、するわけで。ウルロンを抜くわけにはいかないですから。だって、これには入ってますよ。
(菊地成孔)当然でしょ。いや、だからね、なにが言いたいか?っていうと、やっぱりね、EXOは私はまあ、日本・・・これもね、いまとなっては懐かしいですけど、日本で最初にEXOのグッズのキャップをかぶった文化人ですけども(笑)。
(韓東賢)それ、本当に素晴らしいと思ってます。
不吉な兆候 帽子のロゴが落ちる
(菊地成孔)そしてある時ですね、ライブでかぶっていたら、EXOの『E』の文字が落ちたんですよね。
(韓東賢)それ、知ってます(笑)。
(菊地成孔)踊っている間に。あれはね、プラスチックっていうか、なんかね。『E』の板が。
(韓東賢)アクリル板みたいなやつですね。
(菊地成孔)アクリル板がね、落ちたんですよ。で、こう、なんか昔からね、靴の紐が切れたりするのが縁起が悪いって言うじゃないですか。そしてですね、これ、本当、嘘みたいな本当の話なんですけど。『今日ね、EXOの板が落ちてね・・・』ってニュースを見たら、脱退してたんですよ。
(韓東賢)あ!その日、その時ですか?
(菊地成孔)その日っていうか、ニュースを知ったんですよね。フレッシュなニュースとして。はい。まあ、そのなんですか?10人体制っていうの?
(韓東賢)いま、10人体制ですね。
(菊地成孔)10人体制のまま、辛くも・・・辛くもって言っちゃいけないか。元気に活動しているEXOですけど。今後も熱烈なEXOペンとして追いかけていくっていう自負は、お有りですか?
(韓東賢)いやー、なんか・・・微妙な感じ。
(菊地成孔)(笑)。
(韓東賢)私結構ね、2人目辞めちゃったのが痛かったんですよ。割と私の序列3位だったんで。12人中の。あと、まあ私が序列3位とかいうよりも、普通に顔だったんですよ。MとK、あるじゃないですか。Mの顔だったんで、それが抜けるってやっぱりよっぽどのことで。こう、こういうものの作り込みでもわかるように、すごくコンセプトを作りこんでるんで。やっぱり抜けるって結構ね、それが崩れるっていうとちょっと極端ですけど。あんまりこういうことを言うと、すごく・・・どうしよう?いろいろメールとか来たら怖いなあ(笑)。
(菊地成孔)(笑)。そんな感じなんですか?
(韓東賢)なんか、ちょっとね、そこは残念な感じが。
(菊地成孔)私はウルロンからオーバードーズまで。それこそ、第8回か7回の最高会議で言いましたけど。ウルロン超えできるかどうか?って。いろんな、そのチームに、グループに、まあ少女時代だったらですよ、Gee超え、Genie超えができるのか?っていうのを問われ・・・まあ、それでも大健闘してきたわけですよね。で、EXOはウルロン超えできるんですかね?っていう話をした後、私もなんとなく刮目しつつ、だんだん疲れてきたんですけど。
(韓東賢)まあでも、新曲出してないですから。
(菊地成孔)ああ、出してない。
(韓東賢)だから、オーバードーズが一応シングルっていうか活動曲で。その後、一応これにおまけで新曲。なんかクリスマスソングみたいなのがついてるんですけど。まあ、それでテレビちょっとやったけれども、まあ・・・だから、私さっき言ったように見てないので。カムバ情報とかもわかんないんですよ。
(菊地成孔)ああ、いまキレキレじゃないからね。
(韓東賢)うん。聞いてらっしゃる方の方がたぶんカムバ情報・・・新年カムバ、カミングスーンみたいなのを年末の音楽番組で見たんですよ。
(菊地成孔)『カムバ』は『カムバック』。
(韓東賢)カムバックって言うとね、日本の感じだと1回引退したみたいですけど。韓国は新曲を出す時、カムバックって言い方をするので。年末の音楽番組で2015年SOON!みたいな感じの、意味ありげなこういう難しい記号のような、暗号のようなマークを出していたので。新年早々カムバするのかな?と思っていたら、いまんところ・・・私が知らないだけだったらどうしよう?
