星野源さんが2026年3月17日放送のニッポン放送『星野源のオールナイトニッポン』の中で「もし、星野源が昔話や童話の主題歌を書いたなら」というテーマでリスナーから送られてきた歌詞をチェック。「自分だったらどのように書くか?」を解説していました。
(星野源)さあ、ここで今日だけの新コーナーをお送りします。主題歌のコーナー。どんなコーナーかといいますと『ドラえもん』とか『いきどまり』とかいろんな主題歌を私、やらせていただきましたよ。『恋』とかもそうだし、いろんな曲があります。そんな星野源がもし、あの有名な作品の主題歌を担当したら、一体どんな歌詞を書くのか? というのを想像して送ってくださいというコーナーです。
ジングルのコーナーは音楽ジングルでね、実際に作って音源として送ってくれるコーナーですけども。歌詞がない。歌詞でそういうコーナーができるんじゃないのという試みで、そういえばやってなかったコーナー。「やろうね」って言ってたけど、やってなかったので、ここでやりたいと思います。なんと先週ね、募集したのに1300通を超える応募がありまして。すごいですね。これはすごいことなんです。
そして先週、お伝えした通り、お題は童話や昔話。童話や昔話だったらなんでもいいよという感じです。歌詞をどんな風に……しかも一応、星野源っぽいのを想像して送ってみてください。「もし、星野源が書くならば……」みたいな感じでね。じゃあ1300通のうちの7、8通ぐらい。もう、精鋭たちでございます。まず、いきましょう。埼玉県、21歳「赤ちゃんコーヒー」さん。「もし源さんがマッチ売りの少女の主題歌を担当されたら」。マッチ売りの少女。ねえ。悲しい……俺、悲しいところまでしか知らないや。あの話ってあれで終わりなのかしらね? マッチを擦り終えて。悲しいよー……。そんなマッチ売りの少女の歌詞、じゃあ読んでみましょう。
「過ぎ去る人波の 残す雪の轍 灯す日々の証 帰らないまま」(笑)。これ、ところどころ、まんまみたいなところあるね(笑)。「叶わないまま 交わらないまま 揺れる光の中で 見ていた幻 かじかむ指の先で 探した温もり 灰になるまで」。ああ、いいですね。ありがとうございます(笑)。「人波の」とか、もうまんま。いいですね。「帰らないまま」とかね、「変わらないまま」みたいな歌詞、ありますけどね。いいですね。
そうだな。俺だったら、こう書かないです(笑)。まあ、そうなるよな。えっ、俺だったらどう書くんだろう? マッチ売りの少女。ねえ。それこそ、「マッチ、いりませんか?」って言いながら無視されて。「ああ、悲しい」みたいなのがたぶん「過ぎ去る人波の」だよね。えー、どうなんだろう? 俺、どう書くかな? 難しいね。ええっ? これ、ごめん。すごい時間、かかるかも。楽しい。これを考えるの。何だろうね? 今、パッと思いつくのは、これってマッチ売りの少女視点じゃないですか。当たり前なんですけど。
(星野源)マッチ売りの少女の境遇を歌詞にしているじゃないですか。で、たぶんそういうのはあんまり、やらないかもしれないですね。なんか、もうちょっと狭いことを歌うかもしれないですね。もう完全にマッチだけに主題を収めちゃうとか、するかも。その、マッチっていうものを通してマッチ売りの少女が全部、表現されてるみたいな歌詞にするとか。マッチ売りの少女を歌詞にしよう、じゃなくて何か違うことを歌ってるんだけど、「ああ、これってマッチ売りの少女のコアだよね」っていうことをなんか表現しようとするかもしれないですね。うん、面白いですね。いい。
さあ、続いて。ラジオネーム「ゆずポン酢」。「私は文章を書くのが好きです。このコーナー、絶対参加せねばと思い、メールを送りました。ウサギとカメ」。ああ、いいですね。「ウサギとカメの主題歌です」という。じゃあ、読みますね。「のろい歩みで行け あの山を越えて 跳ねる背を見送り 一人、草を踏みしめる 進む進む 君の歩幅で 眠るウサギの夢 踏み越えて たどり着いたその場所に 満ちる夕暮れ 君だけの景色」。これ、いいですね。これはもうなんか、僕っていうよりかは、ちゃんとしたEテレの曲っていう感じですね。ちゃんとしてる。ちゃんとウサギとカメをね、表現しようとしてますね。
