東京ポッド許可局 『上京論』書き起こし

東京ポッド許可局 『有吉横綱』論 書き起こし 東京ポッド許可局

東京ポッド許可局『上京論』の書き起こしです。地方出身のマキタスポーツさん、プチ鹿島さんに東京生まれのサンキュータツオさんが素朴な疑問をぶつけ、地方から見た東京や地方の現実を語っていきます。

(ナレーション)ここは東京のはずれにある事務所、東京ポッド許可局。例によって暇を持て余した局員たち。今日もおしゃべりが止まらないようです。3人が語らっているのは『上京』論。一体どんな話が飛び出すのやら。ちょっとのぞいてみましょう。

(サンキュータツオ)あの、僕ね、東京生まれ東京育ちなわけですよ。もう30年以上いて、本当につい最近まで、地方から東京に出てきてる人たちの重さというか、心意気というか、決意みたいなものっていうのを、あまり感じてこなかったんですよね。

(プチ鹿島)マジで?分かんないもんかい?やっぱり。

(サンキュータツオ)いや、大学入学みたいなのにかこつけて出てきて、そのまま東京にいるみたいなパターンの人が多かったので。ただ、意外と18で高校卒業して東京出てくるとか、そういう人たちもいるじゃないですか。お二人もね、マキタさん山梨で鹿島さん長野でしょ?意外とこう、地方から東京出てきた人たちも、この世の中には多いと思いますし、また地元に帰った人ってのもいると思うし。

(プチ鹿島)そうだね。

(サンキュータツオ)あと、僕いままで考えたことなかったんですけど、東京に出ようか出まいか迷って、地元に残っている人っていうのもいるわけじゃないですか。これ、どうなんですかね?地方の中で東京出る人ってどういう人種なんですか?

(マキタスポーツ)漠然としたイメージを言っていい?東京って、土地じゃない気がする。土地よりも『道』みたいな感じ。

(プチ鹿島)道。

(マキタスポーツ)通り道。みたいなイメージっていうんですか?たまさかそこにステイしてるってだけの話であって、なんか東京で生まれ育った人たちもあなたみたいにいるかもしれないけど、もう土地とかそういうネイティブなものとかじゃない。

(サンキュータツオ)あ、最終的には老後は地元に戻る的な?

(マキタスポーツ)戻るかもしれないし。別にここは何かを演じている、たまさか集合している、何かもっと本当に上位概念というか・・・

(サンキュータツオ)『劇団東京』ってこと?

(マキタスポーツ)うん。みたいな感じであって、別に住むところでもないし、次元がちょっと違う場所のような気がする。これは。

(サンキュータツオ)鹿島さんはどうですか?

(プチ鹿島)まあ、『地方の時代』って最近よく言いますよね。それこそこの間のAKBの選挙でも、九州に地盤がある、指原さんですか?あの人が優勝・・・優勝っていうか、1位になったじゃないですか。

(サンキュータツオ)薄いなー!世界一薄いAKB評ですよ。『優勝』って。

(プチ鹿島)優勝したじゃないですか。で、『地方すげー!』みたいな感じになるけど、俺、『いやいやいやいや!』って思ったんですね。だって、『あまちゃん』見てくださいよ。あまちゃんの話で言いますけど、同じ頃のあまちゃんで橋本愛演じる足立ユイですよね。もう田舎から東京行きたくて行きたくてしょうがいない。『行きてー!』って毎日泣き叫んでたじゃないですか。あの頃。

(サンキュータツオ)でもさ、橋本愛はあの中で、ユイちゃんは一部の子じゃん。あの学校の中でも。ああいう上昇志向あるのって。

(プチ鹿島)清々しいほどあるよ。

(サンキュータツオ)俺だからそう考えたら、東京出てくる人って地方ではマイノリティーなんですか?マジョリティーなんですか?どっちですか?

(マキタスポーツ)いや、マイノリティーだと思うけどな。あの、地元の感じで言うと、俺の生まれ育った環境で言うと、東京に出てきた人はほとんどが山梨帰ってる。

(サンキュータツオ)マジで!?