(菊地成孔)(笑)。いまの話、すごい面白いですね。
(韓東賢)いま、すごい怖くなった。一瞬。
(菊地成孔)いま、生放送だったら、『おめーが知らねーだけだよ!』的なツイートが(笑)。
(韓東賢)どうしよう?ヤバい。
(菊地成孔)そんな感じなんですね。
(韓東賢)本当、でもそんな感じですよ。
(菊地成孔)なんかね、私、それこそ前口上でも言いましたけど、ずーっと歌舞伎町にいたじゃないですか。そうすると、まあ焼肉屋に行きますよね。私も行きますけど、いちばん行くのはキャバクラ嬢の方なんですよ。もしくは、ホストさんとそのお客様がアフターで焼肉屋に行くわけですよね。まあ、有名な陣形っていうかね、三角陣形って呼んでますけども。1人のお客様の両脇にホストさんが2人ついて、どんどんカルビとかを食べさせていくっていうね、陣形をとるのを10年間見てきたんですけど。『もう韓国料理、飽きたわ。最初、美味しかったけど』っていう話をずいぶん聞いたんですね。
(韓東賢)ああー。
(菊地成孔)だからあの言葉をいま、懐かしく思い出してるんだけど。K-POPの音楽的なボキャブラリーを増やそうとした時期がちょっと、あったじゃないですか。なにか。で、私はEXOがそれの救世主だと思っていたんですよね。ウルロンとか。突然バーッ!ってR&Bみたいに、一発の状態からR&Bみたいになって、また戻ったりなんかして。かっけー!なんて思ってたりしたんですけど。
(韓東賢)うんうん。
(菊地成孔)なんとなくやっぱね、ずーっとK-POP。ポップですけど、聞いてると、やっぱりもたれてくるんですよね。同じ味なんで。ずーっとカルビとチヂミが続くんで。で、そのバリエーションなんで。でもね、『ジャンルミュージックとしてはそれでいいんだよ』っていう話もあるわけですけど。このへんは、音楽の耐久消費財として。文化的な。難しいんですけど。
(韓東賢)だから、アイドルは、その音楽だけがアイドルの要素ではたぶんないから。その周りのいろんなことで、たぶんすごく、EXOってそういうひとつの完成形っていうか、かなりそういうもので。ただ、少女時代の時・・・今回、9回目でしたっけ?何回目かに話したけどやっぱり、それでもうやれることがどうなのかな?感はなくはないとは思いますよ。
(菊地成孔)まあ、そうですよね。
(韓東賢)だから、SMとかだと、いま、どんどんソロを出してるんですよ。どのグループも、もうソロ、ソロ、ソロで。ソロでつなぐみたいなので。なんか、グループとして、みたいなのってのはどのグループにしてもどうなのかな?っていう。どうしてくのかな?っていう風には。まあ、見てないって言ってる割にこんなこと言って、怒られそうですけど。
(菊地成孔)いえいえ。まあ、でもあの、これはK-POPに限らず、アイドル産業全体に言える、あまりに話が大きくなっちゃいますけど。最初はね、私、48グループのみなさんの大変立派なお仕事ぶりに、ちょっと批判的なところがあって。それはどうしてか?というと、別に嫌いとかじゃないんですけど。『音楽』っていう要素をやっぱり抜いていると思ったんですよ。
(韓東賢)はいはいはい。
(菊地成孔)で、それは欠乏と思ったら大変な欠乏で。だって、音楽買うんだから。なのに、音楽的な情報っていう要素が抜けていると思ったら、これはなんて言うんですかね?バッタもんっていうか。お弁当開けたら空だったみたいなね、気になっちゃうんですけど、それは大変な誤解で。アイドルを追いかけていくという喜びの中に、ヘタすると音楽っていうものの情報が余分にあったら余計かな?っていう。そんなのいらないわ!っていう可能性もあって。日本ってすごい進んでたのかも?と、いまは思ってるんですよ。
(韓東賢)いや、わかります。
(菊地成孔)そうするとね、要するに、なんて言うのかな?ただ単に軽く弁当が食いたかったのに、『おい、これ。これ、くっつけてやるよ!』っつって、フライドチキンとかさ(笑)。腹にもたれるもんがドーン!と乗っかってると、サクサク食べられないわけですよね。
(韓東賢)いや、ねえ。ポストモダンですよね(笑)。
(菊地成孔)本当のポストモダンですよ。アイドルっていうのは、まあ、私はいい意味で芸者に戻っていく、芸妓の文化に戻っていくっていうことだと思うんで。その文化自体は認めるんだけど。まあ、まさにそうで。もう歌自体は数え歌とか遊び歌でもよくなっちゃって。
(韓東賢)いや、だから韓国のアイドルはそれには至らない。それはできないですから。そこはできないんです。どうしても。できないっていうか、そうするつもりがないのかもしれない。
(菊地成孔)このね、中心の空虚な感じっていうのは日本にしかできない。
(韓東賢)歌も上手くなりたいし、いい音楽を聞かせたいし。アイドルっていうフォーマットが一見アイドルだけど、本人たちはやっぱりアイドルだけどもアーティストだし。いい歌を届けたい!歌いたい!踊りたい!っていう、すごくプロフェッショナル・・・
(菊地成孔)そのね、両立で。まあ、そのプロダクツっていうか。音楽の、製品という意味でのプロダクツっていうより音楽プロデュースという意味でのクオリティーがK-POPにはあったんで。それで、あったから、まあ、あるから素晴らしいというようなシンプルヘッドでですね、まあ聞いていたわけですけど。ただ、やっぱり、これはアイドルだけじゃありませんけど、名曲の壁を超えるのは、ね。ジョン・レノンですら大変なわけで(笑)。
(韓東賢)(笑)
(菊地成孔)だから、それ、どうするのかな?っていう問題の前で。やっぱりでも、アイドルを追いかけること自体は、よしんば音楽なくてもできると私、思うんで。そういう究極の形ですよね。と、思うんで。その、やっぱり大変なチケットの争奪戦になるし、1位。オリコンに入ったわけでしょ?投資するお姉さま方がいらっしゃるわけですよね。その人たちはもう、そのために生きてるんだ!っていうぐらいの感じなんでしょ?その方たちはもう、マメにTwitterとかやるわけでしょ?
