菊地成孔 日韓合作ラップ Keith Ape『It G Ma』の意義を語る

菊地成孔 日韓合作ラップ Keith Ape『It G Ma』の意義を語る 菊地成孔の粋な夜電波

菊地成孔さんがTBSラジオ『粋な夜電波』第9次韓流最高会議で日韓のラッパーの共作曲、Keith Ape『잊지마 (It G Ma) ft. JayAllday, loota, Okasian, Kohh』を紹介。その意義や素晴らしさについてブロガーのヴィヴィアンさんらと話していました。

(菊地成孔)とは言いながら、やはりHIPHOPというカルチャーがもうキレキレのミクスチャーで、いつでもアートになるというところも死んでないわけで。まあ今日、絶対、ヴィヴィアンさんと事前に話して、今日絶対にプレイしなきゃいけないのはこれだなっていうのがね。

(ヴィヴィアン)絶対ですね。これは。

(菊地成孔)これ、イッチュですよね?イッチュ。ちょっと、解説をお願いします。

(ヴィヴィアン)はい。ええと、『It G Ma』っていう、『忘れるな』っていう意味の曲なんですけど。Keith Apeっていう、去年私が主催したハイ・ライトレコーズっていうレーベルのライブがあって。菊地さんも東賢さんも来ていただいたんですけど。そのハイ・ライトに最近所属した、いちばん若手のKeith Apeっていう男の子が・・・

(菊地成孔)Keith Apeの『エイプ』はちなみにもうはっきりとPVで、あのエイプ。日本のあのエイプのものを着て、そこに斜線を入れてるんですね(笑)。そこに目線を入れてますから。

(ヴィヴィアン)あと、なんかたしか『キース』はキース・ヘリングだったと思うんですよ。

(菊地成孔)そうですね。だからそういう、なんて言うか、比較的自虐的であり、オフェンシブであるポップ。

(ヴィヴィアン)去年まで、Kid Ashっていう名前だったんですけど。もう『キッドじゃないから、キッドっていう名前は嫌だ』って言って、Keith Apeになって。

(韓東賢)少年隊にがいるのに。まあ、いいや(笑)。

(ヴィヴィアン)(笑)。それでそのKeith Apeと、同じくハイ・ライトのOkasianっていう韓国系アメリカ人のラッパーと、あと、JayAlldayさんっていう日韓バイリンガルの、日本でも活動を以前していた、日本語と韓国語両方ラップする方と、あと、日本からlootaさんとKohhさん。この2人が参加して。

(菊地成孔)うん。lootaさんとKohhさん。これはもう・・・あっ、韓さん知るわけもない。いま、韓さんがもうボヤーっとしてますね(笑)。

(韓東賢)ボヤータイムで。

(菊地成孔)まあ、そうですね。が、参加している。日韓の曲ですね。

(ヴィヴィアン)が、参加している曲で。日韓コラボなんですけど、これがまた今年2015年の元日にリリースされたんですよ。もう2015年明けて、いちばん最初にリリースされたのが、もうガッツリ日本語と韓国語半々ぐらいでミックスしてやっている曲で。これがまた、しかも曲のスタイルがいままで日本と韓国になかったような新しいHIPHOPで。

(菊地成孔)そうですね。

(ヴィヴィアン)アメリカには去年ぐらい、ちょっと流行ってきたやつなんですけど。

(菊地成孔)まあ、洋楽ですね。完全な洋楽。

(ヴィヴィアン)そう。で、まだ日本人と韓国人のHIPHOPヘッズたちもぜんぜん聞いていなかったスタイルの曲なので、結構元日からすごい衝撃を与えて。で、日本人と韓国人両方のラッパーが参加してるんで。もう日本の普通のHIPHOPマニアの人たちも、韓国のHIPHOPファンの人たちも、もう同時に、『なんだ、これ!?』ってすっごい騒ぎになって。で、それぞれ、今回すごいよかったのが、日本のHIPHOPファンたちも今回これをきっかけに韓国のHIPHOPに興味を持って。

(菊地成孔)そうですね。

韓国で有名になったKOHH

(ヴィヴィアン)で、韓国のHIPHOPファンたちも日本のHIPHOPに興味を持って。で、私、先月ちょっと韓国に行ってきたんですけど、韓国の人たち、すごい普通にKohhとか知ってるんですよ。

