町山智浩 洋楽ロック歌詞の本当の意味を語る

町山智浩 洋楽ロック歌詞の本当の意味を語る たまむすび

映画評論家の町山智浩さんがTBSラジオ『赤江珠緒たまむすび』で洋楽ロック歌詞の本当の意味について紹介していました。

(赤江珠緒)それでは毎週火曜日の『たいしたたま』はアメリカ在住の映画評論家、町山智浩さんです。今週は帰国中の町山さん、スタジオ生出演です。お久しぶりです!

(町山智浩)はい。どうもよろしくお願いします。

(山里亮太)お久しぶりです、町山さん。

(赤江珠緒)町山さん、大丈夫ですか?お体の方は。

(町山智浩)全然ダメです。喘息の発作が止まらなくて。ずーっと治んないんですよ。はい。まあ大丈夫です。

(赤江珠緒)そんな中、日本に来日というか・・・来日!?

(町山智浩)帰国です。帰国。

(赤江珠緒)帰国されまして。今日はね、まずこちらからさせていただきましょうね。『本当はこんな歌』アスキー・メディアワークスから新刊本を出されるということで。

(町山智浩)出ました。もう。書店に並んでます。今日(5月21日)発売です。

(赤江珠緒)今日発売!こちらは週刊アスキーで掲載していました連載を書籍化されまして。『意味もわからず歌っていた洋楽ロック歌詞の本当の意味や、アーティストが作詞作曲にいたった背景を解説している』と。40曲も取り上げておりまして、表紙は映画や音楽のアートワークを多く手がけるイラストレーター、ロッキン・ジェリービーン氏の表紙となっております。

本当はこんな歌
アスキー・メディアワークス

(町山智浩)これ、かっこいいでしょ?表紙。

(山里亮太)かっこいい!

(町山智浩)超かっこいいでしょ。エロくて。

(山里亮太)そう。いろんなメッセージが込められてて。

(赤江珠緒)何か町山さん!って感じがする。

(町山智浩)情報が濃い。何で俺・・・こんなオッパイおっきいお姉ちゃんで、何で俺なの?あ、町山が好きそうな女の子ってことですね?

(山里亮太)町山さんの絵を書いたわけじゃないですからね。

(町山智浩)俺が巨乳なのかと思いましたよ。そういうわけじゃないですね。でもこの本ね、すごい表紙いいんですけど、どこにも著者の町山智浩が何者なのか?書いてないんですよ。

(山里亮太)あら。著者近影みたいなの、ないんですか?写真がついてたりとか。

(町山智浩)編集者、忘れたんですよ。これ。

(赤江珠緒)えっ!?

(山里亮太)シンプルに忘れちゃった。

(町山智浩)忘れたの(笑)。これね、珍しい。たしか昔、芥川龍之介の本読んだ時も、『芥川龍之介 生年月日』とか書いてあったと思うんです。村上春樹も書いてあるよね?林真理子も書いてあると思うんですけど、俺だけ入ってないのかよ!っていう(笑)。

(山里亮太)だから僕ね、内容が結構ヤバい感じのこともあるわけじゃないですか。これ、みんなが普通に楽しんでいたことが実はこんな卑猥な意味だったとかいろいろ書きすぎてるから、著者は隠さなきゃいけなかったのかな?って。

(町山智浩)いや、普通『こんなこと書いているやつ、こいつ誰なんだ?この町山ってやつ?』っていって、どこ探しても本に書いてないっていうね。困ったもんですが(笑)。

(山里亮太)町山さんが書いてます。

(赤江珠緒)ね。大槻ケンヂさんも帯を書かれてね。

(町山智浩)はい。大槻ケンヂが書いたのか?って思っちゃうよね!

