安住紳一郎さんが2007年8月にTBSラジオ『安住紳一郎の日曜天国』で話したトークの書き起こし。高校野球中継フリークの安住さんが、高校野球中継の魅力や、プロ野球中継との決定的な違いについて話していました。
(安住紳一郎)先週の水曜日、休みで。ずっと家にいて。で、あの、またちょっと高校野球、好きなもので。ずっと家にいて、また1日4試合見ちゃうというですね、贅沢な休日の過ごし方をしたんですけども。
(中澤有美子)ええ。
(安住紳一郎)今年はね、ちょっと特待生問題とかあり、ねえ。最近の高校野球は私立のね、高校が強くて。その、ね。広告塔代わりにね、使っているというような評判もあって。ちょっとね、純粋に応援できないかな?みたいな気持ちになっている自分もいるんですけど。ねえ。他県からね、集めちゃってね。青森山田高校とかひどいなと思ったりするんですけども。やはり、ちょっとまあそういう、ちょっと斜に構えた見方をしながらも、やはりこう、3年間野球一筋にかけてる人たちのプレーっていうのは筋書きのないドラマ、感動してしまうというところはあるんですけども。
(中澤有美子)そうですよねー。
(安住紳一郎)抱き合いますからね。ホームインするとね。私達、職場でね、いい仕事をしても抱き合うってことはないですからね。
(中澤有美子)そうですね(笑)。残念ながら(笑)。
(安住紳一郎)もう、なんの迷いもなく、バッ!って抱きついたりするじゃないですか。やっぱりね。
(中澤有美子)心は通じあってるんですね。やっぱり。
(安住紳一郎)うん。やっぱりちょっと、大人の思惑で動かされているところもあるという高校野球ではありますが。やはりそういう、選手一人一人の表情を見ると、まあそうも言い切れない部分があるんじゃないですか?っていうね、感じになりますよね。
(中澤有美子)ええ。
(安住紳一郎)悪く利用しようとしてるのは、大人だけだよ!というね。うん。自由だー!っていうことですよ(笑)。
(中澤有美子)はい(笑)。
(安住紳一郎)さて、でも私はやはりこの高校野球ファンという以上に、高校野球中継ファンということをずいぶん前から申し上げていたと思うんですけども。小学生の自分から、北海道の山奥の家で高校野球を見ながら、自らスコアブックをつけていたぐらいな。ええ。
(中澤有美子)おっしゃってましたね。はい(笑)。
(安住紳一郎)相当な高校野球中継ファンなんですよ。
(中澤有美子)中継ファン(笑)。
(安住紳一郎)これも繰り返しになりますけれども、NHKの三大サンクチュアリ中継と言われております、NHKの持っている高校野球中継、国会中継、大相撲中継。これは、こう新しいものを良しとしない。前近代的な、工夫とかを良しとしない世界じゃないですか。アンタッチャブルなね。古き良きテレビ中継のスタイルが残っているという。そういうところにこう、テレビマン、放送マンとしてもグッと心をひかれるものがあるんですけども。
(中澤有美子)ええ。
(安住紳一郎)昨日、寝てないものでちょっと弁舌がさわやかでございますが。申し訳ございません。
(中澤有美子)そうですね(笑)。ちょっと、ハイピッチで。ええ。
プロ野球中継と高校野球中継で決定的に違うところ
(安住紳一郎)それで、昨年も申し上げましたけれども、プロ野球中継と高校野球中継で決定的に違うところはなにか?という質問をしたと思うんですが、中澤さん、覚えてらっしゃいますか?
(中澤有美子)ええと、ええと、なんでしたっけ?(笑)。
(安住紳一郎)毎年言わんとダメなのかい!?
(中澤有美子)すいません(笑)。
(安住紳一郎)ラジオをお聞きのみなさんも、去年言いましたよ。プロ野球中継と高校野球中継。テレビの中継で決定的に違うところがひとつあります。それは一体なんでしょうか?