(菊地成孔)まあ、そうでしょうね。

(ヴィヴィアン)すごい有名で。なんか日本よりも有名なんじゃないか?って思うぐらい。最近なんか韓国でも・・・

(菊地成孔)(笑)。かもしんない。

(ヴィヴィアン)インタビューも受けてたんで。そうかもしれないですね。『JUNJI TAKADA』とかすっごいみんな知ってて。

(菊地成孔)はい。あの、この番組は違うイシューではHIPHOPだけの週もあるのね。その時は、OMSB’eatsとMoeさんが来るんだけど。まあその時にJ HIPHOPを去年の夏ですね。ええと、ソニーとavexが各々やって。サマーシーズンのヒットにしようかなって流れにしようとしたところ、まあ残念ながらどちらも撃沈したっていう。まあ、撃沈って言っちゃあ失礼ですけども。まあ、Carisma.comとANARCHYがね。思ったより行かなかった。お茶の間の知名度っていうところまで、日本のHIPHOPの全盛期まで、とても届かず。で、まあその中にKohhなんかもいたんですよね。

(韓東賢)うん。

(菊地成孔)結構ヤバい・・・ヤバいっていうか、端的にワイルドなパーティーラップして。『お前ら飲め飲め。電話番号交換しろ。やりまくれ』って言っちゃう人なんですけど(笑)。

(菊地成孔)まあ、その人の話。いまのは。韓国でインタビューされた。とは言え、まあまあ、あらゆる立場の人に聞いてほしいですね。この曲は。韓国カルチャーが大好き。だけど最近飽きてきたという方。で、韓国カルチャー相変わらず好きだという人。韓国カルチャー大嫌い。日本語ラップ大好き。韓国人ラッパー大嫌い。まあ、いろんな逆、その逆、などなどいっぱいあると思うんですけども。あらゆる日韓の立場を違えた人に聞いていただきたい一曲です。まあ、『イッチュ』でいいですよね?

(ヴィヴィアン)ですね。

(菊地成孔)『忘れるな』という。

(ヴィヴィアン)『It G Ma』です。

(菊地成孔)はい。Keith Apeその他・・・『その他』、言っちゃあいけませんけども。大変な音楽的な、15年以降のものと言ってもいいと思いますけども。ズバリ、書記長。一言コメントをどうぞ。

(韓東賢)これ、でもあれなんですか?すごい、新しいんですよね?アメリカとかの?

(菊地成孔)新しいです。

(韓東賢)なんか私、すっごい『アジア』っていう感じなんですけど。

(菊地成孔)(笑)。あのね、アメリカのHIPHOPの新しさの中に、アフリカを逆行するような形で。どんどんどんどんアジアンな感じになる可能性も・・・

(韓東賢)なんかプリミティブなものとか、エスニックなものとか、そういう感じがすごくした。

(菊地成孔)そこのね、回避の仕方がね、問題なのね。まあ、R&Bやジャズやブルースがそこをすごく上手くやったんですけど。HIPHOPはまたね、下手するとまた戻っていく可能性も持っているんですけど。ただ、いろんなことが新しいの。これ。あの、『あなたの管』という名前の・・・(笑)。まあ、別にあなたの管じゃなくてもいいんだけど、ぜひ、動画も見ていただきたいですね。衝撃を受けていただきたい一曲でした。

(ヴィヴィアン)あの、私のブログにもこの曲と、あとこの曲があるアメリカの曲からインスピレーションを確実に受けているんですけど。その曲の解説とかも・・・

(菊地成孔)まあ、この曲は簡単に言うと、まあ、ネタばらしですけど、パクリですね。

(ヴィヴィアン)(笑)

(菊地成孔)なんですけど、それはまあ、敢えてやってるんです。

(ヴィヴィアン)そうなんです。で、もうそのパクリとかも置いておいても、アメリカとかでもすごい高評価で。これはすごいものを日本人と韓国人が作った!みたいな感じで。

(韓東賢)なぜ、接点っていうか、どういう?

(菊地成孔)まあ、それはCMの後に。

(CM明け)

(菊地成孔)はい。菊地成孔の粋な夜電波。ジャズミュージシャンの菊地成孔がTBSラジオをキーステーションに全国にお送りしております。今週は日本映画大学准教授、社会学者の韓東賢さん。そしてブロガーのヴィヴィアンさんをお迎えいたしまして、K-POP、K HIPHOPについて徹底討論する韓流最高会議 第9次となります。これは、どういう経緯で出来上がったと?

(ヴィヴィアン)ええと、そのさっき話した日韓バイリンガルのJayAlldayっていうラッパーが、日本で数年前まで活動してたんですね。で、その時にlootaとかと親しくなって。で、一緒にいろいろ日本でライブやったりしてたみたいなんですけど。で、いま、JayAlldayは韓国に帰って、韓国で活動してるんですが。それで、なんか一緒にやろうっていう話を前からしてたみたいで。で、lootaがたぶんKohhを紹介して。で、JayAlldayはKeith ApeとOkasianと一緒にThe Cohortっていうクルーをやっているんで。

(菊地成孔)はい。

(ヴィヴィアン)それでもう、その仲いいのをそれぞれ紹介しあって集まって、このタイミングでやってみよう!っていう、そういう感じで始まったみたいなんですけど。

(菊地成孔)これはまあ、言っちゃあHIPHOPっていうことだけで考えれば普通のことですよね。友達が友達を紹介して、コラボしているわけなんだから。ただこれが日韓っていうことになると、もうほぼ初めてのことで。それまで、たとえばまあ、あまりこの番組では言及したくないですけども。前史においては反日ラップというものもありましたし。あの・・・まあ日本からはそんなに露骨な・・・音楽側からの。

(ヴィヴィアン)でもこの曲もちょっとした後日談があって。これ、知っている人は知ってると思うんですけど、InstagramでOkasianっていう参加している1人が・・・

(菊地成孔)はい。Okasian、なんかやったんですか?

