宇多丸・磯部涼・ダースレイダー クラブと風営法の現在を語る

宇多丸 ZEEBRA ダースレイダー クラブ規制 改正風営法成立を語る 宇多丸のウィークエンド・シャッフル

ライターの磯部涼さんとラッパーのダースレイダーさんがTBSラジオ『タマフル』にゲスト出演。『風営法問題を考える2013』ということで、クラブ営業と風営法問題について語っていました。

(宇多丸)今夜お送りするのはこちら。『いま、話はここまで進んでいる。風営法問題を考える特集2013年秋!』。昨年9月、この番組で『いま改めて考える風営法』として、取り締まりが強化されているクラブ業界の特集をお送りしました。ここで言う『クラブ』とは念のために言っておきますけど、女の人がいてお酒を飲んだりする、いわゆる銀座のクラブ的なクラブではなく、音楽を踊って楽しむディスコに近いクラブでございます。あれからおよそ1年たちましたが、いま風営法をめぐる議論はいったいどこまで進んでいるんでしょうか?また、クラブの現場サイドからは具体的にどんな行動が起こっているんでしょうか?というか、起こっているということですね。風営法をめぐる最新の状況を、具体的にわかりやすくレポートしていただきます。出演はこのお二人。まずは前回の風営法特集でも登場していただきました、音楽ジャーナリストの磯部涼さんです。

(磯部涼)こんばんは。よろしくお願いします。

(宇多丸)よろしくお願いします。頼りにしています。僕もだいぶ不勉強なので、いろいろ勉強させていただきます。そして、今年8月、高校生ラップ選手権特集でも出演していただきました、ラッパーのダースレイダーさんです。

(ダースレイダー)はい。よろしくお願いします。

(宇多丸)僕的にはこのお二人がね、この一件を通じて同じテーブルについているという件がね・・・

(磯部涼)日本語ラップ最大のBeefがっていうね。

(宇多丸)最大・・・自分で言うなよ!

(磯部涼)すごいニッチなBeefっていう。

(宇多丸)元々はね、ちょっとピリピリしていた時もあったけど、そんな感じでやっているというのも面白いんですが。まず、昨年9月にお送りした風営法問題を考える特集のおさらいをしておきたいんです。どんなあたりまで話が行ったかっていうことで。昨年8月、磯部くんが編集した単行本『踊ってはいけない国、日本 風営法問題と過剰規制される社会』をきっかけに、特集を組みました。

(宇多丸)で、今年の4月にはこの本の続編、『踊ってはいけない国で、踊り続けるために 風営法問題と社会の変え方』という本も出版されております。

(宇多丸)大きなきっかけとしては、2010年末に大阪のアメリカ村でクラブの摘発があって。大阪が割と締め付けが厳しく、その年明けから関西のクラブ摘発が厳しくなり、クラブの営業が難しくなったと。なんだけど、風営法の改正された時代と、『違法だ違法だ』って言うけど法律自体が時代とマッチしていないんじゃないか?ということで、クラブ業界内外からいろんな疑問の声もあがっていたんだけど、同時にやはり現状営業しているお店の問題なんかもあったりして。ちょっと放置されてきた。それこそクラブっていうのが80年代半ばぐらいに・・・

(磯部涼)クラブっていう名前で。それまでディスコだったものがクラブに。

(宇多丸)なり始めて以降、一種僕らが見て見ぬふりをしてきた部分というかね。それが明らかになってきた。磯部くんはこの問題に対して、割と乱暴な言い方で反発というか、表明することもできちゃうんだけど、ちょっとそういうことは言いたくない。そういうやり方をしたくなかった。

(磯部涼)そうですね。いままでそういうのが、あまりにも多すぎたがために現状が変わらなかったっていうのもあるのかな?『ファック風営法・ファック権力』・・・

(宇多丸)『ファックバビロン』みたいな。

(磯部涼)その文化に関わっている人は、意外に言っちゃいがちなことっていうのを。

(ダースレイダー)最初はそこからスタートするものだとは思うんですけど・・・

(磯部涼)それが間違っているというわけではないんだけど、実際に法律を変える、社会との接点をちゃんと模索するっていうので言ったら、その言い方って頭がいいの?戦略的にどうなの?っていうのを思ったところはあると。

(宇多丸)本当に、最終的に変えたいと思っているならばもっとやり方があるだろうと。で、ならどうする?というところでね。実際、前回の9月の特集だと、どんな感じの動きがあるってことを言ったかというと、署名運動がありますよなんて話もね。『Let’s DANCE』署名運動があったり。なんだけど、同時にクラブ側も自主努力とか自主規制とかね、ちゃんと線引きみたいな。自分たちこんだけやってますよと示す必要はあるんじゃないか?と。

[リンク]『Let’s DANCE』署名運動

(磯部涼)法律に問題があるのは、それはそうだと。でも、クラブ側にも反省すべき点は実はあるんじゃないか?と。そのバランスを取ることが重要なんじゃないか?って話に前回はしたと思いますね。

(宇多丸)あと、やっぱりクラブ業界っていうのはそれぞれ個々で営業してるけど、ちゃんと業界同士が団結するような業界団体とか、そもそも必要じゃないか?とか、そんな話をしてたんですよね。

(磯部涼)カラオケなりゲームセンターなり、他の業界は業界団体っていうのがあるんですけど、クラブにはそれが存在しない。

(宇多丸)団結して自分たちの業界の権利を守ってきた歴史っていうのが、他の業界はあるってことですね。

(磯部涼)あるいは自主規制を自分たちでしたりとか。

(宇多丸)なるほどなるほど。というような提案があったと。で、最終的には法律、風営法っていうのがあるから、それに対して文句を言うだけで、良くないなと思っている現状は放置されているっていうのが、この問題だけに限らず、僕ら割とそういう態度取りがちだけど、法律っていうのは自分たちで変えることが可能なんだっていう。