(韓東賢)やってますね。ブロガーもいれば。やっぱり・・・
(菊地成孔)なにを書いてるんですか?『よかった!今日!』とか?
(韓東賢)いろんなことを書いてますよ。
(菊地成孔)本当ですか(笑)。
(韓東賢)情報を提供する。だからネットニュースとかを・・・
(ヴィヴィアン)あと、ライブレポとか。
(韓東賢)K HIPHOPでやっていることと同じです。極端に言うと。彼女がやっていることをアイドルでやっている。
(ヴィヴィアン)アイドル版ですね。あとは、結構毎回曲を出すと、ミュージックビデオに自分たちで字幕をつけてUPをしたりとか。
(菊地成孔)はいはいはい。あれ、ありますね。あれはまあ、各国の音楽でありますよね。なるほどね。そうか。
(ヴィヴィアン)あと、結構やっぱコラじゃないけど。いろいろなんか自分たちで好きなアイドルの男の子の写真をいじって。で、セリフとかをつけて遊ぶみたいな。
(菊地成孔)まあ・・・楽しそうですよね(笑)。
(韓東賢)あと、まあコミュニケーションしてますよね。
(菊地成孔)なるほど。でも、ATMなんですね。ATM JAMなんですね。
(韓東賢)ATMってまあ、自虐的な言い方ですけどね。
(菊地成孔)あ、それはなに?ファンの人たちが言うの?
(韓東賢)そうです。『私なんてどうせATMだから・・・』みたいな。
(ヴィヴィアン)そう。自虐で言うんですよ。
(菊地成孔)(笑)。アイドル側が『あいつら、ATMだ』って言ったらダメですよね。
(韓東賢)『こんなものにお金を使って・・・どうせ私はATMよ』みたいな感じですよね。貢いじゃって。
(ヴィヴィアン)だからどんどん新曲とかリリースされるじゃないですか。どんどんアルバム・・・次はアルバム出て、今度、ライブアルバム出て。DVD出て、コンサートツアー始まって、とか言って。すっごいお金、必要じゃないですか。だからなんか発表されるたびに、『ああ、ATMだからがんばって稼がなきゃ』みたいな。『貢ぐぞー!』みたいな感じですね。
(菊地成孔)なるほど。貢ぐね。まあ、そうですね。要するに、お布施っていう言葉が飛び交ったりしたり。まあ、貢ぎっていう言葉が飛び交ったりして。お布施から貢ぎにっていうのは、なんか降格したようなね、俗転したようなイメージですけども。まあ、いずれにせよ、お金を払わせていくわけですよね。
(韓東賢)うん、うん。
(菊地成孔)まあ、なんて言うか、全部ノーコメントにしたいような話なんですけど(笑)。あの、音楽家としては。まあまあまあ、とは言えですね・・・
(韓東賢)まあでもやっぱり日本がそれでも、年齢層が高いっていうのもあるし、すごく、ATMって自虐的な言い方だけども、やっぱりお金を払う人が多いので日本には進出するんですよね。だから、オリコンに入るわけじゃないですか。実際。で、それは、さっきの前口上でおっしゃったように、別にオリコンに入ったって言ったってみんな知らないのに、それでも、やっぱり稼ぎがある。他の国よりも。韓国よりも。下手すると。よりも、はちょっと極端ですけどね。
(菊地成孔)ただ、ジャンルミュージックだとか、そうじゃないとかじゃなくて、全部ジャンルミュージックで。全員、ATMなわけですね。どんな音楽に対してもね。
(ヴィヴィアン)あと、なんかやっぱり『ちゃんと買って支えてあげよう』っていう意識がすごい強いんですよね。K-POPアイドルファンたち。
(韓東賢)そこらへんはだからね、AKBとかも同じですよね。アイドルファンっていう意味では。
<書き起こしおわり>