マキタスポーツさんがTBSラジオ『東京ポッド許可局』、推薦図書論の中で『洋食や たいめいけん よもやま噺』を紹介していました。
(マキタスポーツ)俺、じゃあいい?
(サンキュータツオ)じゃあ、マキタさんから。マキタさんの、聞きたい。なんだろう?
(マキタスポーツ)まあ、僕と言えば音楽もあると思うんですけど。いやいや、僕と言えば、食なんですよね。
(サンキュータツオ)(笑)。そうですね、この・・・
(プチ鹿島)関連用語ね。
(マキタスポーツ)とにかく、僕自体が肉のことを語ると、肉よりもジュージュー言い出すっていう。
(サンキュータツオ)シズルマキタですね。
(プチ鹿島)肉に勝っちゃう時、ある。
(マキタスポーツ)僕がね、お二人に薦めたいのはね・・・
(プチ鹿島)ゴマ油の本ですか?
(マキタスポーツ)ゴマ油の話もチラッと出てくるかな。あの、角川ソフィア文庫というのがあるんですけど、そのレーベルから出てるですね、『洋食や たいめいけん よもやま噺』。
(サンキュータツオ)たいめいけん!出た!
(プチ鹿島)もう美味しそうだな。
(サンキュータツオ)たいめいけん、有名ですね。よもやま噺。
(マキタスポーツ)はい。これあの、たいめいけん。日本橋のたいめいけんの創業者であられる茂手木心護さんという方が、1977年に初版を書かれたもので。で、またこれが加筆されてですね、お孫さん。いま、メディアとかにもね、出てらっしゃいますけども。の、方が加筆したりして。また出たものなんです。で、これ、僕は人から紹介されて、放ったらかしにしてたんですけど。何気なくある時、手にとって読んでみたらですね、非常に軽く読めまして。でね、『洋食、食べたいな』っていう気分にすごくさせてくれる・・・
(サンキュータツオ)(笑)
(プチ鹿島)それ、レビューとしては100点ですね。
(サンキュータツオ)そうだね。
(マキタスポーツ)洋食、食べたいな!っていうね、感じになるんですね。
(サンキュータツオ)そこはじゃあ、『たいめいけんの洋食、食べたいな』じゃなくて、『洋食、食べたいな』になるんだ。それはいいね。
(マキタスポーツ)そうです。洋食自体を食べたいなっていうのがあるんですけど。洋食というものを理屈抜きにしてですね、まあなんて言うんでしょうかね。洋食という風情にふれてみたいなっていう風になるんですよね。だから洋食って、まあ、いまやなんて言うんでしょうか?いろんなところに外食産業も発達してですね、美味しい食べ物っていっぱいあると思うんですよ。
(サンキュータツオ)そうですね。
(マキタスポーツ)ただ、なんかね、僕ね、やっぱり洋食ってものに関しては、すごくレトロなものを感じてるわけじゃないですか。
(サンキュータツオ)『花子とアン』のさ、お父さん。原田泰造さんがやっていたあの洋食屋さん、美味そうだよねー!
(マキタスポーツ)美味そうでしょ。
(プチ鹿島)オムライス!
(マキタスポーツ)つまりそれは僕は『背景食い』なんてことを言いますけど。なんかあの、その背後にあるものとか、そういう物語みたいなものを付加した状態で食べると、いろいろ感じるものがあるんですけど。これをだからその、茂手木心護さんがですね、暖簾分けするような形で独立して・・・まあ、丁稚奉公していた時代から独立してお店をおこして、だんだん近所の方々とかに愛されていく。その裏側にあるものを・・・
(サンキュータツオ)へー。エッセイなんだ。じゃあ。
(マキタスポーツ)そうなんですよ。書かれてるんですよ。でね、なんて言うんでしょうかね?言葉遣いなんですよ。僕が言いたいのは。あのね、『兄さん、コーヒーミルクに蜜パンちょうだいよ』と芸者さんがそういう注文をしてたりとかするようなところ。
(サンキュータツオ)はいはい。いいですねー。
(マキタスポーツ)『ちょうだいよ』って言っているあたりの感じとかね。っていうのとかがちょいちょい出てくるんですよ。そういうのがね。で、そういうものとか感じると、僕は知らないですけど、すごく昔の東京の日本橋界隈とかのものとかがなんとなく頭の中にフワーッとこう、ね。
(サンキュータツオ)あ、『ごちそうさん』ね。『花子とアン』じゃなくて『ごちそうさん』の・・・
(マキタスポーツ)あ、『花子とアン』じゃない。僕、勢い余っちゃったけど。タツオも。俺も勢い余っちゃって・・・
(プチ鹿島)もう、『あまちゃん』でいいや。この際。
(サンキュータツオ)『あまちゃん』ね。『あまちゃん』の洋食屋さん。
(マキタスポーツ)まあとにかく、昔の、なんて言うかな?風情みたいなものとセットで、それを頭の中にインプットした状態でもって洋食をなにか食べると、もうぜんぜん味わいが違うわけですよ。なんでもない食の歴史みたいなことじゃないんですよ。ただその一生懸命、市井で働いていた人たちの中にあった洋食というものと、それを作っていた調理人の感じたものみたいなものがですね、ぜんぜん力を入れない状態で書かれているものなんですね。なんかこれはですね、洋食を食べたいな!っていう気分のある、あるいはなくても・・・
(サンキュータツオ)(笑)。トイレに置きたいわ。
(マキタスポーツ)うん。でしょ?そんな感じだと思うんですよ。だから何気なく手にとって読んでいただいてっていう風にね。これが、オムライスが3割増、美味しくなりますから。
(サンキュータツオ)(笑)
(マキタスポーツ)本当に美味しくなります。
(サンキュータツオ)あの、マキタさんさ、『サラメシ』とかって見てます?