(磯部涼)特に風営法っていうのは、移り変わりゆく文化、風俗っていうものを規制する法律なわけで。どんどん変わっていかなければいけないんですよね。だからこそ、こういう風に変えたほうがいいんじゃないか?っていう提案なりをしていくことが重要なんじゃないかっていう。

(宇多丸)はい。変えることもできるぞということを考えてみようというところで、前回の特集は終わっていたということでございます。というところまで来ていたという点を踏まえて、さあ1年たった2013年秋、現在どこまで話が進んでいるのか?CMの後、具体的に伺っていきます。

(CM明け)

(宇多丸)ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル、今夜は『話はここまで進んでいる 風営法問題を考える特集2013年秋』をお送りしております。お相手は音楽ジャーナリストの磯部涼さん、そしてラッパーのダースレイダーさんです。よろしくお願いします。ということで、ここからが本題です。いままではおさらいですけどね。今夜、これからお話する内容をわかりやすく説明してもらうため、予め内容をレストランのお品書きのようにまとめて持ってきていただき・・・このくだり、いるのかな?レストランのお品書きのようにまとめて持ってきていただきました。いまから私、メニューを読み上げていきたいと思います。

(ダースレイダー)はい。

(宇多丸)メニュー1:なんと!あのZeebraがジャケットを着るように!? メニュー2:なんと!あのダースレイダーと磯部涼が和解!? メニュー3:なんと!クラバーたちが街に繰り出して◯◯活動を開始!?

(ダースレイダー)あやしいですね、これ。

(宇多丸)メニュー4:なんと!クラバーたちが、あんな場所にアレを差し入れしている!? メニュー5:なんと!業界団体を作って自主規制ルールを考えている!?

(ダースレイダー)ホントかよ!?

(宇多丸)(笑)。これ、最後のところだけでいいんじゃないの?だって。なんか最初の2つとか、完全にネタじゃねーか?っていうのもあるんだけど。

(磯部涼)HIPHOPを知っている人にはデカい・・・

(宇多丸)気になる。たしかにこんなことしてしまったからには、話題にしないわけにはいかない。このメニューの中から、気になったトピックを私の方からオーダーしていくという体らしいですよ。じゃあ、本題は後にあるのはわかっているけど、『なんと!あのダースレイダーと磯部涼が和解!?』。これはどういうことなんですか?

(ダースレイダー)僕と磯部はですね、犬猿の仲だったんですけども。

(宇多丸)これ、要するに磯部くんがダースレイダーがやっている、マイカデリックのアルバムとかさ、酷評なんかしてね。

(ダースレイダー)いま思い出しても腸が煮えくり返る!

(宇多丸)(笑)

(磯部涼)メジャー第一作目の一曲目で俺をディスるっていう。

(宇多丸)あー、それはすごいですよ。

(ダースレイダー)あと、それが『blast』っていう雑誌でその批評が載ったんで、『WOOFIN’』っていう同社の別の雑誌で反撃するっていう。

(宇多丸)結構Beefやって。それ、どんぐらいの時期ですか?

(ダースレイダー)10年ぐらい前?

(磯部涼)ちょうど10年前です。

(宇多丸)はいはい。まあ、磯部はこういうところ、ありますよ。僕も、俺たちのことを執拗に攻撃してくるからね。俺、そこは諦めてるけどね。それはいいんだけど。それが今回の・・・

(ダースレイダー)で、この前回の放送とかも聞いていたりもして。ちょうどね、『FUCK風営法』っていうのが、BAZOOKA!!!で。高校生ラップ選手権もやっている番組で、特集が組まれて。僕、それにちょっと呼ばれて。

(磯部涼)そう。タイトルが『FUCK風営法』っていう(笑)。

(ダースレイダー)そう。そこに呼ばれた時に、ちょっと勉強していって。それでしゃべったら、『そんなダースさんしゃべれるんだったら、今度イベントの司会をやってほしい』って、風営法のイベントの司会をたのまれたんですね。そこに磯部がトークゲストとして出てて。それがちょうどこの本、最初の本が出たばっかりのころで。で、トークで出るんだったら読んでいった方が・・・って読んだら、『おお、なるほどなるほど。これは良い本ではないですか』と。いうので、実際そこで話した後に、俺からメールして、『もうちょっと風営法のことを教えてほしいんだけど・・・』ってことで。ご飯食べながら、カレー食べながら、どうすか?って。

(磯部涼)2人で食事に行ったりとかして。

(宇多丸)おおー!

(ダースレイダー)っていうところから、なんだかんだでそっからほぼ1週間から2週間に1度くらい会っている。

(磯部涼)この後で話が出ると思いますけど、いろいろな動きがこのあたりから出て。そんぐらい密にコミュニケーションを取ると。

(ダースレイダー)やっぱりシングルイシューっていうのが、人をまとめる力があるっていう。

(宇多丸)ああ、なるほどね。共通のね。

(磯部涼)HIPHOP感は全く合わないんですけど、その風営法問題っていうところに関するシングルイシューだと、では共闘しようではないかと。

(宇多丸)じゃあこの問題が解決したら・・・

(磯部涼)いきなり殴り合い。

(ダースレイダー)カーン!っていう感じで(笑)。

(磯部涼)改正がゴングみたいな感じ。

(宇多丸)そんな日々が来るといいねということですよ。

(ダースレイダー)改正が決まった瞬間から戦いがまた、みたいな。

(宇多丸)集まりとかが頻繁にあるっていう件が、たとえばメニュー1の『あのZeebraがジャケットを着るように!?』って。これ、関係してるっていうことですか?

