町山智浩 洋楽ロック歌詞の本当の意味を語る

町山智浩 洋楽ロック歌詞の本当の意味を語る たまむすび

(町山智浩)そう。これはジョニ・ミッチェルっていう人がハワイに行った時に片っ端から開発されちゃって自然が破壊されているのを見て歌にしたんですけども、リゾートっぽいトロピカルな歌にしてるところがミソなんです。

(山里亮太)敢えて?

(町山智浩)敢えて。で、実際リゾート地に行くとかかってるんです。ホテルとかのビーチで。

(赤江珠緒)でもね、日本とか英語が分かんない国ならいざ知らず、ハワイでかかるとか、分かるんじゃ・・・

(町山智浩)アメリカ人もあんまり歌詞一生懸命聴いてないんですよ。

(山里亮太)リズムとかそういう聴き心地で・・・

(町山智浩)聴き心地なんですよ。だから有名な話だと、ブルース・スプリングスティーンが『Born In The U.S.A.』っていう歌を歌った時に、アメリカの右翼系の人とか愛国者の人が一緒になって歌って。『Born In The U.S.A.!』って歌ったんですけど、あの歌詞の内容ってのはアメリカを信じてきた貧しい労働者がベトナム戦争に行かされた上に、貧しいまま取り残されて『何もいいことなかったぜ』って歌ってるんです。『俺はこんなにアメリカを愛して身を捧げてきたのに、何なんだ?この仕打ちは?』って歌なんです。

Bruce Springsteen『Born in the U.S.A. 』

(山里亮太)はー。『USA』って大きく言っているから、これはUSAのことを歌ってるなぐらいに。

(赤江珠緒)何か讃えてるなって思っていたけど・・・

(町山智浩)でしょ?でも、そうじゃない。あれ、皮肉なんですよ。なんてヒドいんだ!俺たちはこんなにアメリカが好きなのに!って。

(赤江珠緒)でも、みんなUSAで歌ってますよ。

(町山智浩)アメリカ人も歌ってるの。だからみんな歌詞をあんまり聴いてないんですよ。ということが分かったんで、面白くて僕はこういう本を書いたんですけどね。

(赤江珠緒)はー!これ、歌手の人としてはどうなんですか?『えっ?そっちで使っちゃう?』とか『そっちで盛り上がっちゃうの?』って。

(町山智浩)そう。だからよくインタビューで『分かってない人が多くて困るよ。でも売れてるからいいか。』とかそういうこと言ってますよね(笑)。

(山里亮太)もちろんアーティスト本人は町山さんがおっしゃるような意味合いで全部出してるんですよね?

(町山智浩)はいはいはい。だから僕もインタビューをいっぱい調べたり自伝を読んだり、いろんなことをして歌詞の本当の意味を調べてるんですけど。まあ、アメリカには歌詞の本当の意味を説明するだけの番組もあるぐらいで。ストーリーテラーって言うんですけど。

(山里亮太)今回、本の中だと背景とかその人の人となりとかも説明に使ってくれてるじゃないですか。だから、『ああ、じゃあこれ本当にそういう意味で書いてたんだ』って伝わるじゃないですか。

(町山智浩)そうなんですよ。本人たちは『売れればいい』っていうのもあるんだけど、『やっぱり分かってほしいな』っていうのと。裏表みたいなんですけど。次ですね、フォスター・ザ・ピープル出せますか?フォスター・ザ・ピープルの『Pumped Up Kicks』っていうすごい最近のヒット曲で、日本でも結構ね、かかってたと思うんで。

Foster The People『Pumped Up Kick』

(赤江珠緒)いいですね。うん。

(山里亮太)ポップな感じ。

(町山智浩)そう、ポップな感じ。でね、『Pumped Up Kicks』って歌なんですけど、『Pumped Up Kicks』って言うのは高級スニーカーなんです。アメリカの中学生・高校生が履いている。で、それを履いている子供たちに対して歌ってるんですね。どういう意味かっていうと、中学校か高校にこの歌い手自身が入って、拳銃を乱射してるんです。いじめっ子たちに。

(山里亮太)拳銃を乱射!?

(町山智浩)拳銃を乱射してるんです。で、『いいスニーカーを履いている君たち、早く逃げないと俺のピストルに当たっちゃうよ』っていう。

(赤江珠緒)えっ!?そういう歌詞?

(町山智浩)はい。これ、学校内乱射事件についての犯人の立場で歌っている歌なんです。

(赤江珠緒)これ、ちょっとまったりしてお酒でも飲もうかっていう雰囲気の曲が・・・ええーっ!?

(山里亮太)その内容をこの曲に合わせるってめちゃくちゃ怖いけどね。

(町山智浩)怖いですよ。学校内銃乱射事件について歌ってるんです。犯人の立場で。でもこれ、すごい大ヒットして、日本でもそこら中でかかっていて。スターバックスとかで(笑)。

(山里亮太)ちょっと手拍子したくなりますね。ヘイ!って。

(町山智浩)よく聴くとそういう内容なんです。やっぱりね、英語の歌っていうのは『音楽だけ聴いてればいいんだ』とか、『歌詞なんてゴチャゴチャ言うな』っていう人もいるんですよ。『音楽は音楽なんだから、フィーリングで感じればいいんだ』って。でも、本当の歌詞の内容を聞くと面白いんです。2倍面白いじゃないですか。2倍面白いんだったら、いいじゃないですか。ねえ。だから僕はすごくそれを楽しんでるのを、みんなに分けたいんでこういう本を書いたんですけどね(笑)。

(赤江珠緒)いやいや、これ、面白いですよ。

(山里亮太)結構直接なメッセージだから、考えさせられることもありますよ。

(赤江珠緒)そうそう。むき出しな感情みたいなの、結構ありますよね。

(町山智浩)やっぱりね、アメリカがすごいのは実際の事件とか犯罪があると、犯罪者の立場で歌う歌が出てくるんですよね。日本はそれはないなと思うので。これはあった方がいい。押尾学の気持ちで歌う歌とかね。『どうしよう!?』みたいな歌とか(笑)。『俺は困っちまったぜ!六本木ヒルズ!』みたいなね。そういう歌、何で誰も歌わないのか?ってね。

(山里亮太)ご本人が歌手ですから、ご本人が歌うっていう手もありますから。

(町山智浩)ご本人が歌う(笑)。そういう歌を歌ってもいいじゃないかと僕は思うんですけどね。はい。ということで。

(赤江珠緒)はい、ありがとうございます。さあ、その町山さんの新刊本は今日から発売ということで、5名様にプレゼントもさせていただきます。

<書き起こしおわり>

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