安住紳一郎が歌番組収録現場で見た 謎の天才演出家の正体

安住紳一郎『出演番組を見る際は自分自身を全力で応援する』 安住紳一郎の日曜天国

安住紳一郎さんがTBSラジオ『日曜天国』の中で2008年10月に話したトークの書き起こし。収録の歌番組の制作方法について話し、さらに特番の収録現場に突如現れた謎の天才演出家について話していました。

局アナ 安住紳一郎

(安住紳一郎)さて、放送局は概ね4月と10月に番組の編成を組み替える時期でして。私たちはそれを『改編期』と呼びますけど。また、それに伴い、ラジオはあんまりそうではありませんが、テレビは特に特別番組をこの時期に編成することがとても多いんですが。最近、みなさんあまりね、テレビをご覧になってない方が多いのかもしれないですけども。秋の・春の特別番組で、なにかちょっと傾向を感じませんか?中澤さん、なにか感じますか?

(中澤有美子)うーん・・・ヒントをください。そうですね、長いですよね。番組。4時間とか。

(安住紳一郎)気づきました?

(中澤有美子)そのこと?

(安住紳一郎)そのことですね。ええ。私も3年くらい前からちょっとなんかそんな傾向を感じてたんですが。ラジオをお聞きの方はそうでもないかもしれませんが。だいたい特別番組っていうと、これまで2時間番組が多かったんですけども。ここ、特に顕著になってきたのはやっぱり3時間、4時間の特別番組がずいぶん改編期に増えましたね。

(中澤有美子)そうですよね。

(安住紳一郎)元々バラエティーの長時間スペシャルは、どちらかと言うと、テレビ朝日系列のみなさんの十八番だったんですけれど。無人島生活とか、大家族ものとか、マグロものとか。結構、テレビ朝日系列のみなさんが得意としてたんですが。今年の春ぐらいからですかね?まあ弊局、TBSも含めて、結構顕著になってきてますよね。私もこの9月・10月で2時間半ものが1本、それから4時間ものが3本ありましたね。

(中澤有美子)うーん!

(安住紳一郎)で、2時間ものっていうのが1本だけでしたから、やっぱりちょっと、どちらかというと特別番組の放送時間が長く長くなっている傾向があるんじゃないかな?という風に感じてますけどね。

(中澤有美子)そうですよね。

(安住紳一郎)多いですね。ええ。

(中澤有美子)歌謡曲の番組とか。ダイエットの番組とか。がっちり見れた気がしましたね。

(安住紳一郎)そうです、そうです。ねえ。たぶん、ご覧になる方もずーっとっていうことじゃなくてね、たまに浮気しながらという感じの方が多いんじゃないかなと思うんですけど。まあね、やる方は結構疲れるなあということが、正直あって。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)また、ねえ。私、固定給なものですから。歩合制ですとね、2時間が4時間になると、もしかすると歩合的には倍になっているのかもしれないですけども。固定給にしてはちょっとつらい傾向だなあということは、ありますね。

(中澤有美子)やっぱりそうなんですね(笑)。

(安住紳一郎)まあ、冗談はさておきまして、あの、いま中澤さんおっしゃった通り、先週の火曜日ですか。5日前ですね。4時間もののスペシャル番組の担当だったんですけども。ちょうど70年代・90年代のちょっと懐かしめの歌謡曲をズラリとストレートに並べる歌番組だったんですが。大物アーティストが22組ですか。いらっしゃいまして。ええ。

(中澤有美子)うーん。

(安住紳一郎)華やかな番組だったんですが。私、生ではなくて、収録の長時間ものの歌番組というものは初めて担当したんですけど。生放送はこれまであったんですが。生放送ではなくて、収録で歌番組を撮影した場合、どれぐらい時間がかかるとみなさん、お思いですか?(笑)。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)まあね、別に仕事ですから。別にあの、文句を言っているわけじゃないんですよ。これはちょっとあの、新たな驚きというかですね。結構たぶんね、驚くと思うんですよ。