(ダースレイダー)あの、前回の放送で、やっぱりクラブ側もやることあるんじゃねーの?みたいな話は、クラブ業界側も感じてはいて。ただ、前回もそういう話は出たかもしれないですけど、いわゆるクラブ自体を経営している事業者さんっていうのは非常に表に出にくい状況っていうのがあって。

(磯部涼)現状、なかなか難しい中で。

(宇多丸)要するにグレイゾーンでね。

(ダースレイダー)グレイゾーンで経営している中で、『私、こういうことやっています』っていうのが、ある種の告白になっちゃうとか。っていうおそれがある中で、じゃあ名前を出して立ち上がれるのは誰か?って言ったら、すでに名前を出して活動しているアーティストがまずはやるべきじゃないか?というので。

(磯部涼)他の業界団体はだいたい店舗の経営者っていうのがやっているんですけど、クラブっていうのは、アーティストが出演するものだったら、じゃあ・・・

(宇多丸)恩恵も受けてますね。当然。活動フィールドとして。

(磯部涼)俺たちがやろうじゃないか!っていうのが。

(ダースレイダー)それで、昨年からの大きな流れの中で、ダンス議連っていう議員連盟が立ち上がったんですけど。

(磯部涼)ダンス文化推進議員連盟。超党派で、どこの党っていう偏りがなく、いろんな党の中で、そろそろ・・・ダンスって言っても、もちろんクラブもありますけど、社交ダンスファンだったり、風営法の中でいろいろ規制を受けているダンスっていうのは、クラブだけではなくて。そういうのを諸々変えていった方がいいんじゃないか?っていうのを目的とした。

(宇多丸)当然議員さんの中にもそういう問題意識の方がいらっしゃってという。

(磯部涼)実際ね、いまもう若い議員だとクラブに行った経験があったりとか。普通に好きな人もいっぱいいるんですよね。

(宇多丸)楽しいクラブを知っている人がいっぱいいる。

(ダースレイダー)その議員連盟っていうのが4月に立ち上がったんですけども、それで立ち上がった際に、これから問題を解決していくにあたってヒアリングをやりたいと。それで、『まずじゃあクラブがいろいろ問題があるみたいだから、クラブの意見を聞きたいんだけど・・・』っていう話になったんですね。だけど、その時、衆議院議員会館とかに事業者さんが直接行けないっていう状況があって。じゃあ誰に聞いたらいいの?っていうことを言われた時に、じゃあとりあえずいま問題意識を持っているアーティストで集まって、ヒアリングに対応しなきゃいけないということで、『クラブとクラブカルチャーを守る会』っていうのを、当時集まって風営法をどうしようか?っていうのを考えていたメンツでまずは立ち上げて。

(磯部涼)いちばん最初は勉強会みたいなのを開いていて。そこから実践に。いま、理論的なことはだいたいわかったから、これから実践に行こうかっていうところでその団体を立ち上げて。

(ダースレイダー)で、そのヒアリングが日程が決まっていたから、それまでにみんなで考えをまとめて、ちゃんと団体を作って対応して窓口を作んないと、クラブ側の話を聞きたくても誰に話聞いたらいいかわからないし。そもそも誰も出てこないんだったら、問題なんてねーんじゃねーの?ってことにされて、クラブが後回しにされたり、それこそ風営法が改正される機運の中でクラブがそこに乗っかれないっていう。結構タイムリミットがすごい短い問題が出てきて。で、事業者さんが出てこれないんだったら、とりあえず誰か出て行かないとっていうことで集まって。そん時は本当毎日のように集まって、どうしようか?どうしようか?っていう。ヒアリングでこういう質問があったらこう答えようとかってシミュレーションとかをして。

(宇多丸)なるほど。

(ダースレイダー)それで集まった時に、会を作るんだったら会長は誰にしようか?って行った時に、Zeebra会長がね・・・

(宇多丸)でもやっぱりね、僕ら周りでいちばんスポークスマンというか、人に知られているし、華もあるし、キチッと話すこともできるし、というね。

(磯部涼)でも、やっぱりジブさんはそれの反面、不良みたいなイメージのかっこよさとかもあったりするわけじゃないですか。だからこそ、これまで表立ってそこまで社会運動をやって来なかったのかな?ちょっとあったのかもしれないけど。

(ダースレイダー)結構本人的な転機にもなったというか。やっぱりここはちゃんとやらないとダメだなっていうターニングポイントにもなっていて。

(磯部涼)そして朝日新聞にね、ちょっと前ですけど、2ヶ月ぐらい前かな?さっき言ったダンス文化議員連盟の秋元司議員とZeebraさんが対談をして。そこできっちりジブさんがジャケットを着ている。

[参考リンク]クラブ規制の問題点は? 秋元議員×ジブラさん対談

(宇多丸)まあ、ジャケットぐらい着るだろ!別に。

(磯部涼)ただ、それが出た後に、『ネクタイは締めなさい』みたいな批判もあったんだけど。まあ、とりあえずジャケットを着たジブさんはあったよということで。

(ダースレイダー)まあ、ちなみにあのニューアルバムのアー写ではネクタイもしているっていうね(笑)。

(磯部涼)それの反省も踏まえて(笑)。

(宇多丸)いまどき別にHIPHOPアーティスト、別にスーツぐらい着るしね。別にね。でもまあそういうところまで来ているっていう象徴的な。でもジブさんが表舞台立ってくれれば、すごいですよ。これはいいですね。

(ダースレイダー)ジブさんも毎回ミーティング、ちゃんと出て。真剣に話し合いして。

(宇多丸)逆にそういう不良的なイメージがある人がやるからこそのさ。大きいよ。すごい大きいよ。

(ダースレイダー)そこもたぶんジブさん本人もわかっていて。やっぱり話を聞いてもらわなきゃいけない層ってクラブに来る人なわけだから、そういった人たちに発言力がある人じゃないと。急に、誰だかわかんないスーツ着たおじさんが、『君たちちゃんとしなさい』って言っても、なかなか実現しないものを、やっぱり少しは。で、そのクラブとクラブカルチャーを守る会は僕も参加して。僕は広報担当をやっておりまして。他にもハウスDJの木村コウさんだったり、EMMAさんだったり、テクノDJのQ’HEYさんだったり、COLDFEETのWatusiさんだったり。結構メンバーも幅広くて。

[参考リンク]クラブとクラブカルチャーを守る会Facebook

(磯部涼)そうそうたる面々。

(宇多丸)はい。これ、一応念のため。これ、みなさん無償っていうか、ボランティア活動なんですよね?

