鳥嶋和彦と近藤裕 追い詰められた鳥山明が出す天才的ひらめきを語る

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2025年2月22日放送のJ-WAVE『TOKYO M.A.A.D SPIN』で『ドラゴンボール』歴代担当の鳥嶋和彦さん、近藤裕さん、武田冬門さんが鼎談。連載中、追い詰められた鳥山明先生が天才的ひらめきで新しい設定などを投入し、話を盛り上げていったことについて話していました。

(近藤裕)ブウ編は悲壮感がないんだよ。セル編とかフリーザの終わりの頃って物語に……まあ、これは僕の趣味もあったんですけど。ちょっと悲壮感があるんですよ。お話の中に。で、それがないんだよね。

(鳥嶋和彦)それでいうと、ちょうど僕から近藤くんに担当をバトンタッチする時ってラディッツが襲来するところでタッチしたよね。

(近藤裕)悟空たちがサイヤ人だってわかる話からですよ。まさに。

(鳥嶋和彦)だからフリーザっていう、「宇宙の地上げ屋」っていう概念は話してあったんだけど。でもフリーザっていうキャラにはまだなっていない。そこでバトンタッチしてね。

(Naz Chris)「宇宙の地上げ屋」って提案したのは、近藤さん?

宇宙の地上げ屋・フリーザ

(近藤裕)そうです。それは。いや、だから当時ね、地上げっていうのがすごい悪いイメージで。まあ決していいわけじゃないんですよ。で、それがもう一般的だったんですよね。で、そういう設定にすれば誰が読んでも「ああ、こいつはいいやつじゃないな。こいつは悪いやつだな」って。もう最初から悪いやつだってわかってもらった方がいいと思ったんですよ。

で、『ドラゴンボール』とかの鳥山さんの作るお話っていうのは変に裏の裏があって。いろんなものをばら撒いておいて後で「これは回収できました」っていう。そういうんじゃなくて、もう見た目にいいやつはいい。悪いやつは悪い。で、そのいいやつと悪いやつがどういう風にぶつかり合うのか?っていうところだと思ってるんで。

(鳥嶋和彦)その通りだね。

(近藤裕)よく見えて悪かったけども、後で裏を返したらやっぱりいいやつだったねっていうのはたぶんね、鳥山さんそういうのは絶対書きたくないだろうなっていうのもあったんですよ。

(鳥嶋和彦)だからその辺は最初から小・中学生を狙っていて。やっぱりシンプルに作っていこうってのがあるから、そういう風な伏線を敷いて今、近藤くんが言ったように裏切っていくっていう展開は漫画を読んできてない漫画を書いてる人にはね、面倒くさくて嫌なんだよ。

(Naz Chris)ただひとつ、読者として読んでいてその時、いろんな意味で裏切られたのが「えっ、ナメック星のドラゴンボール、願いが三つも叶っちゃうの?」とか。たとえばそういう設定って、なぜそうなったのか?って。

追い詰められた鳥山明が出す新設定

(近藤裕)「なぜ」っていうよりもその時、そういう風にちょっと話が追い詰められると鳥山さんが別な設定をポンと作ってくるっていうことだと思うんですよ。で、それが悪い方にみんな受け取らなかったっていう。だから僕の時に一番驚いたのは神龍が粉々になっちゃうっていう話があって。「えっ? 神龍が粉々になっちゃったらもう、おしまいじゃん!」って思うわけですよ。もうドラゴンボールも何もないじゃないですか。そうしたら、ちゃんと神様が出てくるんですよ。神龍を作った人が出てきちゃうんで(笑)。ああ、その人が作れば新しい神龍ができるんだ!っていう。

(Naz Chris)復元するという。

(近藤裕)でね、その連続なんですよ。言い方が変なんですけども。

(鳥嶋和彦)だから担当編集と漫画家。鳥山さんと僕ら担当編集は先の先までは決めてないの。おおよその方向は決めてるけど、話はその時鳥山さんが書いてきたものを見て、その都度都度で打ち合わせしていく。

(近藤裕)それがですね。基本的にはね。

(鳥嶋和彦)それがね、読者の視点で物が見れる。だからね、辻褄合わせは本当にうまいのよ。

(近藤裕)ものすごいうまい。鳥山さんの辻褄合わせっていうか、ちゃんと最終的に整合性を持たせるっていうのは……計算じゃないんですよね。

(鳥嶋和彦)計算じゃない。

(近藤裕)もうね、やっぱり天賦の何かですよね。パンと合っちゃうんですよ。

(鳥嶋和彦)だからオリジナルってよく言うけどね。オリジナリティはないんだけど、アレンジメント、アレンジャーとしては天才だと思う。だからそれこそね、主人公が死ぬなんて僕、あり得ないと思うんですよ。だけど頭に輪っかをつけて、走って戻って来るんだもん。

(Naz Chris)漫画の既成概念を覆したっていう。

アレンジの天才 鳥山明

(鳥嶋和彦)だからそういうことをいとも簡単に読者の期待をうまく裏切りながら。「えっ、こんなこと、あるの?」っていう風にやっていくから当時、(規制音)っていう名前を出すけど。ジャンプの漫画が大好きなやつからは「こんなルール破りで掟破りな漫画を作っていていいと思うのか?」って説教されたことがあって。「いいじゃん、別に。読者が喜んでくれるんだから」って。

(近藤裕)同期でしたっけ?

(鳥嶋和彦)いや、1個下。

(Naz Chris)ただ、その宇宙をステージにするって決めてたのは鳥嶋さんですよね?

(鳥嶋和彦)いや、宇宙は飛来してきたから、宇宙がどうこうっていうだけで。びっくりはしたけど今、近藤くんが言ったように突然、そういうのが出てくるから。

(近藤裕)「宇宙物にしよう」とかっていう考えは全然ないんですよね。たとえば宇宙人……「サイヤ人」ってなっちゃったら「ああ、これは宇宙人か」っていうだけで。

(鳥嶋和彦)それは鳥山さんが悟空を猿から人間にしたけど「まだもうひとつ、特徴がないからなんかもうひとつ。アラレのメガネにちゃんに当たるものを考えて」っていうのでつけてきたのが尻尾だから。で、その尻尾が宇宙人の設定に繋がっていくわけよ。

(Naz Chris)壮大な伏線回収みたいな(笑)。

(近藤裕)いや、全然そうじゃないんですよね。

(鳥嶋和彦)だから忘れていて。それで追い詰められた時に「ああ、そうだ!」ってひらめくんだよね。それが……そこはね、担当編集が「こういうことがある」って特に指示しているわけじゃないんだよ。

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