町山智浩『タミー・フェイの瞳』を語る

町山智浩『タミー・フェイの瞳』を語る たまむすび

町山智浩さんが2022年3月22日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で映画『タミー・フェイの瞳』を紹介していました。

(町山智浩)で、今の話(『愛すべき夫妻の秘密』)と非常によく似た話がもう1本の方なんですけれども。それが『タミー・フェイの瞳』というタイトルの映画なんですね。

これ、さっき言ったのは1950年代のテレビ番組なんですけど。この『タミー・フェイの瞳』の方は1970年代から80年代にかけて実在したテレビ。クリスチャンテレビというキリスト教徒向けのテレビ番組で大人気だった夫婦の話なんですよ。タミー・フェイっていう奥さんと、旦那のジム・ベイカーっていう2人がキリスト教徒向けに、子供向けの人形劇をしたり。特にこのタミー・フェイさんが歌がうまかったんで。神を讃える歌を歌ったりしてですね、すごい人気者になって。どのくらい人気だったかと言うと、そういうキリスト教テレビっていうのはキリスト教チャンネルというので放送されるんですね。クリスチャンチャンネル。

それは、コマーシャルが入ってないんですよ。では、どうやって収益を上げるか? それは視聴者から寄付をもらうんです。それで、電話をかけるんですよ。電話をかけてクレジットカードの番号を言って「30ドル、寄付したい」とかというのを受けて、寄付を受け取ったり。あとは小切手を受け取ったりして寄付を集めるんですね。それで番組自体を運営しているんですけれども。この夫婦、タミー・フェイとジム・ベイカーはその頃……1970年代頃にですよ、1週間に2人だけで1億円ぐらい。つまり100万ドルぐらいの寄付を集めていたんですよ。

(赤江珠緒)ええっ? 1週間で?

(町山智浩)当時。だから、もっとすごい額なんですよ。今だと、もっとはるかに大きい額なんですよ。それこそ、10億円とかなんですよ。それを1週間なんで。それが年間、50週やってたんで……まあ大金持ちのとんでもない大富豪になっていくんですよ。で、これが大問題なのは、クリスチャンテレビっていうのはテレビ局じゃないんです。法律上は宗教団体なんですよ。だから、無税なんです。税金がかかんないです。それで莫大なお金が入ってくるんで……だんだんちょっと感覚がおかしくなっていくんですね。この夫婦が。

もう豪邸を建てても建てて追いつかないので、その寄付を集めて遊園地を作りました。「ヘリテージUSA」っていう名前の遊園地で、しかもそれはフロリダのディズニーワールドに次ぐ巨大さです。

(山里亮太)ええっ? 個人で?

(町山智浩)個人ではないんです。宗教団体として。個人だと税金はかかるんです。宗教団体にしておけば、無税なんです。もちろん、聞いてて「それ、ヤバいんじゃね?」って思うわけですよね。で、ヤバいんです。大変なことになっていくんです。やっぱりギリギリのことをやってるんでね。で、そのお金の件だけじゃなくて、もうひとつそのジム・ベイカー……この映画の中ではアンドリュー・ガーフィールドさんがまたすごいメイクで演じてるんですけど。奥さんに子供2人、いるんですが。ほとんどエッチをしてくれないんですよ。タミー・フェイさんに。このタミー・フェイを演じているジェシカ・チャステイン、これをちょっと見てほしいんですけど。このメイク、すごいんですよ。

(赤江珠緒)うわっ、本当だ。元々の面影が全然ない。

(町山智浩)輪郭が違って、骨格が変わっちゃってるんですよ。

ジェシカ・チャステインの特殊メイク

(町山智浩)ジェシカ・チャステインって、なんていうか鋭角的な鋭い顔の人なんですけど。タミー・フェイはタヌキ顔なんですよね。要するに横幅の方がある感じで。だからこれ、骨格をめちゃくちゃ変えているんで。アカデミー賞の今回の特殊メイクアップ賞にもノミネートされていますね。で、ものすごくこういう感じの人なんですけども。だんだん化粧が濃くなって、目がとんでもない感じになってくるんですね。目のメイクアップが。