(ダースレイダー)はい。来ましたよ。僕の金にならない活動の、いま究極とも言える(笑)。

(宇多丸)究極とも言える金にならない活動。

(ダースレイダー)すごい時間、拘束されてますね。これにね。

(宇多丸)あ、そう。お二人とも、大変・・・

(磯部涼)僕はちょっと距離を。そのクラブとクラブカルチャーを守る会、CCCCっていう風に略したりもしてるんですけど。それはまあ、一応アーティスト。さっき言ったように、事業者が立ち上がらないから、アーティストがまず表に立ってっていう形なので、僕はライターなのでアドバイザー的に。他にも弁護士の人とか、いろいろ相談をしつつアーティストが中心となっていま動いているという感じで。

(宇多丸)でもずいぶん。1年たったらすごい心強い感じになっては来ている。

(磯部涼)それこそ僕の1冊目の『踊ってはいけない国、日本』っていうのが理念。こういう風にした方がいいんじゃないの?っていう理念を紹介する本で。その後に出した『踊ってはいけない国で、踊り続けるために』っていうのは実践。実践に踏み出すための。

(宇多丸)1冊目でちょっとダウナーなことを言い過ぎたじゃないけど、それだけじゃしょうがないねっていう。

(磯部涼)あと、美学的なことも結構踏まえて。もちろんダンス文化も重要なんだけど、でもそれで実践をしていくんだったらこっちも妥協しなきゃいけないこともあるし。より一層泥臭いやり方が必要になってくるということで、まさにその後にやった実践としてCCCCの立ち上げっていうのがあって。いまその真っ最中っていうことですね。

(宇多丸)なるほど。で、そっからまさにさっきのいちばんね、これがメインの話なんでしょ?どうせっていう。このメニュー5。『業界団体を作って自主規制ルールを考えている』という話になるという。これ、まさにいま言った業界団体、そういう方向にいま動いていると。

(ダースレイダー)まずその風営法云々ということで、『FUCK風営法』っていうところから始まっているんですけども。やっぱりこの国で普通に店を営業してくっていう時に、そのスタンスでやって行けるのか?っていうのもあって。まず自分たちって何やってるんだっけ?っていうことをちゃんと確認しなきゃいけないっていうのと。そもそもクラブをやっている人たちがどういう考え方なのか?っていうのを、誰もいままでまとめて聞いてなかったっていうのもあったので、まずはその事業者さんがいまの状況に対してどういった考えを持っているのか?っていうのを、まずまとめて聞かなければならないっていうところから。もう、なにもなかったんですね。特に東京のクラブとかは、結構・・・『クラブって何軒あるの?』っていうこととか。

(宇多丸)そんぐらい把握することから。

(磯部涼)カラオケだったらカラオケの業界団体がいて。それが加入率100%ではないんですけど、だいたい都内にカラオケ何店舗あるのかとか、調べればすぐ出てくるようなもんなんですけど。クラブが好きな人でも、クラブって果たして東京に何店舗あるの?っていうことすらわからない。で、だんだん細かく見ていくと、『あれってクラブなの?』っていう微妙な・・・『あれって、バーでしょ?』っていう。

(宇多丸)はいはい。ありますよね。微妙な広さのね。

(磯部涼)『あそこはすごい大っきいけど、1回も行ったことないな』というところもあるでしょうし。把握してるっていう人が、実はほとんどいないっていう状況ではあるんですね。

(宇多丸)なるほど。本当にゼロからのスタートなんだ。

(ダースレイダー)で、外から見たら『クラブって、ああいう場所でしょ?』って一括りにされてしまうわけだから、『あそことウチは違う』とか言っている場合ではなくて。

(宇多丸)それがね、結構起こりがちだっていう話もね、前出ましたね。

(磯部涼)なかなかその・・・元々クラブっていうのはディスコっていう78年サタデーナイトフィーバーの大ブームがあった時に、もう国民的ブームになったようなものがあって、その影から出てきたのがクラブで。ですから、みんなちょっとアンダーグラウンドっていうか。隠れ家的、隠れ家風な場所として。

(宇多丸)そもそもグレイゾーン的な存在として。看板なんか出ていないとか、そういうのもあったりしたからね。

(磯部涼)そういうやり方をやっていたから、店同士のつながりっていうのがあんまりなくって。

(宇多丸)それをじゃあこれから、作っていこうよっていう。これ、大変じゃないの?

(ダースレイダー)まあ実際店同士のつながりがないっていうのと、そういった中でサバイブしてきた人たちが店を経営しているため、やっぱり我が強いというか。『ウチはこういうやり方でやってきたから。他は知らないけど・・・』みたいな話を割と。個性的な方が多くて。実際、実は10年前とかに、1回そういった事業者団体を作ろうっていう話があったらしいんですけど・・・

(磯部涼)実は何回かあるんですけど、毎回仲間割れしてしまうという現状・・・

(宇多丸)まあ、無理からぬ感じもしますが。

(ダースレイダー)で、今回、僕たちが改めてそうやって呼びかけた時に、一部事業者さんから出たのは、やっぱりどっかの事業者が先頭立って旗振ると、『あそこがやるんだったらウチはやらない』とかそういうことが起こりうるから、それこそZeebra会長とかがやってるっていうことになると、みんなとりあえず集まりやすくなる。

(磯部涼)それこそアーティストっていうのはいろんな箱に出てるわけですからね。その箱に所属しているっていうディスコの時代と違って、DJはフリーランスですからね。基本的に。

(ダースレイダー)だからまず僕らが、それぞれが出演している事業者さんとかに声がけをして。まずいまの状況に対してどう思っているのか?

(宇多丸)当然、でも10年前とくらべて危機感はただ事じゃないでしょ?