(プチ鹿島)あと意外と最初からメジャー、いわゆるクラスの中で上位の人はもう東京出るまでもなく、そこでもうスターですから、そのまま残っているパターンありますよね。

(サンキュータツオ)そうなんだ!

(マキタスポーツ)そうそう。

(プチ鹿島)むしろ、『桐島(、部活やめるってよ。)』でいうあの映画部みたいな、『いつかコノヤロウ!』みたいなのが東京行って清算してデビューするみたいな考え方は、少なくとも僕らの時代からはある。まあ、もっと前から当然あったと思うんですけど。ありましたよね。

(サンキュータツオ)えっ、じゃあどうなんですか?地方の中では『あいつ、東京出るんだって』みたいな感じあるわけ?やっぱり。『うわっ、ダサッ!』みたいな。

(マキタスポーツ)上京物語?上京物語は昔はあったと思うんですけどね。やっぱり。俺も、『東京行くんだって?』みたいなこと、言われたもん。

(サンキュータツオ)(笑)マジで!?

(マキタスポーツ)うん。で、俺、見送られたしね。

(サンキュータツオ)嘘!?重いじゃん!

(プチ鹿島)だって本当に『東京行く・一旗揚げる』ってセットになってて。かなり恥ずかしい言葉ですけど。そういう言葉ってあったじゃないですか。だから本当にメジャーリーグ行くじゃないですけど、必ず自分が何かやりたいことがあったら、じゃあ1回東京に行かなきゃいけないみたいな、そういう考え方ってありましたよ。

(サンキュータツオ)いや、だからさ、何ていうの?この業界、許可局業界含め、やっぱり地方から出てきてる人たちの何だろう?ガツガツ感っていうのが、何なんだろう?と思ってたら、やっぱりある程度選抜されて来てる人たちなんだなっていうのをね。

(プチ鹿島)選抜・・・むしろ、こぼれたものが来てるのかも。

(サンキュータツオ)分かんないけど、ある程度の、僕がずっと東京いた時っていうのは、多くの人たちが18ぐらい、その手前とかに受験・・・大学行くか行かないか?っていう選択とかね、そういうことは考えたわけです。あるいはもっと前に、高校受験。どういう学校行くか?とか、その前に中学受験っていうのも僕らありましたけど。そう考えると、それと同じレベルで東京に出る・出ないっていう決断をする機会があるわけだよね。

(マキタスポーツ)うん。

(サンキュータツオ)18で東京出るか・出ないか。あるいは22で、大学卒業して東京出るか・出ないか。東京出て、地元に帰るか・帰らないかって決断もずっとあるわけじゃん。それ、かなりストレスだなって思ったんだけど。

(マキタ・鹿島)ストレスですよ。

(サンキュータツオ)(笑)そうなんだ。マジで!?あ、そうだったんだ。

(マキタスポーツ)タツオはアイデンティティのことも含んで言ってると思うんですよ。だから1個の自分で今、統一している感じがあるじゃん。タツオは。

(サンキュータツオ)1個の自分って?

(マキタスポーツ)だから、東京で生まれ育った自分は1つでしょ?

(サンキュータツオ)うん。

(マキタスポーツ)そのまま地続きでつながってるでしょ?俺、そうじゃない。

(サンキュータツオ)どういうこと?

(マキタスポーツ)だから俺、山梨時代の自分と東京時代の自分って違うもん。

(サンキュータツオ)マジで!?

(マキタスポーツ)うん。生まれ変わってる。

(プチ鹿島)あのね、それ武者修行幻想があるんです。やっぱり。新人・若手の頃、地元で育ってプロレスラーとかね、2年3年たてば海外武者修行に行って、3-4年たったらもう見違えるほどたくましくなって、スターとなって凱旋帰国する。それのちっちゃい版ですよ。僕らが夢見てたのって。あの、地元では冴えない、クラスの中心人物はスターいますけど、それとは別で『自分は東京とか行ってがんばっていつか凱旋できたらいいな』みたいな。中くらいのところにいるからこそ、抱く夢ってありましたよ。だからトップのヤツは行かなかったですね。東京に。

(サンキュータツオ)マジで!?

