みうらじゅんさんが以前、TBSラジオ『ザ・トップ5』にゲスト出演された際の書き起こし。ジェーン・スーさん、小林悠さんと一緒に、勝手に『発言小町』の相談にのるというコーナーでした。
(小林悠)ではさっそく、今日も一方的に悩み相談にのるということで。第二位の『結婚相手を見つけるのは難しいかも・・・と言われた』。これを取り上げます。全文ご紹介しましょう。
『37歳独身の会社員女性です。どうしても結婚したいと思っていて婚活中ですがなかなか上手く行きません。既婚の友人にアドバイスを求めたところ、何度も「聞かれたから言うんだからね」と念押しされてアドバイスをもらいました。友人からは、「◯◯(相談者の名前)は私の友達の中でも心の中は1番優しくいい人だと思うけど、それを表現するのがとても下手。そのあたりを変えないとちょっと結婚相手を見つけるのは難しいかも」と言われました。こんな抽象的なこと言われてもよくわからないので、具体的なところを聞いたところ、このようなことを言われました。
最近気になった私の行動。
1:飲食店で年配の女性店員さんのことを、おばさーん!と大声で呼ぶ
2:デパートの物産展で買いもしないのに試食のラーメンをおかわりする
3:消費者金融に勤めている知り合いに、「アンタは高利貸しのイヤな雰囲気がただよっている。気をつけたほうがいい」と直接本人に言った。
4:先日一緒に行った旅行の手配は全て私(友人)任せ。私が勝手に用意したんだから別にいいんだけど、列車で飲んだり食べたりするのも私が2人分用意したので、ちょっとしたお返しがあってもいいかなと思った。「いつもいろいろ買ってきてくれて、アンタは気が利くねー」と言ってくれるのは嬉しいけど、そう思ってるんだったら真似してもいいのになと思った
5:取引先の方に何度か男性を紹介してもらっているようだけど、結果報告もしておらず、お礼も全くしていないのはどうなのか?
友人が言うには、相手がどう思うか?考えた行動ができていない気がするとのことでした。私は自分が気が利くとは思っていませんが、別に問題があるとまでは思っていません。私の行動はおかしいのでしょうか?』
(みうらじゅん)うーん・・・優しくないよね。この人、ちっとも。
(ジェーン・スー)(笑)
(小林悠)たしかに!
(みうら)優しくないからだよ。これは。
(小林悠)あの、思いやりというか、なんとなくグサッとくることを平気で言っちゃう人なのかな?と思いましたけど。
(みうら)そういう人は優しくないですよ。やっぱりね。
(小林悠)そっかー。この子は、お友達はフォローで『心の中は』・・・
(みうら)『心の中は』って言ってるんだよね。そこですよね。ポイントはね。
(ジェーン)なんかね、本当のこと言った時って、『◯◯だけど・・・』の後に真実を言いますよね。
(みうら)『いい意味で・・・』とか言うのは、たいがい言いたいことと違ってますからね。
(小林悠)私、印象的だったのがみうらじゅんさんの『マイ仏教』というね、新書を読んだんです。それがすごく印象的で。飲み会とかでも、『俺はこう思うんだけど。でもさー・・・』っていうのはダメだというようなことをみうらさん、おっしゃってましたよね。究極の、『僕滅運動』。
『僕滅運動』
(みうら)『僕』を滅するやつね。
(小林悠)自分を滅する。『僕』を滅する僕滅運動。これが大事なんだ。それ自身が人生の修行なんだってことをおっしゃっていて。あれ、非常にね、全ての人間に当てはまるなと思ったんです。みうらさん。
(みうら)ああ、もうね、みんな油断してますよ。油断しすぎて飲みに行ったりしてるから、よくないと思うんですよね。油断してはいけないんですよね、やっぱりね。
(小林悠)というのは?