そうですね、この方は僕っていうよりかは……って感じですね。いいですね。でもこれがやっぱり普通だよね。その普通に正攻法っていうか。マッチ売りの少女もそうだし。マッチ売りの少女っていうストーリーとか、ウサギとカメっていうストーリーを表現しようとすると。そうね。僕が書くんだったら、たとえばウサギとカメのストーリーを歌にするんだったら、そのストーリーを見ればいいじゃんってなるんですよ。だからストーリー全部を歌にしなくていいんですよ、そもそも。
ストーリー全部を歌にしなくていい
(星野源)で、何を考えるかっていうと……だいたいだけど、たとえばウサギとカメのエンディングで流れるとしたら、何を思うか?っていうことですよね。そのウサギとカメっていう話を全部見た後にかかる曲として、何がかかったら、どういう言葉から始まったら、その物語全部がたとえば普通に見て100だったものが150とか200になるか?っていう。そういう感じで考えるので。で、同じストーリーを歌詞にしちゃうと、もうそれは100から変わんないんですよ。一緒だから。「わかってるよ」ってなっちゃうので、やらないかもしれないけど。でも、これはちゃんとできている。だからその「歌で伝えましょうね」の答えとしては100点なんじゃないですかね、この2つとも。
東京都ラジオネーム「つばっき」。「浦島太郎の歌詞を考えていました」。いいですね。タイトル「縁(えにし)」。「海辺でただ あなたを待っていた 痛み、苦しみ、希望を抱いた 深海でただ あなたを思っていた 至極極楽 あなたを連れて あなたに与える 暗い底に光が満ちる 希望に似た 救いに似た 僕の未知とあなたの道が」(笑)。そうね、僕はもう未知を結構、使いますからね(笑)。「思いはつないだ 願いを託した 底へ込めた約束を」。いいですね。ありがとうございます。
「底」っていうのがね、「底へ込めた」って普通に耳で聞くと「あそこ」とかの「そこ」なんだけど歌詞上は海の底とかの「底」になってるっていうね。なんかこういうの、ありますよね。あとタイトルの「縁(えにし)」が……縁ね。そうね……(笑)。うん。いいですね。そう。「亀に焦点を当ててみました」っていう、これはありますね。僕もね。それこそ、浦島太郎ではない方とかね。それはなんか割とやったりするかも。面白いですね。そうね。「暗い底に光が満ちる」みたいな。これはでも難しいのは「あなたを待っていた」だともう「チラッ、チラッ」みたいなことになっちゃうから。その、いじめられていた亀がマッチポンプっていうか、助けられ待ちっていうか。なんていうの? わざといじめられていたみたいなことになっちゃうんで。「あなたを待っていた」って「あなた」って言っちゃうとね。もう浦島太郎に直結しちゃうので。
それってね、結構難しいかもね。その物語をの解釈がいっぱいあるのをグッと縮めるとかっていうのは、なんか難しいのかも。あまりやらない方がいいのかも。ちょっと待って? 何を俺はこんな真面目にダメ出しをしてるの?(笑)。いや、僕、歌詞が好きなんですよ(笑)。歌詞、好きだからね、こういう語りになってしまうのかもしれない。
熊本県「嬉し涙じゃじゃ丸」。「もしも星野源がピノキオの主題歌の歌詞を書いたら。何度も何度もついた嘘たちが」(笑)。「(『生まれ変わり』の)何度も何度も♪」じゃん(笑)。「いつまでも僕を苦しめる ついて気づいた本当 愛想笑いが鼻につく 本当の自分で生きれたら いいだろうな」。ああ、いいですね。ピノキオね(笑)。
いいですね。「愛想笑いが鼻につく」みたいなの、いいですね。鼻が伸びてる中で「鼻につく」っていいですね。こういうの、すごいいいですね。いいと思います。いや、でも当たり前だけどやっぱりみんな、その物語を歌詞にしようとするんだな。ねえ。面白い。物語を歌詞にしようとしたこと、あったかな? あんまりないかもね。俺、物語を要約しようとしてないんだなっていうのがすごい発見でした。面白い。