(プチ鹿島)だってもうそこにコミュニティーがあるんだから。自分を中心とした。

(マキタスポーツ)だから原始SNSがあるんですよ。ヤンキーソーシャル・ネットワークみたいなのがあるし。

(サンキュータツオ)でもさ、何だろう?たとえば山梨で言うと、じゃあ何?山梨で一番いい高校行って、山梨大学か何か行くんですか?国立の。

(マキタスポーツ)まあ、ナシ大にも行きましょうね。

(サンキュータツオ)『ナシ大』っていうんだ。で、ナシ大出て、地元の銀行か何か勤めたらもう・・・

(マキタスポーツ)そうそう。県庁です。

(サンキュータツオ)県庁?

(マキタスポーツ)県庁とYBSです。マスコミか県庁です。

(サンキュータツオ)あ、それがもう・・・

(マキタスポーツ)それがもう天守閣でお殿様。

(プチ鹿島)しかも親がまたそういう、偉い代々だったら、そういうしがらみもあるわけじゃないですか。わざわざ都会出て、何もしなくなっていいじゃないですか。そこで。

(サンキュータツオ)そうなんだね。

(マキタスポーツ)山梨の俺の地元のアガリはもう、そこ。そこに就職さえしてくれたら、親も安心だし。実際に、武士なんですよ。

(サンキュータツオ)あー、なるほどね。

(マキタスポーツ)そういうことなんですよ。あとは、自分で独立して。ヤンキーだったヤツとかは自分で商売を始めたりとかして。で、昔なんかそういうヤンキーで、ある一定の人数を束ねてたようなヤツとかは、別に東京とか出てかないで、地元をそうやって治める。消防団とかやりながら。

(サンキュータツオ)前ね、たとえばマキタさんの地元で親が『車買ってやるからこっち残れ』みたいな、そういう交換条件的なものがあるっつって。俺、笑い話かと思ったら、かなり本気だね。

(マキタスポーツ)ザラです。ザラ。

(サンキュータツオ)(笑)マジで!?

(マキタスポーツ)今日のこの問答、何?

(サンキュータツオ)ごめんごめん。すげー、これだから全国ネットなんで、今日聞いてる人、地方の人も多いわけじゃないですか。だからその中で東京出ようと思って東京出て来たことのある人もいるだろうし、ずっと地方に残ってる人もいると思うんですけど。

(プチ鹿島)ま、もちろんね、音楽とかお笑いにしろ、そこに行くしかないものって、東京にあるから。それとはまた切り離して、でもやっぱり東京に行って変身するんだ!みたいな変身願望みたいなものは、持たざるものだったからこそあったのは確かです。

(サンキュータツオ)え、やっぱり東京出て来る人って、みんな変身してるんですか?ある程度。

(マキタスポーツ)だって、方言があるからね。

(サンキュータツオ)そうか!使っている言葉がもう違うか。お芝居だ。

(マキタスポーツ)『標準語』っていうものを、架空の標準語っていうものをとりあえず使うわけじゃない。

(サンキュータツオ)劇団東京だ。本当に。

(マキタスポーツ)うん。だから俺はものすごく確実に演じたよ。で、演じることが最初出来きらなかったから、俺つまずいて唇の皮剥いて、部屋で半年間ずっと風呂入らず過ごした・・・

(サンキュータツオ)マキタさん、1回山梨帰ったよね?

