渡辺志保さんがblock.fm『INSIDE OUT』の中でSNSを再開したカニエ・ウェストについてトーク。ドナルド・トランプ大統領への支持を表明したことや、T.I.をフィーチャーした新曲『Ye VS. The People』について話していました。
(渡辺志保)ではここでオープニングチューンをかけさせていただきたいんですけども、かける前に私から一言、二言お話をさせていただきたいのが、やはりこの週末などを騒がせたのがひとつ、カニエ・ウェストさんのあれやこれやという騒動がございまして。で、今日のオープニングチューンでかけさせていただくのがもうちょっと笑っちゃうんだけど……『Ye VS. The People feat. T.I.』という曲。これが急遽出ましたけども、それをここでかけさせていただきたいんですが。
で、まあまあ、カニエのことになっちゃうと私もいても立ってもいられなくなるというか。私は自分自身をカニエ・ウェストの大ファンという風に言いたいぐらいなんですけど。先日より、カニエ・ウェストがしばらくソーシャルメディアから遠ざかっていたんですけど、Twitterを再開しまして。で、まずは「6月1日に自分のアルバムが出る。次の週にはキッド・カディのアルバムも出て、ナズのアルバムも出て、プシャ・Tとティアナ・テイラーのアルバムも出るよ」っていうのをまず告知して。で、その後もすごく哲学的なツイートなんかをワッとしたんですよ。
で、その次に起こった出来事がHot97のイーブロー・ダーデンというラジオDJの朝の番組があって。そこでイーブローが「この間、カニエと電話で話したら、すごく『I Love Donald Trump.』って言っていたんだよ。信じられなくない?」みたいな話をしまして。そこでインターネット上でも「カニエがトランプ支持者だ!」っていうところが広まってしまった。その後にカニエが、本当にカニエらしいなと思うんですけど。そのイーブローの朝の番組中に電話をかけてきて。「ちょっと話したいんですけど……」みたいに電話をかけてきて、そこでも何を言うでもなく、「I Love You. I Love You, Brother.」っていうのをずっとカニエが電話口で生放送中に言っていて。で、「なんで電話してきたの?」みたいに聞いたら「I Just Want To Say I Love You♪」ってスティービー・ワンダーの曲を歌いだしてっていう、本当に「大丈夫かな?」って聞いているこっちがヒヤヒヤするわ、みたいな展開があったんですよ。
イーブローのトークとカニエの直電話
で、その後にもカニエ・ウェスト本人が自分のTwitterで「僕がいかにドナルド・トランプを指示しているか、彼のことを信じているか、彼のことを愛しているか」っていうのをすごくああだこうだと言っていて。で、結構私もショッキングだったのが、ドナルド・トランプが大統領選の時から使っていたスローガン「Make America Great Again(アメリカを再び偉大にしよう)」っていうのがトランプのずーっと使っていたスローガンなんですけど。それがプリントされた真っ赤なキャップがあるんですね。で、結構みなさん見たことがあるんじゃないかと思うですが、この「Make America Great Again」の頭文字を取って「MAGA」っていうんですけど。その帽子は「MAGA Hat」なんていう風に言ったりするんですが。
で、カニエがそのMAGAハットをかぶってフリースタイルしている動画なんかも上がっていて。ちょっとね、すごい私は見た時にショッキングだったんですけど。で、その後もずっと一連のツイートが続くという。
MAGAハットをかぶるカニエ・ウェスト
we got love pic.twitter.com/Edk0WGscp6
— KANYE WEST (@kanyewest) 2018年4月25日
で、かつドナルド・トランプ自身が「カニエ、ありがとう。すごくクールだよ」みたいな感じでTwitter上で……もう本当に大統領まで動いちゃったみたいな感じがして。どうなっちゃうの?っていう。
— KANYE WEST (@kanyewest) 2018年4月25日
で、プラス、すごく保守派の黒人女性コメンテーターのキャンディス・オーウェンスっていう本当にきれいなモデルさんみたいな女性コメンテーターの方がいるんですけど、「彼女の考え方が好きで、実際にキャンディスとも会いました」っていう報道もされたりして。で、本当にいま、カニエ・トランプ・キャンディスみたいなその、カニエのいったいどうなっちゃっているの?っていうのがエスカレートしているような状況ではあるんですよね。