(みうら)やっぱり気に入られるように生きていかないと。人に。そう思って生きていかないと、自分だけが楽しいとか、自然体とか、よくないじゃないですか。自然体なんて。やっぱり不自然体でいかないとダメですよね。人はね。『不自然だなー、あの人!』っていう人って、ものすごくがんばってるんですよ。不自然なように見せて。がんばっているわけですから。自然体ってがんばってない人のことですからね。なにも。
(ジェーン)たしかにね。ありのままの私、とかってね。ナンボのもんじゃい!って話、ありますもんね。
(みうら)ウチのお袋がよく、メシ時におならをするんですよ。
(ジェーン・小林)(笑)
(みうら)で、聞いてもいないのに、『腸が悪いから、仕方ないじゃない!』って言うんだけど。だったら、しないでほしいんだよね。そういうことを言う人ってね、やっぱり自然体なんですよ。だから、よくないなと思いますけど。
(小林悠)やっぱり人間同士、人と一緒に生きていくわけだから、自分がどうこうよりも人がどう思うか?ってのを考えてあげることが・・・
(みうら)好かれるにはね。それはそうですよね。
(ジェーン)なかなか難しいですけどね。でもやんなきゃいけないところでは1番あって。それやんないと、すごく寂しくなっちゃいますからね。
(みうら)それはありますね。
(ジェーン)寂しさが人を1番おかしくさせるっていうね。毎回、発言小町にくる人たちが必ずこうやって言いながら、『私はおかしくない』っていうの、最後に一言つけるんですよ。この人たち。
(みうら)男同士ってすっごい不自然体で付き合ってるんですよ。久しぶりに会うと、敬語とか使ったりして。二軒目ぐらい行かないと解けなかったりするんですよ、俺。だからやっぱり、そう思われたいとかって、親友だったりすると、やっぱり不自然でいるんですよ。がんばって。その人に気に入られたい自分でいたいから。自分なんてどうでもいいから。その人を好きなんだから、その人に気に入られればいいんだけど。『俺が』が出ると面倒くさいですよね。そんなの別に好きじゃないんじゃないかな?って思いますけどね。相手のことを。
(小林悠)これ、究極的には愛情ですよね。本当にね。本当にその人のことを思っているかどうか?っていうことなのかな?って思いますけど。
(みうら)紹介された人だって、好きになる気がないもん。この人。
(ジェーン)たしかに。
(みうら)合わせてくれるんだと思ってるからじゃないの?やっぱり、好きになれば好きになれるよ。ちゃんと。やっぱり好きっていう回路がないんだよね。あんまり。
(ジェーン)結構ね、恋愛関係の相談だったりっていうのはあって。毎回なんか、どう言って伝えたら・・・別に相談されてないんですけど。この人たちに。勝手に相談にのっているだけなんですが、どう伝えたらいいんだろう?ものすごくボタンのかけ違いをしてることをっていう。自分のことしか考えていない思考回路の人が多いですよね。
(小林悠)まあその、みうらさんの言っている僕滅運動ですよね。どうやって人を喜ばせられるか?っていうか。人に気を使って生きることもある程度必要だよってところは、特に今の若い人はね、必要な概念なのかな?って思ったり。
(みうら)結婚したりっていうのも、結局比較してるから。人と。これはね、比較三原則っていうやつで。
(小林悠)(笑)。比較三原則。
『比較三原則』
(みうら)過去の自分と、親と、友達・知り合い。この3つと比較しなかったら、ものすごく楽なんだけど。比較しちゃうんですよね。でも、そう思って生きてると、ちょっとぐらいマシだと思うんだけどね。比較するから寂しかったり。なんでもそうじゃないですか?
(小林悠)そうなんですよ。あの人はあれを持ってるのに、どうして私は違うんだろう?とか。あの人の旦那さん、すごくお金持ちそうだけど・・・とかね。
(みうら)ねえ。幸せっていうのも、比較で生まれてるから。あんなもんは実体がないから。誰々よりも幸せと思って感じることだろうからね。幸せってね。
(ジェーン)ああ、なるほど。比較があって。
(みうら)ボーッとね、いたら幸せって思わないと思いますよ。
(ジェーン)前にどこかで、幸せな時ほど気を引き締めろっていう。おっしゃってましたよね?
(みうら)そうですよね。その、不安、不安、不安で安定ってたまに来るだけで。全体的には不安だから。
(ジェーン)たしかにたしかに。
(みうら)だからそれを、『不安タスティック』っていう状態で。楽しんでいくもんじゃないかと。『出た!不安タスティック!』って不安な時に言えば、ちょっとはマシだと思うけどね。言えたら、もう大丈夫ですよ。
(小林悠)なるほど!