(マキタスポーツ)一旦ね。再上京するためにね。もう1回劇団受け直したかったの。東京っていう劇団を。

(プチ鹿島)さっきね、冒頭で僕、『地方の時代』って言って。僕だから、信じてないんです。っていうのは、あれは80年代。89年とかかな?8年に、南海ホークスっていうのが買収されたんです。ダイエーに。当時の。で、当時の中内(功)さんに記者会見で『これからは地方の時代です』ってスパッ!っとカッコいいこと。俺、地方出身者ですから、『あ、いいこと言うな』って。普段野球に興味のないウチの母親も『そうだ!』みたいなことを言ってるわけ。だけど、あれから別に東京中心は変わってないじゃないですか。それを受けてこの間、博多のあの人が優勝したでしょ?AKBで。

(サンキュータツオ)だから指原ね。優勝じゃないけどね。

(プチ鹿島)でもあの人は1回東京出てきてるわけじゃない。で、それで何かあって戻って、その同情も含めてがんばったわけでしょ?やっぱりそれは東京からのUターンじゃないですか。ある意味。

(サンキュータツオ)なるほどね。

(プチ鹿島)東京を背負って、触れてるわけじゃん。最初から博多・福岡オンリーで育って、それが全国制覇したわけじゃないじゃないですか。だからそこらへん、『地方の時代だ』っていうのは懐疑的なんです。だからこそ、『東京行きてー!』って騒いでる、ドラマの中ですけど、橋本愛の方が僕はシンパシー持てる。普通だなっていうのは。

(サンキュータツオ)その、どうなんでしょうか?中学・高校生ぐらいの時ですかね?『俺、東京に行く!』って天真爛漫に言える人って相当珍しくないですか?

(マキタスポーツ)あんまりそういうこと言う気分ではなかったけど、俺はそういうメラメラしたものはあったよ。言うのは恥ずかしい。そんなドラマみたいなことは言いたくないって思ってたけど。

(サンキュータツオ)やっぱりちょっと恥ずかしい。改めて言うのは恥ずかしいこと。

(マキタスポーツ)恥ずかしいことだったです。うん。

(サンキュータツオ)で、わざわざさ、東京に家賃を払って住むわけでしょ?したらずっと緊張状態じゃん。

(マキタスポーツ)そうですよ。

(サンキュータツオ)えっ、そんなのさ、2人から感じなかったんだけど。マキタさんとか。

(マキタスポーツ)そりゃあもう、見せないように俺ら演じてるからですよ。

(サンキュータツオ)(笑)嘘!?

(プチ鹿島)演じてるんですよ。だから前も言ったでしょ?海外旅行とか帰ってくると、東京・・・『あれ?これ本当に俺が帰るべき場所なんだろうか?迷う』ってあったじゃないですか。いまだに僕、旅行から帰ってくると東京とかになると、『ああ、ちょっとネジ締め直さなきゃな』的なものはありましたよ。

(サンキュータツオ)やっぱり緊張状態。

(プチ鹿島)あります。戻る感じはあります。

(サンキュータツオ)うわっ、俺あの新宿駅とかものすごい落ち着きますよ。旅行から帰って来たら。

(プチ鹿島)ああ・・・だからダメなんだよ。

(サンキュータツオ)ダメって言うな!

(マキタ・鹿島)(笑)

(プチ鹿島)もっとピリッとした方がいいよ。その東京人特有の・・・

(サンキュータツオ)『だからダメなんだ』って何だよ?基本、ダメっていう感じじゃん(笑)。

(プチ鹿島)そのナチュラルボーン・・・もっとピリッとした方がいいな。

(サンキュータツオ)ちゃんとしゃべって。

(マキタスポーツ)やっぱり全然俺だから前から思うんですよ。タツオだけじゃなくて、東京生まれで東京育ちで、何か電車通学とかしてたヤツって、当たり前にしてるじゃん。

(サンキュータツオ)俺、だって地方の人が車なくちゃ生きていけない!っていうのを30ぐらいで知ったもん。

(マキタスポーツ)で、東京の人たちって全然車持ってなくても生活してるじゃん。で、お前って大学まで渋谷とか行ったことなかったろ?