(磯部涼)だからいままでもいろんなタイミングで業界団体を立ち上げようっていうのもあったんですけど、それはやっぱりちょっと黙っていれば・・・取り締まりが厳しくなる時もあるけど、黙っていればいいんじゃないの?って思ってしまったのもあるかもしれないですね。でもただ、いまはもう、これは声をあげないといけないし。しかも実際、変わるかも?みたいなのが追い風になって、一応協力的にしていただいてるっていう。

(ダースレイダー)結構いろいろな数の事業者さんが集まって、話を聞いてくれる段階までは来ていて。ただ、風営法改正!とか、ダンス項目削除!みたいないろいろな主張を、事業者さんがそもそも望んでいるのか?って。要は業界団体をまとめて行くんであれば、事業者さんが『そんなことやってほしくない』っていうのに勝手に旗振っててもしょうがないわけで。まずは事業者さんが、どういう風なビジョンでクラブ業界っていうのを作っていくのか?っていうのをまとめて。ある種の共通ビジョンの上に乗っかってもらわないことには・・・

(宇多丸)そりゃそうだ。

(磯部涼)その中には、やっぱり大きな声を出してくれるなっていう意見もあって。

(宇多丸)あー、まあね。そういった人を、どうやって説得していくの?

(磯部涼)でもただ、さっきも言ったように、ちょっと時代が変わってきたっていうことで。

(ダースレイダー)で、引き続いてダンス議連とかが国会に法案を提出するんだったら窓口を作れという話はすごい出ていて。かつ、警察もクラブ個々の店舗に苦情が出たら行ったりしているけど、そもそもクラブっていう人たち全体に話ができないから、そういった団体を作ってくれるんだったら、そこと話してもいいよっていうような意見も警察側からも出ている。ということが、必要といまされていますっていう前提で集まってもらう。

(宇多丸)なんかこう、お上サイドっていう言い方は良くないけど、そっちとこっち。少しずつ接点をいま、探って寄ってる・・・

(磯部涼)中間段階的な。

(ダースレイダー)ハブ的な感じで、僕たちがいま動いているっていう状況になっていて。

(宇多丸)でも、たとえば警察側がこう思ってるなんていうことはさ、聞くだけで結構ビックリしちゃいました。そんなの、いままで聞いたこともないっていう感じだから。

(磯部涼)でもね、警察もむしろ知りたいんですよ。その全体像っていうのを。

(宇多丸)把握できなかったわけだからね。

(磯部涼)それが変な形で、現状やっている店舗の人たちに迷惑がかかったらいけないから、すごくバランスを取りながらハブ的な機能を果たせるようにっていう。気を遣う話ではあるんですけどね。

(宇多丸)で、いまどのくらいまで来ているの?

(ダースレイダー)一応、日にちは8月の1日に事業者団体なるものを発足はしています。それはCCCCが呼びかけて、発足はしていて。都内の中心の事業者に声をかけることができる状況は作っていて。その団体を作った時に、団体の最初の目標としては、『クラブ業界としての共通ルールを作りましょう』ということをまずは目標としてると。それを作らなきゃいけない理由っていうのは、まずは議連にしろ警察にしろ、クラブ側がどういった歩み寄りをするつもりなのか?っていうのを見せろっていう。

(磯部涼)いままでも東京のクラブって、IDチェックは基本的にやってるし、っていう。基本的なことはやってるんですけど、ただ統一ルールではそれはなかった。

(宇多丸)店ごとが、厳しい店もあれば、みたいな感じだから。

(ダースレイダー)明文化されていないっていうのがあって。それをちゃんと明文化した形で、それこそクラブに来ない人たちでも、あの人たちはこういう決まりで動いている人たちなんだっていうのがわかるだけでも、関係性がちゃんと築けるっていうのがあると思うので。まずは明文化した、クラブという人たちはこういった規則にのっとってやってますっていうのを作ろうっていうのを呼びかけて。

(宇多丸)それに賛同してくれる人たちの数を増やそうとしているってことなのかな?

(ダースレイダー)それも毎回集まって、いままさにそのルール作りをしているところなんですけど。実は先週行われたばっかりの、内閣府の規制改革会議っていうものが行われていて。

(磯部涼)さっき言ったダンス議連とはまた別に、規制改革会議っていう。規制改革会議は今年の1月からスタートしたのかな?様々な問題を話し合うものなんですけど。それこそ、マンションに関する法律だったりとか。なかなか建て替えが進まないという。

(宇多丸)規制緩和の余地を探るという。

(磯部涼)法律を現代に合せて、緩和していくことで経済をスムースに盛り上げていこうっていう中で、風営法っていうのも議題にあがってるんです。

(ダースレイダー)で、そのヒアリングがまたあって。そこである程度のクラブ業界っていうのがなにをいまやっているのか?っていうのを報告してほしいと。いうのもCCCCが出席して。それでいま、現状こんなことをやっていますっていう中で自主規制ルールをもう、ある程度・・・

(宇多丸)良かったね。そういうタイミングでCCCCとかちゃんと出来ててさ。これ、なかったらね。ポワーンポワーンとなって終わるもんね。

(ダースレイダー)で、やっぱりあと同時に僕らが出て行ってしゃべるからには、東京のクラブのあいつら誰だ?とか、知らねーぞっていう風にならないように、みんなにちゃんと案内して。こういったものが今度、ありますと。

(磯部涼)『悪そうなやつらはだいたい友達』な人がいるからこそ・・・

(宇多丸)本当、そうだよね。マジでマジで。

(磯部涼)まとまるっていうね。

(ダースレイダー)『だいたい』ですけど、みたいな(笑)。

(磯部涼)全員とは言ってません。

(宇多丸)で、いまその加入率っていうのは、いい感じに来てる?