(赤江珠緒)そうですね。タミー・フェイさん本人の写真を見ても、目の周りのアイラインがすごいですね。

(町山智浩)最初はそうでもなかったんですけど、だんだんそうなったんですよ。これは旦那さんがエッチをしてくれないからなんですね。自分に自信がなくなってきて、どんどんメイクをするようになってきて。それでもうある日、気がついちゃうんですよ。この旦那さんが男のスタッフとなんかイチャイチャしてるんですよ。

(赤江珠緒)ええっ?

(町山智浩)で、最初はなんか「男同士、仲がいいのね」と思って見てるんですけど、どうも仲がよすぎるんですよ。まあ、ゲイなんですね。ところがこのクリスチャンテレビっていうのはその頃、エイズが流行して大問題になってたんで。そのクリスチャンの人たち、キリスト教原理主義の人たちは「ゲイは絶対に神がお許しにならない。エイズは天罰だ」っていう主張をしてたんですよ。ところが、本人はゲイだったんですよ。

(赤江珠緒)そうかそうか……。

(町山智浩)要するに、お金のこともあるし、そのこともあるし。もう二重、三重の嘘をついてくんですね。しかも、おしどり夫婦の演技をし続けるんですよ。それで、めちゃくちゃになっていくっていう話がこの『タミー・フェイの瞳』という実話の映画化なんですけども。両方とも非常によく似たね、仮面夫婦の話ですよね。夫婦自体がビジネスになってるから隠さざるをえないという話で。非常によく似ていて。アメリカという国がね、まだすごくその宗教とかに縛られていて。「おしどり夫婦でなければいけない」みたいなことをすごく芸能人たちに押し付けてた頃の話なんですけども。ただね、この女優さん2人、美人女優じゃないですか。その2人が、なんていうかわざとダウングレードさせてアカデミー賞を取りに行くってことは果たしていいのかどうか?ってことで、いろいろ疑問があるところなんですよ。だってそれって美人がそうじゃない人の役まで横取りしちゃう話じゃない? 独占しちゃうことじゃない?

(赤江珠緒)ああ、そうか。

(町山智浩)そう。それは逆によくないんじゃないか?っていう意見もあって。いろいろ揉めてる映画なんですけども。ちなみにこのジェシカ・チャステインっていう人は大金持ちです。

(赤江珠緒)ああ、この方自体が?

(町山智浩)この女優さんはですね、この映画のプロデュースを自分でしているんですけども。お金がすごくあって。この人、旦那さんがイタリアの貴族です。伯爵です。彼女は伯爵夫人ですね。しかも、高級ブランドのコートとかを作っているモンクレールのCEOです。

(赤江珠緒)モンクレールの? へー!

(町山智浩)経営者です。

(山里亮太)この人なんだ!

(町山智浩)そう。だから働かなくてもいいですけど、やっぱりアカデミー賞がほしいから、この映画を撮っているんですね。わざわざ不細工にして。

(赤江珠緒)そうですか!

(町山智浩)というね、いろいろとんでもない映画『タミー・フェイの瞳』と『愛すべき夫妻の秘密』です。今、流れた歌はジェシカ・チャステイン自身が歌ってるんで、歌もすごいんですよね。

(赤江珠緒)まあ、でも本当に同じタイミングでね、似た感じのやつが作られましたね。

(町山智浩)ぜひ、比べて見ると面白いと思います。『愛すべき夫妻の秘密』はアマゾンプライムで配信中で『タミー・フェイの瞳』はディズニープラスで配信中です。

『タミー・フェイの瞳』予告

(赤江珠緒)はい、わかりました。さあ、アカデミー賞はどうなるか? 町山さん、ありがとうございました。

(町山智浩)どもでした!

<書き起こしおわり>

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町山智浩さんが2022年3月22日放送のTBSラジオ『たまむすび』の中で映画『愛すべき夫妻の秘密』を紹介していました。
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