(サンキュータツオ)なかった!20歳まで渋谷行ったことなかった。

(マキタスポーツ)(笑)っていう感じとか、もう次元が違いすぎてお話出来ません!って感じですよ。そんな人。だって、俺らさ。俺なんか地元山梨市ってところなんだけど、もう電車乗り過ごしたら40分くらい電車こねーんだよ。

(サンキュータツオ)(笑)

(マキタスポーツ)で、それから俺、思い切って、っていうか1ヶ月ぐらい前から『甲府いくぞ!』と思いながら甲府に行くわけですよ。そんな人がね・・・

(サンキュータツオ)いや、俺にとって渋谷はもう甲府なわけ。行く必要がないんだもん。

(マキタスポーツ)でも、違うんですよ。いま言った、『行く必要がない』って選択をしてるんですよ。俺は、遊ぶためだったら甲府に行かなくちゃいけないんだ!とか、じゃないと本当に満たされない自分がいるから行くし。で、まださらにその東側に行けばね、もっと外国みたいな東京っていうものが本当にあるんだって。天竺じゃないけど、それを目指すんだっていう意識でもって行くわけだから。別に『選択』とかじゃないわけですよ。一本の道筋がそっちの方に向かってあって、光明がそっちの方にさしてるっていうイメージがあるんですよ。別にそれ、選択じゃないもん。

(サンキュータツオ)俺、でももし地方に生まれてたらものすごいコンプレックスになってるかもしれない。だったら。

(マキタスポーツ)うん。持って当然ですよ。

(プチ鹿島)だって恥ずかしいですよ。東京に行けば何とかなるっていう。自分に軸があるわけじゃないですよ。だから。東京に行けば変われるであろう・・・

(サンキュータツオ)俺がだから大学に行けば彼女が出来るって思ってたのと一緒ですね。

(プチ鹿島)そういうことだね。

(サンキュータツオ)愚かな思い込みですよね。あ、そういうことが、じゃあマキタさんは東京に出て何とかなると思って、しかも大学に行けば何とかなるって思って、どうにもならなかったと。

(マキタスポーツ)どうにもならなかった。だから、本当に何もしてくれなかったから。周りも。『うわーっ!』って思ったよね。『どうする?どうする?』って思いながら。

(サンキュータツオ)やっぱり常に『どうする?どうする?』問題があるんだね。

(マキタスポーツ)ありますよ。これ、こうやって死んでくんだって思って。何度も思ったことあるもん。

(プチ鹿島)あと、僕の悪い癖は東京にあれだけメラメラと野心をもって出てきたのに、いざ住み始めると落ち着いちゃう。そういう環境に適応しちゃうヘンなところがあって。住めば都になっちゃうんですよね。これ、何の意味もかけてないですよ。そういうのがあって、なんか・・・巨人に入れば落ち着くみたいなそういう選手、いるでしょ?『入ってからが問題なんだよ、お前!』って言いたいんだけど。

(マキタスポーツ)でもね、俺がんばってるっていう問題の話で言うけど、俺東京に出てる自分ががんばってるっていう意識はもうとっくに無いんだよ。で、もうそういう感じに天から、俺ある種の演技性人格障害じゃないけど、完全になってる。だから、山梨に俺帰ると、そのスイッチをたとえば田舎の人だった自分に戻すまでの時間がちょっとかかるんだよ。

(サンキュータツオ)あー。

(マキタスポーツ)で、それに関してむしりそっちの方が無理があったりとかするって感じになってる。

(マキタスポーツ)俺、だから母親が奈良の人なんだよね。で、母親の実家に戻ると母親がすごい奈良弁になってるわけ。それを見て子供の時、衝撃を受けて。はあ!?って思ったんだけど。やっぱり時間をかけて1日ぐらいおいて、なんか関西弁になって。『あれ!?お母さん、こんな言葉しゃべってなかった。東京で』みたいな。それはやっぱり東京人格を帯びてたの?

(プチ鹿島)戦ってたんですよ。

(マキタスポーツ)これ、全然違うことですよ。あなた。なんかよく分からない標準語っていうものを1個しか操ることで。それが全国いちばん通じるんだよね。あなたが使ってる言葉は。俺、通じないんだよ。通じなかったんだもん。

(サンキュータツオ)友達で帰った人とかは、なんで帰ったんですか?