(中澤有美子)私、思いましたよ。これ、見てて。

(安住紳一郎)だいたいね、ドラマが収録ものの中では大変時間がかかるということはみなさんもおわかりだと思うんですよ。いろんなね、場所に移動して。いろんなシーンがあって。それでね、1回撮影してOKが出るわけではないですから。何回も撮り直すところがありますし。よくね、大河ドラマとか、1年かけて撮りましたとかそういう話を聞きますからね。

(中澤有美子)うん。

(安住紳一郎)だいたいですね、ドラマの次にですね、収録ものですと歌番組の収録が比較的長い時間を要するというのがだいたい定説なんですけども。

(中澤有美子)そうなんですか。

(安住紳一郎)今回は4時間の歌番組を5日間かけて収録しました。

(中澤有美子)あっ、そうだったんですかー。想像以上です。

(安住紳一郎)うん。収録が5日目の、全部終わった時にですね、なんでこの仕事が私に依頼があったのかが、なんとなくわかりましたね。ええ。これは出演料のかかる司会者にたのんでいたら、とんでもないことになってましたからね。これはやっぱり固定給司会者の出番に必然的になるわけですね。ええ(笑)。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)うん。でもやっぱりこう、歌をより迫力のあるものに、歌っている歌手の人の姿がより美しく、そして映像をより叙情的に仕上げるためには当然時間がかかって仕方がないものなんですけども。私もこの仕事をし始めて、はじめて『ああ、こういう風に作るんだ』ということも含めて、なぜこんなに時間がかかるのか?ということが大変驚きだったので。ちょっと、みなさまにもこの驚きをお伝えしたいなあと思ってですね。今日は、収録の歌番組の作り方を説明します。

(中澤有美子)お願いします(笑)。

(安住紳一郎)5日間クッキングです。

(中澤有美子)はい(笑)。

(安住紳一郎)まず、アーティストのみなさんがスタジオにいらっしゃいます。だいたい5つの段階がかかります。まずは、サウンドチェックというのが行われます。段階1ですね。こういう楽器からこういう音が出ます。このスピーカーからはこういう音量が出ます。マイクはこのような性能です。全体的にはこういうような音の反響をします。少しエコーを抑えましょう。うん、エフェクトをもう少し入れましょうというようなサウンドチェック。音のチェックをまずしますね。はい。

(中澤有美子)ほほう。

(安住紳一郎)それから、段階2。今度は『場あたり』というですね、そういう作業を行います。場あたりですね。これは、アーティストのみなさんがいろんな動きをします。この人は動きません。バックダンサーはこんな風に踊ります。そこには照明が当たりません。そこまで行くと画面に入りません。こんな衣装でやります。そのブローチはライトを反射しすぎるのでやめてくださいとか、そういう作業をするんですね。ええ。これが場あたりですね。段階2。

(中澤有美子)はい。うんうん。

(安住紳一郎)しかもさらに豆知識ですね。この場あたりを忙しいアーティストのみなさんに代わって行う専門のプロの方もいらっしゃいます。

(中澤有美子)そうなんですか。

(安住紳一郎)この人たちのことを『スタンドイン』と呼びますけども。要するにこう、その自分の担当しているアーティストの振り付けや歌うパート。どの部分を誰が歌うかなどを完全にコピーしている人たちが登場します。職人ですね。モーニング娘。のみなさんの専門の場あたりのスタンドインの方たちを見ると、びっくりしますよ。

(中澤有美子)はー!

(安住紳一郎)モーニング娘。のみなさんはとても忙しいので、ちょっとさすがにサウンドチェック、場あたりからはなかなか合流できないっていう時はですね、その場あたりの時に、モーニング娘。専門のスタンドインの人が来るんですよ。8人編成だったり、9人編成だったり。

(中澤有美子)へー。ちゃんと人数がいて。

(安住紳一郎)それで、『自分は○○の代わりです』っていう看板を胸からかけてですね、その人と全く同じ場所で、同じ振付で同じパートを歌うんですよね。なにかちょっとね、本物を見るよりも軽い驚きがありますよ。感動すら覚えます。

(中澤有美子)ああ、そうですかー。

(安住紳一郎)歌も踊りも完璧なんですけども、ちょっとなにかが足りないモーニング娘。ですから。ええ。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)そうなんですよ。それで全てが足りていたら、彼女たちがモーニング娘。なんです。

(中澤有美子)そうですね(笑)。

(安住紳一郎)ちょっとなにかが足りなかったために、スタンドインという下部組織にいるんですよ。

(中澤有美子)ふーん。年格好が一緒なんですか?