(ヴィヴィアン)いや、やってないんですけど。Instagramで書いていたのを読んだんですけど。ちょっと確認してないんですけど、このミュージックビデオに、なんか戦犯旗みたいなのが映っているんじゃないか?みたいなことを韓国のファンが指摘して。で、あの日本のラッパーたちの正体を暴け!みたいな感じで、熱くなったファンがごく一部いたんですけど。

(菊地成孔)はいはい。

(ヴィヴィアン)Okasianがそのファンたちに、『僕たちは日本人とか韓国人とか関係なく心を通い合わせた友人だから、こんな下らないことでその信頼関係を崩したくない』みたいなことを言って。で、なんかこう、『頭ごなしになにかを決めつけてやる前に、1回考えてみてから話し合おうよ』みたいなことを書いていて。すっごい感動したんですよ。

(菊地成孔)ああ、そうね、書いてあったのね。いやー、なんかね、通常、要するにまあ、いわゆる隣国って呼ばれるものは別に我が国と大韓民国だけではなくてですね、ヨーロッパに行ったって、どこ行ったって隣国っていうのは仲悪いに決まってるの。

(ヴィヴィアン)私、イギリスに住んでいたんで。イギリスとフランスなんかも本当、ひどいですよ。いまだにナポレオンとかの時代のことでケンカしてるんですもん。

(菊地成孔)(笑)。まあ、やっぱり境界線の問題も絶対に出てきますし。で、そんな時にね、まあ絶対そんな人間は愚かなものですから。必ずそうなるし、まあ愚かなもんですから、また仲直りしようってなるし、愚かなもんですから、また仲違いしたりするのを繰り返すんだけど。このね、仲直りの、一緒にやっていこうよって時のターンに、こういうトーンの音楽が充当されたことが歴史上、ないんですよ。

(ヴィヴィアン・韓)うん。

(菊地成孔)だいたいそういう時の音楽っていうのは希望に満ちた明るいものなの。だけどこれがね、日韓親善になっているサウンドなんだっていうことに、ものすごい僕、ショックを受けて。まあまあ、そんなにシリアスにしゃべってますけどね、これを動画サイトで見つけた導きはポッドキャストにお任せしますけども。私、アンダーウォーターフェチでですね。水の中の女性が好きだっていう性的な・・・

(韓東賢)久しぶりにその話を聞いた気がする(笑)。

(菊地成孔)はい。それで、常に『Underwater』で毎日検索してるんですね。その結果ですね、『Underwater Squad』という言葉がフックとしてこの曲に出てくるんで。あの、『水中スクワッド』ってことですけども。それで、引っかかっちゃったんですね。なんかの間違いで。して、見てみたらびっくり!っていう。議長としてはあり得ない経緯でですね。正当な経緯では見ていないっていう(笑)。

(韓・ヴィヴィアン)(笑)

(菊地成孔)韓国ニュースが送られてくるLINEみたいなやつを友達の見せてもらうんですけど。いまでも日本のテレビ出てるけど、秋山選手っていたじゃないですか。あの人がSHIHOさんとの間に生まれた赤ちゃんがいるんだけど・・・

(ヴィヴィアン)サランちゃん。

(韓東賢)大人気ですよね。すっごい大人気ですよ。

(菊地成孔)その子のニュースばっかり飛び込んでくるんで(笑)。『もうダメだ!自分で探さなきゃいけない!』と思ってね、息抜きにちょっとアンダーウォーターって自分のフェティッシュにでも訴えて時間つぶししたら、この曲が引っかかってびっくりしたっていう曲なんですけど。まあまあ、そんな流れもあって、その、今日、最初にやりましたけど、英語、日本語、韓国語の語学力を総動員して聞くべき曲ですよね。これは。

(韓・ヴィヴィアン)うん。

(菊地成孔)やっぱり。どれかの国。まあ、何語・・・英語、日本語、韓国語、三ヶ国できる人には全部わかるでしょうけど。その人の方が、やっぱりこのヴァースの凄さとかね、伝わると思うんですね。だからやっぱりこう、三つの国の言葉が使われている。それを掘り下げるべき楽曲ですよね。パーティーチューンじゃありませんし。

<書き起こしおわり>

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