ただ、私がすごくこの今回の一連の騒動で腑に落ちないのは、カニエがトランプを支持するのはわかった。わかったけど、なんで支持をしているのか?っていう、そこの理論付け。エシックみたいなものが全くないように私には見受けられて。カニエ・ウェストがずっとTwitterでここ数日言っているのも「僕はヘイトを止めたい。みんなにラブ、愛情を振りまきたい。みんなにもっと自由に物事を考えてほしいし、新しいアイデアを提示したい」っていうことをすごく言っているんですよ。でも、なんでそれがトランプ支持につながるのかはちょっとよくわからないなという風に思っていまして。
まあ、本当にいまアメリカのメディアでもいろいろと言われていますけども、ひとつはカニエ・ウェストが6月1日に自分のアルバムを出すので、そのひとつのメディア商戦というか、スタントでやっているんじゃないか?っていう意見もありまして。私も、まあそれもあるんじゃないかとも思うんですけども。でももしそれだけだとしたら、非常に危険なスタント行為だなという風にも思っていまして。そこでこの新曲がいきなり出たというところなんですけども。まあ突如、『Lift Yourself』っていう曲とあとこの『Ye VS. The People feat. T.I.』っていう曲をリリースしたという。
で、この『Ye VS. The People』なんですけども、そんな曲かというと、ニューヨーク在住でらした池城美菜子さんがすでにもう和訳をご自身のブログに上げられてますので、それを見ていただくのがいちばんわかりやすいかと思いますが。
『Ye VS. The People』和訳(池城美菜子さん)
今回のカニエ騒動、案外、軽い気持ちで始まった気がします。サイトに発表された2曲向けでは絶対にないし。T.I.との言い合いで大体のことがわかるので、訳しました。
Ye VS the People、訳しました。結論。I?T.I.https://t.co/jMwpV79P89
— Minako Ikeshiro (@minakodiwriter) 2018年4月29日
まあ「Ye」はカニエですよね。で、カニエが自分の意見を言いながら「The People(民衆・世論・国民)」……ここではT.I.がその世論を代弁しています。で、そのT.I.とカニエがお互いの考えをぶつけながら、ラップをしながらダイアログが進んでいくというちょっと面白い形式の楽曲なんですけども。なんで、カニエは自分がいますごく非難をされている。周りから白い目で見られているということに対してはすごく自覚的。なんだけど、「俺はこうだから、こうだから……」っていう自分の主張をとうとうと曲の中でもラップしているということなんですよね。で、そのMAGAハットに関しても「俺があのハットをかぶることでみんなに新しい考えを示した」とか「俺たちはみんなイコール(平等)なんだよということを示した」という風にも言っているし。
で、「昨日今日ハットを買ったわけじゃなくて、1年半前から自分の家のクローゼットの中にしまってあったんだ。でも、俺は俺らしくいたいからこのタイミングだと思ってあのハットをかぶったんだ」みたいなことを言っていたりとか。「だったらなに? 俺がこんなことをラップするんじゃなくて、もっとクラックを売るとかグッチのアイテムを見せびらかすとか、そういうことをラップすればいいわけ? 違うだろ?」みたいなことも言っていまして、本当にもうカニエさん、毎回毎回いろんな騒動を起こしていますけども、今回ばかりはもうどうなるのかという感じです。
で、繰り返しになりますけども、まあ曲の中でも言われているけど別に個人がどの政党を支持しようが、それはその人の自由だし、どういう信念を貫こうが、どういう宗教を信じようがもちろん個人の自由だと思うけど、こと現代のアメリカ社会においてドナルド・トランプへの支持を表明するということは……たとえばT.I.にしろ、去年彼もすごく、60年代の公民権運動といまのアメリカの現状を照らし合わせるようなミュージックビデオを発表していたり。カニエもジョン・レジェンドにテキストしていましたけど、ジョン・レジェンドだってコモンと一緒にアカデミー賞ですごく印象的なパフォーマンスをしたりとか。
