石山蓮華さんとでか美ちゃんさんが2023年12月12日放送のTBSラジオ『こねくと』の中で映画『市子』について町山智浩さんと話していました。
(石山蓮華)先週は『市子』という邦画をご紹介いただきました。こちらは市子という女性の物語で、恋人からプロポーズを受けた翌日に市子が突然失踪するところから始まる物語です。でか美ちゃんも私も、見てまいりました。
(町山智浩)どうでした?
(でか美ちゃん)私は公開初日に戸田監督の舞台挨拶がある回を運良く見に行けたんですけど。私はその市子が置かれた状況の人のこととかを考えたことがなかったというか。「こんな問題があるんだ」っていう、すごい初歩的なところから始まったんで。戸田監督が描いた意味みたいなのをすごく考えさせられましたね。だし、戸田さんって以前、舞台でも市子のことを描いていたりとか。あと『名前』っていう映画を作られたりしていて。そういう方への問題提起じゃないけど。社会に伝えたい思いっていうのをすごく感じました。
作品の中で描かれる「問題」
(町山智浩)うんうん。そういう問題ってのはね、これは日本とね台湾と中国にしかないのかな? 昔、韓国にもあったんですけど、韓国はたしかなくなったと思うんですけど。具体的には言わないんですが、家制度みたいなのがあって。人が生まれてくる時にどの家に入るか?っていうのをそれらの国では決められるんですよ。で、その場合にまず、戸主という問題があって。要するに「家にはリーダーがいる」っていう決まりがあるんですね。これがあるのはね、本当に世界中で日本と中国と……本当にそこのへんの国だけなんですよ。その他の国にはどこにも、そんなものはないんです。
(でか美ちゃん)しかも、その部分の問題もですけど。なんかすごくサラッと「妊娠して出産して人間が生まれる」っていう段階を踏む時に、やっぱりその行いできるのは女性の体のみでできることだから。そこへの負担っていうのが本当にでかいんだなってことがわからされたというか。
(町山智浩)それは、男性にはないんですよね。女性だけがなんていうか、あんまりネタバレにならないように話しますけれども。その負担を背負うことになるんですね。ただ、この映画『市子』っていう映画はその社会問題を声高に訴えるような映画ではなかったですね。
(石山蓮華)そうですね。私は見ていて、やっぱりマイノリティーの属性を持つ不幸なファム・ファタールとそこに翻弄される男性たちっていうところに見えてしまった部分があって。そこは「うーん……?」って思ったんですけど。
(町山智浩)それは、どんな風に?
(石山蓮華)なんか、その物語を駆動させるために属性をスポイルする部分があるのかなという風に見えてしまった部分が私にはちょっと……。
(町山智浩)ああ、それは杉咲花さんのキャラクターになんていうか、夢中になる男性たちがいて……っていう話の部分ですか?
(石山蓮華)そう、ですね。
(町山智浩)なんか、言葉は選ばなきゃいけないけど。美しいから助かってきた部分があるみたいなね。それは私も思うところがあるというか。まあ、それだけじゃないんですけどね。
(石山蓮華)なんかやっぱり、この映画が社会問題を声高に問う映画ではないからこそ、主題となっている問題と、その作家のオピニオンみたいなところにどれぐらい距離感があるのかなっていうところで、ちょっと「うーん……」って思った部分はあったんですけども。でも、やっぱり俳優さんのお芝居もすごく良かったですし。ちょっと懐かしい邦画がみたいな画面作りっていうところも面白く見ました。
(でか美ちゃん)あと、エンドロールで流れるBGMの意味みたいなのを監督との質疑応答で質問された方がいたので。それを直接聞けて……ちょっとそれはネタバレになっちゃうんで、今は言わないんですが。見られる方はエンドロールまで見て、どういう音が流れていて、どこから違う音になったかとかを注目すると、よりその市子が背負った宿命とか、悲しみみたいなものが最後まで楽しめるんじゃないかなと思いました。
エンドロールで流れるBGM
(町山智浩)そうですね。あれね、エンドロールである歌が聞こえてるんですけど。途中からなんか、変な音が聞こえるんですよ。それは、なに?っていうね。「ええっ?」っていうところでね。まあ、これ以上は言いませんけれども。
(でか美ちゃん)ただ皆さん、本当に作品を見て何を思うかはいろいろありますけど。お芝居が良すぎる! 杉咲花さんと若葉竜也さんと。あと北くん役のね、森永悠希さん。この3人が私は同率1位みたいな感じで、かなりグッと来ましたね。北くん、よかった!
(町山智浩)北くんね。「彼女のためなら、僕は死ねる!」っていう男でしたね。俺はちょっと泣きましたよ。まあ、いろいろと、強烈な映画ではあったと思います。
(石山蓮華)そうですね。現在公開中の『市子』、ぜひまだの方はご覧ください。
<書き起こしおわり>