(マキタスポーツ)やっぱり『住むところじゃねーな』っつって。

(プチ鹿島)そうそうそう。

(マキタスポーツ)ハタと、なんかそういう感じで帰るんですよ。

(サンキュータツオ)それって何歳ぐらい?

(マキタスポーツ)えっとね、大学卒業してしばらく働くんですよ。でね、30手前ぐらいとかで、『住むところじゃねーな』って。っていうかお前、今頃言うのかよ?っていうぐらいの感じなの。俺、別にそういうこと思ったことないんだよね。『住むところじゃねーな』って。俺が言っている漠然としたイメージだけど、これは土地。自然発生的にボウフラみたいにワーッ!ってわいてきたのが、俺は山梨でたまたまわいてきたの。で、それがファーッて行って東京とかに、その道みたいなイメージでいるけど、ここ居心地いいから。住むのは、居続けるのは大変だけど、帰ろうとは思わないっていう意識なんだよ。俺は。

(サンキュータツオ)ああ。

(マキタスポーツ)ところが途中でファッと元に戻って『あ、住んでるところじゃねーや』って感じのテンション切れてくお前らって何?ってずっと思ってた。俺は。

(サンキュータツオ)それはでも、やっぱり何か思って帰るわけだよね。

(マキタスポーツ)まあいろいろ現実的な、たぶん自分のゴール感とかあると思うんですよ。この先何十年ってこのまま暮らしていった時とかに、やっぱりご機嫌な人生を選ぶっていうことで考えると、山梨帰ったほうが・・・

(サンキュータツオ)俺、本当何でこんな話するのか?って自分でも考えたんだけど、その何で東京にいるのか?っていう回答を常に用意してるじゃん。みんな。

(マキタスポーツ)うんうんうんうん。

(サンキュータツオ)それがやっぱり衝撃なんだよね。

(マキタスポーツ)そりゃそうだよ。地方から出てきたんだから。目的意識もって。あなた、生まれ育ったところだから。それこそアイデンティティをそこに持ってる人だから。

(サンキュータツオ)でも、慣れちゃえばそんなこと考える必要、ないでしょ?

(マキタスポーツ)だから薄まってくの。それが。当初の目的みたいなものとかが。

(サンキュータツオ)で、それと同時に恥ずかしくて言えなかったこととかも受け入れて、いま言えてるわけじゃない?

(マキタスポーツ)言えてる言えてる。

(サンキュータツオ)鹿島さん、どうですか?友達とかやっぱり帰りました?30手前ぐらいで。

(プチ鹿島)意外と東京でがんばりそうなヤツに限って・・・

(サンキュータツオ)それ、何で帰るんですか?

(プチ鹿島)それ、分かんないです。僕も帰ろうと思ったこと、一度もないから。

(マキタスポーツ)ま、ざっくりと言うけど、やっぱり『美味しくない』って思ってる感じがあるみたいよ。

(サンキュータツオ)あ、東京美味しくない。

(マキタスポーツ)東京美味しくないって。

(サンキュータツオ)美味しくなりに来てるんだ。

(マキタスポーツ)うん。美味しくなりに行くはずなんですよ。東京は。

(サンキュータツオ)それ、何か幻想だね。

(マキタスポーツ)うん。幻想あるの。だけど、どうも今聞くと、若い人たちって地方で、とにかくPK(プチ鹿島)さんも言ってたけど、元々イケてる連中こそ、まさにそうだけど、地方でヤンキーだったヤツとかは地方でたとえばヒップホップみたいな感じのノリになり、パーティーなど開きながら自分で独立して会社とかなんかやりながら、本当そっちの方で充足してるから。東京に対するあこがれ、どんどん薄まってきてる。