(赤江珠緒)そうそう。大槻ケンヂさんの方がバーン!って前に出てて(笑)。ということですけども、今日はこの本に絡んだお話もいただきますけども、まずはこの新刊本、プレゼントさせていただくということで、町山さんありがとうございます。

(町山智浩)買った人は必ずカバーにね、『町山智浩はどんな人か?』書いて下さい。自分で著者紹介を書いて下さい。付いてないんで。

(山里亮太)貸す時とかあるんで。

(町山智浩)誰だ?ってことになるんでね。『町山=バカ』とか書かないで下さい(笑)。

(山里亮太)そんな人、いないでしょ(笑)。

(中略)

洋楽歌詞に対する誤解

(赤江珠緒)では、本題参りましょう。さっそくね。町山さん。

(町山智浩)今日はね、この本の宣伝をしにきたんですが、ただこの本に書いてあることをここで言っちゃったら、誰も本買わないじゃん?『聞いっちゃったら買う必要ねーよ!』って思うんで、この本にのってないことだけ話します。

(赤江珠緒)おっ、素晴らしい!ということは、この本だけでも40曲あるんですけど、まだまだあるってことですね。誤解されている曲っていうのが。

(町山智浩)それ以外の曲の話します。はい。誤解されている曲。あのね、実はね、版権の問題があって、載せられなかった歌もあるんですよ。連載中は書いたのに。あとね、これ普通だったら英語歌詞が載ると思うじゃないですか?この本って。これ実はね、ゲラの段階で入ってたんですよ。ギリギリになって、載せられないっつって。許可出なかったんですよ。某大手音楽著作権の会社がですね、『もしその歌詞を載せるんだったら、印税◯%寄越せ』みたいな話になりましてですね。

(山里亮太)なるほど!

(赤江珠緒)なんとなんと。

(町山智浩)で、英詞全部抜いたんですよ。これ。最初こんぐらいの厚さの本だったのに・・・

(山里亮太)結構分厚さ的には・・・

(町山智浩)ギュッと減ってしまって、1000円になっちゃったんですけど。まあ、結構たいへんですよ。歌詞はね、二次著作物で俳優とか歌手とかの顔写真とかと同じようなものとして扱われるんですね。

(赤江珠緒)だってテレビとかでちょっと使うだけでね。本当に曲の中のほんの一部を使うだけでもいろんなところにね・・・

(山里亮太)高橋ジョージさんが「あの話してくれただけでチャリンチャリン入ってくるんだ」って言ってたもん。

(町山智浩)番組の中で使うぐらいだったらそれほどでもないんですけど、それを売ると・・・本とかCDに出したりDVDにすると、印税を払わなきゃいけなくなるんです。

(山里亮太)はー。そういうのとの戦いをくぐり抜けて来たと。

(町山智浩)そうそう。だからもう、全部取っちゃえ!って(笑)。ただね、英語歌詞はね、今インターネットで全部どんな歌でも探せるんですよ。英語の原題を入れて、『lyrics』ってお尻にくっつけてもらえば、インターネットですぐ英語歌詞出てきますから。それを見ながら僕のこの本は読んでもらったらいいかなと。

(赤江珠緒)あ、いいですね。

(山里亮太)読んでから聴くっていうのも、めっちゃ面白いですね。

(町山智浩)すいません、ありがとうございます。

(山里亮太)あの耳馴染みある、普段よく聴いているあの曲が、こんなゲスい・・・

(赤江珠緒)『まさか!』ってことがありました!

(町山智浩)これだから、一番けっこう日本人がよく聴いているのだと、『Walk This Way』っていう歌があるんですよ。『Walk This Way』っていうのはRun-D.M.C.がカバーして、もともとエアロスミスが歌っていた曲なんですけども。僕もエアロのコンサートでもRun-D.M.C.のコンサートでも僕行って、その頃英語わかんなかったから、『イエー!』って。『Walk This Way!』ってコーラスしてたんですけど、歌詞を今回調べてみたら、童貞の男が童貞を捨てるいろんなパターンが書いてあるだけの歌詞でした。

RUN DMC『Walk This Way ft. Aerosmith』

(赤江・山里)(爆笑)

