プチ鹿島 荻上チキ『すべての新聞は「偏って」いる』を語る

プチ鹿島 荻上チキ『すべての新聞は「偏って」いる』を語る YBSキックス

プチ鹿島さんがYBS『キックス』の中で荻上チキさんの著書『すべての新聞は「偏って」いる ホンネと数字のメディア論』を紹介していました。

(プチ鹿島)プチ総論!

(塩澤未佳子)プチさんに自由に語っていただくコーナーです。

(プチ鹿島)はい。今日のタイトルはこちら! 『すべての新聞は「偏って」いる』という、これは本なんです。先週土曜日に発売されたばかり。荻上チキさんが書いた本ですね。評論家であり、ニュースサイト『SYNODOS -シノドス-』の編集長。もちろんラジオ的にはTBSラジオ『Session-22』のパーソナリティーを月~金で務められております。僕も何度か出させていただいたんですけど、そのチキさんが『すべての新聞は「偏って」いる』という、新聞本なんですよ。

すべての新聞は「偏って」いる  ホンネと数字のメディア論

(塩澤未佳子)へー!

(プチ鹿島)だからありがたいことに、今日発売の『週刊SPA』で僕、チキさんと対談をさせていただいているんです。

荻上チキ・プチ鹿島対談

(塩澤未佳子)すごい!

(プチ鹿島)もともとチキさん、こちらで連載を持っているんですけども。「今年のニュース、新聞5紙はどう報じたのか?」というので、国際問題とか政治問題についてコメントをした後、僕と1ページ。「ニュースは偏りを前提にして読む」という。ありがたいことに僕、『芸人式新聞の読み方』っていうのをね。まあ、今年のプチ鹿島大賞を受賞した本なんですけども。

(塩澤未佳子)プチ鹿島大賞、おめでとうございます(笑)。

(プチ鹿島)ねえ。独裁国家みたいですね、なんか(笑)。で、まあチキさんも新聞の本を出されたということで、僕もいち早く、この対談の前に出版社の方からゲラを送っていただいて読んだんですけども……本当に面白かったですね。

(塩澤未佳子)うわーっ!

(プチ鹿島)『芸人式新聞の読み方』って、「芸人式」ってついていますから、たとえば新聞の社説。あれは難しいから、ちょっと新聞というものを擬人化して考えてみる、読んでみると面白いんじゃないかっていうことで、擬人化しました。そしたらまあまあ、いろいろと面白がっていただいたんですが、チキさんは……僕はそういうフワッとした芸人からの切り口じゃないですか。チキさんはすごいんです。この本のひとつのベースとなっているのは、『ホンネと数字のメディア論』。徹底したデータ。それを調べ尽くして新聞を語っているんです。

(塩澤未佳子)ふーん。

(プチ鹿島)ですので、まあ主要5紙の自己像。全国紙である主要5紙はどのような自己像、自分をどう見ているのか?っていうのを、こういうABCレポート新聞「半期」っていうものからフレーズを取り出して。読売新聞だったら自分のことをこう言っているんです。「真実を追求する公正な報道。勇気と責任ある言論」。朝日新聞。「共に考え、共に作るメディア」っていう。まあ、自分が言っていることですから。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)で、チキさんはその後、各紙の社史。会社の歴史を出しているでしょう? あれも全部調べて、「ああ、自分語りをこういう風にしているんだな」っていう。だからそこが、ちゃんとあるものを調べて。僕は擬人化をしましたよ。だけど、それをもとに「こういうことを本人は言っている。こういう風に人に見られてほしい」というのをやっているわけです。面白いでしょう?

(塩澤未佳子)へー!

(プチ鹿島)そうすると、社説とかも調べていてね。こんなくだりがあるんです。「互いを意識する新聞」とか、「産経新聞は構ってちゃん」。これ、どういうことか?っていうと、やっぱり主要5紙が相互に言及している数を調べている。データを取っているんですよ。

(塩澤未佳子)ほう!

互いを意識する新聞

(プチ鹿島)読売新聞は朝日新聞に関して、1992年から2014年ですから20年ぐらい。1062回言及している。産経新聞は読売新聞に対して298回言及しているんだけど、朝日新聞に対しては1164回言及している。

(塩澤未佳子)わあ!

(プチ鹿島)つまり朝日のことをすごく言っているわけです。だから僕、新聞の講演会とかで言うのは、擬人化をした上で「産経新聞というのはいちばん熱心な朝日新聞の読者である」っていう。だから「また朝日がこんなことを言っている! けしからん!」っていう。いちばん早く噛み付くんですけど、それっていちばん熟読しているってことじゃないですか。だから僕はそういうのを笑いを交えて言うんですけど、チキさんはデータで表しているんです。

(塩澤未佳子)ほー!

(プチ鹿島)で、社説の読み比べ。これ、見て。「産経をスルーする朝日」っていう。構ってちゃんの産経に噛みつかれるんだけど、朝日はもうスルーする。「いや、産経なんかに構ってられるか」っていう……僕も「プライド高きおじさん」って言いましたよね。そういうのもあるので、だからこれはどこの新聞がいいとか悪いとかじゃないんです。やっぱりキャラ付け。この新聞はこうだよっていうのをチキさんも分けているんですよね。

(塩澤未佳子)面白い。

(プチ鹿島)だから「保守を自認するものの、仮想敵は朝日」とかね。これなんかも面白い。「産経が語る政治家の資質」というので、やっぱりさっきも話しましたけど稲田(朋美)さん。今年の前半から夏にかけて、(南スーダン日報問題などで)後手後手に回って批判を受けていたじゃないですか。で、教育勅語のことに関して、朝日新聞がこんな社説を出したんです。3月10日。「稲田大臣の資質を問う」。そうすると今度は3月11日。すぐに産経新聞が朝日新聞への批判を展開。「『(稲田)大臣の資質を問う』と書いたが、『資質』という言葉は生まれつき、天性のことである。思想や考え方で持って生まれた性質まで否定するとは随分と差別的な発想じゃないか」という。朝日新聞、差別をするのか? というね。

(塩澤未佳子)ええ。

(プチ鹿島)「資質」という言葉を使って批判をするのは差別的だと主張したんですよ。ところが、チキさんは調べたんですね。産経新聞も調べてみるとこれまで多くの国会議員の資質を問うているんですよ(笑)。

(塩澤未佳子)アハハハハッ!