(安住紳一郎)そうなんですよ。身長がだいたい一緒で、だいたいカメラに写った時の雰囲気を見るので。その人の背格好で、その人の完璧なモノマネなんですよ。ええ。

(中澤有美子)年齢なんかも近かったりするんですか?

(安住紳一郎)年齢は近くない場合もあります。年齢は特に関係ないですからね。写りにね。

(中澤有美子)あ、まあそうですよね。へー。

(安住紳一郎)それから、よくやってしまうのは、スタンドインの人だろうなと思って緊張感なく挨拶したら、まだ化粧をしてない本人だった場合。これ、いちばん困るわけですね。

(中澤有美子)マズい(笑)。

(安住紳一郎)うん。『この人、背格好ぴったりだなー。すっごい職人肌のスタンドインだなあ』と思って。尊敬の眼差しで見てるわけですよ。『あー、ちょっと声の迫力は本人に負けるかな?でも、声質似てるしねー。はー、この人、時代が時代だったらこの人、スターだったんだろうなあ』とか思って。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)『あいとーあーす!あーいす!あーいす!ありあとあしたー!』って挨拶したら、『よろしくお願いします』って言って。『あ、よろしくお願いします』っつって。『安住さん、本人。ご本人です!』『ええーっ!?』っていう時、ありますけどね(笑)。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)そう。それぐらいスタンドインの人がすごいってことですよね。ええ。はい。長くなりましたね。段階3。今度、カメラリハーサルっていうのを行います。これが大変です。だいたい歌番組っていうのは5台から8台くらいのカメラがあるんですけども。どの部分をどのカメラが撮るのかが、もう事前に決まっております。カメラマンたちは手に楽譜を持ちながら、自分がどのパートの時にどの人をどの角度で撮るのかっていうのが決まっているわけですね。

(中澤有美子)ふーん。

(安住紳一郎)これはですね、私もちょっと初めて見た時には、衝撃を受けました。

(中澤有美子)そうですね。

(安住紳一郎)こちら側でアーティストが歌っている。その手前というか、カメラが撮っているスペースで、もう1組のアーティストがパフォーマンスを繰り広げている日のような、それは見事な群舞ですね。

(中澤有美子)ああ、そうなんですか。

(安住紳一郎)こう、他のカメラが撮っている時には、そのカメラには他のカメラとかカメラマンたちが映らないように、グッと下がるわけですね。で、さらにはそのお互いのカメラから出ているケーブルが絡まないように、そのケーブルを上にくぐったり下にくぐったりですね、ケーブルを遠回しにしたりですね。そういうのが事前に全て決められてるんですよ。その動き通りにみなさん、手に楽譜を持って、このパートはこっちだなと。3カメさんがグッと前に行ったから、2カメは手前だ。3カメさんのターリーランプが消えたら、今度は3カメ前だ。その間にクレーンが上。で、カメアシさんはそのケーブルを下に巻く。そのケーブルを3カメさんの頭の上に通して、右から左に。このカメラのアングルに被らないようにカメラの下をくぐるという。ええ。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)そして、あんまりスピードがつきすぎて移動すると危ないので、右足の裾の方で床を擦ってブレーキをかけるんですね。靴底でブレーキをかけるとキュッキュッキュッて音がするんで。ここの内側のふくらはぎのジーパンのようなところで、こうブレーキをかけながら、左から右に動いていくんですよ。スーッと。かっこいいですよ。

(中澤有美子)へー!