(町山智浩)『こんな風にして童貞を捨てました』とか。

(山里亮太)それをみんな熱狂しながら。

(町山智浩)熱狂しながら『Walk This Way!』って何なんだっていうね。

(山里亮太)『こうやって童貞捨てたぞ!』って。

(町山智浩)そうそうそう。あとね、この本の中で詳しく書いてますけど、『Brown Sugar』って歌があるんですよ。これ、ローリング・ストーンズのすごく有名な歌で。これ、ライブだとみんなサビのところですね。『I said Good Good』って言って、『Yeah Yeah Yeah!』のところで『Woo!』って言うんですよ。みんなで。観客全員がミック・ジャガーと一緒に『Woo!』って言いながら飛び上がるんですけど、これは歌詞をよく見ると、ある女性とミック・ジャガーがイタしていて、『僕はその時あんまり気持ちがいいんで、いいぞいいぞ、イクッ!って言った』って書いてあるんですよ(笑)。

The Rolling Stones『Brown Sugar』

(赤江・山里)(笑)

(町山智浩)これ、ミック・ジャガーがイッた瞬間の『Woo!』の・・・

(赤江珠緒)みんなで。

(町山智浩)みんなで。武道館とか東京ドームで3万人とか4万人で『Woo!』ってミック・ジャガーと一緒にイッてるというね。困ったもんだってことがだんだん分かってきて。非常に面白いですね。でね、今日はね、この本に書いてない・・・書いてあることを言ったら本が売れなくなるので、書いてない曲をガンガンやりたいと思いますが。

(赤江珠緒)お願いします。

(町山智浩)まず1曲目ですね。この曲聴いて下さい。はい!

Elvis Costello『Veronica』

(山里亮太)聞いたことがある。

(赤江珠緒)爽やかな・・・これ、あれですよね?

(町山智浩)これ、朝のズバ番組ヅラ番組ですね。朝の爽やかな番組のね、テーマ曲として長い間使われてきて。これ、サビまで聴いてもらった方がいいかな?朝からこれ聴いた途端に『会社行くか!』みたいな。朝って感じじゃないですか。これね、『Veronica』っていうタイトルの、エルビス・コステロっていうパンクロッカーの人が作った曲なんですけども。

これ、歌詞はね、ベロニカってこの人のおばあちゃんなんですよ。エルビス・コステロの本当の話。で、老人ホームに行ったら、かなり重度のアルツハイマーで、何を言っても反応しない。「おばあちゃん、大丈夫?元気?」っつっても、もう何もこたえない。目もどこ見てるのか分からない。でもこのベロニカっていうおばあちゃんには青春があったんだと。心の中ではその初恋の思い出とかが駆け巡ってるかもしれないけど、今の彼女は何も反応しないという歌なんですよ。

(赤江珠緒)えっ!?そういう歌なんですか?

(町山智浩)朝からそういう歌、聴かされるんですよ!実は。

(赤江珠緒)これ、ちょっと思ってたイメージと違いますね。

(山里亮太)もっと爽やかなね。『今日も1日、始まったよ!』みたいな歌じゃないんですね。

(町山智浩)爽やかなね。全然違うんですよ。これは。

(赤江珠緒)ちょっと切なすぎる・・・おばあちゃんのね。

(町山智浩)このエルビス・コステロさんってのは、曲はいつもポップなんですけど、歌詞はものすごく政治的な内容とか激しい内容とか歌ってるんですね。そういう人なんです。パンクだから。

(山里亮太)番組に起用した人は、その詞の意味とかを理解せずに、このテンポ感だけ・・・

(町山智浩)テンポ、この曲だけで使ってるんですよ。で、こういうのはすごく多いですよ。ここではだから・・・2曲目飛ばして3曲目でフィル・コリンズの『Separate Lives』、ちょっと聴いていただきます。これもみなさん、ご存知だと思います。

Phil Collins feat. Marilyn Martin『Separate Lives』

(赤江珠緒)何かこれ、映像。恋人同士がバーッと出会うみたいなね。そういう映像とかで見ますよ。『やっとめぐり逢えた』みたいなね。

(町山智浩)この歌は、そういう愛のテーマとかラブシーンとかに使われたりするじゃないですか。

(赤江珠緒)そう。ラブシーンですよ。絶対ね。

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