(サンキュータツオ)地元リア充。

(マキタスポーツ)リア充が。

(サンキュータツオ)もうそのコミュニティーが上までちゃんと作られてると。

(マキタスポーツ)だからかつてみたいな幻想感がどんどんなくなってきてて。だから中間層っていたと思うんだよ。俺らみたいに、俺ヤンキーでもあったし、ヤンキーでもなかったし、文化系にも顔が効いたしみたいなヤツって、要はコミュニティーから完全に乗っかりきれてない、はじかれてたヤツ。そういうヤツの受け皿には絶対東京が必ずなってたはず。で、あこがれを持てるものだったと思ってるんだけど。そういう中間層があんまりなくて。で、とにかく地元意識の強いヤツは地元意識のままで、そのまま充足して東京は遊びに行く場所。

(サンキュータツオ)それ、一番イケてない?東京は遊びに行くところだからみたいな。一番かっこいいよ。

(プチ鹿島)それは折り合いついていいですけど、やっぱり僕ら世代から上は『東京行かなくちゃ!』みたいなのがあったことは確かで、この間、よくマキタさんが『高樹沙耶』的なことを言うじゃないですか。あんなもん、だって欲望は変わってない。

(マキタスポーツ)欲望の総量は変わらないです。

(プチ鹿島)この間もね、誰か同じことを言ってて。ロハスだ田舎だって言ってるヤツは、それはバブルを経験してるからでしょ?って。

(マキタスポーツ)うん。そうそうそう。俺、本当にそう思う。

(プチ鹿島)そういうことじゃない。バブルっていう欲望の絶頂を楽しんだからこそ、『でもやっぱり田舎生活がいいよね』っていう、その反動だけなんですよね。

(マキタスポーツ)そうなのよ。

(サンキュータツオ)俺、だから何て言うんだろう?100人いたら100人東京行きたいもんだと思ってた。俺は。

(マキタスポーツ)(笑)そのお前の自己中心的な考え方ね。

(サンキュータツオ)俺、日本の中心が東京だと思ってたから。

(プチ鹿島)それは正しいと思うよ。

(サンキュータツオ)こんな便利なところ、ねーと思ってたから。だって・・・

(マキタスポーツ)それ、合ってるしね。

(プチ鹿島)俺はそれはまだ正解だと思うし、むしろ俺、そっちの考えに近いよ。だから『東京行きたい!』って言ってる橋本愛の方が、俺は素直だなって思う。

(サンキュータツオ)いやだから、みんな東京行きたい欲みたいな・・・でも東京行きたい欲、まるでない人種もいるんでしょ?

(マキタスポーツ)いるいる。いるんだよ。

(サンキュータツオ)それ、どういう人種なの?

(マキタスポーツ)俺、だからそれは正直、あまりうかがい知ることが出来ないのよ。

(サンキュータツオ)あんまり好奇心ない人たちっていうことなのかな?要するにもっと知りたい・・・

(プチ鹿島)好奇心っていうか、発想がないんじゃない?もうそれこそ。

(サンキュータツオ)発想がない?

(プチ鹿島)だから自分の親の生活とかもあるじゃない。たとえば商売やってたら、自分はもうある程度大人になったら継ぐもんだっていうのだったら、東京行きたいっていう発想も出来ないでしょ?

(サンキュータツオ)でもでも、親の跡継ぐっていうのと、自分が何したいか?っていうのは別っていう時代じゃん。

(マキタスポーツ)タツオが言ってるのは、みんな芸能人になりたいんじゃないの?みたいな。

(サンキュータツオ)芸能人というか・・・

(マキタスポーツ)みたいなイメージすらある。

(サンキュータツオ)ごめんね。本当に全国ネットで言うけれど、俺本当地方行くたびに、『いいところだな』って思うんだけど、『どうやって生きていってるんだろう?』って思うの。