(安住紳一郎)すっごいですよ。ケーブルを上手に右左にかけかえて。左手に楽譜を持ってるんですよ。で、楽譜を見ながら、次の小節は4カメさんが来るからここだな!そしたら他のカメラマンがグッと下がってきて。それはそれはすごいですよ。

(中澤有美子)そういう風になってるんだー。

(安住紳一郎)で、クレーンカメラっていうのがありましてですね。そのクレーンというのが、要するにテコの原理になってますから。先端にカメラが付いていると、その反対側には重りが必要になるんですけども。下げる時には。で、上げる時にはその重りを外すんですけども。当然そのコンクリートブロックのような重りを乗せたり外したりしてたら音が出ますんで、そこは人間が重りになるんですよ。

(中澤有美子)へー。あ、私それはてっきり電動でなにかしてるのかと思っておりました。

(安住紳一郎)あ、電動タイプもあるんですけども。電動タイプよりもやっぱり叙情的な演出をするには人間のその滑らかな動きがいいんです。ええ。そのクレーンの重りをだから要するに人間がやってますから。2人ぐらいクレーンにぶら下がって。鉄棒状態になっているところから、グッと下げてくるんですよ。ウーン!っつって。ええ。かっこいいですよ。なかなか。ええ。

(中澤有美子)へー!

(安住紳一郎)歌番組を見る際、カメラ割りって言うんですけども。歌詞に合わせて、どのカメラがどの映像を撮るか?ということに関しては、非常にカメラマン、カメラウーマンたちがより良く歌のイメージが伝わるように研究してますんで。そのへんもぜひね、ご注目いただくとより楽しめるんじゃないかな?という風に思いますけども。

(中澤有美子)へー。

(安住紳一郎)だいたい歌詞の小節ごとにね、カメラが切り替わるんですよ。そんな、むやみやたらにカメラが切り替わっているわけじゃないんですよ。これを私が知った時は、家でもう大騒ぎしてました。ええ。で、そのうちわかるんですよ。『あ、ここで切り替わるだろうな』っていう感じが。音符の真ん中とかでかわることはないんですよ。

(中澤有美子)ああ。

(安住紳一郎)で、曲調がどんどん強くなる。クレッシェンドの時はたいてい、カメラはアップになるんですよ。で、ちょっと弱々しくなると、だいたいこう、非常に大きい、後ろのセットまで映りこむような大きい画になったりするんですよ。ええ。

(中澤有美子)そっかー。

(安住紳一郎)ぜひ、ご注目いただきたいなと思いますけどね。

(中澤有美子)本当ですねー。うん。

(安住紳一郎)長くなりました。それが終了しますと、直しと呼ばれる総点検が行われます。あそこがこうだった、ああじゃない、こうじゃない。それで、1回じゃあ通してやってみましょうということで、ランスルー。これが段階4。そしていよいよ本番で段階5。時間がない時はランスルーを飛ばして本番の工程に移る。その時は、特にテスト本番と呼んでいますけども。それでモニターチェックして収録したものを全員でチェックしてみて、間違いがなければこれを放送しましょうということになる。ということで、この繰り返しをするので、比較的時間がかかってしまうということですね。

(中澤有美子)そうなんですねー。そういうカメラの切り替えっていうのは編集とかをするのかと思ってましたけど。一度で全部決めてしまう?

(安住紳一郎)一度で全部決めるんですね。そうですね。だからちょっとカメラさんが1人ね、あっ!うっかりっていう感じになると、もうダメになってしまうという。

(中澤有美子)そうですかー。

(安住紳一郎)でもやっぱり22組の大物アーティストのみなさんが集まると、なんかちょっとやっぱり華やかで。もともと私、ミーハーな方ですから。いろんな人にちょっと会えてね。水谷豊さんとか、うん。よかったですね。谷村新司さんにもお会いできましたし。でもやっぱり、そういう風に考える人、多いみたいで。会社の中で、内勤のデスクをやってらっしゃる50才ぐらいの女性の方がいらっしゃるんですけど。よく廊下でくっちゃべってる人なんですけど。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)あんまりその、激しい勤務にはついてない人で。よく給湯室とかで羊羹みんなに配ったりする、名物のおばちゃんがいるんですけど。ええ。その人がその日、やたらとスタジオの前ですれ違うんですよ。で、その人は午前9時の午後3時勤務かな?ええ。パートタイムなんですよ。

(中澤有美子)はい。

(安住紳一郎)それで、いっつも3時くらいに帰るのに、もうスタジオの前で午後8時ぐらいになってるんですよ。それで、ずいぶん今日、遅くまでこの人いるなと思って。なんかちょっと怪しいなと思っていて。『珍しくないですか?こんな遅くまでいるの』って言ったらですね、『安住ちゃん、あたしね、J-Walkのファンなの』って言って、J-Walkの方も出てたんですよ。