(プチ鹿島)たとえば、ここ数年だけでも小渕優子さん。資金管理団体の政治資金規正法違反ってありましたよね。「小渕議員の資質さえ疑ってしまう」っていうのを(笑)。あと、舛添さんの時も「舛添氏が問われているのは政治家としての資質に他ならない」とか。だからこれ、面白いでしょう? 調べ上げれば上げるほど、こういうのが出てくるわけですよ。

(塩澤未佳子)いいですねー!

(プチ鹿島)だからもちろんこれ、お互いの新聞のそういうキャラクターというか。データを淡々と調べるとこういうのが出てくるよというのがあるという。で、僕が興味深かったのは、たとえば僕、一塁側・三塁側っていうのをね、今日のSPAの対談でもしゃべっているんですけど。実は、同じ保守と思われている読売新聞と産経新聞も当然、立場が違う時ってあるんですよ。これ、チキさんがそのわかりやすい例として出したのが、これもまた稲田さん絡みなんですけど、教育勅語に関して。

(塩澤未佳子)はい。

(プチ鹿島)産経新聞は教育勅語に関しては復古調的側面が強い一方で、読売新聞は「教育勅語をえっ? そんな、褒めてるの?」ってたしなめているんです。4月6日の読売新聞。こんなことを書いているんです。「教育勅語を熱心にすすめると、学校での特定の政治教育を禁止した教育基本法にも抵触する可能性がある。たしかに親孝行や夫婦愛など現在にも通じる徳目を説いている面はある。しかし、教育勅語を引用しなくてもこれらの大切さを教えることは十分に可能だ」という。だから読売は教育勅語を……保守的なコアな層は「いいじゃないか!」って言うんだけど、「いやいや、それをわざわざ引用しなくても、教育勅語に書いてある大切さっていうのは他でも教えられるでしょう?」って、ちょっとたしなめているんですね。

(塩澤未佳子)はいはい。

(プチ鹿島)産経のイケイケと比べて。僕はまさにこれ、4月6日。覚えているんですけども。チキさんの番組『Session-22』に出させてもらって。4月6日は「新聞を読む(ヨム)日」っていうことで、新聞特集だったんですよ。で、最新の読み比べとして、実はこういう読売と産経、同じ保守でも読売は「まあまあまあ……」ってブレーキをかけているので面白いですねってネタにしたばっかりだったんで。これはひとつのトピックとして、面白いと思います。

(塩澤未佳子)はー!

首相動静を徹底的に調べ上げる

(プチ鹿島)で、首相動静。僕も「首相動静は面白いですよ」って言いましたけど、チキさんの場合はまたすごいんです。調べ方が。だってね、とにかく首相動静をずーっと調べ上げたんです。1990年代から調べ上げているんです。で、どの首相がどのメディアとご飯を食べているのかとか、全部載っています。全部、だからデータを。これ、本当に大変だったと思います。僕、2015年の社説の文体を調べるだけでもえらい時間がかかりましたから。

(塩澤未佳子)あれも面白かったですけど。またこうしてデータを出すって大変だなー。

(プチ鹿島)面白いですよ。軽減税率も調べ上げているし。だから、こういう言い方は図々しいですけど、僕の書いた本である程度調べたネタとも重なっているんですよね。でも、チキさんは芸人とは全然違う。データをキチンと調べて書いてらっしゃいますから。だから、僕の本を読んでくださって、ちょっとでも新聞の見方、読み方が面白いなと思った人は当然、この本は面白いと思いますし。あの……ちゃんとしているバージョンです(笑)。

(塩澤未佳子)アハハハハッ!

(プチ鹿島)僕は擬人化したりとか茶化したりとか、そういうのをやって。それを読んだ上でさらにこれを読むと……もちろん、この本だけ読んでもおすすめです。面白いと思います。

(塩澤未佳子)これ、セットにして売ったら?

(プチ鹿島)うーん……まあまあ、出版社も違いますし(笑)。でも、たとえばAmazonで注文していただくと、「この本を買った人はこの本も」って。そういうのが表示されると、お互いに売れるからいいじゃないですか(笑)。でも、本当に面白かったです。これは手間暇かかっている。

(塩澤未佳子)そうですね。よくぞまとめましたね。1冊に。

(プチ鹿島)面白いですよ。だからもちろん、いまのいろんなフェイクニュースだ何だって情報合戦の中でのデータを調べてのこれですから。もう冷静に淡々と。どこの新聞社がいいとか悪いとかじゃないです。それはもう、僕もチキさんも同じスタンスなんですよ。だからまずは今日発売のSPAを。これは対談、わかりやすく書いてますので、それを読んでいただいて、この本を買っていただくとわかりやすいと思います。で、やっぱり新聞って面白いなと思うはずです。ということでございまして、『すべての新聞は「偏って」いる』という荻上チキさんの本をご紹介いたしました。

<書き起こしおわり>

タイトルとURLをコピーしました