(中澤有美子)悪く言わない。
(安住紳一郎)悪く言わない。たしかにそうなんです。解説者、アナウンサーは選手自身を責めたりしません。非常に微妙な言い回しで、『はい。ちょっとボールが甘かったような気もしますけども、これは打ったバッターを褒めるべきでしょう』という風にね、上手くフォロー、転換しますけれども。まあ、そういう傾向がある中継スタイルの中で、見ていて決定的にひとつ違うのはですね、高校野球中継は、エラーをした選手のプレーのリプレイ、スロープレーを出さないというね。
(中澤有美子)あ、そっかそっか。はい。
(安住紳一郎)ということなんですよね。『いまのスクイズ失敗のシーンをもう一度、見てみましょう』とかいうことはないんですよ。
(中澤有美子)絶対ないんですね。そうです。
(安住紳一郎)ということで、私達は見逃してはなるまい!ということで釘付けになってしまうという、そういう側面もあるんですけども。まあこれはね、そろそろモザイクとかをかけてね。選手の顔にモザイクをかけて、『それでは6回の表。ある野手のエラーをご覧ください』とかいう風にするべきだ!って俺は言ってるんだけども(笑)。
(中澤有美子)(笑)。
(安住紳一郎)まあ、それは無理としましてもですね、そんな高校野球中継ファン。フリークの私としてですね、今回ちょっと気になっていることがひとつあるんですが。5年ぐらい前から気になり始めたんですが。もし、ラジオをお聞きのみなさんでテレビを見ていて共感するという方がいらっしゃるかもしれませんが。ちょっと最近の選手それぞれの、ガッツポーズが派手なんですね。
(中澤有美子)ああ、そうですか。
(安住紳一郎)これは5年くらい前から私、危惧していたんですけども。
(中澤有美子)危惧することでしょうかね?(笑)。
(安住紳一郎)ちょっとね、派手になってきたというか、なんかこう、劇的なプレーの後に自然に出てくるガッツポーズはいいんですけども。ちょっとね、テレビ中継をされているっていうのを意識しすぎたガッツポーズが多くなってきているんですよ。
(中澤有美子)(笑)
(安住紳一郎)これはね、ちょっと由々しき問題だなと思いまして。
(中澤有美子)パフォーマンスが入っていると?
(安住紳一郎)パフォーマンスがちょっと入ってきてるのがね、ちょっと残念だなと思うんですけども。あの、まあ非常に固いと評判の高野連ですからね、このへんはちょっとあの、ね。特待生問題と並びに、ガッツポーズ問題にもしっかり取り組んでほしいなという風に思っているんですが。
(中澤有美子)(笑)
(安住紳一郎)守備中のタイムは3回までって決まってますからね。ガッツポーズも1試合3回までとか、そういう風に決めてもらってもいいんじゃないかな?って思うぐらいなんですが。うーん。
(中澤有美子)(笑)。いいと思いますけど・・・
(安住紳一郎)ああ、そうですか。まあ、ひとつのあくまで例なんですけども。水曜日ですとですね、東東京の帝京高校。ベスト8に残って、今日試合、これからありますけれども。がんばってほしいんですけども。帝京対、鹿児島の神村学園の試合があったんですよ。帝京のね、ワンサイドゲームになってしまったんですが。
(中澤有美子)そうでした。
(安住紳一郎)ええ。神村学園がね、1回の裏にね、いきなり2ランホームランを4番バッターがね、キャッチャーだったんですけど、打つんですよ。それはね、帝京のピッチャーの見事な145キロぐらいのストレートをですね、1、2の3ではかったような感じでですね、元日ハム、いま巨人の小笠原のようなフルスイングでバーン!って振りぬくわけですよ。
(中澤有美子)はい。
(安住紳一郎)で、レフトスタンドにまっすぐ飛んで行くわけ。で、優勝候補の帝京のピッチャーから1回裏に初っ端をくじくね、ホームラン。すごい!興奮してるの。見てる方もね。で、神村学園が若干不利じゃないか?って言われていたものですから、むしろこう、神村学園にグッと心がひかれるわけ。なかなかいい選手だ!と思ったんですけども。その4番バッターの子がね、ガッツポーズを2回するんだけれども。1回目はセカンドベース上で、まずひとつめのガッツポーズね。ひとつめのガッツポーズ。
(中澤有美子)ええ。
(安住紳一郎)最近お決まりのグーじゃなくて、1番のね。数字の1。右手の人差し指だけをまっすぐ伸ばして、セカンドのベース上で『1』ってやるのね。で、まあその1もね、若干年代の違う俺としては不満があるんだけれども。
(中澤有美子)そうですね(笑)。
(安住紳一郎)『なんだよ、『1』って?誰が流行らせたんだよ?』っていう感じもあるんだけれども、ここ5年くらいは1なんだよね。で、1番!っていう風にやった後に、手を胸元の方にグッと引き寄せるわけ。セカンドキャンバスを踏みながらね。ちょうどあの、『クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!』のミリオンスロットの要領でこう、グッと引くわけ。
(中澤有美子)(笑)
(安住紳一郎)で、こうなんか、計算されている感じがあるのね。
(中澤有美子)なるほどね。ちょっと慣れている感じ?