(中澤有美子)ええ、そうでした。

(安住紳一郎)で、20年以来ぐらいの大ファンで。J-Walkの全国ツアーも北海道から九州まで全部のコンサート会場に足を運んだっていうぐらいの、大のJ-Walkファンで。『これからなんか、J-Walk来るんでしょ?』とか言ってて。当然その人は現場にあんまり来ない人なんで、ちょっとそのスタジオの前ですら、不慣れな感じが出ちゃってるんですよ。もう。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)『安住ちゃん、J-Walk見せてくんなーい?』とか言ってるわけですよ。それで、でもやっぱりちょっとね、緊張感ある現場ですから、『たぶん怒られると思いますよ。やめたほうがいいと思いますよ』って言うんだけども。『あたしさー、J-Walk見たいんだよねー』ってずっと言ってるんですよ。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)それで、『じゃあ本当に内緒ですけど』って。先ほど説明しましたけど。『カメリハぐらいまでいて、ランスルーと本番の時は外に出るぐらいだったら大丈夫だと思いますけど。静かに端っこの方でテレビモニター見ててくださいね』とか言って、『悪いねー、安住ちゃーん。ほんとに。申し訳なーい。恩に着るー』とか言って。すっごいのほほんとした感じの人なんですけども。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)そんでモニターの前で大人しく見てるなと思って。私はこっちのステージの方で作業をしてたんですけど。それで、J-Walkのみなさんがカメリハやってるんですよ。するとその、カメラリハーサルやっている映像を、テレビモニターでJ-Walkの事務所のお偉いさんたちが『ウチのJ-Walkの映り、どうだろう。かっこよく映ってるかな?キレイに全員映ってるかな?大丈夫かな?』っていうのをチェックしてるわけですよ。それで、ここは聞いた話なんだけれど、その事務所の偉いさんたちが、『いや、ちょっとあれじゃないか?ボーカルの中村の髪がちょっと、あれじゃないかな?ちょっともう少し、後ろに流した方がイメージ出るんじゃない?』とかこう言ってるわけなんですよね。

(中澤有美子)うん。

(安住紳一郎)『でもなんか、どうなんすかね?まあカメリハ、これで終わりですから。いいんじゃないですか?』とか言う、なんかそういう話になったらしいんだけど。その俺の知り合いのパートタイムのおばちゃんが、なんかそのお偉いさんの後ろでモニターを見てたんだけど。なんか我慢ができなくなっちゃったらしくて。自分のそのね、立場を考えず、のほほんとしたおばさんだから、『あの、すいません。中村さんやっぱりですね、髪を横に流した方がいいと思いますねー。やっぱりあの、前のめりになって歌うその横顔っていうのを楽しみにしてる人、多いと思うんですよー』って。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)言っちゃったらしいんですよ。ええ。で、なんかもうみんなが唖然としてるわけ。『誰?この人。何言ってんの、この人!?』って。もう、ちょっと不穏な空気になってるんですよ。でも、その人ぜんぜん。パートのおばちゃん、ぜんぜん気に臆さず、なんか『それからさー、中内さんの髪型、ボリュームちょっと足りないんじゃない?もう少しここ、上げた方がいいわよ。あと、知久さんのジャケット。なにあれ?ボタン留めなさい』とか言って。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)すっごい言ってるんですよ。でも、さすが20年来のファン。言ってることはね、全部的を射てたらしくて。で、事務所の人も、思っていたんだけど、自分たちもアーティストに言えないことを通りすがりのおばちゃんが言ったもんですから。『そ、そうですよね。あ、じゃあちょっと、そうします』みたいなことになって。で、周りの人たちはそのパートのおばちゃんに面食らってたんだけど。そのうち、『この人ってあれ?名前を知らないだけで、どっかの演出家じゃないの?』みたいな雰囲気になって。

