朝井リョウさんが2026年9月29日放送のTBSラジオ『アフター6ジャンクション2』の中で宇多丸さん、でか美ちゃんさんとハロプロ楽曲の魅力についてトーク。モーニング娘。’20『KOKORO&KARADA』を映画『オデュッセイア』と絡めて紹介していました。
(宇多丸)ということで続いて朝井リョウさん選曲でお願いいたします。どのグループのどんな楽曲でしょうか。
(朝井リョウ)はい。モーニング娘。’20の『KOKORO&KARADA』です。
(宇多丸)はいはい。だいぶ近年と言いましょうかね。
(朝井リョウ)そうですね。こちらはですね、今年の春にハロプロってサブスクが「超解禁」としてサブスク解禁したんですけども。その時にプレイリストを私もでか美ちゃんも作成する機会をいただきまして。私はそこで「なぜか泣けてくる曲」っていうテーマでプレイリストを作成いたしまして。そのトップバッターに選んだのがこの曲なんですね。で、この曲は私は「壮大な愛の歌」という風に受け取っているんですけれども。なんか、そういう壮大で美しいものって同時になんか喪失感とか寂しさ、悲しさみたいなものもなぜか同時に伴ってくるっていう説が私の中にあって。たとえば満開の桜とかも美しいけど、ちょっと怖さがあったりとかすると思うんですよね。
たとえばこの曲って歌詞の中に「君が好きさ そう好きさ もう daremo 止められない 怖くはないさ 二人一緒なら」っていう歌詞が出てきて。その運命の相手というか、この二人ならどんなところも乗り越えていけるみたいな力強い愛が歌われているんですが。メロディの美しさも相まって。たとえば映画『最強のふたり』とかもそうですけど。あの二人がすごく幸せそうにしている箇所って、でもなんかちょっと切なさがもうすでに襲ってくるというか。なんかすごく幸せそうにしているのに、だからこそ切なさが襲ってくるっていうその相反する感情がなんか美しいもの、壮大な愛っていうものが描かれていると同時に浮かび上がってくると思うんですよね。で、なんかその美しさと悲しみの同居みたいなものをより感じさせてくれているのが私はこれ、Bメロとサビの間に非常にストリングスの細やかな間奏が入っていて。まず、その位置がとっても独特だと思うんですよ。サビの前に間奏が入るっていう。
(宇多丸)たしかに、たしかに。
(朝井リョウ)で、そのメロディが私は本当にこのメロディ、ものすごく綺麗だと思っているので。なんかその美しさが悲しみを同時に持ち出してくれているなっていうことをすごく感じる曲なんです。で、もうひとつ感じるのがこれ、すごい壮大なスケール感を感じる曲だなと思っていて。ちょっとここで補助線として引きたいのが最近、その宇多丸さんもね、たくさん解説動画なども語られていた映画『オデュッセイア』。こちらも非常に壮大な規模の物語が描かれてたと思うんですけれども。特に映画版だと同時に今後、訪れる文明の終焉であったりとか、なんかそういうものも香っていたじゃないですか。あと罪ですよね。戦争の罪だったりとか。なんかそういう非常に壮大なスケールを描くものっていうのは、私は同時にその終焉であったりとか、その対極にあるものを匂わせるとも思っていて。
で、今回、このスケール感が一体どこから来てるのかな?っていうことをちょっと歌詞から私は考えたんですけども。この曲って最初と最後に同じ内容のサビの歌詞が出てきて。その歌詞が「太陽浴びて はためく帆のように 君が好きさ」という歌詞なんですね。で、まあ人を愛する姿勢を比喩するものとしてよく出てくるものっていうのは空だったり海だったりすると思うんです。「空のように広く」とか「海よりも深く」とか、そういう表現ってすごく出てくると思うんですけれども。今回、出てきたのが「太陽浴びて はためく帆のように」という表現が出てきて。これね、「帆」という一文字でその空も海も思い浮かべることができるんですね。
(宇多丸)たしかに……。
「帆」という一文字で空も海も思い浮かべられる
(朝井リョウ)そう。たった一文字なんだけど、空の広さと海の深さがどちらも思い浮かぶというところで私はこの「帆のように君が好きさ」って実はものすごい表現なんじゃないのかなと思っていて。
(宇多丸)しかも「風を受けて」だしね。
(朝井リョウ)そうなんです、そうなんです。で、まあすごい薄いですけど『オデュッセイア』にも帆がいっぱい出てきたので。
(宇多丸)たしかに(笑)。無理やり『オデュッセイア』につなげなくても……(笑)。
(朝井リョウ)帆がいっぱい出てきたっていうのがありますので、こちらも補助線に引きながら、この帆という表現の奥深さを味わいながら聴いていただくとまた一風、変わった風に聴けるんじゃないのかなという風に思います。
(宇多丸)はい。では朝井さん、曲紹介をお願いします。
(朝井リョウ)はい。モーニング娘。’20で『KOKORO&KARADA』。
モーニング娘。’20『KOKORO&KARADA』
(宇多丸)はい。モーニング娘。’20で『KOKORO&KARADA』でございます。あのサビ前の間奏入ってピアノがブルルンってすごい変わった展開だし。途中も抜けてキメのあれがビンビンって入ったりとか。それに合わせてポンと歌詞が放り出されてキュンと上がる高音に行ったり。めっちゃムズ! で、大海原でだからあれじゃない? ザバーンと翻弄されるそれこそ船のごとき感じっていうかね。そんなことかもしれないけど。
(でか美ちゃん)これ、サブスクでインストゥルメンタルも聴けると思うんですけど。インストゥルメンタルを聴くと本当にモーニング娘。がいかに難しいオケの上で歌って踊ってるかがわかるんですよね。とんでもない。
(宇多丸)さっきの『Do it! Now』まではまだほら、ガイドをさ、つんく♂さんが引いてくれてたんだけどこれ、もはやないもんね。
(朝井リョウ)この曲をオケで歌うって超難しい。
(でか美ちゃん)超すごいと思いますね。
(宇多丸)そうか、じゃあその進化してるってのもね、ちゃんと伝わるし。あとその帆の話はたしかにそんなこと考えて聴いてなかったから。
(朝井リョウ)嬉しいです。私はこの番組の藤村シシンさんの特集などを聞いて映画を見に行ったので。『オデュッセイア』を。このように帆について反応いただけて、嬉しいです。
(宇多丸)でもちょっと『オデュッセイア』……(笑)。
(朝井リョウ)そこの共通点「帆が出てくる」っていう。これしかない!
(宇多丸)ありがとうございます(笑)。ということで、朝井さんの選曲でございました。



朝井リョウさんの小説家ならではの歌詞読み解き、納得感がすごい! 藤村シシンさんの解説を聞いてから『オデュッセイア』を見ているのも素晴らしいです。