(ダースレイダー)そうですね。これも具体的にどうこう言えないんですけども。声がけはかなりの数に出来るっていう。

(磯部涼)もちろん波があるというか、それってうまくいくの?って思っている人たちもいるかもしれないけど、印象としては進めていくうちに、『なるほど。それだったら協力してみようかな』っていう店舗が増えていくかなっていう。

(宇多丸)本当に法律もいい方に変わるかもっていう希望があるからね。

(磯部涼)もちろんグレイでやっていくっていうのも、ぶっちゃけて言うと、それこそストリートナレッジ的なものであるかもしれないですけど。でも、合法になった方が・・・

(宇多丸)どっちかと言えば、そりゃそうですよ。

(ダースレイダー)その自主規制ルールが出てきて、健全に運営されているっていうことに対して魅力を感じないっていう人が出てくる可能性はあるんですけども。少なくとも大部分の人はちゃんと営業したいっていうか。普通にクラブを胸を張って営業したいっていう事業者さんが多いので、まずはその声を拾いながらっていう形で進めていて。で、自主規制ルールも、あくまで案なんですけども、CCCCから『こういったもの、いかがですか?』っていうのを事業者さんに聞いてもらって、その中から揉んでいくっていう状況に来てるっていう感じですね。

(宇多丸)その具体的な中身っていうのは、ちょっといまは・・・

(ダースレイダー)実際、ある程度は。要は、明文化していくっていう意味では、『IDチェックをしましょう』と。

(宇多丸)これは、もうね。

(磯部涼)そんなことってことですよ。実際、いまやってますし。

(ダースレイダー)やってるんですけど、やってることが知られてないんですよね。だから、ここでちゃんとルールにして、明文化することでアピール出来るっていうね。こういうことをクラブはやっています!っていうのをアピール出来ると。だから、『酩酊者を入店させない』とか、『店内で酔っ払っている人をこういう風にやってます』とか。『経営者に反社会勢力を認めない』とか。当たり前のことを。

(磯部涼)悪すぎる人が入っちゃダメだと。悪そうなやつはだいたい友達だけど。

(宇多丸)『そう』はいいけど・・・

(磯部涼)本当に悪いのはダメと。

(ダースレイダー)そのへんもね、会長の・・・

(宇多丸)なるほどね。常識的な範囲っていうか、運営の妨げにならないような範囲の。

(ダースレイダー)あとは、店外での騒音。『店を出た後に騒いでいる人を注意します』とか。『近隣の地域の商店会とかと交流を持って仲良くしていきます』みたいな。さっき注文してないんですけど、メニューの4とか。

(宇多丸)はいはい。メニューの3とか4とか、聞きたいです。『クラバーたちが・・・』っていうのは、どういうこと?

(ダースレイダー)まず、3に関しては・・・

(宇多丸)『街に繰り出して◯◯活動開始』。

(ダースレイダー)◯◯活動っていうのは、清掃活動ってことで。朝6時集合で。

(宇多丸)どういうこと?

(ダースレイダー)これはね、円山町を中心とした渋谷のクラブが密集している地域に、Zeebra会長などが朝6時に軍手とトングを持って集合して、周辺のゴミを全部拾うっていうね。

(宇多丸)へー!これはちょっと言わずもがなかもしれないけど、なんのための活動なんですか?

(ダースレイダー)まず、よく言われるのが『クラブがあそこにあるからゴミが散らかってしょうがねーよ』苦情っていうのがあるらしいと。

(磯部涼)実際にそれがクラブの客なのか?は置いておいて・・・

(ダースレイダー)実際に近くにクラブはあると。じゃあ、この辺のゴミは我々クラバーが掃除しちゃいましょうと。

(宇多丸)地域の責任ということで。

(磯部涼)クラブのゴミかはわからないけど、むしろクラブがあるからキレイだねって言うぐらいにしてやろうと。

(宇多丸)たしかに店的にね、周りがキレイであることはプラスになりこそすれ、マイナスにはならないから。

(磯部涼)念の為に言っておくと、実際に円山町のクラブの人たちは、清掃活動されてるんです。それまでも、終わってからされてるんですけど、さきほど言ったように横のつながりっていうのがなかなか難しい状況だったので、だったら地域一帯をキレイにしようと。

(ダースレイダー)で、なんか見たことのあるDJだったりラッパーがゴミとか拾っていることで、クラブ帰りの子とかがね、なんか『あれ?Zeebraじゃね?』みたいなのが波及効果として期待できるっていうのと、それこそこの間も須永辰緒さんとかが、『イベント終わった後にキレイにして返すぐらいじゃないとダメだよ!』っていうようなことを言って、須永辰緒さんも朝6時に軍手とトングで(笑)。

(宇多丸)辰緒さんがね、やってたら俺たちやらないわけにはいかないよ!っていう。

(ダースレイダー)そういう状況もあるっていうね。

(磯部涼)クラブの上下関係をうまく使わせていただいて。

(宇多丸)いや、でもいいと思います。一方、この『クラバーたちがあんな場所にアレを差し入れしている!?』。

(ダースレイダー)これもですね、渋谷はお祭りがこの間も行われていたんですけど。やっぱりそういったところの、お祭りに参加している商店会のみなさんに、ご苦労様ということで、お酒を飲んでいただいて。

(宇多丸)でもちゃんとコミュニティーに承認されるっていうことだよね。

(磯部涼)前回もこの話、したかもしれないですけど、要するに僕の1冊目の本だと、新住民みたいに言って。クラブに苦情を言いに来る人はクレーマーなんだっていう説もあるんですけど、実際はクラブ側もあまり地域にコミットしてないんじゃないか?っていう思いがあって。

(宇多丸)それこそね、騒音なりなんなりっていう可能性は起こりうることなんだから頭下げるべきなのに、そういう努力も怠ってきたかもしれない。

(磯部涼)顔を見せて、『こういうクラブっていう営業をしているから、よろしくお願いしますね』って言うだけでもぜんぜん違って。実際に掃除をしているとね、円山町はラブホテルもいっぱいあるんですけど、その従業員の人が『あ、いつもご苦労様です』って言ってくれたりとか、顔を突き合わせる関係みたいなのがだんだん構築されていく。