(ジェーン)とにかく口に出す。
(みうら)口に出して、頭をもういっぺん、自分に洗脳させればいいんだよね。脳って意外と都合よく生きるから。何回も言ってると、なんかそんなような気にさせること、できるような気がするんだけどね。
(小林悠)ああ、ただの不安じゃなくて、不安タスティック!な。
(みうら)そう。脳は『なに言ってんだ?』って初め言うけど、何回も言ってると、もう呆れると思うんだけどな。
(小林悠)たしかに。
(ジェーン)婚活うまく行かなくて、『来たよ、不安タスティック!』っていう。この人はそのぐらいの意気込みでまず行って、そして僕滅をしていくと。そして自分の過去と、親と・・・親ってすごく大事ですよね。親と比べないって。あと友達と比べない。比較三原則。
(みうら)本当に結婚したいのかどうか?ですよね。人が好きになったら結婚したでいいけどね。ならないんだったら、しなかった方が楽なんじゃないかなと思うけどね。
(ジェーン)順番が逆な気がしますよね。
(小林悠)無理やり結婚したいから、無理やり好きな人を見つけに行こうっていうのもね。ちょっと違うと思ったり。
(ジェーン)結局それやると、減点法になるじゃないですか。自分を軸にして、自分がゼロ軸で。そっからこの人は、ここはプラス、ここはマイナスって。絶対減点の方が多くなるから。そうするとね、いつまでたっても1人ですよね。だからみうらさんの考える、『いい女』ってどんな感じですか?
(小林悠)あ、気になる!
(みうら)都合がいい人がいいですよね。
(ジェーン)あー!なるほどなるほど。深いですね。
(みうら)みんな都合がよかったらいいんですよ。他人に。それが基本じゃないですか。都合悪い人って、付き合いにくいじゃないですか。都合いい人とかってなんかマイナスみたいだけど、友達だって都合いいからいいんですよ。だから、人の都合がいいようになりたいと思うもん。やっぱり。好きな人だったら。
(小林悠)これも一種の僕滅ですね。
(ジェーン)相手の都合に合わせる。
(みうら)うん。あんまりしたくないことでも、相手が好きだったらしてみるのが、都合に合わせてるだけだから。それでいいんじゃないかな?と思うんですけどね。
(ジェーン)自分の都合ばっかり考えてますからね。
(みうら)自分の都合はもう、いらないですよね。
(ジェーン)人の都合に合わせる。
(小林悠)みうらさんの話を聞いてると、なんか一種宗教論みたいな感じになってきて。一種なんだろう?かなり・・・
(みうら)いやいや、難しいからさ。宗教の話って。でもそういう、僕滅とか言ってると、ちょっとおかしいから。おかしいと思うところから入らないと、やっぱりしんどいじゃないですか。悩みなんて。どうせ、いつか死ぬんだもん。ねえ?いつか死ぬっていう前提でもの考えるのと考えないのは、ちょっと違うような気がするんですけどね。終わりがあるんだもん。
(小林悠)そう。もうその前提で生きてらっしゃるんですか?
(みうら)そう。それの前提ですると、ワクワクするじゃないですか。
(ジェーン)生まれたら、あと余生っていうのがすごい私、衝撃的でしたね。
(みうら)いや、そりゃそうでしょう。カウントダウンですからね。
(ジェーン)おっしゃるとおりですよね。
『グレート余生』
(みうら)でもそこに、『グレート余生』ってつけると、なんか高揚するんだよね。脱走より、大脱走の方がかっこいいじゃないですか?『グレート・エスケープ』だったから。グレート余生っていうと、なんか調子いい感じするけどね。
(小林悠)たしかに。
(みうら)言葉に騙されてるから。騙し返せばどうかな?って思うんだ。
(ジェーン)もう自分の雑誌の表紙に、どんどんキャッチをつけていくような感じで。
(みうら)そうそう。そうですそうです。
(ジェーン)『さあ、春がきた!グレート余生!』みたいな。
(小林悠)(笑)。『ピンクだ!グレート余生!』みたいな感じで。
(みうら)で、『いくつですか?』って聞かれた時も、『小学52年生!』とか。それだけで、この人とはこの話しないでおこう・・・と思うもん。
(ジェーン)たしかに。それだ!
(小林悠)一種の生き方上手ですよ。こういう風に考えることが。
(みうら)楽しく考えた方がいいと思うんですよね。暗く考えると、ロクなことないですよ。
(小林悠)すごいこれ、いいアドバイスになったんじゃないですか?勝手に相談のりましたが。
(みうら)勝手にだったもんね。すんません。
(小林悠)発言小町先週のアクセスランキングトップ5から、第二位。『結婚相手を見つけるのは難しいかも?と言われました』、これをご紹介しました。
<書き起こしおわり>