(安住紳一郎)ちょっと慣れている感じがあったんだ。こう、1番ってやって回るんだったらいいんだけど、1番の後に、ミリオーンスロット!ってやったんだよ。
(中澤有美子)ググっと(笑)。
(安住紳一郎)それがね、ちょっとね、嫌な予感がしたの。そしたらね、やっぱりね、今度わかっているのかわかってないのかわからないんだけども、ホームランを打った時の中継の定番のスタイルっていうと、ちょうどバッターランナーが2塁のキャンバスを回ってきたところで、今度はカメラが切り替わって、マウンド上で打ちひしがれる投手の表情ね。これを一瞬パーン!って映像で抜くわけ。で、その後さらに2塁キャンバスからサードの方を回ってきて、それでホームに向かうというね。3塁コーチャーとにわかにね、言葉を交わして回ってくるあたり。ここがね、非常にその、スポーツマンとしては、いちばんいいシーンなわけですよね。
(中澤有美子)はい。
(安住紳一郎)なぜならば、打ったバッターがはじめてこちら正面に顔を見せる瞬間だから。
(中澤有美子)ああ、そっかそっかそっかー。
(安住紳一郎)そういう非常に大事なシーンなわけ。で、こういちばん、3塁側のベンチの横からカメラが抜いているわけですよ。ええ。で、いちばんいいシーンなわけ。でね、その選手はなんとびっくりしたんだよ。カメラ目線で、サミー・ソーサのガッツポーズをやったの!
(中澤有美子)(笑)
(安住紳一郎)左の心臓を1、2って叩いて、ビュッて出したの。
(中澤有美子)ええーっ!?
(安住紳一郎)モーニング娘。かサミー・ソーサか?みたいな感じになったわけですよ。それをさ、カメラ目線だったの。ヤクルトの外国人選手だったらわかるけれども、それはどうなんだ?って思ったの。
(中澤有美子)わかってるんだ、カメラの位置も。
(安住紳一郎)カメラの位置、わかっている。まあ、ちょっとまあね、意地悪な言い方かもしれない。もしかすると、3塁側のチームメイト、あるいは3塁コーチャーにやったのかもしれないけれど。でも、あれはね、たぶんカメラの位置をわかっていたんじゃないかな?と思うんだよね。うーん・・・
(中澤有美子)おー。余裕ありましたね。
(安住紳一郎)うん。余裕あったね。まあ、1回の裏。はじめての打席っていうのもあったのかもしれないけどね。サミー・ソーサのポーズだからね。
(中澤有美子)しかもね。ええ(笑)。
(安住紳一郎)俺たちはアジア人だぜ?っていう話だから。
(中澤有美子)欧米か!?と(笑)。
(安住紳一郎)本当にね。それでね、ちょっと神村学園びいきだった俺が、ザーッとね、引き潮のように波が引いちゃったの。
(中澤有美子)早かったですね(笑)。
(安住紳一郎)うん。『負けろ!神村学園』なんて思ってたの。うん。そしたら案の定ね、俺の呪いが通じたかのように、帝京のワンサイドゲーム。神村学園ボロ負け。鹿児島ね。残念だったけども、ちょっとホッとした。
(中澤有美子)(笑)
(安住紳一郎)うーん。まあ、高校野球で選手個人にね、別に問題はないと思うんですけども。まあ、見ている方の勝手な心の流れなんですけどもね。
(中澤有美子)そうでしたか(笑)。