宇多丸 父・石川信義の教えを語る

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(宇多丸)「自分の意見を言える職業についた方がいいと思うよ」っていう。だから、ということはイコール、要するに会社勤めとか全般がもう、そんなこと言えるわけないっていう感じだろうから。

(高木完)まあ、そうね。それを暗にそういう言い方で言ってくれたっていうのは……でもその表現は素晴らしいよね。

(宇多丸)まあ少なくとも僕の性分には合っていたと思います。それはすごく。だから、それはすごい最高の教えだと思いました。

(高木完)それででも大学はさ、ちゃんと行って。

(宇多丸)大学にちゃんとっていうか。行ったのがそういう二流の進学校だったんで。

(高木完)いやいや、そんな言い方は……(笑)。

(宇多丸)二流進学校ですよ、本当に。で、なんか……そこは違うんですよ。そこはもっとね、ゲスいっていうか。見返したかったんですよ。学校でバカ扱いされてたんで、受験で見返したかったっていうね。

(高木完)それは高校生の頃の話?

(宇多丸)高校生の時。そうそうそう。だから受験はちょっと頑張りました。どうせバカだと思われてたから。「バカの佐々木」って言われてたんですから。佐々木が2人いて。バカな方の佐々木なんで。

(高木完)ああ、1人は優秀で?

(宇多丸)1人はすごい優秀だったんですよ。で、バカの佐々木だったんで、ちょっと見返したいなと思って頑張っちゃったっていうか。

(高木完)ああ、そういうナニクソっていうのはあるんだね? まあ、ナニクソっていう言い方もないけど。

同級生を見返したかった「バカの佐々木」

(宇多丸)そんなかっこいいもんじゃなくて。「でもこの早稲田なんか3科目なんだから、これとこれを勉強すれば、行けなくもないんじゃない? そんなに勉強しなくても……だって国語、得意だし。早稲田は英語、大したことないし。社会科もこれ、政治経済とか範囲、こんなに狭いから。これだったら頑張れば全然、行けるんじゃね? 俺、ちょうど広瀬隆を読んでるから社会のこと、興味あるし」みたいな(笑)。

(高木完)でも、本は好きだったんだよね?

(宇多丸)でも、それこそ完ちゃんとかが勧める本とか、読んでいましたよ。だからフィリップ・K・ディックとか読むようになったのも完全に完ちゃんの影響だし。

(高木完)ああ、ディッグね。でもあの頃のディックは翻訳がさ、結構わかりづらくてさ。

(宇多丸)そう。サンリオ文庫。かっこいいんだけどね。サンリオ文庫ね。

(高木完)かっこいいんだけど。これ、どう捉えていいのかわかんないなって。

(宇多丸)『暗闇のスキャナー』とか、後に山形浩生さんの訳で読んだら「えっ、こんなわかりやすい話なんだ!?」っていう(笑)。

(高木完)そうだよね。翻訳本はね。

(宇多丸)でも、その難解さがかっこいいと思っていたところもあって。

(高木完)あるある。わかるわかる。難しくていいっていうのもあるよね(笑)。

(宇多丸)そうそう。そんな感じ。だからすごいそこも影響を受けてるし。当然、広瀬隆さんとかもその影響で読み始めて。それまで社会のことなんか、何にも興味なかったのに。急に……「うわっ、俺たち今、すごいとこに住まわされてるんだ!」みたいなことになって。そんな感じなんで、だから大きいですよ。本当におべっかを言っているわけじゃなくて、本当に大きい。

高木完たちから受けた影響は大きい

(高木完)でもさ、それはさ、宝島とかでしょう ? あと、あれか。テレビとかラジオもやっていたからか。せいこうとラジオをやっていたりとか。

(宇多丸)そうですね。ラジオも『fm brand new wave』も聞いてましたし。MTVも見ていたし。

(高木完)それさ、変わってるよね。たぶん変わってたでしょう? きっと。あれもどれもこれも深夜だし。まあ、これも深夜ですけど。

(宇多丸)『天然ラジオ』とか。

(高木完)ああー。周りでいたの?

(宇多丸)あのね、そういうのがすごい好きな友達が何人かいて。で、一緒にクラブに行ったりとか。まあ、時効ですけどね。すいませんね。クラブ……だから完さんがDJするっていうんで潜り込んだりとか。

(高木完)ああ、そう?

(宇多丸)でもね、当時はやっぱり完さんとかヒロシさんはやっぱりちょっとワンランク上で。「ワンランク上」っていうと失礼になるけど。もうちょいカジュアルな、トゥールズとか。

(高木完)ああ、トゥールズね。

(宇多丸)トゥールズで、トロスになって。

(高木完)トゥールズって、西麻布にあった?

(宇多丸)そうです。あそことか。あそこ、カジュアルだったんで。

(高木完)DJゴングショーをやってたところだよね? 吉岡たかしが。

(宇多丸)僕、そこも出ましたし。

(高木完)ああ、出た? ぽんぽこたぬきのああいう被り物とかして?

(宇多丸)でもいとうさんの事務所でしたよね。当時ね。エンパイア・スネーク・ビルディング。

(高木完)ああ、エンパイアにいたんだよ。懐かしいな。急にそこらへん、フラッシュバックしてきた。

(宇多丸)なんとか食い込もうとして頑張っていたわけですね。

(高木完)まあでも結局、お父様のその言葉、パンチラインでそのままそういう風になって。

(宇多丸)親がだからね、父もそうだし。父は安田生命に入って、もう1回勉強し直して医者になった人だし。母も会社勤めをしながら大学に入り直して、勉強し直したんで。

(高木完)ええっ、すごくない? お父さんもお母さんも。

(宇多丸)そうそう。だからその、なんていうか「普通ルートじゃなくていいよ」感があったっていうか。人生、別に思ったところでやり直すことは可能だし。「とりあえず、やりたいことをやってみれば?」感があったのはすごくありがたいかもしんないですね。

宇多丸さんのお父さんの「自分の意見を言える職業についた方がいいと思うよ」というパンチライン、とても素敵ですね。結果的に宇多丸さん、そのようなお仕事で長年活動されているので、そのお父さんの言葉が生きているということなんだと思います。かっこいい!

TOKYO M.A.A.D SPIN 2025年3月15日放送回

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