北瀬佳範『聖剣伝説 〜ファイナルファンタジー外伝〜』開発を語る

北瀬佳範『聖剣伝説 〜ファイナルファンタジー外伝〜』開発を語る TOKYO M.A.A.D SPIN

北瀬佳範さんが2024年6月22日放送のJ-WAVE『ゆう坊とマシリトのKosoKoso放送局』の中でスクウェア入社とゲームボーイ『聖剣伝説1』開発チーム入りについて話していました。

(Naz Chris)北瀬さんって90年にスクウェア入社なさって。3が出てた時のスクウェアさんに当時、入ったんですか?

(北瀬佳範)入った時は3がもう出ていて、4を皆さんが作っていたっていう。

(Naz Chris)その時は『聖剣伝説』とか『SaGa』に携わられてたっていう?

(北瀬佳範)ゲームボーイは『聖剣伝説』。

(鳥嶋和彦)『聖剣伝説』がはじめだ。

(北瀬佳範)ゲームボーイの『聖剣伝説』。

(鳥嶋和彦)ゲームボーイのって、あったっけ?

(北瀬佳範)それが一作目なんですよ。

(Naz Chris)『SaGa』『聖剣伝説』。それが爆発的に大ヒットしてっていう。

(鳥嶋和彦)ゲームボーイのがあって。それが1で。それの次がスーパーファミコン?

(北瀬佳範)そうですね。だからスーパーファミコンのは『聖剣伝説2』になるんですね。

(鳥嶋和彦)だからあれが2なんだ!

(坂口博信)心配になるじゃないですか。1がなくて2だけって(笑)。

(鳥嶋和彦)いやいや、2っていうのは知っていたけれども。ゲームボーイが1っていうのは知らなかった。

(北瀬佳範)ゲームボーイの1の時にはまだ「FF外伝」っていうのがついてたんですよ。

(鳥嶋和彦)ああ、FF外伝っていうのがそうなんだ。

(渋谷員子)それで私もそのチームに入って。

(坂口博信)あれも実質4人とか?

(渋谷員子)あれはね、7人ぐらい。

(坂口博信)それで7人になった?

(北瀬佳範)6人かな? イトケンも含めれば7人。

(坂口博信)ああ、音楽も含めるとね。最初はだって石井浩一でやっていたけれども。「うーん、このままだと完成しないな」っていうんで北瀬がちょうど来てくれたんで。はい。あの、「やって」っていう(笑)。

(北瀬佳範)石井さんと渋谷さん以外はもう新人しかいなかったので。プログラマーも。

(鳥嶋和彦)北瀬さんは職種は何で入ったの?

(北瀬佳範)職種は一応、プランナーというか、ゲームデザイナーだったんですよね。ただ、全然ゲームは知識がなかったんで。その前、さっきの渋谷さんじゃないですけど。僕も直前はアニメーターをやってたので。

(Naz Chris)アニメスタジオに就職されてたっていう。

(北瀬佳範)1年間だけ、アニメを書いていて。

(鳥嶋和彦)どこで?

スクウェア入社前はアニメを書いていた

(北瀬佳範)月岡貞夫さんっていうアニメーターの方がいるんですけども。『狼少年ケン』とか、いろいろやられていた。

(鳥嶋和彦)知ってる、知ってる。

(北瀬佳範)あの先生の下でちょっと、要はそういうのを。

(鳥嶋和彦)『狼少年ケン』の流れの人なんだ。へー!

(北瀬佳範)そこでアニメーションをちょっと勉強がてらというか、1年間やらせていただいて。

(Naz Chris)日芸の映画学科なんですよね。

(北瀬佳範)そうですね。そこで月岡さんが講師としていたんで、出会って。その流れで。

(鳥嶋和彦)やっぱりアニメではこの先はないと思ってゲーム会社に?

(北瀬佳範)まあ、ゲームも好きだったんで。そうですね。アニメ……元々、人形を使ったストップモーションアニメが好きだったんですけども。月岡さんとやったのは書く絵のアニメーションだったんで。書く絵の方はちょっと、なかなか僕の才能だとつらいかな、みたいな。

(Naz Chris)割と初期衝動って、『スター・ウォーズ』なんじゃないですか?

(北瀬佳範)そうですね。僕の世代だとそうなんですけどね。なので『スター・ウォーズ』だといろいろ、人間を使ったアニメーションとかがあって。僕はそれがやっぱり好きだったんで。その1年間、やっていた時は絵のアニメだったんで。マジックでこう、円を書くんです。◯を書けないと、一人前じゃないっていう。

(鳥嶋和彦)えっ、マジックで◯を書くのが修行なの?

(北瀬佳範)まあ、キャラクターがすごい子供向けのアニメーションを作っていたので。

(鳥嶋和彦)ああ、丸い線を書けないといけないのか。

(北瀬佳範)本当に丸い小キャラクターを書くんですけど。それを定規も使わずに、真円を書くみたいな。それで、さすがに絵の才能はないのかなって。

(鳥嶋和彦)どうしたって、手がふるえる人とピタッと止まる人っていうのは、あるからね。難しい。簡単じゃないね。

(Naz Chris)『ファイナルファンタジー』との出会いというのは、何作目なんですか? プライベートも含めて。

(北瀬佳範)まあ、プライベートは普通に一般ユーザーとしてというか。ドラクエもそうですけども。普通に大学生の時かな? やっていて。

(鳥嶋和彦)両方、やっていました?

(北瀬佳範)やりました。ドラクエ、量販店に並びましたから。なので、スクウェアに90年に入社した時に、最初に……もちろんその新人なので、すぐに仕事がないわけですよ。坂口さんとも何やらせていいか、わかんないみたいな感じで。「ちょっとこれやって、レポートを出せ」っていう言われたのがFF3と、ドラクエ4だったかな?