で、まあビヨンセとかはね、言わずもがなっていう感じだし、ジェイ・Zも去年『4:44』で力強いメッセージを発して。かつ、ケンドリック・ラマーも去年のアルバム『DAMN.』でそのいまのアメリカに対して自分の疑問を投げかけながらトランプを批判するというようなことをずーっとみんなでやってきたわけですよね。で、トランプ大統領っていうのは本当にそういうマイノリティーに対してはすごく辛辣というか、非人情的な発言だったり行動が非常に目立つアメリカ大統領ということで。そのトランプの現状に対してみんながどうにか一致団結して立ち向かっていこうというのがいまの世の中の動きでもあるので。
そこに対してカニエ・ウェストっていうすごく影響力を持つアーティストが「自分はトランプをブラザーだと思っている。愛しているよ」って言うことがどれだけ、悪い意味でのインパクトをもたらすのか?っていうところに対してもうちょっと自覚的でいるべきなのではないかと思ったんですけども。まあ、このことに対しては私も全然自分の考えがまとまらず、っていうか別に私がとやかく言ってどうするんだ?っていう問題でもあるんだけど、とにかくびっくりして困惑しているというのがまさにたったいまっていう感じですね。
で、ちょっと今回の騒動を受けて、たとえばデイヴィッド・レターマンっていうすごく有名なアメリカのコメディアン、司会者、タレントっていう方がいまして。そのデイヴィッド・レターマンがNetflixで『今日のゲストは大スター』というトーク番組をやっているんですよ。で、その最新エピソードのゲストがジェイ・Zで。で、これはいろんなところで報じられているんだけ度、そこでもジェイ・Zがカニエ・ウェストについて聞かれたら、「彼は本当に違う母親から生まれた兄弟みたいなもんで。ちょっと諍いはあってもずっと絆は絶えない」というような話をしていて。
で、カニエも最初の方に「オバマさんが大統領だった時は、自分の故郷のシカゴは何も変わらなかったからトランプを支持するんだ」みたいなことも言っていて。でも、自分の地元を変えたいんだったら自分が何か動けばいいじゃんっていう風にもちょっと思ったりしました。っていうのは、ジェイ・Zはジェイ・Zで自分の私財を投じてチャリティーの動きもしていますし。この間、保釈されたミーク・ミルに関しても、彼はなぜ保釈されたかっていうと有色人種であるということが働いて不当な判決を受けて刑務所に入っていたわけですけども。まあ、「そういった現状を打破するために自分のプラットフォームを有効に活用したい」とか。
今回のカニエの曲にフィーチャーされているT.I.に関しても、自分のいろんなチャリティーであるとか慈善事業というのを地元アトランタになにかいいことをしようと、すごい行動に移している人なんですよね。でもカニエってそういうの、あんまり報じられることもないですし。そんな大統領のせいで自分の地元が変わらないって……まあ、オバマさんはもともとシカゴの議員でしたけども。それもまた全然論点が違うなって思いますし。うん。なんか本当に困惑したまま、混乱させられたままここ数日過ごしていたというような感じがします。
で、前置きが長くなってしまいましたけど、この『Ye VS. The People』がカニエの新しいアルバム、仮のタイトルが『Love Everyone』っていうことになっていますけども。それにどんなインパクトをもたらすのか? で、ちょっと今後もカニエさんについては私もしつこくウォッチしていきたいと思いますので、支離滅裂な解説になってしまいましたが、まず聞いてください。カニエ・ウェスト feat. T.I.で『Ye VS. The People』。
Kanye West feat. T.I.『Ye VS. The People』
(渡辺志保)はい。いま聞いていただいておりますのは『Ye VS. The People feat. T.I.』でした。本当に、先ほども考えがまとまらないトピックを延々と話してしまったんですけども。彼のアルバムが出る頃には、私もまた自分の考えをまとめたい。そしてでもアルバムが出た頃にはまたね、いろんな混乱するトピックがあれこれなっていそうだし……っていう感じですね。ちなみにT.I.は実際にカニエと会ってこの曲をレコーディングしたみたいで。関係ないけどこの間、ミーク・ミルが出所した時も結構早い段階でT.I.に直伝していて。T.I.ってやっぱりご意見番というか、みんなから慕われていて素敵! みたいなね。そっちか!っていう感じがしますけども。まあ、そういう印象も受けました。
ちょっとカニエについては引き続き『INSIDE OUT』でも「今週のカニエ」という枠を設けて私も考えを整理したいと思いますので、お付き合いくださいませ。
<書き起こしおわり>