(宇多丸)そうすると、ちょっとしたことで『あそこのクラブのせいだ!』ってことにはならないということですね。

(ダースレイダー)だから、『あのお兄ちゃんたち、なんか何やってるかわかんないけど、掃除とかしてくれてるから・・・』みたいなのだけでも変わるというか。

(宇多丸)やっぱり得体の知れない若い連中がたむろしてっていうイメージがね・・・

(ダースレイダー)そのクラブ問題っていうのは、『クラブ行かない人は関係ない』とか、『クラブに行ってる人はクラブの良さわかる』っていうところで議論が終わっちゃうのは、この間考えたたとえで、ミュージシャンがマンションを引っ越しした時に両隣と上と下の部屋には何かしら持っていって、『ちょっと僕音楽やってるんで音がたまに出ちゃうかもしれませんが、その時は言ってくださいね』っていう挨拶をするとしないとでは、ぜんぜん違いますからね。

(宇多丸)これはね、行くとね、『いまどきはこういうことをする人、少ないのよ』なんつってね、これはいいですよー!

(ダースレイダー)それでちょっと音がうるさかったり、友達が夜ドカドカ来たみたいな時に、いきなり警察を呼ばれるんじゃなくて、『ちょっと、◯◯さん。ちょっと静かにしてもらえますか?』っていう話が出来るのと同時に、自分がそうやって音出してやるんだったら、そのマンションにはいろんな人が住んでいて、いろんな時間帯で生活している人がいるんだから、そういった人の生活スタイルを認めないとダメだねっていう。

(磯部涼)自分の身にもなってみて、自分も隣にどんな人がいるかわからないんだから。それこそね、いま生活時間帯がいろいろあって。タクシーの運転手さんだったら、昼間寝てる人とかだっているわけだから。そのマンションには多様なものが。

(ダースレイダー)考え方の人もいて。ただし、玄関とか廊下の教養スペースっていうのをどう使うか?っていうのをちゃんと共通で認識しておかないといけないとかね。そういったところは掃除しましょうとかっていうことをやるだけでも、住み心地よくなりますよねっていうのを街の中でクラブがどうやっていくのか?っていうのが大事かなと。

(磯部涼)いままでは、最初に言ったようにクラブっていうのは隠れ家風な場所だったわけだけど、まあそういう時代じゃないと。どういうことをやっていて、どういう人たちがいるっていう顔を見せながら付き合っていくっていう、すごく当たり前のことなんですけどね。今日言っている話ってすごい、掃除をするとかつまんない話ではあるんですけど、もうつまんないことをやるしかないっていうか。

(宇多丸)でも逆に言えば、そんぐらいでもぜんぜん力になる段階っていうこと。そんぐらい何もしてこなかったってことでもあるし。

(ダースレイダー)あとは、twitterとかそういうところで『ふざけるな!』って言って気が晴れちゃうよりは、こういって地道なことを1個1個やっていくしか、解決策の道はないのかな?っていうか。

(宇多丸)業界団体集まってきて、かたや議員さんたちも『なるほどなるほど』ってなってきて、そっから先に法改正っていう話が次に出てくるっていう感じなのかな?

(磯部涼)いま、そのダンス議連の中で中間提言っていう形で、こういう風に法改正しましょうか?っていうのを取りまとめた段階までは行っていて。そこでは営業時間の緩和っていうことは言われてますので。これがこれからいよいよテーブルに乗るっていう段階です。

(宇多丸)はい。でもすごい具体性へのステップだよね。だって議員の人が・・・

(磯部涼)議員の人、『クラブ』って言いますからね。いままではさっき宇多丸さんが言ったように、『お姉ちゃんがいるクラブとは違うんですよ』っていう説明から入らないといけなかったのに、もうクラブがデフォルトになってますから。

(宇多丸)やっぱりその議員さんの中でも理解がね。要するに昔はさ、どうせそんなのわかってくれないとかさ。思い込みがちだったけど、それだけでもぜんぜんね。

(ダースレイダー)その議連の秋元議員っていう、先日Zeebra会長と対談した人も、ジブさんと同い年で。だからそういった同世代的なとこでの話が合うみたいなとこもあって。やっぱり国政に関わる議員さんの年齢とかも、クラブができた後に議員になった人も出てきているので。感覚もかなり変わってきているのかなと。

(宇多丸)ちなみに、こっから先のなんとなくのタイムテーブルっていうか。何年先、なんとか目標みたいなのがあったりするの?

(ダースレイダー)あの、規制改革会議っていうのは内閣府が主導しているので、来年の中盤までにある種の閣議決定で方針を決めたいというタイムラインで動いているみたいだし、国会に関しては今国会はもう来週とかで終わっちゃうんですけど、議連の方もある程度意見をまとめてから、来期の通常国会とかで提出するぐらいの準備はできているということは言ってますね。

(磯部涼)いまが山であることは間違いないです。来年の前半がひとつの山。もちろんそれが何らかの形で、すごいネガティブなことを言うとダメになったとしても、それで終わるというわけではないんですけど。この山に狙いを定めたいなというのは、改正に関わっている人たちは・・・

(宇多丸)結構目の前じゃんね。

(磯部涼)本当にそうなんです。でも実際に、さっきも言ったように議員の人たちもかなり協力的というか。熱意を持って改正ということに。

(ダースレイダー)あとはちょこっと言っちゃうと、クラブ業界にとっては風営法っていう法律そのものが、いままで『ふざけるな!』っていう対象だったんですけど、そうではなくて、風俗営業をちゃんと促進して、司る法律という本来の姿に解釈を戻していくっていう方向性でちょっとみんなで動いているっていう感じですね。だから、ふざけるな!じゃなくて、むしろちゃんと風営法を作っていこうっていうような。

(宇多丸)ということでちょっと、時間をまたいで。まだ残っていただいて話を伺っていきたいと思います。

(CM明け)

(宇多丸)今夜は、『いま話はここまで進んでいる 風営法問題を考える特集2013年秋』をお送りしてまいりました。音楽ジャーナリストの磯部涼さん、ラッパーのダースレイダーさんということで。ちょっと締め、短い時間になってしまいましたけど。どうですかね?これから。

