星野源 下北沢の思い出の定食屋・ごはん処おはちを語る

（星野源）で、僕は『ばかのうた』っていうのを2010年にファーストアルバムで出してるんですけど。2005年に自主制作でCD-Rで自分の弾き語りを出してるんですよ、僕。2005年ぐらいに。で、それは本当に超自主制作なんで町のCD屋さんとか、中古CD屋さんとか、そういうショップに自分で持っていって。「置いてくれますか？」「じゃあ10枚、買います」とか。そういう風にして納品していったものなんですよ。手作りで、全部自分で刷って。で、そのジャケット打ち合わせを大原大次郎さんとその定食屋でした思い出があるわけ。下北沢の。

で、そこは2005年とかから2010年ぐらいまではだいたい、あったんですよ。お店は確実に。でも、今の名前じゃない。そこで「ああ、そうだ！　Googleストリートビューをさかのぼってみよう」と思って、さかのぼってみたんだけど2009年ぐらいまでしかないわけ。。で、実際にその下北沢のお店って下北沢に行ったことある人ならわかるかしら？　マクドナルドの方……今はもう全然、駅は変わっちゃったけど。マクドナルドは変わってないじゃない？　で、そこからミスタードーナツの方に下りてく。王将とかがある方に。で、ミスタードーナツまで下りて、そこが交差点みたいになっているじゃないですか。で、そこをちょっと過ぎた左上にある定食屋さんだったんですけど。左上っていうか、左の2階にある定食屋さんだったんですけど。今は黒川食堂っていう名前なんですよ。

今は黒川食堂という定食屋がある場所

（星野源）で、そこが昔は黒川食堂じゃなくて、違う定食屋さんですけど。その2009年までさかのぼってみたら、違う定食屋さんだったんですよ。黒川食堂じゃなくて。「ああ、やっぱり違ったよね。元は」って思っていたんだけど、俺の知ってる定食屋さんじゃないわけ。「ああ、違うわ」と思って。そこがチェーンの定食屋だったっていうのはなんとなく覚えてるから「チェーン　定食屋」で調べて。あといろんな……たとえば大戸屋とか、あるじゃん？　その大戸屋も昔からあるから「大戸屋　類似店」とか、そういうのでめちゃめちゃ調べたわけ。だけども全く出てこなくて。「いやー、インターネットって、消えるなー。店舗の情報って、消えちゃうんだ」と思って。

消えちゃうっていうか、「どこかにはあるんだと思うんだけど、探れなくなっちゃうな」と思って。で、「うーん……」とかって言っていて。それをマネージャーとかが見てるわけ。俺が「うーん……」とか言ってるのを。「あれ、知らない？　こういう定食屋なんだけど」「いやー、わかんないですね。じゃあ、調べてみますね」とかって言って調べてくれて。俺がレコーディングしてる間に（笑）。

でも、結局わかんなくて。でも確実にそのお店があったテナントっていうか、その建物はまだ残ってるから。その建物自体はわかっていて。「じゃあもう、登記簿とか調べる？」ぐらいまで思って（笑）。結局、調べてないんだけど。「うーん……」って。でもなんか記憶の中だけにあって、インターネットで探せないものってやっぱりあるんだなって改めて思ったんだけど。それでもう仕方ないやと思って。でも俺、そこが結構好きなお店だったの。美味しかったなって思い出があって。でも今、どこにもないからたぶん、もう閉まっているっていう。で、レコーディングをしてたらその後、マネージャーが「源さん、これですか？」って。なんか、いろんな個人ブログとかを探してくれて。

で、その古い個人ブログに乗っかっている写真の片隅に現在のお店じゃない、Googleストリートビューの一番昔のに残っている2009年ぐらいの定食屋でもない、また違う定食屋の写真があったんですよ。片隅に写っていたの。で、よく見たら「おはち」っていう名前の定食屋だったの。で、そこだったんですよ！　それだったの。「これだーっ！」ってなって。それで「おはち」で検索すると、ちょっと出てくるの。ちょっと。そんなに大きくはないんだけど。そのメニューとかを写真に撮ってる人とかがいて。そのメニューを見て「そうそう！　揚げ出し豆腐定食が、ありましたよねーっ！　揚げ出し豆腐定食、好きでしたよ！」っていう。そんなのを思い出して、すごい気持ち良かった（笑）。

