朝井リョウとドンデコルテ渡辺銀次 個人と共同体の関係性を語る

朝井リョウとドンデコルテ渡辺銀次 個人と共同体の関係性を語る ウチらと世界とエンタメと

朝井リョウさんとドンデコルテ渡辺銀次さんが2026年8月10日放送のNHK AM『ウチらと世界とエンタメと』で対談。「現実逃避」というトピックから個人と共同体の関係性という話をしていました。

(渡辺銀次)作品についてはちょっとしゃべらせていただきましたけど。我々2人の共通点ということで、この「現実逃避」についてのお話なんですけど。M-1でね、現実逃避がしたくてしょうがないっていうネタをやって。今、現実にむちゃくちゃ引き戻されていて。

(朝井リョウ)その「現実」っていうのはすごくお仕事が詰まっている状況であったりとか?

(渡辺銀次)はい。労働とか。

(朝井リョウ)労働という名の……。

(渡辺銀次)責任とか。その締め切りとか、宿題とか、そういうものがすごく増えて。

(朝井リョウ)多いですよね、きっと。

(渡辺銀次)はい。なんですけど逆に言うと夢が叶った状態でもあるんです。本来、やりたかったことをやれているはずなんですけど。だから「最悪で最高」というか。

(朝井リョウ)そういうことですよね。

(渡辺銀次)という状況になっているんです。で、この状況がなんかすごい面白いなと思うんですよ。どっちも思うんで。「最高だな」とも思うし、「最悪だな」とも思うんで。でも、これをネタにしたいんですけど……伝わる気がしないんですよね。「そうなんだ」って思われて終わりというか。

(朝井リョウ)なるほど。たしかに。

(渡辺銀次)笑いになるのかな?って。

(朝井リョウ)たしかに「笑いにする」っていうのはすごい難しそうですね。感覚としてはすごく……だから宿題とかがたくさんあることによってなんかむしろ、それにすごい取り組んでる時ってある種、時間をワープできるというか。宿題があることで飛べる時間っていうのはあると思っていて。

(渡辺銀次)その考え方、めちゃくちゃいいですね!

(朝井リョウ)やっぱりその宿題とか仕事とか労働みたいなものってすごく大変だし、しんどいけれども。なんか結局、これは共同体と個人の話になってくるのかなと思っていて。その、やらなきゃいけないことがあるっていうのは自分を共同体の一部にしてくれるわけですよね。

(渡辺銀次)うんうん。

(朝井リョウ)で、それがもちろんしんどい時もめちゃくちゃあるけど。「お前は共同体の一部なんだぞ」っていう目線をすごく増やすことによって生きながらえることができる時間はあるっていう風にも思っているところがあって。でもそれはその自分がいる共同体が目指している「前」に共感できていればの話で。

(渡辺銀次)そうなんですよね……。

(朝井リョウ)で、自分がその共同体が目指しているものに共感できていなかったとしたら、その責任とかはすごく自分を追い詰める苦しいものになっていくよなっていうことをその私の『生殖記』って作品は、笑ってもらえようなコメディとして書きたかったんですよ。で、そこでどういうシステムを採用したかっていうと、それを人間の目線で書いちゃうとすごくシビアだなと思ったので。それを魚としてしゃべるとか……人間としてしゃべるとたしかに観客からしてもあまりにも結構、ビシッとくるテーマだと思うんですよね。

(渡辺銀次)いや、刺さりましたね。たしかに共同体と価値観を共有してないといけないんですね……。

(朝井リョウ)そう。そうすると気持ちいいと思うんですね。責任も労働も。

(渡辺銀次)そうですよね。だから野心家の方々って、そうですもんね。たぶん、そういうエンジンと歯車が全部、噛み合ってる感じがありますもんね。

(朝井リョウ)だから本当に資本主義と手をつなぐことができれば、もしかしたらもっともっと……で、手をつないでる部分はもちろんお互いにあるとは思うんですけど。そこにすごく推進力を得られるか?って言われたら、そうじゃないっていうところがたぶんね、歪みとなっていて。

(渡辺銀次)そうなんです。でも頭ではわかってるから。「手をつながなければならない」っていうことは。でも「ならない」って思ってる時点でちょっと手をつなぎ方が甘いというか……。

(朝井リョウ)そうなんですよ。なんか、どの種類のお仕事がすごい気持ちいいんですか? 渡辺さんって。

(渡辺銀次)それはウケてる時なんで。

(朝井リョウ)ということは、やっぱり劇場?

(渡辺銀次)劇場もそうですし。お客さんがいる時。見てる方がいる時。

(朝井リョウ)舞台の上の人って本当、そうおっしゃいますよね、やっぱりね。「その場の反応が」っていうのは。

(渡辺銀次)これはでもホラーとかも一緒なんですけど。ゴールが1個っていうのが……そのウケる笑いとか、怖いとか、それがわかりやすいのがたぶん好きなんだと思います。見てるのが。見るのも、やるのもですけど。何をどう感じたらいいのか……「どうぞ!」って言われると「えっ、どうしたらいいんですか?」っていう風になっちゃうんですね。本当に優柔不断なのかもしれないですね。核の部分が。

(朝井リョウ)いや、でもその「笑い」というゴールがあれば、めちゃめちゃいけるっていう。その共同体そのもののゴールが「笑い」であれば、もしかしたらもう本当に大臣、大統領みたいなものを……(笑)。

(渡辺銀次)目指してるかもしれないですね(笑)。

あらゆることは個人と共同体の関係性に行き着く

(朝井リョウ)かもしれないけどっていうところで。私、あらゆることを考えていくと結局、その個人と共同体の関係性だなっていうことに割と行き着いてしまうことがすごくあって。

(渡辺銀次)そうですね。現実の形成はもう、自分らからしたら共同体がしてるわけですもんね。

(朝井リョウ)そうですね。共同体側が示してくれている現実ってものがあって。それと呼吸しやすいかどうかっていうのがあるなっていうのを思っています。

(渡辺銀次)昨日、健康保険料の請求が来まして。頑張って早起きして、それを銀行でまとめて一括で支払ったんですよ。生まれて初めて。

(朝井リョウ)生まれて初めて!

(渡辺銀次)はい。一括で。

(朝井リョウ)気持ちいい……。

(渡辺銀次)その毎月にしてたやつをまとめてパーン!って払ってやったんですけど。やっぱりちょっと、痛みが和らぎますよね。「ああー、やっと社会の歯車に……」って。

(朝井リョウ)この共同体の中の。

(渡辺銀次)あれはなんか、そうですね。現実に向き合った感じがありました。

(朝井リョウ)いや、そうなんですよね。そこの責任は気持ちよくもさせてくれるし。

(渡辺銀次)なんか、ホッとしました。「ああー!」っていう。でも同時に恥ずかしかったのが、なんかその支払いは普通のATMじゃないATMでできるんですよ。まとめて支払いを。それを自分は知らなかったっていう。額がでかいんで、コンビニとかでは受け付けない。銀行に持って行って、どうするのかを知らない。少額のやつだったら都度都度、現金で支払っていたんですけど。それをどうしたらいいのか知らないでウロウロしてるのとかもやっぱり……「40だぞ?」っていうのがやっぱり強くのしかかりましたね。

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共同体と個人の関係性、難しいですよね。共同体が共感できる目標を共有してくれていれば「頑張ろう!」という気持ちになるんですが、そこがズレているとずっと違和感を抱いて生きていけなくてはならないという……。お二人のトーク、とても興味深いです!

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