(磯部涼)そうですね。タイミングとしてはオリンピックも決まったということで。クラブっていうのは経済的にも、それこそ世界中になる文化ですから。

(宇多丸)たとえば外国からオリンピックを見に、若い人も含めて来て、そしたら夜遊びでね。踊りに行くぜ!ってね。普通はなる。

(磯部涼)この間のロンドンオリンピックだと、オープニングだったりとかエンディングにDJが出て。クラブのシーンとかも使われていたりとかね。そういうひとつの文化としてあるわけですから。それに乗っていかない手はないだろうと。

(ダースレイダー)夜の経済っていうのも当然、五輪に向けての国の成長戦略の中で、夜の経済を活性化させていくのか?っていうのは議題にも相当のぼっていて。そうなるとクラブっていうのは夜の経済の代表的な場所としてあがるので、それをどうしていくの?っていうのは、みんながいま考えているところなので。

(宇多丸)前からね、景気がっていうんだったらね、夜も別に回していくに限ると思うけどなっていうのは、前から思っていたとこではあるけど。はい。

(磯部涼)やっぱりこの時代に深夜営業、風俗営業ができないっていうのは・・・

(宇多丸)ちょっと逆行しているんじゃないかと。

(ダースレイダー)いま、それこそアジアでシンガポールとかの夜のクラブ業界。韓国もそうですけど、非常に盛り上がっていて。そのアジアに対してのクラブの需要っていうのはすごく高まっている中で、じゃあ日本はどうそこに、おもてなしのスタイルを見せるのか?とかっていうのが。

(磯部涼)これから開会式をやったら、もしかしたら初音ミクとかが使われるかもしれないけど、ただ初音ミクっていうのは、クラブという箱、場所はあまり必要としないクラブミュージック。クラブミュージックのアレンジも多いですから。だけど、実際の箱とは意外に密接ではなかったりとかするから、そこにやっぱり営業としてのクラブが入り込んでいきたいなって思うところはあります。

(ダースレイダー)あとはやっぱりクラブミュージックっていうのはいわゆる多国籍っていうか。いろんな国の音楽がかかる場所なので、交流する場所として、言語が直接つながらなくても、かかっている音楽とかでいろんな人とつながっていける場所としての機能がいま、必要とされているとは思うので。

(宇多丸)まさに海外のお客様。いちばんいい場だと思うけどね。っていうか、無いと・・・

(磯部涼)実際に日本に来る海外の友達とかは、『どこのクラブがいちばんいい?』みたいなことは定番の質問として、よくあったりとかして。

(宇多丸)だからその時に、是非間に合わせたいものですね。東京五輪にはね。あと、これちょっとバカみたいな質問かもしれないけど、これを聞いていて、クラブ文化。是非この運動を応援したいという場合、でも具体的にね、いまみなさんアーティストを中心に動いているという話を、聞いているような人たちが応援したいとか、自分として何かっていう時、何があるの?

(磯部涼)なかなか難しくてね。社会運動って言っても、基本的には業界の運動なんですよ。風営法っていうのは、よく『ダンスしちゃいけない』って言うけど、そうではなくて。ダンスをさせることに対する規制がかかっている法律なので、お客さんはすごくぶっちゃけて言うと、関係ないと言えば関係ないんですけど。ただ、さきほど言ったように、掃除をしているって言いましたけど。お客さんのマナーが向上することによって、クラブのイメージが良くなる。そして地域の人たちがクラブに対するイメージが良くなるっていう、良い方に働くと思うので。是非クラブに遊びに行く人は、当たり前のことですけど、マナーを良くしてほしいっていう。

(ダースレイダー)クラブ業界っていう言葉だったり、クラブに来ない人が言うクラブシーンだったりというのにお客さんも含まれているので。『クラブの人たちは』って言われた時にお客さんも含まれた話なので、そのお客さんのイメージアップが、結局外に対しても効果的だと思うし。クラブがかっこいい遊び方みたいなのを身につけていただきたいというか。

(宇多丸)だって大人の遊び場なんだからさ。本当はあそこはいろんな意味で。

(磯部涼)窮屈な話をしていると思うかもしれないけど、そこであのジブさんが掃除している。ダースレイダーが掃除をしている。

(宇多丸)体をヨロヨロさせながら掃除している。

(磯部涼)あの須永辰緒が掃除しているっていうところを、まずはわかってほしい。

(ダースレイダー)須永さんがトングを持ってヒヤッとするっていうね(笑)。

(宇多丸)いやいや、それ通りがかって素通りできるのは・・・

(磯部涼)ゴミっていうのは何かの隠喩ではありません。本当のゴミです。

(宇多丸)(笑)。そういう余計なことを言うからいけないんじゃないの?あと、逆にクラブとか興味ないやっていう人に、もう1回メッセージっていうか。俺関係ねーやっていう人に。

(ダースレイダー)やっぱりいくら興味ない人に対して『クラブっていいところだよ!』とか、『クラブ音楽って素晴らしいんだよ!』って言うのではなくて、僕たちみたいな人もいるんですよっていうことを理解してもらって。共感してもらわなくてもいいけど、存在を許容してもらえるように努力する。

(宇多丸)我々も許容するに足るようなことをね、ちゃんと。

(ダースレイダー)他の生活スタイルだったり仕事している人たちを。

(宇多丸)侵害しないっていう。当たり前のことなんだけど。

(ダースレイダー)当たり前なんですけど、やっぱりそこを積極的にやらないとダメなタイミングがいま、来てるっていうことですね。

(宇多丸)本当。だからクラブ文化なり俺らが、文字通り大人になる瞬間がっていうことだね。どんだけいままでガキのまんま来たんだ?っていうことだけど。まあ、素晴らしいことじゃないでしょうか。このタイミングで。じゃあ、お知らせなどあれば・・・

<書き起こしおわり>
https://miyearnzzlabo.com/archives/20999

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