揚げだし豆腐定食が好きだった

（星野源）気持ち良かったのと「情報って消えるんだな。追えなくなっていくんだな」っていうのをすごく思いました。で、僕は『Yellow Magazine』っていう本をね、毎年イヤーブックを作っていて。この前からイエマガプラスっていうネットのあれになったんですよ。やっぱりそっちの方が接しやすいし、読む数は圧倒的に増えたわけ。本よりも。だけど、やっぱりネットの情報って消えていくから、本を出した方がいいっていうので、年1でそれをまとめたものを去年は出したんですよ。で、今年も今、作ってるんですよ。なので今年もまた出るんですけど。

で、その「紙にしておかないと消えちゃうよね」っていう意見で「じゃあ、本を出そうね」ってなったんだけど。それは正直、そこまでピンと来てはいなかった。「そこそこ残るもんなんじゃないの？　インターネットの情報なんて」って思っていたけど。今回のそれで「ああ、消えるわ」っていうのが改めて思ったという。だからなんか、紙って強いね。なんだかんだで紙で残るって……すごい超大昔の本とか、メモとか、意外と残っていたりするわけじゃない？　そこになんか人間のドラマがあったりさ。だからなんか、結論としては「イエマガ、が買ってください」っていう（笑）。「手に入れてね」っていう話なんですけど。

プラス、CDとか、そういうのでフィジカルのブックレットが付いてるCDとかさ。いるの、いらないの？っていうのもあるじゃない？　で、この間、僕が『Gen』っていうニューアルバムを出すことを発表しまして。5月の14日にリリースするんですけど。そのパッケージとかジャケットとかの詳細がこの間、出たんですけど。で、今まではずっと同じサイズで出したんだけど、今回はもう全然違う形っていうか、ちょっと大きめのボックスっていうか。ボックスの中にいろいろ入れようと。

それはもう、フィジカルのCDっていうものの価値というか、受け取り方がもう全然変わったから。僕が前にアルバムを出した時と。6年前かな？　『Pop Virus』の時ともう全然、受け取り方が違くて。もうアイテムとして、手に持っておきたいものっていう。そういうものをより、いろんなものを楽しんで作っていこうっていうコンセプトだったんで。

で、もう1個言いたいこととしてはだから「『Gen』を買ってね」っていうことなんですよ。手に入れておくと、いい体験になると思いますよっていう。宣伝にするつもりはなかったんだけど、宣伝になりましたという。そんな感じです。そのアルバムに関しての反響のメールなども来てるので、ちょっと後ほどご紹介しようと思います。それでは今日も3時まで、よろしくお願いします。星野源のオールナイトニッポン！

（中略）

（星野源）メールです。千葉市の41歳の方。「下北沢の定食屋さん、おはち。私もよく行っていました。店舗数は少なかったけどチェーン店で渋谷のスペイン坂にもありました。各席に置いてあった味付きのごま（醤油味？）が大好きでした。気づいたらどの店舗もなくなっていたので寂しいですし、今でも行きたいぐらいです」。ええっ？　なんかあった気がする。ごま。そうそう。チェーン店だったんだよね。たしかね。でも今はもう全くないの。

で、もちろんそういう名前のお店はどこかにあるのかもしれないんだけども、全然違くって。もうなんか、なんだっけ？　本当に完全に閉めたみたいなことが書いてありましたね。続いて。「定食屋のおはちについて、記憶の片隅にあるのがすき焼き定食が美味しかったというものなんですが源さん、覚えていますか？」。すき焼き定食は覚えてないなー。

今、作家の寺ちゃんが「豚の角煮が美味しかった記憶がある」って。たしかにあった気がする、みたいな。なんかね、店員さんの手書きのがコルクボードに貼ってあるみたいな、そういうちょっとアットホームなんだけどチェーン店みたいな、そういうお店だったような記憶があります。面白いね。今はもうないお店をみんなでこうやって思い出すっていう。ありがとうございます（笑）。あの、だからうん、お腹空いたな（笑）。揚げだし豆腐が食べたくなってきました。そんなね、おはちの思い出がある人がいたら送ってきてください。

下北沢の定食屋のおはち、ありましたねー！　なんか2回ぐらい行ったことがあるような記憶があるんですけど、全然おぼえてない……。肉じゃがとかが美味しかったような気もするけど、それも他の定食屋と混ざっていそうな気もします。