(マキタスポーツ)俺もね、思うの。地方出身なのに。よくこんなところで暮らしてるな。人住んでんだ。みたいな感じってあるのよ。

(プチ鹿島)俺、昨日も思った。昨日、あるドキュメントを見て。それは詐欺っていうかそういう人。いいまんまお金引き出された人。平凡な普通の田舎の家庭ですよ。それが結局2000万。毎朝20万ずつ朝おいて、2000万、合計取られました。短期間で。2000万、どうやって持ってたんだろう?このお家の・・・質素のアレですよ。あるんだ!?みたいな。すごい単純な驚きで。それこそね、田舎の硬球紳士服店って、これ誰がどうやって店回してるんだろう?って(笑)。あるじゃないですか。

(サンキュータツオ)そうだよね!いや、食べ物屋とかだったらまだ分かるんです。とか、マキタスポーツ店もね、行政と結託して一応定期的にスポーツシューズを卸すとか、あるわけじゃん。だけど、その他の人たちって、どこでお金が回ってるのか全然分かんないから、普通に生きていくんだったら、東京出て来ざるを得ねーだろ?ってちょっと思ってたの。でも、生きていけてる人たちが多いから、どういうことだろう?っていうのが単純な疑問だったのね。

(プチ鹿島)生きていけるんですよ。ウニを1つ取れば・・・

(サンキュータツオ)もう最近、あまちゃんのことしか考えてないね。

(プチ鹿島)でも、あれで分かるでしょ?『あ、この人たち、これで生活してるんだ』っていうさ。で、旦那は漁業に行ってるしさ。何かこうか入ってきてるんですよ。やっぱり。ああいうところでも。

(サンキュータツオ)でもそしたら、あとは年金受給者しか生きていけなくなるから、結局・・・

(プチ鹿島)そうだよ。だからあまちゃんのあのスナックでも、何となく気にかけてメニューとかビールとかあれ、たしか550円とか。『ちゃんと550円取ってるんだ』みたいな。そういう・・・

(サンキュータツオ)(笑)

(プチ鹿島)だってあの人たち、毎日カウンターに座ってるでしょ?ってことは、1本2本で1000円2000円で・・・お小遣いで・・・じゃああの駅員さんたちは結構な・・・どうなんだろう?結婚してないからかな?とか、そこまで考えて僕、見てますよ。

(マキタスポーツ)田舎にあるお金が全体でさ、10万円ぐらいのイメージだとするじゃない?東京とか、全然ケタ違いだと思うんだよね。その10万円をなんとかかんとか上手く回してるとかのイメージはあるよ。

(サンキュータツオ)別に物々交換してるわけじゃないでしょ?

(マキタスポーツ)物々交換も範疇。

(プチ鹿島)物々交換はあると思うよ。お裾分けとか。

(サンキュータツオ)思うのよ。だって地方ってさ、おっきい家、多くない?で、おっきいテレビない?みんな。

(マキタスポーツ)おっきい家、おっきいテレビ、おっきい車!

(サンキュータツオ)あれ、意味が分かんない。無理じゃん!

(プチ鹿島)車、3台ぐらい。

(マキタスポーツ)息子もちょっとおっきいしね。

(鹿島・タツオ)(笑)

(サンキュータツオ)息子もおっきい、関係ねーだろ!

(プチ鹿島)分かんないですね、あれ。

(サンキュータツオ)何で成り立ってるんだろ?

(プチ鹿島)分かんないよ、それは。聞いて下さい。

(サンキュータツオ)(笑)ま、俺は本当、地方から・・・もうお二人のこと、尊敬します。もう常になんかそういう、突きつけられてるじゃん。『何で東京いるの?』とか。『いつ帰るの?』とか。

(プチ鹿島)帰るタイミング失って、10何年ですよ。

(サンキュータツオ)『何で東京来たの?』とかっていうね。このままでいいの?みたいなの、東京にいる人っていつも突きつけられてるんだなって思って。

(マキタスポーツ)突きつけられてるような自分は忘れてるけどね。忘れることが出来た人だと思うよ、俺は。

(サンキュータツオ)残ってる人は逆にね。いい意味で鈍感になれてるっていう。

<書き起こしおわり>

許可局2013年6月29日①「上京論」

タイトルとURLをコピーしました