ラジオネーム「猫とこたつにイン」。「桃太郎の主題歌。ドドドドドドドドドド、ドンブラコ」。ひどいですね、これは。これはひどい! これは……これはいいですね。このぐらいのテンション、いいと思います。すごく(笑)。「ドドドドドドドドドド、ドンブラコ」。ひどい(笑)。いいですね。これしか書いてないよ。すごくいいと思います。うん。これ、ねぶり棒を差し上げます。これにあげるの? いいですね。
高知県ラジオネーム「追いやられたリモコン」。「鶴の恩返しの主題歌を星野源さんが作ったら。パタパタトン 羽をちぎって まだあなたと 嘘も契るの 闇の部屋の 小さな明かり パタパタトン 隙間にあるは ただ私の白い愛なの」。なるほどね。フゥーッ! ええと、僕だったら……ええっ、そうね。なんだろう? 「パタパタトン」ってこれ、ひとセンテンスで書いてるっていうか。「パタパタ」と「トン」を分けてなくて「パタパタトン」って書いてるんですけど。これ、すごい危険です。「パタパタ」とか、あと「トン」と置くとかっていうのって分かれてるじゃない? で、この「パタパタトン」ってたぶん歌詞っぽいとか、ポエムっぽいと思って書いてるんだと思うんだよね。で、これってすごい危険です。これを適当にやっては絶対にいけない。擬音を雰囲気で歌詞にしては絶対にいけないんです。
擬音を雰囲気で歌詞にするのは危険
(星野源)いけないっていうか、それはもう本当にただ、表層をなぞってることになってしまうんで。で、パタパタとトン……「トン」とは何なのか? で、「パタパタ」っていうのはその織っている音なのか、「羽をちぎって」ってその後にあるんだけど。羽がどう動いてるのか。で、羽をその後にちぎるので、またその音とも違う。で、「パタパタ」ってたぶん織っているんだと思うんだけど。で、なんかそこをポエム欲みたいなのがたぶんあると思う。ポエム欲っていうか……俺、ポエムっていう言葉をなんかちょっとバカにした言い方で使うのがすごい好きじゃなくて。でも、その詩、ポエムっぽさみたいなものっていうのはどうしてもやっぱりあるから。
でもそれを、詩のすごく作品たちの良いものとかは、なんかそれをザ・詩みたいな、ポエムっていうようなこともやるんだけど。それが全くなんていうか、上辺っぽくなかったりとか、恥ずかしくないとかっていうものがしっかりその大元としてあって。でも、それを表層として受け取って勝手にポンってやっちゃうと、なんかそういう風になっちゃって。でもそれをちょっとこうバカにした言い方みたいなのに使われるのがすごい悲しい気持ちにはどうしてもなっちゃうんだけど。だから「それを防止するためにも」っていうのもなんだかな?(笑)。そうね。そうですね。
あと「ちぎって」と「契る」が……ええとね、そうだな。僕がなんとなく思っているのは韻を踏むじゃないですか。ラップも。で、すぐ韻を踏むっていうのかな? 僕が気をつけてるのは「◯◯、◯◯……」ってすぐ韻を踏むパターンってあると思うんです。で、俺はラップは大丈夫なんだけど、歌でそれをやっちゃダメだと思ってて。なぜかというと、それはもう「韻を踏んでます」っていうのを表現してるだけになっちゃうんで。でも、その「韻を踏んでます」はラップにとってはものすごく攻撃力のあることであって、それはいいんですけど。歌だと、それをやるともう本当に「私の技術を見てください」になっちゃうから、なるべくわからないようにしたい。で、「韻を踏む」ってことが中心になっちゃっている歌ってすごく多くて。で、僕はそうならないようになるべくしたいと思ってはいて。
歌で韻を踏む時の注意点
(星野源)でも、やっぱり韻を踏んでると気持ちいいんですよ。だから、すごく遠く離したりはします。もう、韻を踏んでるってことがわからないぐらい。だから僕の歌って実はかなり韻を踏んでるんですけど、離れてるので。一番と二番とかは踏んでるけど、直後には来ないとかですね、そういうのが多いですね。うん。はー、これで良かったんだろうか、このコーナーは?(笑)。これで良かったんだろうか?