(中澤有美子)うんうん。大事な方だっけ?っていう。ええ。

(安住紳一郎)で、もうみんなね、その人の言うことを聞きはじめてるの。現場が。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)で、『カメリハで帰ってくださいね』って言ったんですけど、もうその人いないとカメリハの次進まないみたいになっちゃってて。みんな、『あの、一応直してみたんですけど、どうですか?』みたいな。『いい!すっごくいいよー!すごくいいねー(拍手)』って言う。で、みんなもう、大物の演出家だと思っちゃってるから。『じゃあ、これで本番行ってもよろしいでしょうか?』『うん?本番?あ、そうなの?これからなの?あ、どうぞー。いいわいいわ、どうぞ』なんつって。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)そいで、J-Walkのみなさんが歌を歌って。それで、『はい、OKです。J-Walkのみなさん、ありがとうございましたー。はい。どうもありがとうございましたー』って言って。で、みんなそのおばちゃんのところに挨拶に来るんですよ。『ありがとうございました』って。『よかったですか?』なんて、事務所の人たちが聞いてるんですよ。

(中澤有美子)うーん(笑)。

(安住紳一郎)『いいわよー、本当によかったと思う。本当によかったー』なんて言って。それで、みなさん帰って。でも、スタッフの間で『あの人、誰なの?』っていう話になって。『なんか本番前に安住さんと話してましたけど。安住さん、知ってるんじゃないですか?』って言われて。それで、俺のところに来て、『あの演出家の方ってどちらの方ですか?』なんて聞かれて。『えっ?どの人?』『いや、あそこにいたおばさんですけど』『いや、あの人、内勤のパートさんだよ』って。

(中澤有美子)(爆笑)

(安住紳一郎)『ええっ!?パートさんなんですか!?J-Walkの事務所の方にすっごいこと言ってましたけど。でも、全体的にはすごくなんかみなさんも納得してたみたいなんで平気だったみたいですけど』って言って。『じゃあ、言わない方がいいですね』『ぜったい言わない方がいいよ』って。それで、話にちょっと終わりがあって。

(中澤有美子)うんうん(笑)。

(安住紳一郎)翌日、その4時間特別番組の視聴率が出たんですよ。で、グラフっていう、どの時にどれぐらい数字があったかっていうのが折れ線グラフになって出るんですけど。J-Walkのところが最高視聴率でズドーン!ってなってるんですよ。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)天井を飛び抜けたみたいなグラフになってて。瞬間で27ぐらいあるんですよ。ええ。それで、次の日、『あれ、J-Walk演出したの、誰?』って話になっていて。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)みんな、『女性の方が突然なんかスタジオに現れて、的確な指示を出して風のように去っていきましたけど』って。で、『ちゃんとお礼しなきゃダメだろ?誰だよ?誰だよ?』ってなってるんですよ。でも、パートの内勤さんなんだよね。その演出したの(笑)。

(中澤有美子)(笑)

(安住紳一郎)本当に。いま、スタッフルーム、『天才演出家現る』で大騒ぎになってるんですよ(笑)。誰もパートの内勤さんだとは言えなくて。でもやっぱり、ファンの方っていうのは本当によくわかっているから。

(中澤有美子)そうなんですねー。

(安住紳一郎)事務所の方、あるいはアーティスト本人を超えて、どういうシーンがいちばんファンの心情に訴えるか?っていうのをよくわかっているみたいですね。

(中澤有美子)ああ、本当にそうですねー。うん。

(安住紳一郎)びっくりしました。すごい方です。ええ。全くでも、そのパートの方は意にもとめず。普通に『安住ちゃーん、ありがとね。この間、J-Walk間近で見れてよかったー。このお煎餅、谷中のおいしい煎餅、あげるー』って言って。普通に仕事に戻ってましたけど。

(中澤有美子)ああ、そうなんですね(笑)。

(安住紳一郎)この人が天才演出家だよーって。

(中澤有美子)(爆笑)。ねえ。視聴率、すごかったことをお伝えしたんですか?

(安住紳一郎)いや、なんか言うとね、ちょっとあれかな?って思ったんで。そういうことなんです。この場を借りて、お礼申し上げます。本当にたくさんの人の手によって、ねえ。いい映像が撮れたらいいなって思いながら、みな作業をしていますので。ぜひ、テレビ番組、特別番組なども、注目してご覧いただければ幸いでございます。

(中澤有美子)そうですねー。

<書き起こしおわり>

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