マキタスポーツさんがTBSラジオ『東京ポッド許可局』の曲紹介コーナーでカシオペアの『ASAYAKE』を紹介。カシオペアのすごさと、すごすぎるが故に起きてしまう現象について話していました。
(サンキュータツオ)ここで1曲。今週はマキタ局員の選曲です。
(マキタスポーツ)1984年に僕はですね、エレキギターを買いました。で、その買ったギターがヤマハというメーカーのSGっていう。これは僕は、あるギタリストに憧れて。で、その人みたいになりたかったから、そのギターを買ったんですよ。
(サンキュータツオ)へー。
(マキタスポーツ)当時、5万円のすごく安いやつですね。シリーズでいういちばん安いやつが5万円のものだったんですけど。そのSGっていうギターを買ったんです。誰に憧れていたか?っていうと、カシオペアというバンドなんですね。野呂一生というギタリストがいたんですけど。彼がすごく僕は好きだったんですね。
(サンキュータツオ)へー!
(マキタスポーツ)で、当時僕はギターを弾き始めてですね、カシオペアの野呂一生みたくギターが弾けたらいいなとかって思って、ギターを弾き始めるんですけど。弾けば弾くほど、カシオペアっていうか野呂一生との距離があるんだっていうことを感じるぐらい、途方もないスーパーテクニシャンなんですよ。で、僕はギターを弾いたからこそ、具体的な距離が見えて、「この人はすごいんだ」っていうことがわかるわけですね。
(プチ鹿島)うん。
(マキタスポーツ)で、僕はもうカシオペアを……当時、中学生だったんですけど、学校を僕は休んで、中野サンプラザに年末のライブを見に行っていたぐらいなんですよ。
(サンキュータツオ)へー!
(マキタスポーツ)そのぐらい僕は大好きだったから、カシオペアっていうのはすごいんだって思っていたんですけど、世の中的には何の人たちかっていうと、だいたい知っていても、なんかのBGMの曲。「ああ、あれカシオペアなんだ」みたいな感じなんですよ。
(プチ鹿島)うんうん。たしかに。
(マキタスポーツ)いやいや、そんな扱いをされちゃ困るよ。めちゃくちゃすげー、もうすげー集団だったんですよ。テクニカルな、ものすごい集団で、世界的な人気もあってっていうことを説明しても理解されない。これ、ずいぶん前に許可局で、本当にはじめのはじめの頃に、「シルク・ドゥ・ソレイユ現象」って言ったじゃないですか。
(サンキュータツオ)『ドラリオン』がね。
(マキタスポーツ)『ドラリオン』っていうのを見に行った時に、すごすぎて、すごさがよくわからなくて。かえって、逆に言うと笑っちゃうと。っていうものに関して話しましたけど、カシオペアってザ・BGMなんですよね。で、すごいんですけど、何も感じないっていうところにまで到達してしまっている音楽だと思って。このカシオペアの代表曲を聞いてください。『ASAYAKE』という曲です。
カシオペア『ASAYAKE』
(マキタスポーツ)さあ、聞いていただきました。「ダンロップレディース2日目」みたいなのが出てくると思いますけども。
(サンキュータツオ)(笑)。たしかに、たしかに!
(プチ鹿島)「戸張捷です」。
(マキタスポーツ)そう。「ト阿玉が……」みたいな。
(プチ鹿島)(笑)
(マキタスポーツ)もう、日曜のゴルフの、我々にとってどうでもいい時間帯にやっているゴルフ番組とかの背景で流れていたりとか。
(プチ鹿島)さざ波が立たない感じですよね。感情のね。
(マキタスポーツ)あまりにもすごいことをやっているにもかかわらず、誰もそれに期待していないっていう。そういうBGMとして使われているというものを、僕は当時から不思議に思っていたんですよね。で、後に僕は自分の中で名称づけてですね、「0点の音楽」っていうことでコレクションしていくことになりまして。カシオペアを自分の中で、また新たな感触で発見していくことになるんです。「カシオペア、俺、あんなに感じていたけど、いま、これ何なんだよ?」っていう。
(プチ鹿島)(笑)
(マキタスポーツ)で、これ、それを経過すると爆笑できるものになっているんですよね。ただね、これ、フュージョンっていうジャンルなんですけど。フュージョンっていうジャンルはですね、本当にね、昔、流行っていたんですよ。たとえば、イケてる女子大生とかがカーステで聞いていた時代があったんですよ。こういうものを。
(プチ鹿島)うんうん。
(マキタスポーツ)で、それは自分の表明じゃないですか。おしゃれであることを表明するアイテムだった時代もあったんですよ。ところが、気がついたら「ダンロップレディース2日目」みたいなものになったりとかですよ。
(プチ鹿島)地方のCMの。
(マキタスポーツ)地方のCMの。
(サンキュータツオ)散々聞きましたよ。地方のCMで。百貨店のCM。
(マキタスポーツ)百貨店のCMとか、ラブホテルのCMの後ろで流れているとか。
(サンキュータツオ)環境映像みたいなのの後ろでね。
(マキタスポーツ)そうそうそう。あと、白い砂浜。
(サンキュータツオ)マキタさんが実際に「すげえ!」って思ったのは、ギターのテクニックって何? 速さなんですか? それとも、弾き方?
(マキタスポーツ)速さもそうですけど、フレーズもそうですし。あと、曲のセンスとか。あとね、僕は楽曲構成っていうのも実はですね、だから後にネタにしてますけど。「Aがあって、Bがあって、サビがあって……」みたいなことを言ってたじゃないですか。楽曲構成を僕、カシオペアから教えてもらったんですよ。
(サンキュータツオ)へー。
(マキタスポーツ)カシオペアっていうのは主題になっているところ。ジャズ的に言うと、いちばんサビにあたるようなものがちゃんとあって。Aがあって、Bがあって、サビがあって……って。サビの構成のままで、アドリブがどんどん進化していくっていう構成があるってことを教えてもらいました。
(サンキュータツオ)へー! 深いですね。
(マキタスポーツ)で、すごいんですけど、でもやっぱり、熱帯魚が水面にいる白い砂浜のバックで流れている音楽です(笑)。
(サンキュータツオ)100点の0点っていうことですね。
(マキタスポーツ)すごすぎてね。というのが、まあ80年代に流行っていたんですというお話でした。
<書き起こしおわり>
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