鳥嶋和彦と桂正和 鳥山明を語る

鳥嶋和彦と桂正和 鳥山明を語る TOKYO M.A.A.D SPIN

鳥嶋和彦さんと桂正和さんが2023年7月31日放送のJ-WAVE『TOKYO M.A.A.D SPIN』の中で鳥山明さんについて話していました。

(Naz Chris)でも桂先生が漫画家として活動していく上で、鳥山先生との出会いとか、親睦を深めたことは結構いろんなことに影響したってお聞きしたんですけど。

(桂正和)ええと、鳥嶋さんのおかげもあるんだけど。意外とね、だから『ウイングマン』とか、売れたんですよ。めっちゃ売れたんですよね。で、たぶん俺は鳥山さんとか鳥嶋さんに会ってなかったら、めっちゃ天狗になっていたと思うんですよ。勘違い野郎に。でも鳥山さんって本当に、なんだろうな? あんだけ大物なのに、すげえ普通の人なんですよ。そこの人柄というか、そこは僕はずっと尊敬していて。で、話すこともほとんど、僕らは漫画に興味ないから、漫画の話なんてしていなくて。

(鳥嶋和彦)フフフ(笑)。してないだろう?

(桂正和)だからあんまり……漫画の先輩というか、友達というか、そういう感覚がなくて。

(鳥嶋和彦)あのね、2人でお互いを紹介して、常時話ができるようにって。

(Naz Chris)それはなぜ、紹介しようと思ったんですか?

(鳥嶋和彦)それは簡単で。やっぱり漫画家って、ずっと家で机に向かっている仕事だから、孤独人間関係が狭いじゃないですか。で、誰かと話をするとストレスが発散できるから。で、共通の担当が僕だから、僕に対しての不満とかね、お互いでしゃべっていればストレス発散になるわけですよ。

(Naz Chris)なるほど(笑)。

(鳥嶋和彦)だから、それがいいんじゃないかなって。僕はほら、自分の作家に関してはそれぞれのところにアシスタントを入れたり、紹介してるから、特に情報を遮断することもしないし。アンケートとか締め切りも全部、公平に教えるからね。

(桂正和)そうなんだよ(笑)。この人、悪いよね? 本当は秘密なんだよね(笑)。

(鳥嶋和彦)いや、秘密にしちゃダメなの。だから、紹介しても平気なんですよ。漏れる情報が僕にとっては、困ることはないから。

(Naz Chris)でもそれ以降、鳥嶋さんが桂先生と鳥山先生、単独に電話しても繋がらなくて。しょっちゅう2人でしゃべっていたっていう。

(桂正和)ああ、あの頃は毎晩のように、もう6時間以上電話してましたね(笑)。

(Naz Chris)何をしゃべってたんですか? 6時間も。

(桂正和)いや、くだらない話ですね。

(Naz Chris)毎日ですか?

(桂正和)はい。意味のない話をずっと。

毎晩のように長電話

(鳥嶋和彦)それをね、僕は2人を怒ったの。「ダラダラ長電話するんじゃない! せいぜいでしゃべっても1時間だろう?」って。で、大変申し訳ないけども、担当から電話がかかって来るのはわかってるんだから。「1時間して……2時間ぐらいしてからまた、しゃべりなさい」というようなことを言ったりして。「続けてしゃべらないで」って。

(Naz Chris)なんでですか?

(鳥嶋和彦)だって打ち合わせとか、(電話が話し中だと)できなくなっちゃうじゃないですか。いや、桂くんはいいよ。近くにいるから。でも鳥山さんはね、やっぱり電話で話をしないと、打ち合わせならないから。

(桂正和)そう。だから、あれですよ。鳥山さんと電話してて。くだらない話をずっとしてて。それで俺が連載をしてなかったりとかすると、「締め切り、いつなんすか?」「ああ、明日の昼」「ええっ? 電話してる場合じゃないっすよ! 今、どこができてるんですか?」「ネームが半分かな?」「はあ!? それを上げるの?」「ああ、上がる、上がる」とかって言って。その回の『ドラゴンボール』のひどいこと! つまんないし、絵は汚いし(笑)。「俺のせいだ」って思いながら(笑)。

(鳥嶋和彦)いや、君のせいではないな。それは、本人のせいですから(笑)。

(桂正和)「そりゃそうだよな。そんな短時間で書いていれば」っていう(笑)。

(Naz Chris)でもそれこそ、桂先生の作品の中で「じゃあ、もうこんなの、髪の毛を立たせちゃって、白くしようよ」とかそういうことまで結構鳥山先生は?

(桂正和)ああ、あの人はもう無責任だからそんなことを言っていて。で、俺もバカだから「そうかな」って思っちゃって、やってみたりとか。

(Naz Chris)でも、そんなことまで。「こうしたら?」とか、漫画家さん同士であるんですね。仲がいいと。

(桂正和)ええと、鳥山さんって他の人にはたぶん言わないと思うんですけど。鳥嶋さんと同じ感覚を持っていて。「なんか才能があるんだけど、今ひとつ弾けえねな」と思ってるんですよ。で、「俺がどうにか、何とかしてやんねえとな」ぐらいの感じで言ってくるんですよ。でもさ、その漫画のスタイルでさ、バトル物が合うかどうかはさ……(笑)。

(Naz Chris)たしかに(笑)。

(鳥嶋和彦)それはね、たぶん本当だと思う(笑)。鳥山明のそのおせっかいはそこから来ているね。それはそうだね。

(Naz Chris)鳥山先生って、そういうところがあるんですね。

(鳥嶋和彦)彼は、さっき「普通の人」って言ったけど、普通の人ではないんだよね。

(桂正和)全然違いますよね。

「鳥山明」という人間

(鳥嶋和彦)そういう意味で言うと、何だろうな? はっきり言えば、ドラスティックだよね。ドラスティックで、面白がり。いたずら感覚がある。だから、一言で言うと「(放送自粛)」だね。

(桂正和)うん、そうそう。

(鳥嶋和彦)そうじゃなかったら、ギャグ漫画は書かない。ギャグ漫画を書く作家はね、基本的にね、「(放送自粛)」。

(桂正和)フハハハハハハハハッ!

(鳥嶋和彦)だから、面白いんですよ。要するに「ギャップを描ける」っていうことだから。こういう言い方すると、またコンプライアンスどうこうになるかもしれないけど。ストーリー漫画を書く人よりも、ギャグ漫画を書く人の方がえてして頭はいいんですよ。ネームが切れるから。セリフが切れるから。

(Naz Chris)そうなんですね。じゃあ、それこそ桂先生がその『ウイングマン』とかを書いていて。その後に「ラブコメというか恋愛物を書いたら?」っていうアドバイスは鳥嶋さんからですよね。

<書き起こしおわり>

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