菊地成孔が語る 格差と怒りと音楽の力

菊地成孔 日韓合作ラップ Keith Ape『It G Ma』の意義を語る 菊地成孔の粋な夜電波

菊地成孔さんがTBSラジオ『粋な夜電波』第9次韓流最高会議で格差社会とそこに付随する怒り、それが音楽に与える力について話をしていました。

(ILLIONAIRE RECORDS Feat. MC Meta『연결고리 (YGGR)』を聞いて・・・)

(菊地成孔)はい。では率直な・・・二発目ということですけど、(韓東賢)書記長。こちらはいかがでしょうか?

(韓東賢)うーんと、すごく好きではない・・・

(菊地成孔)あー(笑)。

(ヴィヴィアン)ちなみにこの曲、つい先週、韓国でいちばん大きいHIPHOPのサイトがあって、そこの、今年の曲に選ばれました。

(韓東賢)なんっていうか、うまく言えないんですけど、怖いんですよね。

『怖さ』の根源

(菊地成孔)まあ、そう。そう。怖さね。それね、K MOVIEが入ってきた時。キム・ギドクとか。ああいうのが入ってきた時、いまだに私、韓国の映画は怖いんですよ。でもね、テレビドラマはぜんぜん怖くないの。初期の頃はね、最初の頃はあれ、なんて呼ばれてたかな?Kハリウッドじゃねーや。Kアクションとか言われててさ、スパイものでドカーン!っていうのですら怖いし。人間ドラマもやっぱりね、『人の恨みとかの重みがぜんぜん違うな、日本と』と思って。

(韓東賢)(笑)

(菊地成孔)宮部みゆきさんどころじゃねーわ!っていう怖さがあって。やっぱね、韓国のカルチャーで日本人がいま、もうネガティブになる部分があるとして、それを具体的なことじゃなくて取ったら、やっぱり怖さってあると思うんですよ。

(韓東賢)うーん。

(菊地成孔)先日ね、アカデミー賞の発表がありまして。まあ、面白いんで、もう7回目ぐらいですけど何回もいいますけど、犬の鳴き声を模した局が完全中継したんですね。今年ですね、授賞式で、あれなんですよね。ちょうど公民権から50周年だってことで、キング牧師を、なんとしかし、このアカデミー賞ノミニー作品をですね、日本は公開してないんですけど。公開予定も立ってないんですよ。ですが、まあアメリカでは大変な、特に主題歌がジョン・レジェンド(John Legend)とコモン(Common)がやってるんですね。

(韓東賢)うん。

(菊地成孔)で、この主題歌がとんでもないパワーを持っていて。長いアカデミー賞の授賞式の中でも、全員がスタンディングオベーションして、ほとんどの人がガチ泣きしたっていうのはそのシーンだけだったんですけど。そのシーンに込められているのはやっぱりね、怒りっていうか。やっぱりすごい怒りを超えた・・・笑いながら言っちゃいけないですけど、あまりのことに笑ってしまうぐらいの、すごいパワーなんですね。

(韓東賢)うん。

(菊地成孔)で、あれもね、なんにも知らない子どもが聞いたら怖いと思うんですね。あれのコモンのその、もう魂の演説もね、聞きようによっちゃ怖いと思うの。だからやっぱり、その世界中でアメリカのアフロアメリカンの人たちが最初に怒りみたいなものとか、聞いたら怖がられるかもしれないものっていうのを美的に、あるいはコミカルにセクシーに音楽に変えたってことを最初にやったと思うんですね。だから、我が国が発していることっていうのは格差社会とか言ってますけど、韓国における格差や、アメリカ、北米における格差とは比べ物にならないじゃないですか。あるいは、中華人民共和国における格差とは。まあまあ、『比べ物にならないって言っちゃいけない。大変な格差なんだ』って言われたらそれっきりですけど。

(韓東賢)うん、うん。

(菊地成孔)だからやっぱ、格差っていうものの中から出てくる怒りとか、いろんなそのパワーっていうものが音楽になっているか、なっていないかっていうのがやっぱりお国柄だと思うんですよね。で、日本が柳腰ではんなりした国。かわいいってものが世界中にどんどんどんどん行っちゃっているっていうのは、ある種しょうがない。これから日本はやっと、言い換えれば、ソウル・ミュージックだとか韓国の音楽、特にHIPHOPに通じる、ひょっとしたら怖いやもしれぬぐらいのパワーっていうものを持っていくのかどうか?っていうのはこれからの我が国のね、特に音楽の大きな問題だと思いますけど。まあ、どう転がっていくのか、本当に難しいですけどね。

(韓東賢)悪く言えば没落後のね・・・没落後っていう言い方でいいのかわかんないですけど。まあ、そういう話ですよね。

(菊地成孔)そうですね。だからその、もう1億総中流とか言って、いい調子でやってた時代の名残の『かわいい』っていうロココみたいなもんが、いま世界ですごい愛でられてるんだけど、まあそのまま逃げ切るかどうか?っていうところに、まあ、とは言え今日なんかもそうですけど、日韓の音楽が少なくとも音楽では交流・・・もう、それもね、なんかハッピーフィールでお手盛りじゃねーの?みたいな雰囲気じゃなくて、本当に交流してるんだ!っていう感じが出始めてますから。まあまあまあ、そのことをね、Paloaltoさんのことも含めてですけども、まあまあ刮目して見て行きたいと思いますけども。

<書き起こしおわり>

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