(マキタスポーツ)サラメシは見てないです。
(プチ鹿島)サラメシはいいやね。中井貴一。
(サンキュータツオ)NHKの。
(マキタスポーツ)ああー!たまに見ますよ。たまに見ます。わかります、わかります。
(サンキュータツオ)あの、テレ東ではお昼ごはんのやってるんです。で、飛行機あんまり乗らないかもしれないですけど。ANAかなんか乗ると、『翼の王国』かなんか、そういうさ、読み物あるじゃない?
(プチ鹿島)機内誌。
(サンキュータツオ)あそこに、『おべんとうの時間』っていう連載があるんですよ。それで、いろんな働いている人のね、お昼ごはんを上から写真撮るみたいなね。
(マキタスポーツ)いいでしょう。もういいでしょう!
(サンキュータツオ)金曜いいでしょう、出ました!
(マキタスポーツ)わかります。わかります。
(プチ鹿島)でも、それを読んでいるのは空の上なんですよね?
(サンキュータツオ)そういうこと(笑)。
(プチ鹿島)なんか変な感じですけど。うん。
(サンキュータツオ)それが、俺あまりにもその連載が好きで。なんかね、たとえばええと、船で向こう岸に渡す、本当、渡しの職業をやっているおじいさんのお弁当とか。朝○時に起きて・・・もう、背景食いでしかない。
(マキタスポーツ)もう!もうもうもう、いい。
(サンキュータツオ)『朝○時に起きて、で、○年前までは奥さんが作ってきてくれていたけど、いまは亡くなってしまったんで自分で作ってます』みたいな。
(マキタスポーツ)素朴な海苔弁でもね。
(サンキュータツオ)海苔弁みたいなのがあるんですよ。このコラム、たまらんな!と思ったら、本が出てるんですよ。『おべんとうの時間』っていう本が出てる。これがもう、何回読んでも!あれ、マキタさんにおすすめしたいわ。そういえば。
(マキタスポーツ)いいね!
(サンキュータツオ)持ってくればよかった!あの、厩舎で働いている若い女の子のお弁当とか。だいたいね、朝早い系の仕事してる人のお弁当はちょっと美味そうですよ。
(マキタスポーツ)『ちょっと照れくさいけど、見ていただく』みたいな感じのスタンスでしょ?ブログとかで発表するようなお弁当。見せ弁当じゃないでしょ?
(サンキュータツオ)見せ弁じゃない。
(マキタスポーツ)弁当ポルノじゃないでしょ?
(サンキュータツオ)そうそうそう(笑)。弁当ポルノじゃない。
(プチ鹿島)見せる気満々でね。
(マキタスポーツ)(笑)
(サンキュータツオ)そうなんですよ。企画モノの・・・
(プチ鹿島)R15弁当じゃないでしょ?
(マキタスポーツ)(笑)
(プチ鹿島)見せる気満々の。
(サンキュータツオ)うわー、そうですな。食にまつわるあれでしたな。
(マキタスポーツ)そうなんですよ。ですからこれ、ちょっと。『洋食や たいめいけん よもやま噺』。昔ね、戦中にね、秘密兵器V1号っていうドイツかなんかのね、飛行機があったんですって。それに倣ってね、V1号っていうね、メニューもあったんですって。
(サンキュータツオ)へー。V1号?
(マキタスポーツ)うん。『おからにサツマイモのふかしたもの、刻みタマネギ、鯨の脂身を茹でて脂をとったカスのものを混ぜたもので、鯨のない時は塩鮭の頭を塩出ししたものをひき肉の機械にかけて混ぜまして・・・』。
(プチ鹿島)危ない危ない。お下がりください。
(マキタスポーツ)『よく混ぜてコロッケの形につくり、メリケン粉を水で溶いて、卵の代わりに、パン粉なぞございませんので・・・』。この、『ございませんので』って、いいでしょ?
(サンキュータツオ)いいですね(笑)。
(マキタスポーツ)『大豆粉をつけて揚げたものです。もちろん揚げ油は鯨の脂です。パンの薄いのが一切れついて、一円でございました』。
(サンキュータツオ)へー!
(マキタスポーツ)と、いうものとかが書かれていて。何気なく書かれているんですよ。
(サンキュータツオ)ちょっと食べてみたくなったな。
(マキタスポーツ)でしょう?
(サンキュータツオ)面白い。背景食いの、もう王様みたいなやつですね。
(マキタスポーツ)そうですね。
(サンキュータツオ)『洋食や たいめいけん よもやま噺』。
(マキタスポーツ)はい。僕はこれと、もう一つ・・・
(サンキュータツオ)じゃあ、もう一巡しましょうか。
<書き起こしおわり>