(Naz Chris)へー! どんなレポートだったんですか?(笑)。

(北瀬佳範)いや、もう全然……たぶん今、見ると「こいつ、なんか偉そうに。上から目線で書いているな」っていうやつですよ。たぶん(笑)。

(鳥嶋和彦)でも、それはみんなそうよ。だって、逆にそれでいいわけだからね。

(Naz Chris)3と4を比較して、どんな点を何か違いとして挙げられたんですか?

(北瀬佳範)違いというか。FFの話なのにドラクエの話をして申し訳ないですけども。やっぱりドラクエ4のオープニングのあの町の演出……やっぱり元々アニメとか映画のあれだったんで。ストーリーとか演出方面をやりたかったので。で、当時はだからスクウェアのFFもそういう部分を強化してたのでスクウェアに入ったんですけども。やっぱりドラクエ4のオープニング。これはすごいな!って。ショックというか、感動というか。

(Naz Chris)本当のオープニングですか? ソードが光って?

ドラクエ4のオープニング演出に感動

(北瀬佳範)いや、なんか町が……音だけで村の惨劇みたいなのを表現するみたいな。あれはもう、「ああ、これがゲームの演出なんだ」って。

(鳥嶋和彦)なるほどね。要するに、想像させるっていうね。

(北瀬佳範)そうですね。あれがやっぱりすごく衝撃的でしたね。

(Naz Chris)うんうん。それで、FF3はどうだったんですか?

(北瀬佳範)FF3はやっぱり、あのダンジョンが(笑)。

(一同)フハハハハハハハハッ!

(坂口博信)おいっ!(笑)。

(北瀬佳範)「セーブできねえのかよ?」っていう(笑)。

(鳥嶋和彦)誰もが思うことだよね(笑)。で、あれでしょう? 会社に入ってその4人の『聖剣伝説』チームに入れられて、いきなり「やれ」って言われて。「会社って、すごいところだな」と思った?(笑)。

(北瀬佳範)そうですね。で、やっぱり聖剣チームって少人数で。機材も、さっきMacintoshの話が出ましたけど。僕はMacのSEっていう、白黒で小さい、すごいコンパクトなマシンを与えられて。で、FFチームは普通はMac ColorとかMacintosh IIとか。「いいなー」って(笑)。

(坂口博信)これ、ずっと言うんですよ。相当恨んでいるらしくて。「坂口さん、みんなカラーだったのに僕だけ白黒のちっちゃいやつだったんですよ」って(笑)。

(北瀬佳範)しかもデータのやり取りもフロッピーディスクとかでやり取りしてて。みんな、FFチームとかはちゃんとネットワークでつながっていたのに(笑)。

(鳥嶋和彦)ああ、そうか。片方はネットワークで片方はフロッピーっていう?(笑)。

(北瀬佳範)そういうチームの格差が……(笑)。

(渋谷員子)あるよね(笑)。

(坂口博信)いやいや、「どうせゲームボーイで白黒だからお前、白黒でいいだろ?」って(笑)。

他のチームと格差があった『聖剣伝説』チーム

(渋谷員子)ちょうどね、スーパーファミコンのソフト。FF4を作っている頃のタイミングだったので。「せっかく3色から逃れて、スーパーファミコンになった!」と思ったら私、その次の仕事が白黒になっちゃったんで。「あら、白黒になった」とか思った(笑)。

(北瀬佳範)だから僕はどっちかっていうと入ったばっかりで。でも、すごく少人数だからやっぱり1人の責任って大きいので。ある意味、結構やりがいのある仕事をやらせてもらったんで、楽しかったですけど。

(鳥嶋和彦)仕事を覚えるにはいいね。少人数だしね。

(渋谷員子)デザイナーも私1人だったんで。「またこれ、3色になったし。白黒でも書けないことはないね」って思って書いてたんですよね。

(坂口博信)濃淡で3色っていう感じですね。

(渋谷員子)黒と。

(坂口博信)黒を合わせて4色だよね。

(渋谷員子)「まあでも、できないことはないか」って(笑)。

(坂口博信)だって、いいゲームができたじゃないですか。皆さん(笑)。

黒+濃淡で3色

(北瀬佳範)だから新入りで入ったチームだったから、なかなか出来上がらなくて。坂口さんとかにも「おめえら、しっかりしろよ」的なものを言われながらも。ちょっと夜遅くまで仕事していて。ちょっと、一緒に椅子を並べて休んだりすると、FFチーフだった成田さんとかがこう、慰めに来てくれるんですよ(笑)。

(成田賢)僕、でも予言したんですよ。いつも1人だけ……僕はFF4チームで、すぐそばで僕も徹夜してたんですけど。そしたら聖剣チームに北瀬くんだけいるわけですよ。で、こう行って。「君は将来、偉くなるよ」って(笑)。本当に偉くなりました(笑)。

(北瀬佳範)慰めてくれて(笑)。

(鳥嶋和彦)真面目にやっているから。

(成田賢)すごい真面目にやってたんで。

(坂口博信)集中力もあるしね。

(鳥嶋和彦)それで結局、開発期間はどれぐらいかかったんですか?

(北瀬佳範)でも1年ぐらい?

(坂口博信)かかってない?

(北瀬佳範)いや、かかったんじゃないですかね。

(坂口博信)まあ、そうか。北瀬が来る前の期間も入れると。ちょっとすったもんだしてたこともあったりして、1年ぐらい。でも1年ですね。

(鳥嶋和彦)で、FF4からメインプログラマーに?

(成田賢)そうですね。正確にはまだ、大学生だったんですけどね。

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<書き起こしおわり>

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