最後。「たまじ~、まだまだいける55歳」。ありがとうございます、いつも。「裸の王様」(笑)。怖いよぉー! 「心の中は空っぽ王様 透明な権力も 時を削って 誰もが偽る 何者でもない者は 何者にでもなれるんだ すべてを脱ぎ捨てろ 嘘も本当も地位も名誉も 体一つで戦うんだ 回せチンポコリン 振り下ろせチンポコリン」。これ、最後で台無しですぅー! 途中まですごい良かったのに……「体一つで戦うんだ」まで、すごい良かったですね。我慢できませんでしたね。残念! いや、でもいいと思いますね。
「透明な権力も 時を削って 誰もが偽る」っていう、僕はちょっとまだ意味がわかんないんですけど。「時を削って 誰もが偽る」。面白いですね。「何者でもない者は 何者にでもなれるんだ」っていうのは、すごいね、ありますよね。これはこういうパンチラインみたいな、すごいいいですよね。そうね、すごいいいと思いますね。なんだろう?
僕だったら「何者でもない者は何者にでもなれるんだ」っていうことを伝えたいんだとしたら、これは一応、説明文になるじゃないですか。「何者でもない者は何者にもなれるんだよ」って、誰かに言葉として説明したら伝わるじゃないですか。それは説明文なので、これを歌詞として伝えるにはどうしたらいいかな?っていうのは考えたりしますね。
何者でもない……たとえば一番で「何者でもない者」っていう歌詞が出てきて。で、その何者でもない者っていうのが一番の歌詞の中で、サビで変化があって。二番の頭では「何者にでもなる者」とか、なんかその一番の中で変化があって二番で同じ「何者でも」
から始まるんだけど、その後が違っているとか。「ああ、っていうことは、何者でもない者っていうのは何者にでもなれるってことか」っていうのが聞いた人の中で歌詞として花が開くっていうようなことをやると、歌詞を書いた瞬間に「来た! 気持ちいい!」っていう感じになりますね。なんか、いいですね。たまじ~にこれを説いてるの、めっちゃ面白いです(笑)。
すごいよ、皆さんこれをね、書いてくれるっていうのは本当にすごいことですよ。もちろんこの「僕だったらこうやる」とかって今、話しちゃいましたけど、素晴らしいことです。だって、歌ないんだから(笑)。メロディーないのに歌詞を書くって本当に難しいんだから。これはもう本当に素晴らしいことです。素晴らしい。皆さん、ありがとうございました。いやー、もう皆さんにこれ、ねぶり棒を差し上げるので。すごいな。面白いね。あと自分はこんなに話してしまうんだっていうことがわかって、面白かったです(笑)。ありがとうございました。
(中略)
(星野源)メールが来ています。熊本県「嬉し涙じゃじゃ丸」。「NHKさん、NHK俳句、NHK短歌に続き、NHK歌詞、はじめてください。もちろん講師は星野源先生でお願いします」。ありがとうございます(笑)。
神奈川県「ミルクティー夫」。「作詞のコーナー、オールナイトニッポン大学の星野教授による大学の作詞授業ですか?っていうぐらい、作詞のことを星野さんが教えてくれていて感動しています。学費はどこに振り込めばいいですか?」。
ああ、嬉しいね。じゃあ、俺の曲をたくさん聞いて、買ってください。それが学費なんで。まあ、CDを買ったりとか。じゃあ、あれだ。サブスクに何アカウントか登録して俺の曲だけをずっと流し続けてください(笑)。すごいね。そんなに喜んでくれるの、嬉しいね。
ラジオネーム「ジョイくん」。「主題歌のコーナー、源さんからは歌詞よりもトラックやメロディの話を聞くことが多い印象なので、リスナーから届いた歌詞をきっかけに『僕が書くとしたら……』と源さんの作詞家としての考え方を垣間見ることができて、興味深かったです。一夜限りなのがもったいない」。ああ、ありがとうございます。そうですか。
いや、たしかにね、なんていうか、野暮なんですよ。歌詞を話すのって。「ここってここがかかっていて、ここがこうなって、こうなっているんですよ」って1から100までもちろん、説明はできるんだけど、なんていうか野暮じゃないですか。めちゃくちゃ野暮なんで。「わかるっしょ?」みたいな気持ちでいつも曲を出しているんだけど、意外とみんなわからないっていうか。「そうか……」みたいな悲しい気持ちになったりはするんですけどね。でもそのね、ちょっと一部みたいなのがもしかしたら、見せられたかもしれません。ありがとうございます。皆さん、たくさん歌詞を送ってきてくれてありがとうございました。楽しいね。歌詞ね。
リスナーの皆さんが考えた歌詞をもとに星野さんが自身の歌詞の作り方を解説してくれていて、ファンとしては最高のコーナーでした。面白い!(笑)。