吉田豪さんがニッポン放送『プチ鹿島・長野美郷GoodJobニッポン』で、想定外のインタビュー経験というお題で、元横綱・格闘家の北尾光司さん伝説を話していました。
(プチ鹿島)いままでの豪さんの自身の想定外のインタビュー経験っていうか。なんか、トラブルまではいかなくても・・・
(長野美郷)予想に反する答えが返ってきたインタビューの経験とかって、おありですか?
(吉田豪)よくありますよね。よくある話です。それにどこまで付き合うか?っていうのが仕事なんですけど。それで思い出すのが、またプロレスの話なんですけど。元横綱・双羽黒の北尾光司さんね。北尾さんという人がいたんですよ。
(鹿島・長野)はい。
(吉田豪)北尾さんはまあ、相撲時代から非常に変わった感じの人で。『こんなマズいちゃんこ食えるか!』っつって、おかみさんを蹴飛ばして相撲を辞めて、みたいな人なんですけど。そういうことをやってきた。
(プチ鹿島)当時、新人類横綱って言われてましたよね。
(吉田豪)そうなんですよ。相撲界で初めてマドンナとかシンディー・ローパーを聞いたっていう風に言われているような。
(プチ鹿島)そうですか。あと、相撲界で初めてパソコンを駆使できるっていう。
(吉田豪)そうなんです。パソコンとかワープロも使ったっていうね。
(プチ鹿島)変な話、当時千代の富士しかいなかったんで、優勝経験が・・・たしか、優勝してない。
(吉田豪)優勝しないまま横綱になっちゃったっていう問題にもなったっていう。
(プチ鹿島)だから、相撲協会かわいがりすぎだ、養殖横綱みたいな批判もありつつ。でも、大器なんですよね。
(吉田豪)で、家でもすごいお坊ちゃんですごされていたから、なにかあると『実家に帰ります』みたいな、大変な。で、その後現実からも、何度も問題を起こす人なんですけど。で、そんな人に僕が取材したわけですよ。僕、相当資料を集めて、学生時代の北尾さんの話とか、いろいろ読んだんですね。
(プチ鹿島)ええ。
(吉田豪)で、いじめられっ子だった話とかいろいろ全部。結構な記事が出てたんで。それを踏まえて、『北尾さんは学生時代、いじめられてたみたいですね』って言ったら、『なに言ってるんだよ?俺の頃っていうのはちょうどビーバップブームだから。俺、ヤンキーだから』って。あの、ビーバップ世代って言い張るんですけど、ビーバップ世代って僕とかなんですね。北尾さんはもうちょっと上だから、絶対世代違うんですね。
(長野美郷)(笑)
(プチ鹿島)そうですよ。だってあの人、『花のサンパチ組』って。昭和38年生まれですから。ビーバップじゃねーんだよ。
(吉田豪)そうです。ぜんぜんビーバップ世代じゃないんですよ。間違いなく。でも、『俺はビーバップ世代でヤンキーだった』って。いかにケンカが強かったか、みたいな話が始まる。ぜんぜんそれ、僕が聞いた話と違うんだけど、面白いから放っておこうって感じで。北尾武勇伝とかをいっぱい聞いたりして。
(プチ鹿島)それ、自分の知らないうちに自分の歴史を改ざんしてっちゃう、そういう人っていますけど。北尾さんもやっぱりそういう感じなんですかね?
想定外の答えしか返ってこない
(吉田豪)すごい変わった人で。想定外の答えしか返ってこないんですよ。あの人は。たとえば、ちょうどその頃はWARっていう団体とかに参戦してた時で。『プロレス界はいまのままじゃダメだ!』みたいに。ちょうどUFCとかああいうのが出てきた時で。危機感を持っていたんですよ。『いまのプロレス界は腐ってる。腐り始めてる!』みたいなことを言っていたんで。それで僕が言ったのが、『ナウシカで言うと、いま腐海が広まっているような状態ですかね?』って言ったら、あの人、モデルガンとかナイフとかいろいろ好きな、オタク的な趣味もあると言われてたんで、すごいうれしそうな笑顔して、僕に言ったのが『マニアックなことを言うね』っつって(笑)。
(鹿島・長野)(笑)
(吉田豪)ナウシカの話でマニアックって言われるっていう(笑)。日本を代表する監督の代表作をマニアックって。で、それがうれしかったみたいで。『じゃあ、俺は王蟲だ!王蟲宣言だ!』とかってすごいうれしそうに話してくれるんですね。完全に想定外の、そういう展開しかないんえすよ。あの人の話って。
(プチ鹿島)でも、たしかに言われてみれば相撲界でナウシカってしゃべる人、いなかったかもしれない。
(吉田豪)そう。だから相撲界ではっていうのが全部そうなんですよ。その時に印象的だったのが、北尾さんが話す『俺自慢』っていうのが想定外なんですよ。『俺ね、テレビとビデオをつなげられるんだよ』って言ってて(笑)。
(鹿島・長野)(爆笑)
(長野美郷)すごいですよ!
(吉田豪)『ほら、最近の奥さんとかって出来ないって言うじゃん?俺、できんだよ!』つって。だから、横綱とかはやらないんですよ。横綱とかがやらないことを、俺はやっているって言うんですけど、『あの・・・普通ですよ!』っていうの、喉元まで出かかったです。
(プチ鹿島)そっか。横綱、やらないですもんね。なんだったら、トイレの世話とかも弟子がするぐらいの。
(吉田豪)そんな中で、『俺はテレビとビデオをつなぐんだ』っていう自負がある。
(プチ鹿島)(笑)。そっか。北尾さん的には間違ったことは言ってない(笑)。
(吉田豪)間違ったことは言ってないんですけど、ただ横綱だった時は通用した話が、レスラーになったら普通ですからね。みんなやってますっていう。
(プチ鹿島)北尾伝説、面白いですね!
(吉田豪)北尾伝説、面白いですよ。僕、付き人だった人とかから聞いた話とかも全部好きですからね。
(プチ鹿島)やっぱり、ちょっとおかしい感じだったんですか?
(吉田豪)邪道・外道さんがWARの時に付き人みたいだった時に、宿舎で突然呼ばれるらしいんですよ。『おい、お前らいますぐ来てくれ!』って言われて。で、面倒くさいなって思って北尾さんの部屋に行ったら、誰もいないらしいんですよ。『横綱?横綱?』ってだんだん部屋の奥に入って行くと、北尾さんが隠れてて、モデルガンを持っていて、『バンバン!バン!』って言って、『お前ら、撃ったんだから、倒れろよ!』って(笑)。
(長野美郷)ええっ!?
(プチ鹿島)もう、子供なんだね。
(吉田豪)子供なんですよ。
(プチ鹿島)よく、少年の心を持ったまま大きくなった人って言いますけど、本当に北尾は・・・
(吉田豪)ある意味、近いのかもしれないですけど。まあ大変だった。
(プチ鹿島)しかもその、モデルガンっていうのが本物を感じて、ちょっと怖いですよね。モノはいいですから。だって。横綱が持っているものですから。
(吉田豪)というのが想定外ですかね。
(プチ鹿島)なるほどねー。
<書き起こしおわり>